真1の大破壊後の世界で、日本復活のために悪魔と戦うある男女の物語(手広くアトラス作品がクロスオーバーした世界観です) 作:XX(旧山川海のすけ)
『あの距離で目への狙撃を成功させるのは、人間の世界では一般的なのか?』
(んなわけねぇだろ)
忍はアモンの問いに、思わずツッコミを入れてしまった。
あんなものが一般的であってたまるか。
元々彼の妻は射撃に天賦の才があったが、彼女はここ一番で極限の集中力を見せてくれたのだ。
そのおかげで、ギリギリ間に合った。
感謝しかない。
「何故……生きているのですか……? 佐上忍……?」
クルセイダーロード=仮面ライダーサタンがそう、狼狽えながら彼に訊く。
彼が究極合体魔法メギドアーク・キャノンのゼロ距離直撃を受けたにも関わらず、死なずに済んだばかりか無傷だった理由。
それは……
そこで彼は右手に握っているものを、示すように持ち上げた。
それを目にして。、
クルセイダーロード=仮面ライダーサタンは呆然とした。
呻くように言う。
「草薙の剣……?」
そう。
彼が手にしていたのは、メシア教徒が熱田神宮から盗み出したこの国の神器であった。
そのせいでこの国は……
悪魔復活の大惨事から完全な形で蘇ることが出来なかった。
それが今、彼の手にある。
草薙の剣の伝説。
元々この剣を管理していたヤマトヒメはこう言ったとされる。
この剣は持っている間は絶対に負けない、と。
そのためこの剣を武器として所持する者は敵から一切のダメージを負うことが無いのだ。
故にメギドアーク・キャノンが効かなかったのである。
単純な理屈だ。
佐上忍は、ゼロ距離まで彼女に近づいたとき。
彼女に一撃を入れるのではなく……
彼女が腰の鞘に納刀していた草薙の剣を引き抜いた。
それが目的だったのだ。
だから彼は防御も攻撃もかなぐり捨て、全力で駆け上がって来たのである。
仮面ライダーサタンが放ったメギドアーク・キャノンは、彼をその圧力でかなり吹き飛ばしたが。
彼に一切のダメージを与えることが出来なかった。
忍に剣を示されて、クルセイダーロード=仮面ライダーサタンは自分が剣を奪われたことにようやく気づいた。
そして
「か、返しなさいッ……!」
反射的に彼に掴みかかった。
だが
あっけなく避けられ、返礼とばかりにその腹部に佐上忍は鎧通しの拳の一撃を入れた。
飛行しているので踏ん張りが利かない状態だったが。
その極めぬいた飛行状態での彼の空手の技術はそれを可能にし。
「ぐぉ……!」
彼女を怯ませた。
そのまま全く容赦せず。
彼はそのまま、その隙に大きく身体を一回転させるような浴びせ蹴りを打ち込んだ。
「ぎゅあああああ!」
それで撃ち落とされ、地面に叩きつけられるクルセイダーロード=仮面ライダーサタン。
それを見下ろし、忍はそのまま地上に舞い降りる。
そして
「……逃げ帰るなら別に見逃してやってもいい。ただし、お前らの神に誓って『二度と外の世界に関わらない』と言ってもらうがな」
それだけ言った。
彼としては本気であった。
神の名を持ち出して誓ったことを破ることは、それ自体が神への侮辱である。
本物の宗教者ならやれるはずがない。
この時点で彼は確信していることがあった。
剣さえ奪えば、絶対に自分はコイツには負けないと。
そう。絶対に。
彼の言葉を聞きながら
クルセイダーロード=仮面ライダーサタンはよろよろと立ち上がる。
しかし彼女は
「……誓いませんッ……ッ! 私は異教徒には……悪には屈しない……ッ!」
ハッキリと。
忍の提案を拒絶した。
その言葉を聞き
「そうか」
彼は淡々と返す。
(だったらもう、しょうがないな)
彼は「この少女の命を絶つ」覚悟を決めながら
そっと腰を落とした。
そして
「あばよ」
一言言い。
「究極合体魔法――」
その言葉と共に。
地を蹴り。
間合いを詰め。
彼は仮面ライダーサタンの胴体に
全体重を乗せた横薙ぎの蹴りを叩き込む。
「トリスインパクトッ!」
その力の言葉とともに。
アモンが彼の脳裏で感心した声を出す。
『ほぉ……気づいていたか。お前が足でも鎧通しが出来るようになっていたことを』
なんとなく、出来る気がしたのだ。
足での鎧通しが
手が片方草薙の剣で塞がっているから。
彼はその思い付きを実行し――
それは
「ガアアアアアアッ!」
究極合体魔法を乗せた蹴りを喰らい、仮面ライダーサタンは横に吹き飛ぶ。
そして
仮面ライダーサタンは悲鳴をあげながら都庁の床を転がり。
倒れ伏し。
そこから
彼女はトリスインパクトが直撃した部分からヒビが広がっていき、内部から火炎を噴き出し始める。
――足による究極合体魔法「トリスインパクト」
それがこの通り成功した瞬間であった。
(……終わりだ)
トリスインパクトが完全に入った。
もう少女の運命は決定した。
後は、見届けるだけである。
……クルセイダーロードの最期を。
仮面ライダーサタンは……変身を維持できなくなったのか、自ら解いたのか……
「ああああああ!」
人間体・クルセイダーロードに戻って、身悶えしたが。
よろよろと
鬼の形相で、這い上がるように立ち上がった。
そして
「……ゆ……許せない……! 悪鬼め……! 理想郷の破壊者め……!」
変身が解除された仮面ライダーサタン……クルセイダーロードの眼は、片方が潰れていた。
その潰れた目を片手で庇いながら、彼女は続けた。
「呪われろ……悪魔の国の住人め……! 醜い最悪の世界を蘇らせるために、私たちの神の国を犠牲にするなんて……」
彼女の身体が燃え上がっている。
生きながらに焼かれている。
それでも彼女は
命乞いなど一切行わず。
呪詛を吐きだすことをやめなかった。
「私はこれから神の国に旅立ちます……そこで見せてもらいますよ……!」
炎はさらに強くなる。
そして
「お前たちの作る卑しい穢れた国が、この大罪の報いを受けて地獄に堕ちる様を……ああああああアーッ!」
彼女は全身を激しい炎に包まれ……
絶叫し……
次の瞬間だった。
クルセイダーロードは。
草薙の剣の鞘と。
奇妙なデザインの鎧を残し。
激しい輝きの中
完全に、炎の中に消え去った。