第二次聖杯戦争から少しだけズレた平行世界での一幕   作:ささのき

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Fate/Zero
第1話 召喚まで


 

 

 聖杯戦争……それは聖杯を求める七人のマスターと、彼らと契約した七騎のサーヴァントによって行われる魔術儀式である。

 

 六つの陣営を排除し、生き残った一組にのみ聖杯を手にし、望みを叶える権利が与えられる。

 

 日本の冬木にて行われるそれは過去に三度開催され、いずれも()()()()勝者なく終わっている。

 

 この物語は、型月世界に生まれ落ちた転生者(呆れるほどのチート持ち)が原作を一部改変しながら自身の目的のため、色々と暗躍するお話。

 


 

 

 第四次聖杯戦争

 

 バーサーカーから始まり、キャスター、アサシン、ライダー、ランサーと英霊の悉くを自らの手で打ち倒したセイバー・アルトリア。

 

 彼女らは冬木市民会館にて顕現した聖杯を前に、最後の敵であるアーチャー・ギルガメッシュと対峙していた。

 

「認めよう貴様は強い、本気で相手をしてやるとしよう。少しばかりこの地域のテクスチャを剥がれ落とすことになるが……なに、問題はあるまい」

 

 波紋から鍵を取り出し起動する。

 ギルガメッシュが持つ最大にして最強の究極の一。

 

 

 乖離剣 エア

 

 

 溢れ出る赤は収束し、光球から現れるは『原初の地獄』を思わせる円柱状の刃を持つ剣。

 

「寝起き早々で悪いが、お前にふさわしい相手でな」

 

 意思を持っているがごとく、根元から徐々に刀身へ刻まれた印に光が帯び始める。

 

「騎士王よ。我は全力で以て貴様を裁定してやろう」

 

 そんな彼に相対するアルトリアは、真っ向からそれに立ち向かう。星の聖剣であるエクスカリバーを構え、ギルガメッシュの宝具に挑む。

 

「いいだろう英雄王。私も自らの全力で以てその一撃を受けてやる」

 

 在るだけで周囲を照らす星の輝きは、アルトリアの意思を理解し極限の輝きを放ち始める。拘束こそ解かれないが、それでも並の存在ならば一振りで消し飛ぶ至高の宝具。

 

 乖離剣の特殊な刀身それぞれが回転を始め想像を絶する赤い風を生む。それはやがて周囲の情報を狂わせ世界が悲鳴を上げ始める。

 

 

「死して拝せよ!『天地乖離す開闢の星(エヌマ・エリシュ)』ッ!!!」

 

「受けるがいい!『約束された勝利の剣(エクスカリバー)』ァァァ!!!」

 

 

 地に足を付けた状態から正面に向けて片手で突き出された『地の理』

 

 両手で握られ天高く上げられた状態から一息に振り下ろされた『光の奔流』

 

 

 互いが世界を塗り潰しながらぶつかり合う。

 それは長い拮抗となった。

 

 本来であれば両者ともに抵抗すら許さない絶対の宝具であるそれらは、敗北は認めないと言わんばかりに喰らい合う。

 

 

 

 ──均衡は傾く。

 

 

 もとより宝具としての差があった。

 威力がほとんど同じだったから、ぶつかり合うという現象が発生していたそれは片方が傾けば必然的に勝敗が決まるだろう。

 

 

 先程までの拮抗が嘘かの様に瞬く間で、赤い風は聖剣とその担い手を呑み込んだ。

 

 それを見たギルガメッシュは尊大に鼻で笑った。

 僅かながらの寂寥を無意識のうちに滲ませながら。

 

「誇れセイバー、貴様は我に乖離剣を抜かせたのだ。最大の誉れであろうよ」

 

 しかし、呑み込んでなおも止まらぬ赤の狂風。

 周囲を諸共に巻き込み続けるそれは、見定めた敵が消えれば唸りを収めるはずのそれは未だ止まることを知らず。

 

「ん? どうしたエアよ。拮抗の勢い余ったか」

 

 ──まるで、まだそこに敵がいるかのように。

 

 その瞬間。

 一つの影が赤嵐から飛び出て、幾ばくかの油断を抱いているギルガメッシュの元まで駆け抜けた。

 

「まだ終わってないぞ、ギルガメッシュ!!!」

 

「何だとっ!? 貴様、鞘もなしにどうやって!?」

 

「その()で私の全てを見通さなかった貴方の慢心、突かせてもらいましたよ!」

 

 そこから現れたのは()()の鎧を身に纏い、()のマントをたなびかせた戦いの王。

 人々が求めた理想の体現者がそこに居た。

 

 

 

 ────────決着の刻はすぐそこまで迫っている。

 

 

 ◇ ◆ ◇

 

 A.D.1994 スイス

 

 秘匿室。

 とある城の一角に存在し特殊な客のみが案内される、VIPルームとも言うべき部屋。

 

 そこで2人の男女が密談を交わしていた。

 

 

 

 男は自らの身体を確かめるかのように、拳を握ったり腕や脚を振るったりしている。そのいずれも多少のぎこちなさは窺えるが正常に動いているのが見て取れる。

 

「…………うん、問題無いね。君からの依頼は完了だ」

 

 そんな男の様子を確認した女性は自らの仕事の出来栄えに満足して、ウンウンと頷いていた。

 

「肉体の可動は良し、次は魔術だけど…………」

 

 体の状態を調べている男は、そんな彼女の発言を無視して、次の確認に移った。

 

 瞬間。

 唐突にされど柔らかに風が吹き乱れる。

 

 かと思えば、彼が持つ宝石の様な瞳は一層に輝きを灯し、そんな目線の先にはバリバリと電気が生じていた。

 

「……これはスゴイな。魔術回路は勿論、魔眼まで」

 

「分かってると思うけど、私でも宝石クラスの魔眼の完全再現は無理。今の事象はその人形の目に映る情報を本体に流して、それに応じて本体が魔眼をオートで動かして、結果をその人形の視界に反映してるだけ」

 

 先程、発生した風は彼が持つ往来の魔術回路。

 それが造られた肉体に再現されて放たれたモノ。

 

 そして電気は彼の()()()身体が持っている魔眼によって生み出されたモノ。人形師と謳われる冠位であっても、現代における最高峰(宝石クラス)の魔眼を造り出すのは出来なかった。

 

 故に、人形師──蒼崎橙子は造った人形と本人をわざと繋げることで、擬似的に魔眼を使えるようにした。

 

「分かっているさ、それでも驚きを隠せないんだ…………封印指定も伊達じゃないね」

 

「うるさいよ全く。次期当主サマがまさかこんなお願いをしてくるなんて思ってなかったよ」

 

 軽口には軽口で。

 その応酬から仲の良さは窺えよう。

 

 時計塔より封印指定を与えられた直後からの縁で、現在も関係は続いている。

 

 男の名前はエリゼブラッド・アルス・ワーグナー。

 

 色々と特殊な魔術一族であるワーグナー、その直系で齢7歳にして次期当主として確立した実力を持つ存在。

 

 現在はとある事情から、大人の肉体を欲していた為に人形師である友人の橙子に将来の自分自身の製作をお願いしていたのだ。

 結果として魔術回路の完全再現に、本体を通してではあるが魔眼も問題なく使用可能な大人の身体に入れた。

 

 幼い肉体をそのままに魂だけが移動してきた形となる。

 何故それが出来たかは、後々説明しようかね。

 

「…………無理を言って悪かったね」

 

「本当さ。まっ、宝石クラスの魔眼を間近で調べる事が出来たから私としても良い機会だったよ」

 

 今回の依頼は中々に急ピッチだった。

 期日が短い中、なるべく本人の魔術的要素を再現した大人の身体を造ってほしいという内容だ。

 

 橙子は当然、法外な値段を請求した。

 エリゼブラッド──エリゼはこれを全て受け入れ、追加で多く渡したのだ。自由奔放で知られる彼女もここまでされて、動かないわけにはいかない。

 それでも、結構ギリギリまで製作を続けていた。

 

「それにしても、よくあれだけの資金を捻出できたね。断るつもりで投げかけた提示額だったんだけど、あっさり払われたから驚いたよ」

 

 橙子が疑問に持つのも当然。

 

 ワーグナー家は確かに裕福だ。

 先代や先々代、それに最近までご存命だったエリゼの高祖父にあたる人物が持つ権威の影響で、元々は歴史があるだけの中堅貴族だった家は気が付いたらスイスを統括する立場にまでなったのだ。

 

 そこから得られる資金は並の数ではない。

 しかし、それ以上に出て行く量も凄まじいのだ。

 最近では、とある発掘に力を入れているせいで湯水のように資金が溶けている。

 

 それを正確に理解している橙子だからこそ、抱いた疑問なのだ。

 

「…………まぁ橙子になら言ってもいいか。オレの高祖父のことは知ってる?」

 

「知ってるよ。かの御仁とは何度か話した事があるから」

 

 色々特殊な家の更に特殊な人物。

 故人にはなったが、葬儀の際に魔術界隈のお偉いさん大集合みたいな図になるくらいは凄まじい老人。

 

「そうだったのか。まぁいいや、ウチのじーちゃんが言うにはさ、ワーグナー家は黄金律を持っているらしいよ」

 

「黄金律……肉体の比率か?」

 

「いーや。黄金比じゃなくて、人生においてどれほどお金が付いて回るか……だって」

 

「あー、なるほどね。一族ってことは『ラインの黄金』と似たような因果呪詛みたいなものか」

 

 ある時を境に、というより件の高祖父以降の子孫には特殊な力が幾つも目覚めた。彼の持つ魔眼や高純度の魔術回路もその影響と言える。異能ごとに細分化され傍系に逸れ、分家を増やしたことでワーグナー家はスイスにおける魔術貴族の代表となったのだ。

 

 今の話、もしスキルとして銘打たれていたら、間違いなくエリゼのステータスには『黄金律』の記載があったはずだ。

 

「そうそう。まぁ、それみたく強烈な呪いは無い純粋な祝福だと思うけど」

 

「羨ましい限りだね。それが資金源安泰の秘訣なのか?」

 

「半分正解。『黄金律』にも色々と種類があってね、その中でもオレは『資金が無尽蔵に増えることは無いが、どれだけ消費しようとも、使った分は返ってくる』らしい」

 

 昔、高祖父が見抜き、玄孫たる彼に伝えた『黄金律』の詳細。ワーグナー家の幾人かに生えた異能は大まかな区分は同じでも中身が違うことが多かった。

 

 例えば、親戚の『黄金律』で有名なのは『世界を旅すればそれだけで金銀財宝が手に入る。しかし女難の凶運』だったり、『真に何かを欲した時のみ、それに相当する資金がやってくる』というものまである。

 

「確かに……ワーグナー家は色々と規格外ではあるけど、そんな秘密があったのか」

 

「というわけで、お金については気にしなくていいよ。君は無茶な依頼を熟し、正当な報酬としてそれを受け取っただけなんだからさ」

 

 そうやって集まったワーグナー家の資産が元手としてあるからこそ、エリゼは好きに使うことが出来た。

 必ず消費した分は返ってくるのだから。

 

「はいはい…………それで大人の身体を造ったわけだけど、何に使うんだい? 忙しくて聞きそびれてたよ」

 

「言ってなかったっけ? 聖杯戦争に参加するんだ」

 

「聖杯戦争…………七騎の英雄の影法師を召喚して、戦わせてそれらの魂から抽出した魔力と大聖杯で根源に辿り着く儀式、だったか? 確か、ドイツのアインツベルンとロシアのマキリ、それと日本の遠坂が主導でしている」

 

「よく知ってるねっ! その通り、運が良いことに聖杯に選ばれたから、参加することにしたのさ」

 

 そう言って、部屋の一角にあるベッドで眠る自身の本体である『幼いエリゼ』が付けていた手袋を外す。すると、そこにはしっかりと令呪が浮かんでいた。

 

 実は『運良く』というのは嘘である。

 第二次聖杯戦争で高祖父と当時の当主が色々とコッソリやらかして、大聖杯の儀式についてはかなり詳細に記載された文献が家には残っている。

 

 何なら、エリゼは存命だった頃の高祖父から直接聞いている。普通に参加できるように調整したのだ。

 

「日本の…………それも有数の霊脈地である冬木で開催される魔法クラスの大儀式だからね、流石に知ってるよ…………そうか、君が参加するのか」

 

「流石に幼い身体では活動しにくいからね。幼年体も日本に運ぶとはいえ、大人の身体は必須だよ」

 

「ふーん……まっ、頑張れ。君が冬木にいる間、休息も兼ねて私はこの国でゆっくりさせてもらうよ。ここじゃ追手も来ないからね」

 

 ドカッと備え付けの豪奢なソファに腰を下ろす橙子。

 

「勿論構わないとも。ご先祖様の影響でうちの国は魔術世界も表同様の完全中立国だからね。どんな奴であれ不利益を出さないなら国民みたいなもんよ。ま、監視自体はされてるから、一歩でも外に出たら集中砲火だろうけどさ」

 

「それは雑魚限定さ。しっかりと準備を整えた封印指定なんて危険すぎて誰も相手なんてしたくない」

 

 例えどれだけ魔術的に凶悪な犯罪者でも、国に不利益を出さず暮らしていくのであれば、それは国民である。

 

 封印指定以外の邪悪でも。

 そう、それが人理の敵である死徒であろうと。

 あまつさえ()()()()()()に枠組みされる超越存在も例外ではない。

 

 国に害を出さないのであれば問題ない。

 

 実際に二十七祖の幾人かはワーグナーが統治するスイスに、遊び感覚で何度も訪れており"月蝕姫"に至っては別荘すら建てている。

 余談だがそこの番犬をしているのはプラ犬である。

 

 そんな死徒に比べれば、研究したいだけの引き込もり気質である封印指定者はスイス視点で見れば全然OKな部類だ。人的被害があればアウトだが、研究において理想郷とすら言える環境を壊してまで実行する者はいない。

 

 というより、霊脈や魔力の流れから行動を察知することが出来る魔術礼装が国土の地下に張り巡らされており、実行しようとしても未然に防がれる。

 そして国害者は研究資料と魔術刻印を根こそぎ奪われて、時計塔に輸送されるまでがセットだ。

 

 倫理観が欠如しても合理的に判断できるスイス在住魔術師の間では、スイスという最高の環境を手放さないように人を使った研究は、他国から奴隷などで資産として持ち込んで行うのが通例だ。

 

「どうせなら永住してくれてもいいんだよ? 既にオレの代で一人は囲えたし、君なら全然オッケーだけど……」

 

「魅力的な提案だが遠慮しとくよ。今度、日本で拠点を探す予定だからね」

 

「そりゃ残念。またの機会にしておくよ」

 

「是非そうしてくれ」

 

 いつもの勧誘&拒否のやり取りをした二人。

 

 エリゼは幼年体である自身の身体を、人形である大人の身体で持ち上げた。

 顔の造形が良い大人が寝ているショタを運ぶ図。

 言葉だけで見れば犯罪である。

 

「それじゃ、オレは準備とかあるのでこれにて失礼するよ。スイス滞在、楽しんで」

 

「ああ。応援ぐらいはしてあげるから、君も頑張れよ」

 

 

◇ ◆ ◇

 

 

 蒼崎橙子と別れた次期当主、エリゼは本体を自らの寝室へと運び、ベッドの上に寝かせる。

 

「鏡や映像以外で客観的に自分を見れるとは思ってなかったなぁ」

 

 眠るショタを見つめる一般大人男性。

 絵面は最悪である。

 

「…………一旦、戻るか。食事しないといけないし」

 

 肉体は変えようとも、本体は生きている。

 幼いとはいえ健康児。

 

 ずっと大人の身体に入ったままという訳にはいかない。

 

 眠る本体の隣に同じように横になった彼は、本体の繋がりを強く意識して、瞬き一つと入れ替えを念じた。

 

 パチリ。

 次の瞬間に視界に広がるのは、さっきとは数センチずれた場所から見える天井だ。

 

 たった今、瞬きをトリガーとして入れ替わったのだ。

 

「うん。身体差による動きのズレがあるくらいで、特に問題なし」

 

 目を開いて起き上がったのは子供であった。

 少しの間離れていた肉体を、冒頭と同じように身体機能を確かめていく。

 

 身体、魔術回路、魔眼。どれも正常に稼働する。

 全てのチェックを終えた彼、はベッドから移動し着替えを行い部屋の外へと出る。

 

 腹を満たすために住んでいる城内の一角に設営されている食堂へと赴いた矢先。

 

「若様。先日ご報告があったコーンウォールの発掘品が届いたようです。どちらにお運びしますか?」

 

 第四次聖杯戦争における極上の報告がなされた。

 

(…………まずは食事だな)

 

「魔術工房・三番にある小祭壇の上に置いておいてくれ。食事が済み次第、オレも向かう」

 

「承知しました」

 

 頭を下げるメイドの横を抜けて、エリゼは一度食事に向かうことにした。

 

 

 

 ところで、第四次聖杯戦争とコーンウォールの二つから何が連想されるか。分かる者は知っているだろう。

 

 そう、『聖剣の鞘』である。

 Fate/Zeroにおいてはアインツベルンがコーンウォールより発掘したとされており、傭兵として雇われた衛宮切嗣は聖遺物である『聖剣の鞘』を触媒にあるサーヴァントを召喚した。

 

 騎士王と呼び声高いアーサー王その人を。

 アルトリア・ペンドラゴン、Fateの顔とすら言われる最強系ヒロインである。

 

 そんな彼女を呼び出すために使われた触媒『聖剣の鞘』が今、スイスに運ばれている。

 

 ()()したエリゼは言葉を話せるようになった段階で、自らの存在を最も信頼できる人物だった高祖父に話した。

 

 そして高祖父はそれを受け入れた。

 漂白されていない異界の魂が来ることは、珍しくはあるが無いわけではないと。

 

 そして聖杯戦争についても伝え、コーンウォールの発掘をお願いしたのだ。その偉大なる高祖父は既に他界してしまったが、彼の権威が落ちることは無くエリゼが7歳、第四次聖杯戦争が始まる今になってもなお継続されていた。そして先日、聖遺物が発掘されたことが報告され今日ようやく届いたのだ。

 

 

 

 食事を足早に済ませた彼は隠し切れぬ高揚を顔からチラつかせておりすれ違うメイドは皆、首を傾げていた。

 

 そして到着した魔術工房・三番。

 この城内には無数の工房が存在しており、テーマごとにその性質をガラリと変えている。

 

 今回の工房は聖杯戦争をテーマとした場所で、小聖杯や令呪、英霊についての資料が多く記されている文献がいくつもある。

 そんな工房の一角にある小さな祭壇には、木の匣が鎮座していた。

 

 子供であればちょっと高さのある場所へ、エリゼは自らの属性である『風』と『空』を用いた魔術でふわりと()()()自らの位置を調整する。

 木の匣が腰の高さまで来るように浮き、その状態を維持したまま彼は閉じられたソレを魔術を用いて開封していく。

 

 匣の中には、間違いなく現代からして神秘の塊である現存する宝具『聖剣の鞘』が納められていた。

 

「アインツベルンとの発掘合戦、何とか勝てたね」

 

 ワーグナー家がコーンウォールの発掘に手を伸ばし始めた時、既にかなりの利権を獲得していたアインツベルンから、発掘品の奪取はかなりの苦労を要した。恐らく目を付けられただろうが、10年後くらいには聖杯の獲得を諦めて衰退していくのが分かっているので、エリゼは全然気にしていない。

 

「こっちの手の者が先に見つける事が出来て良かった。もし、アインツベルン側が見つけていたら、殺してでも奪い取ろうと思っていたからね」

 

 もしかしたら血に塗れた聖遺物になる可能性があった『聖剣の鞘』を軽く触ったり、持ち上げたりしている。

 そして少し時間が経ち、気が済んだのか貴重である品をクルクルと回したのを最後に開封された時の同じような状態に戻した。

 

「オレはこの第四次聖杯戦争でアルトリアを召喚する」

 

 戻したのもつかの間、彼は自分以外には誰も居ない空間で一人、言葉を溢す。アウトプットは大事と言う。エリゼはそれに倣い、心の声を言葉にしていく。

 

「理由。 普通に可愛いから、ペロペロしたい、前世からの推し、聖杯問答フルボッコで可哀想ワロタ、助けたいと思ったから」

 

 ん? いくつかおかしいのも混じっていたようだが、共通するはアルトリアに対しての好意だろうか。

 

 一人喋りを満足したのか、匣の蓋を閉じて工房を出る。

 迷いのない足取りで長い廊下を進んでいく。

 

「…………さて、召喚は今日の夜かな。後で召喚場に移動しておかないと」

 

 触媒が届いたのがついさっきだというのに、随分と気が早い。廊下を歩く幼年、城の明かりが幼い彼の表情を照らし出す。

 

「早いところ彼女には────」

 

 

 

 ()()()()()()()()()()()…………ね。

 

 

◇ ◆ ◇

 

 


 

 

死徒二十七祖と英霊

……おかしいな、両方共に存在が確立しているなんて。

主人公はFate/フリークではあるが月姫関連に疎いので、両立している異常性には気付いていない。

 

プラ犬

言わずと知れた白いアレ。

見た目は真っ白なウルフドッグ。

主である姫より別荘の番犬を命じられた。

最近の趣味は、遊びに来る主の友人の腕や脚をガジガジすること。

 

 

過去に投稿した作品のリメイク。

大筋に変更はないけど細かい部分を大幅に改稿しました。

 

 

 

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