貴方が合意できる最低ラインがこれであった。
結果として貴方と彼女は下着を付けたまま湯船へ足先を入れる。
湯船の温度は少し熱め、しかしそれがひどく心地よい。
肩まで浸かれば貴方は思わず伸びた声をあげながら沈み込んだ。
「はぁ……、人間ちゃんの世界のマナーむず過ぎっス……」
まさに夢心地、しかし貴方はすぐ隣からする水音によって現実に引き戻される。
実を言えば、服を着たまま湯船につかる方がマナーがなっていないことを隠しながら、貴方は湯舟に浸かった。
「……人間ちゃん、実はなんか隠してるっスか?」
――いや、混浴なら湯浴み着はおかしくない――
貴方は固く目を瞑り、湯の中に身を深く沈め、対話を打ち切った。
「あ、怪しい! 人間ちゃんなんか誤魔化してるっス!」
――静粛に、風呂は静かに入るものである――
「でた! その謎ルール!」
貴方は彼女の言葉を無視し、頭にタオルを載せるジャパニーズスタイルを繰り出した。
――謎ではない、ただ温泉を楽しむためのルールである――
貴方は湯船の中で大きく伸びる。
「そもそも、人間ちゃんの世界って、エッチもせずに一緒にお風呂に入って何をするんスか?」
――温泉とは別に何もしなくてよい――
「うーん……?」
貴方は彼女に温泉の楽しみ方を伝授する。
しばらくの間、貴女と彼女はただ無言で湯舟に浸かった。
「なんか静かっスね……」
――静かなのは嫌いだろうか――
「いや……、なんか落ち着くっス」
同じ湯気、同じ熱、同じ静けさ。
「なるほど、人間ちゃん達は、こういう風にお風呂でムードを高めてからエッチをするんスね?」
――それは違……、いやそういうこともなくはないだろうが、今の場合は違う――
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