「おぉ……、これは……、ヤバいっスねぇ……」
家に帰った後、貴方は彼女を労うために何かできないかと尋ねた
その末に彼女は非常に奇妙な提案をすることとなる。
――自分の膝枕がそこまで気持ちよいものとは思えない――
「いや、これは故郷? え? このままこの太腿の間に頭を埋めて生きていいっスか?」
――そんな怪生物が生まれていいのだろうか――
「あー……、やっば、癒し超えて魂ぬけるっス……」
――そんな怪生物のまま死んでいいのだろうか――
まるで涅槃か極楽か、そんな表情を浮かべる彼女に貴方は今後のことを尋ねる。
「そっすねぇ~、基本は魔力貯めていくんすけど、淫魔によって体に貯め込める魔力の量って決まってて~」
――魔力がお金代わりの世界でそれは人によって貯金限度額が決まっているようなものではないだろうか――
「まぁ、普通に生きる分なら貯金満額とか貯める意味なくね? みたいな感じっスぅ……、だから魔力を保持するための魔道具とかもあるんスけどぉ~、これメチャ高いんすよぉ……」
貴方はそれを聞いて、淫魔の社会構造を思い返す。
――それでは下級淫魔が上級淫魔になるのは実質不可能では?――
「そうっすねぇ~、だから魔力炉は権力の象徴なんす~、あれも一応魔力タンクとしての側面あるっスからぁ、私の職場一帯で上級淫魔一人分の食い扶持って感じっスかねぇ……、その一枠を巡って下々は日夜汗水たらすっスぅ……、むにゃ……」
貴方は彼女の話の続きが気になりながらも、休んでいる彼女を起こすことも出来ずにただ膝を貸し続ける。
「んは……! んぁ~……、それでぇ、ぱんぱかぱーん、さっき密造しました魔力タンクぅ~」
眠気に負けそうになりながら間延びした声で懐から取り出した物体。
それはまるで、小さな心臓を宝石の檻に閉じ込めたような物体だった。
「まぁ、職場で似たような機能の奴は腐るほど見たんで楽な仕事っすよ~」
軽々と言いのける彼女に対して、高価なものと評したそれが容易に作られていることに貴方は疑惑の目を向ける。
「工作魔法陣が凄いんすよ、あれ作る前に淫魔どうやってモノ作ってたんだってくらい高性能なんスぅ~」
――とても手際が良い、自分にもできることがあるなら何でもする――
貴方は悩んだ末、彼女のことをとりあえず褒めることにした。
「え? ここからさらに上振れるんスか? じ、じゃ、逆膝枕って人間ちゃん的にどう思っスか?」
――許可する――
「うっひょ~」
彼女は勢いよく回転すると貴方の膝の間に顔をうつ伏せにして埋め込む。
「……いままで、私は眠っていたのかもしれないッス」
――そういうことであろうか――
「……つまり、膝枕が癒しなら逆膝枕はその逆、脳が覚醒し、今までの暗いまやかしの世界から靄が取り払われ、全てが晴れていくってことっスよ」
――視界は塞がれているように見えるのだが――
彼女の眠気は飛んだように見えた貴方はどうやって魔力を貯めるかを聞いた。
「私の保持する魔力程度じゃ、あれを完成できない、だからこの魔力タンクに魔力を貯めるんス」
――なるほど、しかしどれほどの魔力を集めればいいのだろうか――
「うーん、私の月の手取りで考えると三十年くらい?」
――1000万の貯金を目指すサラリーマンの資産形成の話のようである……――
非常に現実感がのしかかる指標であった。
「人間ちゃんの膝枕1万回分?」
こっちは非常に非現実的な指標であった。
「こういっちゃなんですけど、人間ちゃんとのエッチ換算で3回分? いや感情ただ漏れだから実際はもっとすごいかも……」
――その指標は……、その指標は一体なんだというのだ――
「冗談っスよ、でも、人間ちゃんにちょっとアテにしてるのは本当で……、人間ちゃんが協力してくれるなら結構貯めるのに時間はかからないんじゃないかな~って……」
――かなりの時間を要するように思える――
「いやいや、人間舐めすぎでしょ人間ちゃん、だてに神話生物扱いされてないっスよ」
彼女は確信に満ちた声色でそう言い切る。
――つまり自分は変わらず貴女と共に過ごせばいいと?――
「早い話がそうっスね、人間ちゃんは今まで通りでいいっスよ! 私の方でも魔力稼ぎはするっスから」
――今考えたのだが、その魔力タンクを作る時に、一緒にあの魔法陣から魔力を取ることはできなかったのだろうか――
「これ、ただの魔力なら何でも入るタンクじゃないんス。私の魔力だけを濾して、私の魔力のまま保存する器っス。そこが大事なんスよ」
彼女がそう言うのならば貴方には何も言えない。
つまり貴方はこれからも今まで通り過ごすということらしいと考える。
――ぷへ~ 最高っス~――
そしてまず何をすべきかを考えた貴方は――
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