【完結】兄貴が異世界に行きやがったらしわ寄せは全部俺に来た ~背の低い不良男子高校生が、背の高い年上幼馴染の彼女ともう一度繋がるまで~   作:八月森

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~その頃の兄①~ オレの物語

「――これが、我がアムレート王国に代々受け継がれてきた宝。火と天則の神アリシャから授かりし、人々の祈りを力に換えると言い伝えられる聖剣、〈オラシオン〉です」

 

 

 ランタンの明かりに照らされた、アムレート王国王城の宝物庫。

 そこにオレを案内した姫さんは、他の財宝群からは隔離された、鞘に納められた一本の剣を指し示す。

 

 目測で一メートルちょっとの直剣――俗に言うロングソードぐらいの形状と大きさだった――。黄金に輝く(つば)と柄頭。剣の本体を包む鞘も随所に黄金があしらわれている。

 刀剣類の知識などないオレにも、その剣がとてつもない価値を持っているのは推測できた。しかもそれだけではなく――

 

 

(強い……とんでもなく強い力を感じる。これが、魔力ってやつか?)

 

 

 オレがこっちの世界に召喚されるのと共に、何か得体の知れない力のようなものを、そこかしこから感じるようになった。

 

 姫さんによればそれは、五感とは違う第六の感覚器官――魔覚というものによって、魔力を感じ取っているから、らしい。世界を移動した際、オレにもそれが目覚めたのだと。

 

 その魔覚に、とてつもない圧力を感じていた。見た目はただの長剣なのに、まるで燃え盛る巨大な炎を前にしたかのような、触れ難い圧倒的な威圧感が――

 

 

「この剣は、いまだ抜かれたことがありません」

 

「……抜かれたことが、ない?」

 

「はい。今まで数多の強者が使い手になろうと試みてきましたが、一人としてそれは叶いませんでした。こうして、私がいくら力を込めても――」

 

 

 オレと同様、剣の魔力に気圧されているのか、彼女は少し躊躇いながらも聖剣を手に取る。そしてお姫様らしい細腕で柄と鞘を引き離そうとするが……やがて諦めてため息をつく。

 

 

「――御覧の通り、びくともしません。ですが……ですがアキト様ならば、きっと……」

 

 

 期待に満ちた眼差しと共に、姫さんは聖剣をオレに差し出す。なるほど、つまり……

 

 

「つまりこれは、漫画やゲームでよくある、『選ばれし者にしか抜けない聖剣』イベント……!」

 

「まんが……? げえむ……?」

 

 

 一気にテンションが上がったオレは、耳慣れない言葉に困惑する姫さんから聖剣を受け取る。すると……

 

 

(……!? なんだ!? なんか、持っていかれる……!?)

 

 

 身体からなんらかの力――おそらく、これが魔力だろう――が抜けていく感覚。と同時に――

 

 ――カチリ

 

 と、握った聖剣を通じて何かの鍵が差し込まれ。扉が開くような感触を感じた。

 そして、確信を抱く。()()()()()()()

 

 キン――!

 

 左手で鯉口を切る。柄を掴んだ右手を、始めはゆっくり、次には力を込めて、一気に引き抜く。そして白銀に(きら)めく流麗な剣身を、頭上に掲げた。

 

 剣は常に手入れされていたかのように曇りなく、ランタンの明かりを反射して輝いていた。さらには溢れる魔力が光を放ち、神々しさすら感じさせて……

 

 

「……ああ……ああ……! 本当に、聖剣が抜けて……この目でその瞬間を見られるなんて……! すぐにお父様にお知らせしなければ……!」

 

 

 感極まった様子の姫さんの言葉を背に受けながら、オレは今後の日々への期待に胸を躍らせていた。

 

 これはきっと、オレの物語。

 オレがこの聖剣と共に活躍し、姫さんや王国の人々を爽快に救ってハッピーエンドに導く。そんな夢と希望に溢れた冒険の物語だ。

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