【完結】兄貴が異世界に行きやがったらしわ寄せは全部俺に来た ~背の低い不良男子高校生が、背の高い年上幼馴染の彼女ともう一度繋がるまで~ 作:八月森
兄貴は昔から要領がよかった。
勉強も運動も人並み以上にこなせたし、人当たりがいいからか友人を作るのも早い。同学年だけでなく、他学年にも交友関係(それも多くが女子らしい)が広がっている。
高校では生徒会長選挙に推薦され、渋々ながらも出馬し、勝利。しかしその後、「自分には向いてない」として、二位だった生徒に会長職を譲ったという。
なぜかケンカも強い。不良グループに絡まれていた女生徒を助けるために、絡んでいたそいつらを一人で壊滅させたこともあるらしい。
その他にも兄貴の逸話は枚挙に
そして――俺は今、その『主人公』が潰したはずの
(昔の不良漫画みたいな展開だな)
内心でぼやきながら、さりげなく周囲に目を配る。
不良共の数は五人。全員ニヤニヤと笑みを浮かべながら、こちらの前面に扇状に広がる形に布陣している。最悪の場合、全力で後方に走れば逃げ切れはするだろう。
「逃げずによく来たな、一年坊。俺は三年の
集まった連中の中でもガタイが良く、背も高い男――堀田が、こちらを威圧するように見下ろし、口を開く。推定こいつがグループのボス。古い言い方をすれば番長だろう。
「てめぇの噂は前から聞いてたんだぜ。今年の一年にずいぶんツッパった見た目のが入ってきたってな。しかもよくよく聞いてみりゃ、あの
「……」
「だがその一ノ瀬も、でかい揉め事起こしてどっかに消えちまったらしいな。今まではあいつが目障りで動きづらかったが、こうなりゃ邪魔は入らねぇ。生意気な一年も遠慮なく教育できるってもんだ」
「教育?」
「ああ、そうさ。俺らは上級生、てめぇは入ってきたばかりの下っ端のチビだ。立場の違いってやつを分からせてやらねぇとなぁ」
カチン
気にしている背丈を
「まずは俺らの命令に従うこと。それから上納金だな。逆らうなら言うこと聞くまで躾けてやるまでだ。てめぇもこの人数にボコられたくは――」
「――ハっ」
俺は堀田の台詞を鼻で笑い飛ばした。
「なんで入学してすぐに呼び出さなかったのか気になって来てみりゃ……要はてめぇら、兄貴にビビって俺に手を出せなかっただけの三下じゃねぇか。クソダセぇな」
「……あ?」
男の顔から余裕の笑みが消え、表情が険しくなる。
「聞こえなかったのか? ダセぇっつったんだよ。つるんでイキがるしか能のねぇクソ三下どもが、兄貴一人にビビり散らかしてるってな! 命令を聞け? 上納金だ? 冗談じゃねぇ! てめぇらのダセぇ要求なんざ、一つとして聞く気はねぇよ!」
「てめぇ!」
瞬時に激昂――かなり沸点が低いらしい――した堀田がこちらに駆け寄り、俺の顔面を殴りつけてくる。
が、来ると分かっていれば、耐えるのはそう難しくない。歯を食いしばってあえて拳を受け止めた俺は、痛みを超える怒りを胸に、ニヤリと笑みを浮かべる。
「先にケンカを売ってきたのはてめぇ。殴ったのもてめぇが先だ。正当防衛には十分だよなぁ。てめぇの顔面もへこませてやるよ!」
「ハっ、チビが! てめぇの身長で俺の顔面に届くわけ――」
俺の身長は155㎝。対して相手は180近い。確かに顔に拳を届かせるだけでも一苦労だ。が――
「ふん!」
ドボォ!
「ぐぼぉっ!?」
俺は左の拳で男の腹を打ち、身体をくの字に歪ませてから――
「がっ!?」
右拳のオーバーハンドで、位置が下がった顔面を思い切り撃ち抜いた。
「馬鹿が。タッパが足りねぇなら、的のほうを下げりゃいいだけだろうが」
「ぐ、う……!」
吹き飛び、仰向けに倒れる堀田。鼻からは血が流れていた。しかし気力で頭だけを持ち上げ、周囲の仲間に怒鳴り散らす。
「お、お前ら! 何やってんだ! お前らも行け! 一斉にかかれ!」
「お……おぉ!」
「生意気な一年坊主がぁ!」
突然始まったケンカに乗り遅れていた残りの四人が、慌てて拳を振り上げ襲い掛かってくる。
俺は凄絶に笑みを浮かべながら、そいつらを迎え撃ち――