【完結】兄貴が異世界に行きやがったらしわ寄せは全部俺に来た ~背の低い不良男子高校生が、背の高い年上幼馴染の彼女ともう一度繋がるまで~ 作:八月森
「アキト様に宿った瞳はおそらく、〈
白いベールと白のローブ――神官としての正装らしい――を纏った姫さんが、オレの目を見ながらそう説明してくれる。
「加護っていうと、神さまから授けられる特殊な力のことか?」
「さすがはアキト様。ご存じでしたか」
「ラノベの定番だからな」
「らのべ……?」
得意げに笑みを浮かべるオレに、姫さんがポカンとした顔を見せる。が、すぐに気を取り直し、説明を再開する。
「詠唱が必要な魔術と違い、加護は強く意識すればそれだけで発動させることができます。先日の戦闘では、アキト様が命の危機を感じ、それを打開しようと意識を集中させたことで、反射的にその瞳が力を発揮したのだと思います」
「ふむふむ。それで、その瞳――〈解眼〉っていうのは?」
「『解を導き、解放する』加護だと伝わっています。視界に映る事象から、正しい答えを導き出すのだとか」
「解を導き、解放……だからあの時、敵を倒すための最善の道筋が――達人の剣筋が見えて、身体もその通りに動いてくれたのか」
おかげでオレは命拾いし、初めての実戦を勝利で飾ることができたのだろう。
「そして、その代償が……この、全身を襲う激しい筋肉痛ってわけだ」
「はい……」
そう。今オレは痛みで一歩も動けないでいる。
昨夜は初戦闘の余韻も冷めやらぬまま、初めての野営にウキウキしながら眠りについたのだが、朝起きたらもうこの有様だった。
おそらく、達人の動きを再現するなんて無茶をしたせいだ。身体能力を無理やりに解放――これも〈解眼〉の能力によるものらしい――させて、普段使わない筋肉を急激に動かしたせいで、筋線維がブチブチに千切れてしまったんだろう。
実はさっきから姫さんは、それを癒すために治癒の法術をオレにかけ続けてくれていた。その間お互い暇だったため、オレの目の異変について相談していたのだ。
そうこうしてるうちに、ようやく動けるぐらいに痛みが和らいできた。
「ありがとな、姫さん。おかげでもう大丈夫そうだ」
「いえ、少しでもアキト様のお役に立てたのなら嬉しいです。といっても、これは厳密には私の力ではなく、神々から借り受けた奇跡の、ほんの一端なのですけど」
そう謙遜する姫さんの頬は、かすかに赤く染まっていた。なんでだろう。
「しかしすごいな、治癒術。筋肉痛まで治せるなんて。……待てよ。てことは、旅のあいだ毎日稽古して筋肉痛を治してもらい続ければ、爆速で筋肉が超回復してあっという間に強くなれるんじゃないか?」
「ちょうかいふく?」
さすがにスポーツ医学はピンとこなかったのか、姫さんがキョトンとする。いや、オレの発想も素人のにわか知識でしかないんだが。しかし試してみる価値はある。もしかしたら〈解眼〉で無茶な動きをしても負担に感じなくなるかもしれない。
そうと決まれば、パーティーで唯一剣を交えられるエレナに話を通さねばなるまい。姫さんにも毎日治癒する手間をかけさせてしまうので、それも頼み込まねば。
その日から、陽のあるうちは目的地へ向けて移動し、就寝前と起床後に稽古(及び筋肉痛の治癒)を繰り返すデスマーチが始まった。
毎日身体はバキバキできっついが、これも勇者としての使命を果たすため、そして無事に日本に帰るためだ。
その日の夜。オレはこちらの世界に渡る際なんとなく持ってきていたスマホの画面を開き、待ち受けにしていた