つまり作戦はこうだ。
――なんやかんや偉い淫魔になんやかんや全面協力させて、なんやかんや元の世界に戻る手伝いをさせる――
「不完璧な作戦っスねぇ! しかも不可能だという点にも目をつぶってもっスよォ!!」
話し合いは白熱し、もはや言い合いというレベルまで達しようとしていた。
「というか底辺淫魔の私に信頼できる上級淫魔の伝手なんてもんがあるわけがないんスよぉ……!!」
頭を抱える彼女は地面に崩れ落ちる。
「しかも、人間ちゃんなんて、ちょっと微笑めばコロリと落ちるチョロイン! 世の魔族共が手を出さない訳がねぇっス!!」
流石にそんなにチョロくはない、そう言い切ることなど、少し前に彼女の前で腰砕けになった貴方には出来なかった。
――余りにもカジュアルに自由意志を剥奪してくる淫魔側にも問題があるのではないだろうか――
貴方は苦し紛れの反論をする。
「こんなカヨワ可愛いい生物をお出しされてお預けできる淫魔なんて淫魔じゃねぇんスよ!!」
互いに息を切らせながら地面に座り込む貴方と彼女。
「……と、とにかくっス。まず何をするにも最低限、人間ちゃんが精神支配を弾ける程度はしてもらわないと困るっスよ」
――困ると言われても、自分も困る――
貴方はそうは言われても、具体的な対抗手段など思いつきもしない。
「うっ……、そ、そんなしょんぼりしないでくださいっス人間ちゃん……、ちょ、ちょっと言い過ぎたっス」
――本気になった淫魔の誘惑を防ぐ方法はどうやら無いようである――
やはり、元の世界に帰るなど夢物語なのか、貴方が諦めかけてしまった時である。
「に、人間ちゃん……! で、できらぁ!!」
――彼女は今何と言ったのだろうか――
「本気の淫魔の誘惑だろうがなんでも防げるようにしてやるって言ったんスよ!!」
――そんなことが出来るのだろうか――
「え? 本気になった淫魔の誘惑を!?」
――どうやらダメそうであった――
「ま、待つっス」
彼女は苦渋の表情を浮かべながら、絞り出すように呟く。
「な、なくはないかも……、ひょっとすると……、もしかしてっスけど、人間ちゃんを魔法から守るための道具が作れるかもしれないっス」
貴方はその言葉を聞き喜びの感情を出そうとするが、そこで冷静になる。
今までの話題の中でそのような単純明快な解決策があるのならば、一番に出ないのはおかしいだろうと貴方は考える。
「そうっスね、人間ちゃんの考えてる通り、かなり危険な方法っス……」
こちらの表情を探るような彼女の顔、しかし貴方は腹を括り、強く見つめ返す。
「特殊な魔道具を作るには特殊な
――つまりどういうことだろうか――
「……私の職場に二人で忍び込んで
それを聞いた貴方の脳内には様々な問題が頭をよぎる。
貴方自身の危険は当然として、それを勝手に使うというのは彼女にどれほどのリスクを押し付けることになるか
「人間ちゃん……、どうするっスか?」
考え込む貴方の目の前に浮かぶ彼女の顔を見て、貴方は固まる。
こちらのみを憂いている彼女の表情、彼女は彼女の心配などまるでしていなかった。
――自分が彼女に何か返せる時が来るのだろうか……――
貴方は深い感謝を抱きながら強く頷く。
――頼めるだろうか――
「決まりっス!」
そうと決まればと言った風に、彼女は立ち上がる。
「人間ちゃんの変装用の服と……、道具作りに必要そうな触媒や道具に……、職場のシフト……、いろいろやらないとっスね!」
指折り、行動の手順を考え始める彼女が貴方を見る。
「人間ちゃん、とりあえず私は仕事に出て、仕事帰りに必要なものを揃えてくるっス、人間ちゃんは英気を養って待っててくれっスよ!」
つまりあなたに出来ることはなにもない。
そんな風に捻くれることすら彼女に対して失礼だと考える貴方。
――行ってらっしゃいと告げる――
「行ってくるっス! 今日から忙しくなるっスよ」
貴方は彼女に感謝を込めて言葉を伝え、この部屋から打って出るその時を待った。