「あー、なんか湯につかって動くのだるいっス……、今日はこのまま横になりたい気分っスね」
デートと言うには余りにも牧歌的な休日を過ごした貴方達、しかし魔力を集めるため慌ただしく過ごしていた貴方にとっては良い気分転換になっていた。
――肝心の魔力は残りどれくらいなのだろうか――
そう聞くと、彼女は無言のままニンマリと懐から魔力タンクを取り出す。
「もうミチミチっスよ、これ以上は溢れちゃうぐらい満タンっス!」
大したことはしていない様に思えていた貴方はその結果を見て少し驚いてしまう。
「うーん……、私も予想外っス、けど何となく納得できる気もするっスけどね」
彼女はタンクの中で渦巻く奔流を眺め透かしながら独り言のように話しだす。
「興奮だけが感情じゃなくて……、こういう穏やかな? 気を抜いて……、誰かに心を預けあったりするのってすごく気持ちいなぁ……」
そんな風に頬を緩めていた彼女だったが、貴方がそれを見ていることに気づくと少し照れくさそうに鼻を搔く。
「つ、つまり! なんかこう……ドカン! って感じじゃなくて! こう……、じわじわ燃えてる感じで……!」
彼女の抽象的な説明を表すなら、興奮が爆発的な高出力なら、今日の一日は安定して長く燃える炉のようなものなのだろうかと貴方は考える。
――それは良かった――
「そうっす、おかげでモリモリ魔力が溜まっ――」
――つまり今日は楽しかったということだろう――
そう問いかければ彼女はしばらく考えた後に小さく笑う。
「まぁ、つまりそういうことっス」
気の抜けた雰囲気のままに、貴方達はだらだらと休み。
暫く経ち、調理も面倒だと有り合わせを適当につつき。
そして、もはや異論を挟むこともなく同じ床に就いた。
「いやぁ~、今日は楽しかったすねぇ、いやほんと、こんなに楽しくて魔力も溜めれるなんてサイコーっす」
布団の中でも騒がしい彼女に慣れた貴方は欠伸を噛み締めながら冗談を言ってみる。
――なら、もう一個分、魔力タンクでも貯めてみる手もあるだろう――
「いいっスね! 稼いだ魔力で豪遊! そして楽しんで魔力を補充! とんでもないハッピー永久機関が完成っス……!」
――不労所得極まれり、とてつもないブルジョア階級だ――
「ゲヘヘヘ、マンションの最上階、精子で作った風呂の中で金玉食べ放題っス!」
――分かりやすい俗物だ。正直言えば自分もド派手な生活に憧れがないわけではない――
「フへへへ! 勝ちまくりのモテまくりっスね!」
反知性的な会話を繰り広げながら、貴方達は笑い合う。
「はははっ、……ふぅ、……じゃあ決行は明日っすね?」
彼女の少ない言葉に貴方はただ小さな肯定の返事を返す。
「明日、魔道具を作るため、人間ちゃんと一緒に職場に潜入するっス、事前に作戦は練ったっスけど、イレギュラーが起きないとは言い切れない、人間ちゃんが危険になることは分かってるっスね?」
――承知の上である――
ここにきて、もはや貴方に迷いはない。
それを分かっている彼女も、ただ静かに貴方を見るのみ
「安心してくださいっス、私が人間ちゃんを帰すっス」
――自分も最善を尽くそう――
貴方と彼女の間に、それ以上の確認は必要なかった。
「なんか、緊張しないようにいつも通りにって思ってたら中々眠れないっスねぇ」
――実は自分も同じであるがそれでも眠るべきだろう――
「そうっすね」
ベッドの上でもぞもぞと動き、そっと貴方の方へ寝返りを打つ。
仰向けのままであった貴方は彼女がどこか躊躇うようにその手を伸ばすのが見えた。
(貴方に手を伸ばす彼女の画像)
彼女の指先は貴方には触れず、その輪郭をなぞる様に動かした後にその手を静かにしまう。
「おやすみなさい、人間ちゃん」
――お休みなさい――
その控えめな動きに貴方は僅かばかりのいじらしさを感じた。
もしや、いつか、その手を握ることすら自然になるような、そんな願望の混じった想像をするぐらいには貴方は絆されていた。
――そんないつかを勝ち取るためには明日に備えるべきだろう――
貴方は――
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