綾小路 in Cクラス   作:NIES

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二人ともハッピーバースデー。龍園は、機会があれば様子書いてやるからな…………


第23話:ハッピーバースデー

 

 

 

ペーパーシャッフルの存在が明かされてから二日、小テストまで六日となった今日。オレは再び龍園にメッセージを飛ばした。

 

 

『三十万を払う必要はない』

 

『どういうことだ?』

 

 

前の席に座っている龍園の背中が、微妙に揺れた。すぐそばにいるのに、端末を介して会話をすると言うのは少し変な感覚になるな。

 

 

『理由はまだ言えない』

 

『それを信じろと?』

 

『三十万を払いたいなら止めはしないが』

 

『証拠もないのに信じられるわけないだろ』

 

 

それもそうか。貯金は多い方がいいと思って忠告したが、まだ龍園に言える内容ではない。三十万より情報の方が高いからな。

 

 

『なら、払えばいい』

 

『もし間違ってた場合、お前を金輪際信用しない』

 

『そうか』

 

『お前に懸けてやるよ綾小路』

 

 

オレはその返信を見て、自然と身体から力を抜いた。これで、うちから無意味にプライベートポイントが減ることはなくなった。少なくとも、今回は。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから小テストまでは、ほぼ毎日金田による勉強会が開かれ、学力に自信のない者は通い詰めたという。足を引っ張ったら龍園にどやされるからな。妥当な判断だろう。

 

そして、特別試験発表から丁度一週間後。小テストが開催された。

 

 

 

 

 

結果から言えば、ペア決定は順調に終わったと言える。龍園からは理想とするペアを組むために各々指定された点数を獲るように促されたからな。果てにはゼロ点を獲るよう言われた奴までいた。

 

追記しておけば、オレのペアは石崎だ。龍園のように地頭が良いわけではないが、最近では徐々に学力が伸びて来てるらしい(金田→龍園→オレのルートで来た情報)

 

 

 

 

 

「─────ペアが確定したので、同時に対戦するクラスについても発表しようと思います。今回ですが、想定外で二クラスずつの真っ向勝負が決定されました。内訳ですが

 

 

 

 

 

──────Aクラス対Cクラス、そしてBクラス対Dクラスです」

 

 

 

HRも終盤。ペアが決定されたと同時に坂上がそう宣言した。その坂上の言葉を聞いて、龍園が目を見開く。いや背中しか見えてないが、絶対そうだ。オレを信じて良かったと心の中で感謝をしている頃だろう。

 

 

それに龍園に敵対心を燃やしているであろうAクラスを除くとしても、Cクラスまでもが直接攻撃対象としてAクラスを指名。

 

どうやら、約束は守ってくれたらしい(・・・・・・・・・・・・)。健気なことだ、まあ守らなければそれ相応のことをしていたが。

 

 

 

 

 

 

 

 

『おい綾小路。いい加減どうやったのか教えろ』

 

『なんだ、そんなことか?』

 

『大事だろうが。俺と敵対してるAクラスは兎も角、Cクラスまでもが俺でもDクラスでもなく、Aクラスを指名してんだ。裏があんだろ』

 

 

放課後、いつものように図書室で読書に励んでいると、龍園からメッセージが送られてきた。内容は想定通り、しかし、まだ早い気もする。

 

 

「………誰からです?」

 

「龍園だ」

 

「また裏で何かしたんですか? まぁ、大方の予想はついてますけど」

 

 

隣でオレと同じく読書に励んでいた椎名が、読んでいた恋愛小説をテーブルに置き、こちらに視線を寄越す。

 

その瞳は、相変わらずオレの心を見透かしているように綺麗だ。見透かせるほどオレの心は澄み切っていないが。

 

 

「少し、な。大きく動いたわけじゃないが、以前からの借りを消費させただけだ」

 

「内容を聞いても?」

 

「機嫌を損ねないと保証してくれるなら」

 

「その時点でもう機嫌を損ねそうです。危険なことはしないでくださいと言いましたよね」

 

 

龍園への返信を打ち込みながらそう返すと、想定よりも強い言葉が返ってきた。目を向ければ、明らかに椎名が普段よりも怒っているのが見て取れる。

 

 

「危ないわけじゃない。ただ、少し他クラスとな」

 

「他クラスの生徒と? 何を」

 

「少し、勝負をしただけだ」

 

「勝負? 何故ですか。目立つことを嫌う貴方が理由もなくするとも思えません。それに、知り合いでもない限り貴方に関わりに行くこともないと思うのですが」

 

 

流石に鋭いな。しかし、打ち明けることは避けるべきだろう。掻い摘んで筋を通すのが最適解か。

 

 

「今椎名が言った通り、知り合いだからだ。尤も、昔の、だがな」

 

「昔の、知り合い………。まぁ、深く追求はしませんが、気を付けてくださいね」

 

「実力はバレてる。だが、向こうは広げる気がない。だから安心してくれていい」

 

「できるわけないでしょう? まだ、綾小路くんが狙われる可能性だって残っているのに」

 

 

坂柳がオレを狙うのは考えずらいな…………実力差は示した。恐らくだが、どんな駒を使っても一生オレに勝つことはできないだろう。

 

 

「大した功績も残してない身でいうのもなんだが、オレは平気だ。この学校の全員が束になって襲ってでも来ない限り負ける気はない」

 

「凄い自信ですね。取り繕うのはやめたんですか?」

 

「まぁ、椎名に隠し事をするのもあれかと思ってな。別に全てを洗い浚い言うというわけでもないが」

 

「綾小路くんの楽な在り方でいてくれればいいです。友達なんですから」

 

 

友達、そんな言葉を聞いたのは久しぶりな気がする。というか、よく考えたらオレって全然友達いなくないか? 椎名に、まぁ石崎もカウントしていいだろう。あと龍園くらいか?

 

片手で終わっちまった。存在感を消すことで裏から動きやすかったが、その代償はこんな形でオレの前に姿を現す。んー、今から頑張るか、友達作り。

 

 

「そう言ってくれると有難い。やはり椎名は優しいな」

 

「ふふ。そういえば、明日の放課後に予定は入っていますか?」

 

「何もないな。強いて言うなら図書室へ向かおうかと思っていたくらいだが。それが?」

 

「良ければ、明日綾小路くんの部屋に行ってもいいですか?」

 

「いきなりだな」

 

「昨日は声をかけるタイミングを逃してしまって。先約があるのなら大丈夫です」

 

「いや、ない。放課後なんていつも暇だ。別に来てもいいが、何をするんだ?」

 

 

自室に人を呼ぶのなんて初めてだ、何を準備すればいいんだろうか。特に散らかってないが掃除でもするか?

 

 

「綾小路くんの健康チェックも兼ねて明日の夜ご飯を一緒にどうかと」

 

「っ! いいのか?」

 

「ええ。こちらが提案したんですから」

 

「なら、是非頼む」

 

 

椎名が前に持ってきてくれた弁当はかなり美味しかった。今まで食べたどんな食事よりもな。だから、こんな提案はオレからすれば願ったり叶ったりだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、夜七時五十分。

 

 

「そろそろか」

 

 

椎名との約束の時間は午後八時、もうすぐだ。頼まれていた食材は全て買い揃えたが、念の為遅いかもしれないが三回目の確認をしてみる。全部揃ってた。

 

部屋に女子を呼ぶなんて、半年前のオレに言ったら信じて貰えるだろうか。椎名の名前を出せば案外すぐに納得しそうな気もする。それくらい、ずっと友達でいてくれて感謝だな。

 

ダラダラとしながら無気力にスマホを見つめる。ペーパーシャッフル本番まで、あと一カ月と少しか。結果が分かっているのに訪れないエンディングというのは実につまらない。

 

 

 

不意に部屋のチャイムが鳴る。時計に目をやれば丁度八時を指していた、几帳面な椎名らしい。

 

 

 

「お待たせしました」

 

「時間丁度だ。それに自室なのに待つも何もあるか」

 

 

扉を開けながら、開口一番そう言った椎名に言葉を返す。ふと、彼女の手元に目が行った。少し大きな、紙袋に入った物を手に提げている。

 

 

「椎名。それは?」

 

「後でのお楽しみですよ。といっても、本人なら分かってると思いますが」

 

 

そう言われ、今日の日付を思い出す。十月二十日。あー、そういえば、確か…………

 

 

「────ありがとう」

 

 

今日は、オレの誕生日だった。

 

 

 

 

 

 

「美味いな。相変わらず」

 

「ありがとうございます。お口に合ったようで安心しました」

 

 

椎名特製の野菜炒めときゅうり&ワカメの酢の物を口に運びながら、オレは彼女の腕を絶賛していた。食ってみろ、飛ぶぞ。

 

 

「ところで話は変わるが、椎名の誕生日はいつなんだ?」

 

「そういえば言ってませんでしたね。私は一月二十三日です」

 

「覚えておく。というか、オレの誕生日いつ知ったんだ?」

 

「以前図書館で被害者の誕生日が関連した連続殺人事件の本を読みまして。そのときにしれっと聞きました」

 

「流石だな、オレの記憶にも残らない程スムーズに聞くとは。恐れ入った」

 

「褒められてると認識しておきますね」

 

 

そんな会話をしていると、あっという間に食事を終えてしまった。結局明日の朝用に少し残しておきたかった分も欲に負けて食べてしまったしな。どうしよう太るかもしれん。

 

 

 

 

 

「──────それじゃあ、綾小路くんお待ちかねのイベント行きますか」

 

「待ってました。まぁ、椎名がくれた物なら何でも嬉しいが」

 

 

 

その後、オレがヨーグルトメーカーをプレゼントされて嬉しさの余り普段は出さない大きな声を出してしまったのは椎名とオレ二人だけの秘密だ。隣人には聞かれてないことを祈ろう。

 

 

 

 

 

 




因みに、綾小路は椎名に「誕生日といえばケーキだと聞いたが」と言っており、「綾小路くんが糖尿病にならないためです」と理由を説明されてぐうの音も出なくなってました。
※綾小路くんは加糖も無糖もどっちも好きです。

来年の誕生日の前はアイスやヨーグルトを食べすぎないようにしようと心に誓ったとか誓わなかったとか。
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