第二次聖杯戦争から少しだけズレた平行世界での一幕   作:ささのき

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戦闘描写難しいです………。

誤字報告ありがとうございます!  修正しました。



第6話 最初の戦い

 

 ◇◆◇

 

 冬木市の郊外に位置する倉庫街。

 多くのコンテナが立ち並ぶ一角は戦場と化していた。

 

「ゼェアッ!!!」

 

「シッ!」

 

 セイバーが斬りかかり、ランサーが受け止め逸らして反撃する。武具を用いた戦闘である為、範囲こそ狭いが地面のアスファルトは捲れ、壁代わりのコンテナに切り傷が出来ていく。

 

 ランサーのマスターであるケイネスが張った人払いの結界により、一般人が寄り付かないそこでは聖杯戦争では優秀と分類される三騎士のうち二つがぶつかり合っていた。

 

「中々やるじゃないかセイバー。我が槍捌きをこうも凌がれるのは、生前でも数えるほどしかなかった」

 

「それは光栄だランサー。しかし、貴公も全力というわけではあるまい?」

 

 きりが良いタイミングで両者は戦闘を止めて互いに探り合いを行う。実際には彼らのマスターが戦いを始めたので、様子を確認しているだけだったりする。

 

「さて……ともあれ、互いに肩慣らしも済んだだろう」

 

 そう言って自らが持つ二つの槍を構えなおすランサー。

 その姿を見たセイバーも《風王結界(インビジブル・エア)》で透明化した剣の柄を握り締め構える。

 

「そうですね。では一つギアを上げましょう」

 

「ふっ。本当の戦いはここからということか」

 

 軽口を叩きあった後、二つの影は瞬く間に輪郭がブレて超高速戦闘に移行した。

 セイバーが上段から振り落とした一撃を長槍で受け止めて引かせないように絡め、もう片方の短槍を刺しだす。

 

 それに対して、突き出された穂先の側面を魔力で編んだ鎧の篭手部分で弾く。その衝撃で緩んだ長槍の絡めを解いたセイバーは、スキル【竜の炉心】をフル稼働させて重さを増した一撃を痛烈に叩き込む。

 

「ウグッ!?」

 

「どうしたランサー、先程の威勢は飾りでしたか!」

 

「…………何のこれしき。我が槍はまだまだ健在だぞ、セイバーよ!」

 

 先の一撃。

 ランサーはギリギリで防ぐことに成功した。

 元より二つの武器を扱うことに長けているランサーは、非常に守りが堅い。

 

 短槍が弾かれ、長槍も引き剝がされた状態からでも防御に移る事が出来たのは、偏に彼の技量があってのものだ。

 

 しかし、それが無傷で済むかは別の話。

 

 非常に重い一撃は、ランサーの腕に少なくない痺れと鈍い痛みを与え、外傷こそ無いが確かなダメージとなった。

 

 未だ芯に響くような鈍痛に耐えながらランサーは気丈に吼え取り繕い、目の前のセイバーに弱みを見せなかった。

 

 一撃を交わされて以降も二人の英霊による戦闘は止まる気配を見せないが、内容は少々変化していた。

 

 互いに攻と防を両立して隙を窺っていたのが、現在は片方が常に攻、もう片方が常に防となっている。この形が逆転することなくキープし続けていた。

 チャンスである時間で苛烈な剣戟を与え続けるセイバーと、一度崩されたペースを戻し切れずに攻撃を凌ぎ続けるランサー。

 

 一般的なサーヴァントであれば既に敗退してもおかしくない、嵐のような剣でそれに加えて透明な斬撃を受けられるのは、先ほども言ったようにランサーの技量の賜物なのだろう。

 

 そうして凌ぎ続けた果て、ランサーの調子が自然に復活し反撃まで行えるようになったタイミングで、セイバーは一度攻撃の手を止めた。

 

「お見事、と言っておきましょうランサー。負傷の身で、ここまで粘るとは少し想定外です」

 

「その賞賛、素直に受け取ろう。よほど名の通った騎士であろう貴様からの言葉…………俺には誉だ」

 

 セイバーは自らの連撃を悉く防ぎ切った槍の名手へ、ランサーは在り方から高名な騎士である事を察しての言葉。

 

『何をしているランサー。敵がセイバー、そして優秀な魔術師がマスターとはいえこの体たらく、英雄とは聞いて呆れる』

 

 英霊同士の戦いが止まったと同時に、マスター側の戦いも止まったようだ。ランサーのマスターであるケイネスが、自らのサーヴァントを貶めるような発言をした。

 

「申し訳ない、我が主。予想以上の敵につい気持ちが逸ってしまっていたようです」

 

『ふんっ、これ以上勝負を長引かせるな。いいだろう、そこのセイバーを難敵と認めよう。速やかに始末せよ、宝具の開帳を許す』

 

 その言葉と共に、戦場には鋭い空気がピリッと走った。

 

 

 宝具。

 英雄の逸話や伝説が昇華した、いわゆる必殺技。

 

 その使用制限の撤廃。それが意味するのは、戦いの決着が早まるということ他ならない。

 

「了解した我が主」

 

 ランサーはその言葉と同時に短槍を手放した。そして、もう片方の長槍に巻かれた包帯を(ほど)く。

 スルスルと露わになったのは、どこか禍々しい印象を受ける紅い槍。彼がランサーとして呼ばれるに至った逸話、その武器が姿を晒す。

 

「そういうわけだ、ここから先は獲りにいかせてもらう」

 

「来なさいランサー。その全てを超えて私は貴様を斬る」

 

 一瞬の静寂、近くで大きな音が響いた。

 マスター同士の戦いが再開したのだ。そして、その音を合図としてサーヴァント動き出す。

 

 一息で距離を詰めたランサーは、先程よりも身軽に最速のクラスに違わない敏捷さで、赤槍による突きを繰り出す。セイバーはその一撃を透明の剣を盾に防ごうと前面に構える。

 

 そして槍の穂先と剣の腹が接触した時、ガリガリと音を立てながら透明化の作用を齎していた風の結界が破かれた。

 その内側には聖剣────()()()()、それでいて宝具に分類されるであろう剣が垣間見えた。

 

「ッ!?」

 

 自らの宝具であった《風王結界(インビジブル・エア)》が破かれたのを理解したセイバーは一瞬の驚き、そして()()の表情を浮かべて後退する。

 

「風の結界が破れた。それがあなたの宝具ですか」

 

「あぁ、そうとも。そして見させてもらったぞ、貴様の剣を。透明で計れなかった刃渡りも確認できた、間合いがずれることはもうない」

 

 ランサーの宝具である長槍は破魔の赤槍と呼ばれており、魔術的な構築を破る力がある。宝具であっても、それが魔に属するのであれば問答無用で喰い破るのだ。

 

 ついでと言わんばかりに剣の調査も抜かりなし。

 セイバーの代名詞たる星の聖剣ではないが、それでも真名がバレれば正体を掴まれてしまうぐらいには知られている剣だ。

 

「なるほど。であれば、もう透明を意識する必要はなさそうですね」

 

「来るかっ…………!」

 

 後退した事で離れた距離を、今度はセイバーの方から潰して一気に近づいた。その動きを眼で捉えていたランサーは、応戦するように構えた赤槍を薙ぎ払う。

 

 横薙ぎの一撃。穂先部分を下から掬いあげるように拳でかちあげると、赤槍の力が反応して籠手が破れ、中から露出した白く小さな手が穂先の刃によって傷ついていく。

 

 しかしセイバーはその怪我を無視して、薙ぎの反動で僅かに開いた胴体へと剣を突く。

 ここは槍の間合い、本来なら普通の剣による攻撃は絶対に当たらないような場所。

 

風王鉄槌(ストライク・エア)ッ!!!」

 

「何ッ!?」

 

 隠していた剣を見られた以上、風で覆い続ける必要はないと判断したセイバーは、透明化の為に重ね圧縮していた空気を、剣先から放つ突風として利用した。

 

 極限まで圧縮された風は想像以上の威力であり、至近距離にいたランサーは脚で踏ん張ることすら出来ずに、壁であるコンテナの方へと吹き飛ばされる。

 

 ランサーが突っ込んだコンテナは轟音をあげ中心から幾重にも亀裂が走り、今にも壊れそうな形相を呈している。

 

 

 そして、パラパラと破片が落ちる音が断続的に聞こえる中で、咳込みと同時に足音が聞こえてくる。

 

 

 

 

 

「けほっ……けほっ……驚いたぞ、セイバー。まさか剣を隠すのに用いていた風をこう使うとはな。だが、所詮は空気を圧縮しただけの技。この俺を倒せるモノではない」

 

 舞い上がる土煙の中から出てきてのはランサー。

 流石の彼も無傷とはいかなかったようで、所々怪我が散見される。しかしその足取りはしっかりとしており、先の一撃が致命傷とは程遠いモノの証明でもあった。

 

「何、もはや意味の無い《風王結界(インビジブル・エア)》を有効活用しただけ。この程度で死なれては興ざめもいいところですよ」

 

「ふっ。言ってくれるな、セイバー。貴様こそ自爆に近い形で突っ込んで来たように思えたが?」

 

 ランサーが怪我しているように、セイバーも相応の手傷を負っている。というのも、先の攻防で穂先を篭手で打ち上げた際に、魔力で編んだ鎧が破れたのだ。

 

 そのまま刃を触れたことで、目に見える傷が出来た。

 

「そうですね。しかし貴公の宝具、その性質も理解出来ました……魔力を断つのですね。風の鞘、この鎧、どちらも私の魔力で構成されていますから」

 

「その通りだ、セイバー。もはや貴様の鎧は無いも同然と言うわけだな」

 

「ならば、こうしましょう。マスター、回復を」

 

 ランサーが持つ破魔の赤槍に対する策。

 セイバーは自身のマスターに怪我の治療を願うと同時に魔力で編んだ鎧を消した。

 

 そう、そもそも魔力が構築されたモノを消す。

 魔力の節約にもなり、鎧が無い都合上敏捷力も上がる。

 

「なるほど、考えたな。確かに鎧が意味をなさないならば外せばいい」

 

 程なく、ランサーとセイバーの傷が修復される。

 ほぼお互いが万全に近い状態までに回復し、されどこれ以上長引かせる気は無いと言わんばかりに両者から強い覇気が放たれる。

 

「思いっきりがいいな、セイバー。しかし、貴様のそれは失策と言わざるを得んぞ?」

 

「ほう? ならば試してみるがいい!」

 

 ランサーが少しばかり後退し、()()で構えた赤槍。

 対して【竜の炉心】によって生成された莫大な魔力を足先に集中させ、圧縮し練り上げるセイバー。

 

 静寂────。

 

 一瞬だけ保たれた静けさは、次の瞬間には去っていく。

 

「ハァァアアアッッ!!!」

 

 圧縮された魔力が足裏で爆発を起こし、今までの戦闘とは比べ物にならないほどの速力を生み出し、セイバーは突貫する。

 

 それに対抗するのはランサー。

 僅かな後退で捨て置いた短槍に辿り着く。

 

「失策と言ったはずだぞ、セイバーッ!」

 

 脚で弾いて眼前へと躍らせる。

 それと同時に真名解放により長槍同様に巻かれた包帯が緩み、その中にある呪いの黄槍が顔を出す。

 

 それはランサーが持つもう一つの宝具。

 短槍で与えた傷に不治の呪いを掛けることで癒しを阻害する。

 

 正しく原作通りの展開と言えよう。

 

 

 

 

 しかしだ。

 原作とは明確に異なる部分がある。

 

 

 どこか?

 それは…………。

 

「《霧散せしめる衝撃剣(モルデュール)》ッ!!!」

 

 セイバーのアルトリアが最強であることだ。

 彼女は、この倉庫街に来た時から隠していた剣は星の聖剣ではない。アーサー王の剣という一点のみで、宝具へと昇華されたその剣の銘はモルデュール。

 

 原典の逸話にて『魔法を破り、鋼鉄でも石でもその打撃は防げない』とされている剣だ。

 

 逸話を読んだだけでも分かると思うが『打撃』である。剣なのに打撃が主として言われているのだ。

 まぁ、西洋の剣は斬るというよりも叩き斬るという方が正しいとは、よく言われているのだけれどもね。

 

 さて話を戻して、逸話の"魔法"は当然ながらありえないので、魔術または魔に属するモノが対象となり、打撃は防ぐ事が出来ないとある。

 

 先程、叩き斬るとは言ったが型月世界において西洋でも普通の剣は斬れるし、なんならビームが出せるのが常識。そんな中、防げない打撃となればその正体は…………。

 

 ゴォォォォォォォンンンッ!!!

 

 

 衝撃である。

 固体に限らず、気体や液体を経由として抵抗で途切れるまで貫き続ける防御不可の技。

 

 発生源から近い程に、衝撃を喰らった物体の内部へのダメージは計り知れない。空気を伝い、体内の血や内臓に直接攻撃を与える一撃。

 

 それでいて、どんな神秘だろうと衝撃に晒されれば、機能を掻き消されてしまう。

 

 そんな恐ろしい宝具が《霧散せしめる衝撃剣(モルデュール)》なのだ。

 

 

 場面は二人の英霊による最後の一撃。

 

 ランサーが虎の子の黄槍をここぞというタイミングで解き放ち、セイバーは聖剣ではないが能力で見れば脅威の宝具の真名を解放する。

 

 交差、お互いの位置が入れ替わる。

 

「がふっ…………」

 

 直後にランサーは血を口から吐き出し片膝を突いた。

 彼が放った攻撃はその全てが衝撃波に搔き消されて、呪いの力すら一瞬とはいえ無効化されたのだ。

 

 勝利の女神はセイバーに微笑んだ。

 

「見事だ、セイバー…………いや、騎士王よ。まさか英霊として召喚され、あまつさえ戦うことが適うなぞ思わなかったぞ」

 

「私もだ、輝く貌のディルムッド。聖杯戦争でこのような騎士道精神を震わされるとは思わなかった」

 

「ふっ。しかし……なんだ、唄に聞こえし聖剣は使ってはくれないのか」

 

「ええ。マスターの情報網からケルトに関わる英雄と言うのは分かっていましたので、ルーンや異能を持つ武器使いが多い故、こちらの剣を持参しました」

 

 先ほどまでの戦の雰囲気は消滅し、残ったのは勝者と敗者が醸し出す少し緩んだ空気だけ。

 

「二槍の貴公と戦った時に片方の使い方が剣術に酷似していました。だから元々は剣と槍の二刀流ではないかと推測した、というよりマスターが教えてくれました。そしてケルトで異武器の二刀流となればディルムッドしかいない。故に、最高のタイミングで宝具を使う事が出来た」

 

「そうか。その時点で既に見抜かれていたとは、それを悟る事が出来なかった俺の怠慢だな」

 

 ともすれば反省会すら始まっている。

 何故、セイバーがランサーの首を取らないのか、またランサーも負けたとはいえ何故こうも潔いのか。

 

 その理由はマスター側にあった。

 

 

 ◇◆◇

 

 

 少し過去に遡る。

 

切り裂け(brestan)

 

 エリゼが発動させた魔術が風の刃となってケイネスへと襲うも、彼が趣味で造った魔術礼装である月霊髄液(ヴォールメン・ハイドラグラム)にプログラムされた自動迎撃によって弾かれていく。

 

「ふむ。一小節でこの出力と精度、悪くはない」

 

「お褒めに預かり光栄です。 穿て(skioban)

 

 ケイネスは相手の出す魔術を評価する余裕さえ持ち合わせている。彼にとって聖杯戦争とはサーヴァントは副次的で、魔術師同士による決闘こそが華である考えているが故である。

 

「うーん。圧縮が足りないのか?」

 

 今の攻撃もあっさりと迎撃された為、エリゼは一度手を止めた。

 

「悪くはないが未熟である。もう少し回転率を上げねば突破は難しいぞ。君のソレを見る限り、魔術属性は『風』と『空』の二重(デュアル)であろう?」

 

「……よくお分かりで」

 

「分かるとも。ノウブルと二重属性のハイブリッド。君の属性ならば、趣味の産物とはいえ私が手ずから作り上げた魔術礼装を超えれるというのだ、誇りたまえ」

 

「ありがとうございます」

 

 魔術師同士の決闘ではあるが、エリゼは半ば勝てないと思いケイネスの知識を吸収しようとして、ケイネスは圧倒的格上であるという慢心+教職であることから、この二人が上手いこと噛み合って、実質授業のようなモノになっていた。

 

 だからこそお互いにサーヴァントの状態を常に把握できているし、あっちの戦況に応じて止めたりもする。

 

 それから暫く、英霊の様子を見ながらも決闘……のようなものを続けていた。

 ワーグナー相伝の魔術であったり、秘蔵の魔眼をお見舞いしたが驚かれることはあっても倒すには至らない。

 

(この人を一方的に倒すって、やっぱり『魔術師殺し』怖すぎる。近寄らんとこ)

 

 という考えを改めて思わせるほどに、彼我のレベルの差が浮き彫りとなった。

 

 ◇

 

 そして決着となり、アルトリアがランサーを下したことで、この戦いの行く末も決定した。

 

「マスター対決はオレの敗け、逆にサーヴァント対決はこっちの勝ち。聖杯戦争は二人で一つの陣営、今回は引き分けで手を打ちませんか?」

 

「ハァ…………よかろう。君の、魔術師としての才能に免じて、この場は終わりとしよう」

 

 ケイネスは聖杯戦争の参加者で最も強いという自負心があった。エリゼとの一方的な戦いで、よりその考えを強固にした。

 そして自身のサーヴァントが弱いことに失望した。

 忠義を尽くすだなんだと言っておきながら、宝具を解放したにも関わらず、結果で見れば大敗している。

 

「それでは、失礼させて頂きます。また機会がありましたら、その時に是非」

 

「うむ。こちらも良き出会いに恵まれた」

 

 マスター同士も幕を閉じる。

 

 このような流れがあり、既に終わり両者引き分けが確定したからこそ、サーヴァント達は立場を超えて雑談に興じていた。

 

 エリゼは戦いで得たモノを反芻しつつ、ケイネスがいた場所から『魔術師殺し』の狙撃を注意しながら移動する。

 

『セイバー、身体に異常はないかい? モルデュールは衝撃を強めれば使用者にも反動があると聞いたけど…………』

 

『大丈夫です。マスターからの治療もありますし、この程度の出力であれば何ともありません』

 

 英霊召喚の機能として組み込まれている、マスターと英霊間の念話を利用してエリゼは戦闘後のアルトリアに調子を確認していた。

 

『なら良し。そしたら、最後の行事を済ませて今日のところは終わろうかな』

 

『最後の行事……?』

 

 彼はアルトリアに自らが転生者であることを打ち明けていない。いや、語弊がある。再召喚によって記憶へ制限が掛けられている彼女に伝えていない。

 その場その場で、タイミングを見て推測情報という名の原作知識を与えているのだ。

 

 ────生前状態のアルトリアには全て教えている。

 

 だからこそ、第四次聖杯戦争におけるビッグイベントが始まることを彼女は知らない。

 

 

「AAAALaLaLaLaLaie!!!!」

 

 

 けたたましい雄叫びと共に、セイバーとランサーの頭上から一台のチャリオットが降ってくる。

 

 騎士たちの勇姿を見届け、これ以上の戦闘はないと判断した彼ら──ライダー陣営の乱入であった。

 

 ◇◆◇

 





霧散せしめる衝撃剣(モルデュール)
・ランク:B
・種別:対人宝具
・レンジ:1
・最大補足:1人
 剣を中心に強烈な衝撃波を解き放つ。
 その衝撃波は神秘の力を無効化し、全ての物体を伝って内側から破壊する。
 あまりに強すぎる衝撃は使用者にすら影響を与えかねないので、むやみやたらと使うことは出来ない。

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