【完結】兄貴が異世界に行きやがったらしわ寄せは全部俺に来た ~背の低い不良男子高校生が、背の高い年上幼馴染の彼女ともう一度繋がるまで~   作:八月森

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~その頃の兄⑧~ してないぞ

 道中で綺麗な川を発見したオレたちは、そこで休息を取り、交代で水浴びをすることになった。

 てっきりこういう場合は男女別かと思っていたのだが……

 

 

「姫様とトリーシャ、楽しそうだねー。もうずっと移動するか訓練するか戦うかばっかりで、こういう休みは取れてなかったからね」

 

「……そうだな」

 

 

 そう。背後の(やぶ)の向こうでは姫さんとトリーシャの二人が衣服を脱ぎ、水を浴びているのだが……そこにエレナは混ざっていなかった。なぜかオレの隣で、オレと同じように地べたに座り込み、周囲にのんびり警戒の目を向けている。

 

 

「なあ。なんで姫さんたちと一緒に行かなかったんだ?」

 

「ん? ああ。見張りをアキト一人に任せるのは悪いかなーと思って。あと、アキトが覗かないように見張ろうかなって」

 

「ぶほっ!? 覗かねぇよ!」

 

「むきになって否定するのは怪しいよ~?」

 

「やらねぇって! 姫さんの裸なんて覗いたら、オレが王さまに処刑されちまう」

 

 

 さすがにそんな度胸はない。というか、今オレが気になってるのはこうして言葉を交わしているエレナのほうだった。

 

 

(オレと見張りのタイミングが同じってことは……)

 

 

 これは、水浴びも同じタイミングで一緒にしようってことなのか……? オレは大人の階段を上るのか……!? あの雲はなぜ私を待ってるの!? 教えてお爺さん!

 

 

「あ。なーんかやらしいこと考えてるでしょ」

 

「かかか考えてねぇよ!」

 

「ほんとかな~? ――ちなみに水浴びはアキトとは離れた場所でするからね」

 

「あ、そうですよね」

 

 

 舞い上がっていた頭が一気に現実に引き戻された。少し考えれば分かることだった。でもしょうがないじゃないか。男の子だもの。

 

 そうこうしてるうちに、先に水浴びをしていた二人が衣服を着て戻ってくる。

 

 

「アキト様、エレナ。私たちは済みましたから、次はお二人が行ってきてください」

 

「はーい。それじゃ行こっか、アキト」

 

「あ、ああ」

 

 

   ――――

 

 

 男一人での寂しい水浴びもすぐに終わり、服を着たオレは、姫さんたちと合流しようと思ったのだが……

 

 

(エレナ……まだ戻ってこないな)

 

 

 彼女は宣言通りオレから離れ、川の上流のほうへ向かっていったのだが、いまだ戻ってくる様子がなかった。

 オレが早すぎたのかとも思ったが、姫さんたちの所要時間と比べても少し長い気がする。何かあったのだろうか。

 

 

(……迎えに行ってみるか)

 

 

 これは純粋に仲間が心配だからであってあわよくばという期待は無きにしも非ず……いや、それじゃ期待してることになるな。期待はしてない。してないぞ。

 

 湾曲した川を辿り、歩を進める。その先で、目的の少女はすぐに見つけられた。水から上がり、一糸まとわぬ姿をさらけ出し、彼女は川のほとりに立っていた。

 

 目に飛び込むのは水に濡れた赤い長髪。普段とは違う物憂げな瞳。そして雫が伝っていく引き締まった裸身。その艶やかな胴体の表面を這うように、黒くうねる縄のような模様が見え――

 

 

「え、ア、アキト?」

 

「あ……わ、悪い!」

 

 

 驚くエレナの声で我に返り、オレは慌てて後ろを向いた。

 

 

「……見た?」

 

「み、見てない! ちょっとしか!」

 

「ちょっとは見たんだね」

 

 

 背後から苦笑が聞こえる。どうやら怒ってはいないようだが。

 

 

「まぁいいや。実は身体に大きな傷があってね。あまり見られたくないから、姫様たちとは一緒に浴びなかったんだ」

 

「そうだったのか」

 

 

 それを聞いて、ここまでのエレナの行動に得心がいった。ただ……

 彼女の身体に刻まれたものは、傷跡というより刺青(いれずみ)のように見えたのだが……あまり詮索しないほうがいいだろうか。

 

 

「はい、もうこっち見ても大丈夫だよ。それじゃ、姫様たちと合流しよっか」

 

「ああ」

 

 

 ほんの少しの引っ掛かりを覚えながらも、オレはエレナと共に姫さんたちの元へ向かうのだった。

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