綾小路 in Cクラス 作:NIES
しっかり試験中で全て拾っていくので安心して読んでくれると嬉しいです
第42話:決意を胸に
7月19日。
全12層からなる豪華客船サン・ヴィーナス号。直訳すれば太陽と魅力、若しくは太陽の魅力となるなんとも言えない名前をしたこの船は、今現在大海原を南南西に進んでいる。
午後1時手前、1年生たちへの説明会が終わり、今度はオレたち2年生への説明会が始まろうとしている時間。オレは後方デッキにいた。
「─────今回の試験、大丈夫そうですか?」
隣に立ったひよりが声を掛けてくる。言わずもがな、単独で試験へ挑むオレへの心配からくるセリフだろう。申し訳ない。
「大丈夫、そう一概に言えるわけじゃないが、打てる手は打ってある」
「詳しい説明はまだですが、今までにない程大変な試験になることは容易に想像できます。私はまだ、清隆くんと離れたくないです」
オレの制服の袖を掴み、ひよりは心の奥底まで透けそうな綺麗な瞳でオレを射抜く。親友にここまで心配されて、無碍に扱える程オレは腐った人間じゃない。
「龍園から聞いていないか? オレは別府という生徒とカードを交換した。今持っているのはひよりと同じ『半減』のカードだ」
「っ! ですが、ポイントは足りるんですか?」
「ああ。手持ちは400万と少しある」
龍園からポイントを借りる選択肢もあったんだが、オレ個人の要望に付き合わせているという現状を踏まえて自腹を切ることにした。痛い。ま、下位5グループに名を連ねる気なんて毛頭ないが。
「良かった………それなら安心できます」
「オレはまだ安心できてないんだが。ちゃんと龍園からポイント貰ったか?」
「ええ。3人グループのまま下位5グループになってしまった場合の救済費100万を」
良かった。もしこれで50万しか渡してないとかだったら今から龍園のところに殴り込みに行く必要があったからな。
不用意に人を傷つける心算はない、オレの拳が火を吹くのはもう少し先になりそうだ。
「それならよかった」
そのタイミングで、1年生への説明会が終わった旨を伝えるアナウンスが船内に響き渡る。もう少し話していたかったが、仕方ないな。
「行きましょうか」
「ああ」
オレたちは少しだけ駆け足で映画館へと向かうことにした。
映画館へ向かうと、既に大勢の2年生たちが席に座っていた。席は自由にして構わないと入場する際に言われたため、とりあえずひよりと共に腰を下ろす。
ステージ上には真嶋や茶柱他2学年の教師陣に加え月城もいる。理事長代理として君臨できる最後の機会だ、せめて何か爪痕を残して逝ってくれると映えるんだが。
「ではこれより、無人島における特別試験のルール説明を行う」
名称:無人島サバイバル
〈ルール〉
・全グループで2週間、得点を集め競い合うサバイバル試験。
※初日は9:00に開始し、最終日は15:00に終了する。
・期間中、リタイアによりグループ全員が離脱した場合はその時点でグループは失格。
※集めた得点は全て無効となり、その時点で順位が確定する。
・得点を集める方法は2種類あり、『基本移動』によるものと『課題』によるもの。
〈腕時計について〉
・全生徒には腕時計と、それに連動するタブレットが支給される。
・腕時計には装着した生徒の体温・心拍数・血圧・血中酸素・睡眠時間・ストレスレベルなどを測る機能がついている。
※また、学校側が常時これをモニタリングすることができる。
・腕時計が故障した場合、スタート地点に戻ることで何度でも無償で交換ができる。
※故障中は得点獲得も不可能となるので早急な交換を推奨。
・上記中の何らかの項目が規定値を越えた場合、『警告アラート』が鳴る。『警告アラート』は5秒で自動停止するが、規定値を越えた状態が続くと10分後に再発する。
・『警告アラート』が2回鳴っても状態異常が続いた場合、5分後に『緊急アラート』が鳴る。この状態になった場合、24時間以内にスタート地点に戻りメディカルチェックを受ける必要がある。
・『警告アラート』が手動で切る必要があるため、5分間停止されなかった場合医療班と教職員がGPS情報を元にその場に駆け付けることになる。
・試験中の不正を防ぐため、腕時計の取り外しには特殊な工具が必要になる。強引に外そうとした場合には自動で得点獲得機能がオフになる。この場合もスタート地点での交換が必要。
〈タブレットについて〉
・腕時計と連動するタブレットでは、無人島の全体図の確認や自身の指定エリア、自身の現在地の確認などができる。
・4日目~12日目までは上位10組・下位10組の得点とメンバー内訳を確認することができる。
・6日目以降は全(腕時計が機能している)生徒の位置を知ることのできるGPSサーチを行うことができる。
※使用には1点を消費する他、GPSサーチを行った瞬間の位置しか知ることはできない。
・常時どこのエリアで何の『課題』が行われているかを確認することができる。
※実施状況は現地に赴かない限り知ることはできない。
・タブレットの充電はスタート地点と、後述する『課題』の場所で行うことができる。
〈得点獲得方法・基本移動について〉
・無人島を横にA~J、縦に1~10で区切り計100マスのエリアに分ける。
・1日に数回指定エリアが告知され、それに従って移動することが試験の基本となる。
・指定エリアは初日・最終日は3度、2日目~13日目は4度告知される。
・指定エリアには法則性が採用されていて、最後に指定されたエリアを中心として縦横2マス、斜め1マスの範囲内で行われる。
・1日1度(初日・最終日を除く)は完全にランダムで指定エリアが決定される。ただし、ランダム指定が2度連続で起こることはない。
・指定されたエリアに到着することで到着ボーナスとしてグループ全員が1点を得ることができる。
・着順ボーナスも存在していて、1番最初に辿り着いたグループに10点、2番目のグループに5点、3番目のグループに3点が与えられる。
※着順ボーナスはリタイア者の出ていないグループしか受け取れない。
※グループ全員が指定エリアに足を踏み入れた時刻を記録とする。
・指定エリアが告知された段階で既にエリア内にいた場合着順ボーナスは無効となり、到着ボーナスのみが与えられる。
・エリアすべてが海上など物理的に到達不可能なエリアが指定されることはない。
以下『基本移動』のゴール制限時間
・1回目:7:00~9:00
・2回目:9:00~11:00
・3回目:13:00~15:00
・4回目:15:00~17:00
・指定エリアは12通りの各テーブルで既に決定されていて、グループメンバーは全員同じテーブルとなる。大グループを結成した場合、テーブルはいずれかの小グループに合わせて統一される。
・3回連続で指定エリアを無視した場合、ペナルティが課せられることになる。3回目の無視で1点マイナス、4回目の無視で2点マイナスとなり、1度に引かれる点数も増えていく。
※グループ内の誰か1人でも指定エリアを踏めば累計地は0に戻り、次に3度無視した場合はまた1点マイナスから繰り返される。
〈得点獲得方法・課題について〉
・無人島内の各所で無作為に『課題』を受けられる場所が設置される。7:00~17:00の間ランダムで設置されるが、実施エリアや内容は各個人のタブレットで確認できる。
※初日は9:00に開始され、最終日は15:00に終了する。
・設置場所にいる教師かスタッフに参加申請をし、腕時計とタブレットを介すことでエントリーすることができる。
・『課題』の内容は3種類であり、学力4割:身体能力3割:その他3割となっている。
・『課題』の上位入賞者には得点と飲料水・1日分の食事などが与えられる。
※4日目以降にはグループの上限人数を6名まで拡大する報酬がある『課題』も設置される。
※グループの人数上限解放の『課題』はそう多くなく、全体を通して2、3割程度に留まる。
〈大グループ結成について〉
・『課題』によって大グループ結成の条件を満たした小グループが合流した場合、大グループが結成される。
・大グループ結成には、生徒が10秒間腕時計をリンクさせ続ける必要がある。
・大グループ結成が行われた際には、構成小グループの得点を平均化させそれを大グループ結成時の得点とする。
それから月城が男女間でのトラブルが発生した際には容赦なく退学を含むペナルティを科すこと、生徒間での多少のトラブルに関しては防ぎようがないため認める旨などを話し、説明会は幕を閉じた。
それと、一定時間だがマニュアルで購入できるものや実際に配布されるバックパックの容量なんかを確認する時間も用意された。
夜。再び後方デッキに赴き覚悟を決めていると、後ろから足音がした。複数ではなく、1人だけらしい。
「よぉ、綾小路」
「──────南雲生徒会長」
自慢の金髪を海風で揺らしながら、南雲が華麗に登場した。さっさと退場してもらいたいところだが。
「何か、オレに用ですか?」
「大したことじゃないさ。ただ、ルールも完璧に定まったようだし、確認しに来ただけだ」
「確認」
「ああ、そうだ。
「なるほど、その件でしたか。でしたら確認なんて不要です、
冗談半分でそう返すと、南雲は面白そうに笑った。
「はは。やっぱりおまえは最高だな、綾小路」
「褒め言葉として捉えて良いんですか?」
「当然だろ。白黒つけるのはまだだが、前哨戦だぜ。気を抜くなんて白ける真似はやめてくれよ? 俺は言い訳なんざ聞きたくないからな」
「オレも何気にあなたが心配ですよ、南雲生徒会長」
「なに? どういう意味だ、それは」
「多対一で負けた理由なんて、オレならいくら考えても思いつきませんから」
「はっ。増々おまえを潰した時の顔を見たくなったぜ。今日は早く寝ろよ、坊主」
そう捨て台詞を吐き、南雲は去っていった。さて、会話から察して欲しいところだが、オレの無人島サバイバルはどうにも暇がなさそうだ。
『綾小路先輩』
『どうした』
『明日、トランシーバー買うの忘れないでくださいね?』
『当然だろ。そっちも
『当然じゃないですか』
『ならいい。さっさと寝ろ』
各生徒が十人十色の想いと葛藤を抱える中、
翌日午前9時、無人島サバイバルが開始された。
改めて読んでみて書いてみて、無人島サバイバルのルールの多さに驚きました
これを全部覚えた状態で試験に挑めってこと自体が鬼ですね