サイド7の受信機~アムロ・レイの隣で鳴り響く、もう二つのガンダムの叫び~   作:寝て起きたら異世界じゃなくて会議室だった

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 あの日、地球の空が真っ二つに割れたのを覚えています。
 オデッサ。ジオンの地上拠点。そこを巡る決戦の最中、マ・クベという男が放った核ミサイルは、勝敗を超えた絶望の象徴でした。けれどアムロさんは、その絶望をその手で、ガンダムの剣で断ち切ったのです。
 テレビのニュースや歴史の教科書では「英雄の奇跡」として語られるその瞬間、私の頭の中は、形容しがたい衝撃波に貫かれていました。
 アムロさんの、極限まで研ぎ澄まされた「拒絶」の意志。それと同時刻、はるか南方の山岳地帯で、シローお兄ちゃんが巨大な怪鳥――アプサラス――と対峙した瞬間の「覚悟」が、私の脳内で一本の線として繋がったのです。
 守りたい。ただ、その一心で。
 地球の端と端で放たれた二つの蒼い光が、磁石のように惹かれ合い、空を一周して重なりました。あれは、戦争という巨大な闇を照らす、あまりにも儚く、そして力強い命の閃光だったのです。


蒼い爆光(U.C.0079.11.09)

 お空が、変な色をしている。

 ホワイトベースの窓から見えるオデッサの空は、火の粉が舞って、地面がずっと「がらがら」と震えていた。

 でも、その震えが突然、ピタッと止まった。

 

(……くる直前。とっても、こわいのがくる)

 

 キッカは、自分の小さな胸をぎゅっと押さえた。

 アムロさんの光が、今まで見たこともないくらいに膨らんで、真っ白な太陽みたいになっている。

 マ・クベおじさんが撃った、おっきな、おっきな爆弾。

 それに触れたら、みんな消えてなくなっちゃう。お花も、お船も、フラウお姉ちゃんも。

 

「アムロ、だめ! いかないで!」

 キッカは叫んだ。でも、アムロさんの光は迷わずに、その黒い塊へと飛び込んでいった。

 

 そのとき。

 足元から、空を突き抜けるような別の叫びが聴こえてきた。

 それは、ジャングルの雨の匂いを纏った、あのどろんこのお兄ちゃんの声だった。

 

『……させるかぁ! アイナの夢を……こんな人殺しの道具にはさせない!』

 

 あ。シローお兄ちゃん。

 お兄ちゃんは今、真っ暗な雲の中にいた。

 目の前には、お月様みたいにおっきな、不気味な顔をした機械が浮かんでいる。

 お兄ちゃんの出す音は、アムロさんの「白」と同じ、蒼い火花を散らしていた。

 

(……ふたりとも。ふたりとも、いっしょだ)

 

 アムロさんは、みんなを消さないために、お空の上で剣を振るう。

 お兄ちゃんは、大好きな人の心を守るために、雲の中で叫び声を上げる。

 

 ドォォォォォンッ!

 

 頭の中で、おっきなガラスが割れるような音がした。

 アムロさんのガンダムが、核ミサイルの先っぽを切り落とした瞬間。

 お兄ちゃんの陸戦型ガンダムが、巨大な影とぶつかり合った瞬間。

 

 二人の意志が、地球をぐるっと回って、キッカの頭の中でひとつに溶け合った。

 それは、とっても熱くて、とっても眩しい、蒼い爆光。

 

「……あ」

 キッカの目から、一粒だけ涙がこぼれた。

 怖くない。ただ、アムロさんの「守りたい」っていう心と、お兄ちゃんの「愛したい」っていう心が、あんまり綺麗に響き合ったから。

 

「キッカ、見て! アムロが……アムロが爆弾を止めたわ!」

 フラウお姉ちゃんが、私の肩を抱いて喜んでいる。

 お外では、連邦軍の人たちがみんなバンザイをして叫んでいる。

 

 でも。

 キッカには見えていた。

 ボロボロになったアムロさんのガンダムが、夕焼けの空で静かに息をついている姿。

 そして、遠い遠い山の向こう側で、煙を出しながら地面に降りていくお兄ちゃんのガンダムの姿を。

 

「……よかった。ふたりとも、生きてる」

 

 キッカは窓に指でお花を描いた。

 オデッサの戦いは、連邦軍が勝ったって大人が言っている。

 でも、キッカにとっては、二人のガンダムのパイロットが、この広い空の下で「繋がった」ことのほうが、ずっと大事なことに思えた。




オデッサ作戦佳境。マ・クベ中将が放った水爆ミサイルに対し、アムロ・レイは空中換装という離れ業を経てガンダムでこれを迎撃。弾頭を切り離し、未曾有の惨劇を阻止する。同時刻、東南アジアの山岳地帯では、シロー・アマダ率いる第08MS小隊が秘密兵器アプサラスIと交戦。シローは自らの機体をぶつける捨て身の攻撃でアプサラスを撤退させる。地球上の二つの地点で、同時多発的に「ガンダム」が歴史の破滅を繋ぎ止めていた。
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