アーサー王(史実)がしたこと   作:妄想壁の崩壊

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エピローグⅢ

 

あれから、一年が過ぎた。世紀末を越えて、世界は新世紀を迎える。魔術世界で起きた大事件(魔法)なんてものはあったけれど、表の世界は平穏なままで。

 

そんな平穏な日々を送る、彼女たちの日常を少し覗いてみるとしよう。

 

 

 

 

「おっし、ただいまァッ! モードレッド様のお帰りだぞ!」

 

「「……」」

 

ロンドン市内にあるアパートメントの一室で、共に朝食をとっていた獅子劫とエレインの体が固まった。エレインの口に放り込まれる寸前だった目玉焼きが、フォークからこぼれ落ちてぽとりとプレートに落ちる。

 

聖杯大戦から一年、エレインの周囲は様変わりした。彼女は今、魔術協会の総本山時計塔へと通う学徒の一人なのだ。獅子劫界離は彼女の後見人として、エレインのイングランドでの生活をバックアップしている。

 

そして、本来ならば共に暮らしているはずのもう一人の住民がそこにいた。

 

「おっ、飯食ってんのか。オレの分は?」

 

「あるか──ッ!!!」

 

「ないですよ──ッ!!!」

 

獅子劫モードレッド。汚染された大聖杯が恣意的にこぼした第三魔法によって受肉した英霊。戸籍が無い故、突如獅子劫界離の養子として現代の身分システムに組み込まれた、ここ半年“トルコに旅行行ってくるわ”と言って姿を見せなかった放浪息子? 娘? である。

 

「んだよ、薄情だなぁ」

 

「薄情もクソもあるか! 突然思い立ったかのように勝手に消えては勝手に帰ってきやがって!」

 

「それなりに心配したんですよお義兄(にい)さん!」

 

そうだ、帝都に行こう。みたいなノリで海外旅行に行かないで欲しい。

 

「おっ、心配してくれたのか? お前は相変わらず優しいよなエレイン。けどオレに怪我とかねぇから安心しろよ」

 

「あなたの体の心配とかしてないですよ! 言っておきますけれど、あなたこのままだと普通にエルメロイ教室留年ですからね!?」

 

あの大戦を生き延びた少年少女は、紆余曲折あって大部分のメンバーがエルメロイ教室へとぶち込まれた。問題児の行き先はなぜかいつも決まっているらしい。

 

“うちの教室は都合の良い便利屋じゃないんだぞ!”とは、某顰めっ面の教授のセリフである。

 

「オレは魔術師なんざなる気ねぇよ。どうでも良い」

 

などと興味なさげに呟きながら、モードレッドはエレインのプレートから目玉焼きを手掴みで拝借した。“あぁ! 私の目玉焼きが!”とエレインの悲痛な声が響く。

 

「……と言うかお前、大分焼けたんじゃないか?」

 

獅子劫は小麦色に焼けたモードレッドの様子をみながらそう言った。

 

「ん? おー、まぁイスタンブールに行く途中に地中海沿岸の都市はだいたい寄ったからな。日焼けくらいするだろ」

 

“いやぁ、青い海に白い砂浜。それにマヨルカ島の波は乗り心地最高だったぜ。グッ!”と、モードレッドは親指を立てた。こいつ、あろうことか聖剣の鞘をサーフボード扱いしているらしい。

 

まぁ、聖剣の鞘はアヴァロンに辿り着くための小舟でもある。異なる世界では日本海を渡るヨットにもなったのだから、サーフボードに変身するくらいわけないのだが。

 

しかしそれで良いのか、今代の聖剣使いよ。

 

「もう何でも良いですけど……で、お義兄さんは今日は時計塔に行くんですか?」

 

「行くか。普通にサボるわ」

 

知ってた。そう言わんばかりにエレインが頷いた。

 

「それはそうと獅子劫のオヤジ、今日空いてるか? どうせ暇だろ車出せよ」

 

「いや今日は法制科に用事が……」

 

「んなつまらねぇとこよりもっと面白いところ行こうぜ。ほらほら」

 

「待て待て引っ張るな引っ張るな……あー、悪いがエレイン。法制科には遅れるって伝えといてくれ」

 

ずるずるとキャリーケースのように連れられて、アパートメントの一室から連れ出されて行く獅子劫。

 

「はいはい、行ってらっしゃい。あ、二人とも夕ご飯はどうするんですか?」

 

「外で食う! 今夜はパブでオールナイトだ! もちろんオヤジの奢りな!」

 

「俺は明日も仕事なんだが」

 

傭兵稼業から足を洗い、時計塔に再就職した彼は項垂れながら引きずられる。そんな二人をエレインは見送った。

 

「さて、私も身支度しないとね」

 

姿見の前に立ち、外行きの衣服に着替える。

 

鏡に映るのは長く美しい金の髪に、母親譲りの湖のように澄んだ青色の瞳、そしてトレードマークの丸眼鏡。

 

そして。

 

「今日も一日頑張りますか!」

 

屈託なく笑う、朗らかな笑顔であった。

 

曇り空が常のこの国にしては珍しい晴天の光を浴びながら、エレインは希望を持って一歩外へと歩み出す。

 

かつての幼馴染であり、今は互いに将来を誓い合った婚約者(フィアンセ)がいるだろう、いつもの待ち合わせの場所へと。

 

「──おはようございます、カウレスくん!」

 

「──あぁ、おはようエレイン」

 

どうしてか、いつも自分より早く着いているその人の後ろ姿に向かって声をかける。すると彼は振り返り、“今日は日差しが強くて敵わないなぁ……”と苦笑いしながら、日傘の下で微笑んだ。

 

「じゃ、行くか」

 

「はい、行きましょう」

 

エレインはもう、一人ぼっちじゃない。

 

 

 

 

「「おはようございます、エレイン、カウレス」」

 

エルメロイ教室──現代魔術科の教室へと向かおうとしていたエレインとカウレスは、ばったりと二人の少女と出会った。

 

「おはようございますジャンヌさん、レティシアさん」

 

「あぁ、おはよう」

 

かつて裁定者として聖杯大戦に参加した二人の乙女、ジャンヌとレティシアである。

 

もともとジャンヌがレティシアの肉体を依り代にしていたため、二人の姿は瓜二つだ。黙っていれば見分けられることはない。

 

この二人がなぜ聖堂教会ではなく、魔術協会側であるエルメロイ教室に入ることになったのか。その経緯は……そこまで語るまでもなく単純明快。

 

聖女だろうと現代に復活するなんて異端! 追放! ……ただそれだけだ。

 

一応名目上、二人は聖堂教会が魔術協会に送り出したスパイ扱いなのだが……ぶっちゃけ双方から腫れ物扱いされている。

 

「ところで、ジークくんを見ませんでしたか?」

 

“ジークくん”、そう呼ぶのはジャンヌの方だ。レティシアは彼のことを“ジークさん”と呼ぶ。

 

「見てないですけど……カウレスくんは知ってますか?」

 

「いや、見てないな。先に教室にいるんじゃないか?」

 

「そうだと良いんですけど……」

 

不安気に眉尻を下げるレティシア。そして彼女は対外的には姉となっているジャンヌと目を合わせると、二人してため息をついた。一年前に突如として生えた『姉なる者』である聖女との関係は、もはや本当に長年連れ添った双子の姉妹のように息ぴったりである。

 

「どうしたんですか、何か気になることでも?」

 

「「それは……」」

 

エレインの問いに答えようと口を開きかける二人。二人を悩ませることなんて、一つしかないだろう。それは。

 

──ドンッ!

 

と、突如として何かが衝突する音。慌てて窓に寄ってみれば、何かが中庭に墜落していた。そこにいたのは身に覚えのある二人の少年の姿。

 

「……またあのアホトルフォは! ジークくんに迷惑ばかりかけて!」

 

「あ、ま、待ってくださいジャンヌ姉さん」

 

怒り心頭といった表情を浮かべて、中庭へと駆けていくジャンヌ。そして彼女を追うようにレティシアもエレインとカウレスの前から姿を消した。

 

「……あれ、アストルフォのヒポグリフだよな」

 

「まーたやってますよあの人たち。こうして何かをやらかすの、もう何回目ですか?」

 

エレインとカウレスは互いに目を合わせて、やれやれと首を振る。

 

『ごめんね! でも遅刻しそうだったからつい!』

 

『すまない、ライダーが本当にすまない』

 

中庭ではカンカンに怒ったエルメロイⅡ世教授に叱られる二人の姿が見える。あぁ、彼も可哀想に。ただでさえ借金まみれなのに、建物の修繕費まで要求されたら溜まったものではないだろう。

 

「……いや待て、ここの修繕費を払ってるのって誰なんだ? まさかユグドミレニア(うち)じゃないよな?」

 

「基本的にはアニムスフィア家が肩代わりしてくれてますよ」

 

良かった。どうやらグレートビッグベン☆ロンドンスター先生の財布は犠牲になっていないらしい。

 

「マリスビリーさんかぁ……」

 

アニムスフィアの名前を聞き、カウレスが微妙な顔でしみじみと呟く。

 

少しばかり、政治的な話をしよう。

 

本来ならば魔術協会の敵として許されるはずがなかったユグドミレニア。彼らが曲がりなりとも存続し、こうして時計塔の一員として復帰しているのは彼らを庇う存在がいたからだ。

 

一つ、聖堂教会。聖アルトリウスの聖遺物と引き換えに、彼らは仲介役を果たした。

 

二つ、エルメロイ家。なんとなんと、五年前にエレインの母が回収していたエルメロイⅠ世(・・・・・・・)の死体。つまりエルメロイの源流刻印がアカデメイアの保管庫に存在していたのだ。エルメロイ家はその返還を引き換えに、エレインやそれに付随するメンバーの安全を保証してくれている。

 

『一刻も早く返してくれたまえよ!』

 

と、エルメロイの姫が毎日毎日念を押してくるが、残念ながらその返還はもう少し先である。今のままでは、エレインもカウレスもいささか立場が弱いので。

 

そして三つ。アインツベルン家。回収した大聖杯を売り払う(・・・・)ことと引き換えに、彼らはユグドミレニアと魔術協会の間に立つと契約を交わした。

 

彼らは家を傾けるほどの大金を払い、やっと念願の大聖杯を回収したのだが……残念ながら、大聖杯はアサシンによって汚染されていて無能となっていたのである。やることなすこと裏目に出る、やはりこれもラインの黄金の呪いのせいであろうか。

 

とはいえ、契約は契約。彼らはユグドミレニアを庇い続けるだろう。

 

ちなみに、今はユスティーツァから大聖杯を錬成したのとは真逆に、大聖杯から第三魔法を使えるホムンクルスを錬成しようと奮闘しているらしい。

 

ジークと共にホムンクルスの寿命を延ばす方法を研究しているムジーク家共々、どうか頑張ってほしい。

 

そして最後の四つ、アニムスフィア家。彼らは上の三家と異なり、どのような手段を使ってか向こう側から交渉をしかけに来た不思議な存在である。

 

その目的は人理保障機関なるものを作ること、だそうだ。対外的には死んだことになっているシロウとセミラミスに身分を与えることを引き換えに職員として引き込んだり、人の身のままサーヴァントの力を扱うことができるジークとカウレスの体を調べたり。

 

「あの人滅茶苦茶怪しいんだよなぁ……」

 

カウレスは腹の中に何を抱えているか分からないマリスビリーのことを思い浮かべた。今でこそ自分たちを守る防波堤となってくれているが、そのうち何かをしでかしそうな予感がある。

 

「確かに怪しいですけど……まぁ、良いじゃないですか。やらかしたときはやらかしたときで、私たち全員でぶっ飛ばしちゃえば良いんですよ」

 

「……ま、難しいこと考えても仕方ないし、今はそれで良いか」

 

婚約者の脳筋ぶりにカウレスは思わず笑いをこぼした。

 

「って、話し合ってる場合じゃないよな。講義が始まる前に教室に行かないと」

 

「そうですね」

 

“今日はどんな授業が行われるんだろうか”、そんな予想をしながら、二人は共に教室へと踏み込んだ。

 

 

 

 

「先日行った実技テストの結果を返却する──が、その前に」

 

顰めっ面の我らが教授、ロードエルメロイⅡ世が教壇の上で告げた。

 

「フラット・エスカルドス及びエレイン・アルトリア・ドラクル」

 

「「はい!」」

 

教授が名前を呼んだ二人。スヴィン・グラシュエートの隣に座るフラットと、ルヴィアゼリッタ・エーデルフェルトの隣に座るエレインが、威勢の良い返事を上げて立ち上がる。

 

はて、一体何用であろうか。もしや好成績を出したことで褒められるのかも?

 

などと、二人ともが馬鹿なことを考えていると。

 

「お前たち二人は成績不良につき補講だ」

 

「「どうして!?」」

 

フラットが机を叩き抗議して、エレインはへなへなと腰を下ろして机の上にうつ伏せになる。

 

「今回の実技テストは『講義で学んだことをもとに(・・・・・・・・・・・・)、魔術的拘束から脱出すること』だったな。さて……まずフラット。貴様はどうやってこの試験をクリアした?」

 

「はい先生! 拘束術式を解析して、ハッキングしました!」

 

「自信満々に言うことではないわ馬鹿者ッ! まぁ良い、次だ。ミス・ドラクル。貴様はどうやってこの試験をクリアした?」

 

「はい! とりあえず大量の魔力をぶつけて拘束術式を洗い流しました! ……だめでしたか?」

 

「その通りだな! それが分かっているなら何故やった! これはテスト、講義で学んだ技術が身についているのかどうかを確かめるためのものだ! 『空』という属性を使えるからといって、何でもかんでもそれに頼れば良いと言うものでもあるまい! なんで貴様らはいつもいつも試験の前提をひっくり返すような結果しか出さんのだ!」

 

“試験内容を考えるこっちの身にもなれ!”と、教授が頭を掻きむしりながら吠えた。

 

「待ってください教授! 俺はきちんと術式の内容を理解して、その上で解いたんです! それは言うなればキャンパスに絵を描くという試験で、指定された鉛筆を使わず絵筆を使ったくらいの誤差……エレインちゃんと同じような扱いをされるのは遺憾です!」

 

しかし、“異議あり!”と言わんばかりにフラットが抗議する。ここが法廷ならば、その声は傍聴席までよく響いたことだろう。

 

「え、同じ『空』使いなのにどうしてそんなこと言うんですか、この裏切り者ぉ!」

 

同じ問題児、同じ『空』使い、同じ補講組だというのにこの言われよう。突然の裏切りにエレインは涙目を禁じ得ない。

 

「だってエレインちゃんはキャンパスにペンキぶち撒けて“はい完成!”って言ってるようなものじゃないですか!」

 

そう、同じ『空』使いではある。しかしフラットのそれは他者の術式を解析し、介入する紛れもない魔術(・・)なのだ。一方エレインはただ膨大な魔力をぶつけたり、展開したり、ただそれだけ。

 

「まったく彼の言うとおりですわ。エレイン、あなたはもう少し魔術を使う努力をなさい」

 

「ルヴィアさんまでぇ……」

 

宝石魔術の先達として、エレインが何度か教えを請うているルヴィアがうんうんと隣の席で頷いている。さもあらん。彼女は初めてエレインの魔石を見たときにこう酷評したのだ。

 

『なんですか、このゴミ。こんなものは宝石魔術ではありませんわ。例えるのなら(わたくし)が使う宝石魔術は宝石(しょくざい)を加工し、彩り、プレートを飾る一流のコース料理。そしてあなたのは蒸した芋を握りつぶしただけのマッシュポテトですわ』

 

『そんなに!?』

 

まぁ知っての通り、エレインに魔術の才能はなかったと言うことだろう。

 

「……一考の余地があると認めよう。補講はミス・ドラクルのみとし、フラットは別途レポート提出を補講の代わりとする」

 

「先生までも……わ、私に味方はいないんですか!?」

 

誰か、誰でも良い。私を一言フォローしてくれ。そんな望みをかけて教室を見渡す。だが皆、“まぁエレインだし”と納得している様子だった。

 

そしてエレインはそのうちの一人、エルメロイⅡ世の内弟子だという少女グレイと目が合った。

 

この世界の彼女はアーサー王の因子など受け継いでいない。が、どこかでサー・アグラヴェインから始まるウェールズ貴族……つまり魔女モルガンの血が混じったのか、不思議とエレインとよく似た顔立ちをしていた。

 

六年前の亜種聖杯戦争にて、黒き女性のアーサー王とギリシアの大英雄を率いた竜の末裔の魔術師たるエレインの母に散々追い詰められたトラウマを持つウェイバー・ヴェルヴェットことエルメロイⅡ世としては、似たような顔が教室に二人……厳密にはモードレッドを合わせて三人も在籍しているなど悪夢かもしれないが。

 

ともかく聞けばあの赤のセイバーと同じく遠い親戚らしいので、エレインはグレイと仲良くさせてもらっていた。そんな遠い親戚に一縷の望みを込めた視線を送る。

 

が、“ごめんなさいエレインさん。拙もあなたのことをダメダメ魔術師だと思ってしまっています”と言わんばかりに、無念そうに目を瞑って首を振った。

 

そしてその隣ではニヤニヤと愉悦な笑みを浮かべるドSなエルメロイ家のお姫様の姿。“あぁ、可哀想なエレインくん。君が我がおじ上のご遺体をさっさと返してくれれば、私としても君の恥を庇ってやらないこともないんだがなぁ?”と言わんばかりに。

 

「か、カウレスくん……せめてカウレスくんは……」

 

自分の婚約者ならば、一言何かフォローしてくれるのではないか。彼女は最後の望みをかけて彼に目を向ける。だが。

 

“うん、俺も手伝うから。頑張ろうな──補講”と、唇の動きだけで彼の言葉が伝えられると、エレインはがっくりと肩を落として大人しく席に腰を下ろすのだった。

 

まぁ、クラスメイトに嘲笑されていないだけこの時計塔ではマシな環境なのだ。助力を請えば、対価は要求されども皆なんだかんだ言って手を貸してくれるに違いない。故に立派な魔術師目指してめげずに頑張れエレイン、そうすれば。

 

(少なくとも私よりは才能がある……のだが、ミス・ドラクルはすぐに調子に乗るからな。しばらくは低い自己評価のままで、努力してもらうとしよう)

 

我らが教授が、きっと君を導いてくれる。

 

……はず、多分、きっと、メイビー。

 

 

 

 

それからも平凡な日常は続き、しばらくの時間が経った頃。

 

 

 

 

「はぁ……」

 

若きユグドミレニア家の当主、カウレス・ドラクル・ユグドミレニアは執務室にてため息をついた。原因は明白、目の前にある姉からの手紙である。

 

フィオレ・フォルヴェッジ・ユグドミレニアの話をしよう。彼女は聖杯大戦の後、モードレッドの持つ鞘の力によって両足で立って歩けるようになった。

 

それから時計塔に復帰することなく、健康になった彼女はアーチャーケイローンを師と仰ぎ──総合格闘技(パンクラチオン)にドハマリした。

 

『日本の旧聖杯戦争御三家である遠坂家は、武術と魔術の融合による根源到達を目指しているそうです。素晴らしい思想ですね! 私、ちょっと日本に留学に行ってきますから!』

 

と言って、国外に出て行って早数年。現地では八極拳使いである遠坂家当主と、プロレス使いであるエーデルフェルト家の養女と仲良くやっているらしい。

 

ここまでは良いのだが。

 

「いつからか惚気自慢になってんだよなぁ」

 

近年、届く手紙の内容がどれも一人の男性のことばかりになっていた。竹を割ったような素朴な性格で、料理上手で、気遣いもできる日本人男性らしい。ニックネームは『シェロ』だとか何とか。

 

「まさかあの姉さんが格闘技と男にドハマりするとはなぁ……」

 

“人生分からないもんだ”と、カウレスはしみじみと呟きながら文面を眺めた。『リンとサクラには負けません!』と書いてあるが……まさか、格闘技の話じゃなくてその『シェロ』なる男の争奪戦のことを言ってるんじゃないだろうな。

 

カウレスは訝しんだ。しかし真実は闇の中である。

 

などと考えているとそのとき。

 

“こんこんこん”と、ドアをノックする音が聞こえた。侍従として雇っているホムンクルスだろうか。

 

「入って良いぞ」

 

カウレスが返事をすると、“失礼します”と聞き慣れた声が響いて彼の妻、エレイン・A・ドラクル・ユグドミレニアが姿を現す。

 

「エレイン、どうした」

 

「寝る前に、少しカウレスさんのお顔をみたくて。いけませんでしたか?」

 

「まさか」

 

可愛い奥さんのおねだりならいつでもウェルカムだと、カウレスは手にカップを持ったエレインを部屋に招き入れる。中身はココアのようだった。眠気覚ましにはコーヒーか紅茶の方が良いが、カウレスの健康を気遣ってのことだろう。吸血鬼とはいえ、必ずしも夜型生活をする必要はないのだ。

 

「……その手紙、お義姉(ねえ)さんからですか?」

 

「あぁ、そうだぞ。読むか?」

 

「是非」

 

そう言って手紙を受け取ると、さっと目を通すエレイン。一通り読み終えたのか、彼女はくすりと微笑みを漏らして言った。

 

「楽しそうで何よりです」

 

「少々楽しみすぎてる気もするけどな……」

 

窓枠に乗り出し、カップを口に付ける。そこから見える夜空を眺めながら、彼は遠く同じ空の下にいる姉のことを思った。

 

「ね、それでなんですけれどカウレスさん」

 

「ん、どうした?」

 

「以前した質問の答え、出してくれましたか?」

 

エレインが同じく窓枠に乗り出し、体を預けるように背にもたれかかってくる。

 

「あぁ、“大回廊を公表するか否か”……だったか? んなもん決まってる。秘匿だ秘匿」

 

「良いんですか? ドラコニオスの大回廊があれば、ユグドミレニアを解体しなくて済むかもしれないんですよ。それどころか、時計塔にさえ比肩しうる組織を立てられるかも」

 

「俺がそんな器に見えるか? 身の丈を超えた願いは……君以外に持たないって決めてるんだよ」

 

カウレスはそう言って、自分の愛しい人を見る。本当に、自分には勿体ないくらいの人だ。容姿、血筋、才能、器量……どれ一つとっても、カウレスには釣り合いが取れそうにない。

 

しかしその分、彼女を幸せにするという覚悟はあるが。

 

「あはは、もう。いつの間にか口が達者になっちゃって」

 

窓から差し込んだ月光のヴェールを被り、花嫁(ヴァンパイア)がふわりと温かな笑みを浮かべた。

 

「それに……“過ぎたる力は身を滅ぼす”だったか。竜の一族が繋いできた家訓なんだろ。なら、俺もそれに倣うとするよ」

 

空に浮かぶ満月を見上げながら、カウレスは思う。

 

「ユグドミレニアは解体する。過ぎた力も、栄光も、きっと根源だってもうどうでも良いんだ。俺が望むのはただ一つ、俺と君と……まぁ、これからできるかもしれない家族が、ずっと先の未来まで幸せなら。それだけで満足だよ」

 

それは、ずっと過去にアサシンたちが導き出したものと、きっと同じ答えなのだろう。

 

「ならカウレスさんに選んでもらえた私は、きっと幸せ者ですねっ」

 

その答えを聞いて、彼女は嬉しそうに夫の背中にしがみついた。

 

「ねぇ、カウレスさん。私ね、もう20になったんですよ? だから、ほら……ね?」

 

そしてそっと口からこぼれた囁きが、旦那様(ドラクレア)を唆す。

 

ここから先は──夫婦の時間だからね。覗くのはやめておくとしよう。

 

 

 

 

「アーサー、今度は何を見ていたのですか?」

 

「……エレインの様子だよ」

 

大聖杯の内側。花が咲き誇る、理想郷にも良く似た空間で、二人が語り合っている。

 

「そうですか。今の彼女はどうでしたか?」

 

「とても幸せそうだった」

 

「ならば安心ですね」

 

霊基(からだ)は大聖杯に溶けてしまったけれど、こうして精神だけでも触れ合えるのだ。二人にとって、この場所はこれ以上ない報酬であった。

 

不能となった大聖杯、その存在が消え去るまで、二人は世界を見守り続けるのだろう。

 

「モルガン、君は座に帰らなくて良いのかい?」

 

「どうして? あなたがいる場所が、私の居場所なのに」

 

「それは……嬉しいけれど。でも、君はこの世界の記憶を座に持ち帰るのが目的だったんじゃ」

 

「さて、どうでしょうか。座には時間の前後はありません、少しばかり、本体を待たせたって構わないでしょう」

 

そう言って彼女が笑みを零す。彼は脳裏で“信じて送り出した分霊が帰ってこないんだが。早く記録を見せなさい抑止力め!”と、ぷんぷん怒る並行世界の姉の姿を幻視した。

 

「それに……この記憶を。『旅を中断し、居場所を持ってしまった記憶』を知ってしまえば、きっと私は我慢できなくなるかもしれません」

 

「なぜ? この世界の記憶を見られれば満足するんじゃ?」

 

「まさか! 座にいるのは、あなたの旅を見送って、神秘のある側に残された私ですから。旅の途中で幸福を知った私の記憶があろうと、神秘のない向こう側で幸福を知った私の記憶があろうと、関係ありません。ですので、頑張ってください。アーサー」

 

それが意味することはつまり、アーサーはまだまだ彼女に狙われる可能性が高いということであった。

 

「また別の世界線に分岐するのか、それとも聖杯戦争に呼び出されでもするのかな。参ったな。姉上が僕をここまで慕ってくれているなんて、思いもしなかった」

 

いつか東京で寝込みを襲われた時に“もしや”とは思ったが、その疑念はこの世界に来たことで核心へと変わった。

 

「本当に、困ったなぁ」

 

そう言って、アーサーは悲しげに眉を顰める。

 

「僕はいつまで自我を保っていられるか、分かったものじゃ──んっ」

 

そして彼が悲しい言葉を紡ごうとしたとき、魔女の口付けがそれを遮る。

 

「……はは、ずるいなぁ。こちらの君は」

 

「当然です。この私は勇気を出した私ですので。……まぁ、外側だけですけれど」

 

胸を張ろうとして、しかし言葉尻が萎んでしまった。外側本来の魂は座に記録されていない。内側は、他所の世界から埋め合わせのごとくやってきた並行世界の自分なのだ。

 

「けれど、この内に宿る思いは本物です」

 

「……そうだね。その通りだ」

 

そして大聖杯を汚染し、大聖杯の意思そのものとなった二人は願った。どうか他の自分たちも、幸せを掴めますようにと。

 

どうか、この世界の家族が、幸せを掴めますようにと。

 

いつまでも、いつまでも。

 

科学が未来に目指すその先に、神秘が目指すのと同じ場所に、人類が到達するその時まで。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【おまけの2017年】

 

「また詰まらせたんですか? あのですね、システムフェイトはガチャじゃないって何度も言ってますよね? 聞いてますが、芥さん?」

 

2017年、どういうわけかアニムスフィアの計らいで奇跡的に夫婦ともどもカルデアに就職したエレイン。彼女は今、目の前の同類……自称先輩に向かって説教していた。

 

「だって、だって──項羽様が出ないんだもん!」

 

「“だもん!”じゃないですよ。あなた何歳だと思ってるんですか」

 

「100を超えてから数えてないわ。きっと永遠の十八歳よ」

 

芥ヒナコ、人理保障機関カルデアが誇る凄腕マスター集団、Aチームの一人である。

 

その正体は中国の歴史に語られる英雄項羽の妻虞美人であり、人間ではなく星の精霊種としての吸血鬼。長き時を生きる人外であった。

 

「お願いよエレイン。同じ吸血鬼としてどうか後一回……いや、一回と言わず十一連!」

 

「一回でもダメですって。というかサラッと十におまけの一追加してるし。その『項羽様』に懸ける情熱、なんなの……」

 

エレインは“まさか、本性がこんなアッパラパーな恋愛脳ヴァンパイアだったとは思わなかった”と言わんばかりに、頭を抱えた。

 

最初に出会った時のクールさはどこへ行ったのやら。

 

『一緒にしないでくれる、偽物。お前は人理の幻想種。私は星の精霊。人間どもからは一緒くたに吸血鬼と呼ばれているけれど、全くの別物よ。魚類(サメ)哺乳類(シャチ)くらい違うわ。それと私の正体を他にバラしたら、分かってるわね……?』

 

と言っていたのに。一年経った頃にはもう。

 

『後輩! ちょっと項羽様呼ぶから触媒用意して! あんたの家金持ちなんでしょ!?』

 

だったからな。三国志特異点とやらで項羽の姿を見てから、ずっとこれらしい。“まさか項羽様が英霊になっていたなんて。……いや、むしろ当然ね。にしても人理(アラヤ)、最高じゃない!”と。

 

それで良いのか、星の精霊よ。ガイアが泣くぞ。

 

ちなみに余談であるが、エレインは長年カウレスと連れ添っているうちに完全に吸血鬼化してしまっていた。まぁ、吸血衝動とかないのでモノホンの吸血鬼かどうかは分からないが。少なくとも目の前の星の精霊は同類扱いしているから、多分吸血鬼なのだろう。

 

「オルガマリーからも直筆で許可証貰ってるのよ! ほら!」

 

すると錦の御旗、将軍の印籠かのようにヒナコが一枚の紙を取り出す。

 

「ええー? ほんとにござるかぁ?」

 

「ムッカつくわねその言い方……」

 

エレインは手渡された書類に、確かにオルガマリー所長のサインがあることを確認すると、しぶしぶインカムで夫を呼んだ。

 

『えー、カウレスさんカウレスさん。システムフェイトがまた詰まりました。応援お願いします』

 

「またか……悪い、俺行かなきゃだわ。ごめんな藤丸さん。来たばっかりなのに」

 

一方、カウレスはアルバイトなどという国家機密組織に所属するにはちょっと意味が分からない役職で派遣されてきた日本人を相手にしていた。そこにいるのが少年か少女かは……ご想像にお任せするとしよう。

 

「おい、エセドクター。お前が連れてきたんだからお前が対応しろ、後頼んだぞ」

 

そして直ぐ側にいた胡散臭い職員に後を託すと、カウレスは急ぎ召喚室へと向かった。

 

「やれやれ、あなたは相変わらず忙しないですね。では藤丸立香……ようこそ、人理保障機関カルデアへ。我々はあなたを歓迎します」

 

ドクター・コトミネの魔の手が今、藤丸立香に振りかかる!

 

ちなみに彼、あるいは彼女をスカウトしたのは何を隠そうドクター・コトミネであった。故郷の日本で旅行しているときに、たまたま藤丸立香が走り高跳び(・・・・・)をしている姿を見て、そこに人類の未来を見たらしい。

 

『貴様はアホなのか? どこに走り高跳びを見て魔術の魔も知らぬ素人をスカウトする者がおる。返して来なさい。ペットは使い魔の鳩以外NGである』

 

とは、彼の妻の談である。

 

そんな右も左も分からない中、なんだか微妙に危機を脱しているカルデアにやってきた藤丸立香くんちゃんの明日はどっちだ。

 

「ドクター・コトミネ。おはようございます。そちらの見慣れぬお方は……?」

 

「ええ、おはようございます。マシュ、こちらは藤丸立香さん、新しいカルデアのメンバーで……?」

 

「「た、立ったまま、寝ている……?」」

 

その日、少年/少女は運命に出会った──?

 

 

 

 

「直りそうですか?」

 

「うーん、まぁなんとか。そもそも詰まるってのが意味分からないんだが、まぁ原因としては本来ならば呼べない存在を呼ぼうとして、システムがエラーを起こしてるって感じだな」

 

「さっさとしなさい。でないと私の戦力補充(建前)が遅れるでしょ?」

 

システムフェイトの台座の術式を点検している二人の後ろで、ヒナコが傲岸不遜に腕を組みながらそう言った。

 

「それはあなたが陳宮さんを使ってその戦力とやらを自爆させまくるからですよね。というかそれを悪用して召喚式の使用回数増やしてますよね。もう良い加減自分で自爆したら良いんじゃないんですか。蘇生くらいできるでしょ」

 

“必要な犠牲です”、“必要な犠牲よ”……などと二人して息ぴったりに言いやがって。この件を国連に報告するオルガマリー所長の心労を考えろ。毎回サーヴァントの死因を考えるのも大変なんだからな。

 

ちなみに事故死シリーズは使い果たしたので、最近は昼ドラ並みの痴情のもつれで通しているらしい。しかもそれで通るんだから国連も国連である。

 

「どこの世界にマスターを自爆させるサーヴァントがいるのよ」

 

「そもそもサーヴァントを自爆させるサーヴァントというのがおかしいんだろ、というツッコミはさておき……直ったぞ」

 

魔道具片手に調整していたカウレスがようやく腰を上げた。

 

「良くやった、褒めてやるわ後輩。じゃあ早速……項羽様お願いします項羽様お願いします項羽様お願いします──!」

 

「「うわぁ……」」

 

“これが伝説に語られる吸血鬼の姿なのか”とドン引きする夫婦をよそに、みっともなく五体投地スタイルで祈りを捧げるヒナコさん。

 

その願いに応えてか、召喚式の上で眩い光が瞬いて。

 

「へ?」

 

ずるりと、カウレスの首にかかったロザリオが吸い込まれた。そしてまるで釣り針にかかった魚のように、カウレスもまた次元の裂け目に吸い込まれる。

 

「カウレスさん!」

 

そしてその後を追って、エレインもまた召喚式に引きずり込まれ。

 

あとに残されたのは、顔を真っ青にした芥ヒナコただ一人。流石の彼女も二人の心配を──。

 

「人身事故→システムフェイト閉鎖→項羽様を召喚できない……!? も、戻ってきなさい後輩たち──ッ!」

 

しておらず、平常運転だった。

 

カルデア内はともかく、世界は今日も平和です。まる。

 

 






・英霊化カウレス

「サーヴァント、バーサーカー。ドラキュラ伯爵だ。……いや、みなまで言うな。ドラキュラ伯爵は創作物で、モデルとなったヴラドⅢ世はサーヴァントとして既にいるってことだろ。まぁ、俺はパチモンみたいなものだ。ヴラドⅢ世の劣化版として扱ってくれ。よろしくな、マスター」

「依代……って言うか、まぁ俺はほとんど俺のままなんだけど。本名はカウレス・ドラクル・ユグドミレニアだ。……てか、俺が呼び出されたのって、お前が持ってるロザリオが触媒になったせいなのか。……うーん、たぶん、並行世界にある同じものってことだな」

「……お、お前ゴルドルフか!? なんでカルデアに!? ……しかも所長なの!? へぇ、俺が昔ミニ四駆教えた少年が今やカルデアの所長なのかぁ。時の流れは残酷だなぁ……え、今2017年で時間止まってんの? 何があったんだこっちは!?」

「ライダー、アキレウスか。いやぁ、俺あの人ちょっと苦手で……うわ、目が合ったぞ。な、なんだよ別に喧嘩なんて売ってないけど。へ? “シュミレーターに行く”? “今度はタイマン”? ギリシャの大英雄とタイマンとか普通に死にますけど!? エ、エレイン、助けてくれー!」

「バーサーカー、フランケンシュタインか。あいつが元気そうで、俺も嬉しいよ。ところでその蒸気ロボットみたいなサーヴァントは……お、お父さん枠? それとは別にパパもいる? ふ、複雑な家庭なんだな……」

「……なんかエルメロイ教室組、多くね? 流石に教授までは……うっわぁ。いたわ。相変わらず顰めっ面してんだろう──って思ったら若ッ! なんで若返ってんの!? 再臨? なんだそれ。……え、このチェス駒みたいなのを食うのか? サーヴァントって悪食なんだな……」



・英霊化エレイン

「サーヴァント、アーチャー。ワラキア公妃エレイン。私を呼び出すとは、その審美眼を褒めてあげましょう。ドラコニオスの末裔として、貴様に忠義を捧げると誓います……って、堅苦しい挨拶はここまでにして。私はエレイン。ワラキア公妃エレインです! よろしくお願いしますね、マスターさん」

「汎人類史では名前も残ってないような存在ですけど、うちの世界では結構凄腕の魔術師だったんですよ! 私! ……まぁ、今の姿の私はその同名の子孫なので、あんまり魔術とか得意じゃないですけど」

「“何故アーチャーなのか”、ですか? それは私の基本攻撃が投擲なので……いや、ピッチャーじゃなくて。いや、キャッチャーとかもいらないです。そういうノリは結構ですから。……いい加減にしないとデッドボール食らわしますよ?」

「ヴラドⅢ世……そうか、私の愛した彼ではないのだな──まぁ、そういう感じなので、私の夫はカウレスくんだけです!」

「血斧王エイリーク……あの人、座から届くほどの強力な魔術によって守護されてますね。どことなく感じるシンパシー……私もカウレスくんに魔術、かけちゃおっかな。でも重いかなぁ……マスターさんはどう思います?」

「アマゾネスの女王、ペンテシレイア。たしかアキレウスと因縁がある人、ですよね。……うわ、なんかこっち来た。え? “感銘を受けた”? “ぜひアマゾネスの一員になって欲しい”? ……今どきのアマゾネスって名刺使うんだ。げ、現代的だなぁ」

「──コンスタンティノス陛下!? まさか、御身もここにいらっしゃるとは。並行世界の存在とはいえ、私は三重の壁の内側で育った帝国の臣。変わらぬ忠誠を……と、言いたいところですが。生憎今の私はワラキア公妃。今はそちらの立場を優先させていただきます」

「キャスターの、トネリコさん。ですか? 見た目が似てて見分けにくい? はぁ、なるほど。じゃあメガネ外してっと……え? これでも同じ? となるともうあとは本物のワラキア公妃エレインさんに代わってもらうしか……え!? それも同じ!? わ、私はどうしたら──」
──差分か! ならばメカクレが良いぞ!
「うわぁ! か、換気扇から声が聞こえます! どうなってるんですかこっちのカルデアは! ……で、でも、目隠れかぁ。目隠れ目隠れ──こ、こんな感じでどうですか!」
──そして想い人に瞳をチラ見せするんだ!
「想い人……か、カウレスくん! 私のイメチェン、どうですか! “素敵”? “似合ってる”? えへ、えへへ……」
──ふっ、また一人の幼気(いたいけ)な少女に目隠れを授けてしまったな。では、さらばっ!
「ま、待ってください! 謎の換気扇の……いえ、師匠! どうかあなたのお名前を──!」
──私は『メカクレの神』の使徒、アルターエゴのロバーツ先生だ!
「ロバーツ先生! その名前、忘れません!」

「他にも私に似てる人がちらほら……モルガンさんに、ヴィヴィアンさん? うーん、私が知ってるアサシンさんじゃないのかぁ……。え? いや私はあの人たちとは何の関係もないですよ。単に顔と声が似てるだけで……あ、一応子孫? にはなるのかな。……なんか、すっごいこっち見られてるんですけど! “モルガン顔だ、連れて行け”……? わ、私どうなっちゃうんですか──!?」





藤丸立香(♀)「よろしくね二人とも! ……それはさておき、バソさんが入らないように換気扇閉めとかなきゃ(使命)」

カウレス「……なんで俺たちがサーヴァントになってんだ?」

エレイン「これ、向こうに帰れますかね。あんまり帰るのが遅いとオルガマリー所長が忙しさで死んじゃうかも……」

おまけとして続く……?

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