真1の大破壊後の世界で、日本復活のために悪魔と戦うある男女の物語(手広くアトラス作品がクロスオーバーした世界観です) 作:XX(旧山川海のすけ)
メギドアーク・キャノンのチャージタイムは十秒足らず。
だが、仮面ライダーアモンの飛行速度は……
あり得ないほど速かった。
かなりの高度を稼いだのに、グングン近づいてくる。
間に合うか……?
当然彼女は不安になった。
(いっそのこと、今発射しても……)
そんなことを頭の片隅で考えたが
(しかし、それで死ななかったら、反撃が確実に来る……!?)
究極合体魔法メギドアーク・キャノンは連発できる魔法では無い。
使えば多少の消耗があり、息継ぎ的なクールタイムが発生する。
その間に攻撃されたらどうなるか分からない。
(だったら……)
彼女は覚悟を決めた。
仮面ライダーアモンをギリギリまで引き付けることを
問題は確実に処理していかねばならない。
大切なのは覚悟である。
聖典にも「毒蛇の巣に踏み入って、致命の毒蛇に噛まれることを恐れず毒蛇を全て退治して村を守った勇者の話」があるではないか。
大きな目的を果たさねばならないとき、リスクが大きいというのは理由にしてはならないのだ。
危ないから、面倒だから。
そんな理由で最後の詰めを誤るわけにはいかない。
彼女は覚悟を決め、魔力の蓄積に専念する。
仮面ライダーアモンとの距離に集中しながら。
(……浴びせてあげますよ……最高のメギドアーク・キャノンを……!)
彼女は集中しながら、思う。
佐上忍……!
佐上真月の夫……!
相手が絶対に傷つかない身体であると知ってなお、妻を守ることを止めなかった男……!
彼女は憤った。
(何故お前たちはメシア教徒でもないくせに、互いを支え合っているんですかッ!?)
あり得なかった。
勝てない戦いでも誰かを守るために一歩前に出るのはメシア教徒だけ。
正しく愛し合い、支え合う男女になれるのはメシア教徒だけのはずなのだ。
誤った信仰を持つこいつらが、そんなことをできるはずがない!
ケダモノと同じはずなのだ!
そして今。
こうして決死の覚悟で自分に向かって突っ込んできている。
失敗したら確実に死ぬというのに。
そんなことは
(どうせノミの勇気と同じッ! 本当の勇気であるはずがないですッ!)
破れかぶれの無計画行為。
勢いのみの唾棄すべき行動のはずだ。
彼女はそう固く信じ、究極合体魔法のチャージを進め、そして発射のタイミングを計り続けた。
ぐんぐん迫って来る佐上忍の姿。
あと数メートル……!
あと2メートル……!
そして
とうとう目の前に、来た。
(今だッ!)
彼女が両手で作った竜の顎を模した手の形。
それを開いて魔力解放の体勢を取り
気合を込めた言葉を発しようとしたとき
「メギドアーク……」
そのときだった。
タンッ!
彼女の6つある目のひとつが、爆ぜたのだ。
「ガッ!?」
激痛が走った。
(何が起きたんですか……?)
彼女は一瞬理解できなかった。
しかし……
偶然だが、彼女は残った5つの眼で見てしまったのだ。
地上で……
所謂膝撃ちの姿勢……立膝で座って射撃する姿勢……で、スコープを覗きながらこちらにライフルを向ける女の姿を……!
(佐上真月ィィィ!)
(最後の最後で、私の邪魔をしやがってえええええええええ!!)
地上からここまで。
100メートル以上は絶対にある。
その状況で……
彼女はクルセイダーロードの6つある目の1つを狙撃したのだ。
出鱈目すぎる。
天才なんてものじゃない。
ほとんど化け物だ。
(ふざけるなぁぁぁ! 許せない!)
意味不明過ぎるッ!
理不尽だッ!
そしてその理不尽に対する憤りで……
彼女の究極合体魔法発射が数瞬遅れた。
そのせいで、佐上忍がほぼゼロ距離にまで近づいて来ていた。
ハッとする。
(まずい!)
反射的に、彼女は最後の言葉を叫んだ。
「キャノォォォンッッ!」
その瞬間。
彼女の両手から激しい光の爆発が起こり。
その光の奔流は……佐上忍を呑み込んだ。
(やった……)
ギリギリ間に合った。
しかもゼロ距離だ。
確実に葬った自信があった。
ゼロ距離で、フルパワーのメギドアーク・キャノンを受けて生きていられる者などいるはずがない。
絶対に勝った。
彼女は勝利を確信し。
「……アハハハハハッ!」
上空で哄笑していた。
心の底からざまあみろと思ったのだ。
自分達メシア教に楯突いた邪悪な奴らを、とうとう成敗してやったのだと。
メギドアーク・キャノンの余波で、魔力の霧のようなものが周囲に出来ていた。
クルセイダーロード=仮面ライダーサタンはそこから舞い降りつつ、嗤い続けた。
舞い降りるのは負け犬の泣き顔を見るためだ。
そして彼女は勝ち誇って、言う。
「ざまあみろ! ざまあみろ! 絶対に仕留めてあげましたよ! ゼロ距離でです!」
地上の佐上真月は動かない。
ただ、固い表情でこちらを見上げている。
現実逃避だろうか?
自分の夫が敗れたことを受け入れらないのか
それが彼女の嗤いをさらに誘った。
そのまま続ける。
「どんな気持ちですか佐上真月ィィィィ!? 殺してあげましたよお前の夫をォォォ!」
言葉を発するたびに、凄まじい優越感と達成感、そして万能感が爆発する。
自分が神の戦士であるという思いが強くなる。
衝動のままに叫ぶ。
「久々ですよ! 異教徒を殺してここまでスッキリしたのは! よくも散々神に逆らって、私たちの邪魔をしてくれましたねッ!? ただで死ねると思わない事ですよ悪魔めッ!」
彼女は思っていた。
このまま少しだけ休んで、次は魔王マーラを始末する。
まあ、その前に。
「どうしたんですか? 泣かないんですか? あなたの大切な大切な旦那さんが死んだんですよ? 悲しくないんですか? 本当は誰も愛していない異教徒だからしょうがないですかァ?」
煽り続ければ半狂乱になって戦えなくなるかもしれない。
そう思いつつ、彼女は煽る言葉を吐きだし、さらに嗤う。
すると……
佐上真月は
「フッ……」
肩を震わせ笑い出した。
我慢できなくなった。
そんな感じで。
(えっ)
狂ったのか?
でも、そんな笑い方じゃない……?
理解が出来ず、クルセイダーロードの嗤いが停止する。
理由が全く理解できなかったから。
勝ち誇れなくなったクルセイダーロードに佐上真月は
「よく、自分を見てみるといいよ。……おめでたいわね」
そう言った。
それは理解できない言葉だった。
おめでたい?
何が?
そして
「あと……後ろ」
彼女は真っ直ぐに指差した。
クルセイダーロードの背後に存在する魔力の霧を
クルセイダーロードは思わずその方向に目を向けた。
そのとき。
彼女は信じられないものを見た。
霧の中から人影が飛び出して来たのだ。
緑色の軽装鎧の仮面の戦士……
佐上真月の夫……仮面ライダーアモンが!