兎の群れ√ 出会いの果ての未来   作:サイセンサイ

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平均の世界で生きる人にはどう映るのか

 

 Side・とある串焼き屋の男

 

 あの世界的歌姫であるハルモニアが主役の祭り、そこに露店の一つとして仲間たちと働ける事が確定した直後は、全員が狂喜乱舞していた

 なんてったってあのハルモニアだぞ?何回か公演を観たことがあるがそれはまぁ夢中になったさ

 同業の仲間たちも似たようなもんだ

 俺は二十代半ばでファンになった時はすでに英雄様の女の一人だった

 あの人が人妻だと知ったときは顔も見たことない英雄様に対して恨み辛みを口にした

 

 そして俺の目の前にその娘 ソプラがいる

 

「クラリネ〜今日のお昼はここの串焼きにしましょ〜!」

 

「わかった」

 

 ハルモニア似の顔に特徴的な赤い目、そして13歳で人を惹きつけるその美貌、おまけにその隣にいる女の子もまた美少女、同じく赤い目で金髪の美少女は俺の推しであるハルモニアの娘の異母姉妹、言葉にするとなかなか強烈だなおい

 

「アフロディーテから聞いたの!美味しかったって!どれにする!?鶏肉!?牛肉!?豚肉!?塩!?タレ!?」

 

 俺の目の前に太陽のような笑顔の推しの娘がいる。そして俺の商品を、、、、

 

※串焼き屋の仲間達がジト目をして見ている

 

 俺たちの商品を指さして選んでいる

 ぶっちゃけ幸せだちくしょう

 

「お肉だけ?パンは?」

 

「あ、、、どうしよう」

 

 するとソプラがお昼の主食がないことに今更ながら気づきアワアワしだした。四方をキョロキョロしている パン屋を探しているんだろう

 

「ここから右にいったところに串焼きにあうパンを売っているパン屋があるからそこはどうかな!何なら連れて行くよ!」

 

「ほんとに!ありがとう!」

 

 あ!!

 こいつ即座の判断でこの娘達の好感度を自分だけ上げる気だなクソが!!

 

「お嬢さん達は二人いるから男一人は心もとない!俺も行こう!」

 

「どんなパンがいいか分からないだろうしそういうのに詳しい俺も行こう!」

 

「パンと肉なら飲み物も必要だな!俺がいいドリンク屋を紹介しよう!」

 

「よし!こんなに人員が減ればこの店はしばらくまわらないな!俺もいく!」

 

 

 こいつら蟲のごとく!!

 

 

 一人がこうなれば勢いでみんながワァーとなる。目の前に非現実レベルの魅力があれば人々はあっという間に飲まれてしまう。芸能の世界を生きるソプラにはよく見る光景、だからこそソプラはちょっとまずいと思った。この勢いだと

 

「あのーー!!その後でいいので君のお母さんのサインをーーー!!」

 

「おいバカ!」

 

 一人の男が熱に浮かされた状態でソプラに手を伸ばそうとしてくる。その近くにいた男がそれを止めようとしたが弾かれた

 そしてその手がソプラに届こうとした瞬間

 

 

 ドゴン!!

 

 

「「「「「「「エ?」」」」」」」

 

 男達は目を見張った

 

「あぅ」

 

 ソプラは色んな意味でヒクリした

 

「ムン」

 

 クラリネは額に青筋を浮かべながら

 男の頭をアイアンクローして地面にめり込ませめいた

 

 そう、勢いに任せた男を地面に叩きつけたのだ

 

 周りの男達に取っては産まれて初めて見る『ランクアップ』した人外の力、目の前の少女が見せたモンスターすら渡り合う強さに皆が思考を停止させた

 現実感が無い

 目の前の少女が地面にクレーターを作った人間だなんて

 

「私はレベル2 戦闘力ゼロのソプラを守る相棒」

 

 そしてその少女は男の頭から手を離した後、かかとで更に踏みつけた

 

 パキャリ 

 

「「「「「「「「ヒエッ」」」」」」」」

 

 その場に響いたのはおそらく鼻の骨とかそういうのが割れた音、そのたった一音がその場の空気を極寒のごとく冷たくする

 

「おさわりげんきんあくしゅのれつにならんでください」

 

 クラリネは機会的に言い聞かされたであろう言葉を口にした。その声色は落ち着いていたが確かに怒りが乗せられていた

 

「あ」

 

 そしてクラリネはハッとしてソプラに首を向ける、ヤッベという雰囲気を出しながら彼女は相棒に助言を求めた

 

「ま、まぁこれは仕方ないし、、、あ、お詫びとしてここの食費タダでいいわよね」

 

 芸能の世界で生きるソプラはその場を分析してしこりの残らない答えを出した。ついでに父からお金は大切にという教えをとっさに思い出して

 

「はい!そうさせていただきます!いいよなお前ら!!」

 

「「「「「「はい!すいませんでした!!」」」」」」

 

 皆が一斉に頭を下げる中、一人の男は考えていた。何らかの罰がなければどちらにもモヤモヤが残った可能性や、もしこの事を問題にされれば権力的なアレでお終いだった事実、自分達のことを考えてくれた優しさ、そして目の前で見せつけられた人外の力

 

(なんかよくわからんけどすげぇ)

 

 串焼き屋の男はそう思いながら店のメニュー全種類を彼女たちに渡した

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 Side・美術スタッフの女小人

 

 私はライブの会場を設営したりペンキ塗りをしたりする係で私と同じようなスタッフが種族問わずたくさんいたわ。最初は異種族の関係で少しぎこちなかったけどみんなこの仕事にやりがいとか嬉しさとか中には誇りを持ってるなんて言う子もいたわ。

 それも全ては世界の歌姫ハルモニアのカリスマがあってこその事だった。本当に凄いものには種族の壁を越える力があるみたい。

 

 そして現在 そんな私は

 

 

 バキ!!ドゴ!!ボゴォ!!ガスッ!!ベキッ!!

 

 

「締めは私がやる!!」

 

「ギターの私に決まってる、殺すよ」

 

 産まれて初めて見る血みどろの殴り合いに腰を抜かしていた

 なんでもライブのパフォーマンスの件でモメてるそうでいつの間にか殴り合いになっていたみたい。全力で自分の意見を通すのは言葉にするのはカッコいいけど目の前で美人系なハーフ・エルフの少女と可愛い系のアマゾネスの少女が口の端と鼻から血を垂らして生々しい肉の打撃音が響く光景は正直怖すぎる。今夜眠れるかな?

 

『BUNNY・PARRY』はベルの子供たちの集まり、そのオンリー・ワンな我の強さはときおり大きな衝突を生むのだが、彼女たちの場合それが実直を超えたロイヤルストレートフラッシュ、産まれながらの頑丈な肉体も相まって耐性のないものからすればあまりにも衝撃的な闘争だった

 

 サクの母リューとシェイカの母アイシャも似たような衝突をしていたが、この二人は血の繋がりか、付き合いの長さか、母達より距離が近く母達より苛烈だった。

 

 シェイカはベル譲りの可愛らしい容姿をしていながらアマゾネス全開の態度と迫力でその愛らしさをみごとに打ち消している。

 サクは口調も落ち着いてて声量も低いが、その目には確かに苛立ちによる怒りが見える

 

 お互いにレベル3、このままエスカレートすれば周りにも被害が出る。というかスキャンダル必須

 

 だから

 

 

「せめて人の目のない所でやれ!!」

 

ガツン!ガツン!

 

 彼女達の母親が止めに入るのが必定

 

 女小人はさっきまで殴り合いをしていたサクとシェイカを槍の柄で叩いた女に意識を向ける。自分と同じ小人で彼女達の異母に当たる存在、祭りの関係者で知らない者はいない

 

 リリルカ・クラネル

 英雄の妻の一人にしてチュール商会のエイナを手伝うためにここに来た。立場的には重鎮とも言えるお人

 

「ここには暴力に耐性のない華やか〜でお花畑〜な平民の方々が多いからうちの評判に響くだろうが!!」

 

「ごめん」

 

「すいません」

 

 先程まで獣の如き圧を出していた女傑二人を一瞬で黙らせて頭を下げさせた。同じ小人ながらやっぱり違うのだなと彼女は思った

 

 

「立てますか?」

 

「え?あ!はい!」

 

 そしたらリリルカ・クラネルは腰を抜かしていた女小人に駆け寄り手を差し出してくれた。恐れ多さを感じながらとっさに手を伸ばしてしまいそのまま立ち上がる。彼女は自分のズボンに付いた土までその指で払ってくれた

 

「あ、ありがとうございます」

 

「、、、、あなたも勇者関係でここに?」

 

「え?、、、あぁ!はい!勇者様は私達に仕事の援助をしてくださいました!」

 

「ほんと、あの厚顔無恥」

 

「え?」

 

 ここのスタッフには小人も多い、間違いなくフィンの根回しだろう。下界救済が果たされてから好きにいるようになったのは自分も同じだが、なんかムカつく、ガリバー兄弟の気持ちがなんとなくわかってきたリリルカだった

 

 他人に媚びず強請らず我を強く持つ、その決意表明として髪を染めたりピアスをつけたりして口調も変えた。神々で言う『弱い自分を隠す手段』としてリリルカはそうしている。例え虚勢でも堂々と生きると決めたからだ。

 

 そんな事を思いながらふけっていると立ち上がらせた女小人から視線を感じた。振り向くと女小人は右手を自分の前に出していた

 

「あの、、、、握手してもらえますか」

 

「さっきしたでしょ」

 

「す、すいません!もう一度お願いします!」

 

 こういう事はよくある。未だに最弱種族なんて呼ばれているせいか、ランクアップした自分は小人から尊敬される。悪い気はしない、だが子供の頃それでフィンに目をつけられてそこそこ酷い目にあったことがあるので思い出しては眉間にシワを寄せる。

 主にティオネとかティオネとかティオネとかが未だにフラッシュバックするのだ

 

 そして握手を求めた女小人は自分で行ったことながら『ダメかな』とか『厚かましかったかな』と思っており心臓をバクバクさせていた。相手は黒竜討伐の貢献者の一人、雲の上の存在、やはり贅沢だと自分の発言を後悔しかけた時

 

「私のどこがいいの?」

 

「え!?」

 

 まさかの質問、言葉の意味を理解し少しぐるぐるしている頭でなんとか言葉を構成して口にする。

 別にリリルカからすれば深い意味はない、ただ何となく聞いてみただけだったのだが

 

「同じ小人として尊敬してて、、、今まで噂でしか聞いたことなかったけど、本物は想像よりずっとカッコいい人で、、、とにかく全部です!」

 

「お、おう」

 

 思いの外自分を上げてきた言葉に驚きながら、すぐに口元に笑みを浮かべて彼女と目を合わせる

 

「ま、あの二人は良い子なのでどうか怖がらないでください」

 

「はい!」

 

「何かあったら、すぐにリリを呼びなさい。」

 

「はい!」

 

 目の前にいる雲の上の存在、リリルカへの好感度が上がりまくる。平均の世界で生きる者にとってはそれほど今のリリルカは存在感に満ちあふれていた

 

 しかし 女小人は少し疑問に思った

 

(口調と雰囲気が変わった、、、、もしかして神様たちの言う『キャラ作り』をしてる?)

 

「今何考えたコラァ」

 

「すいません!!」

 

 リリルカは目の前の女小人に尊敬してくれた感謝を、女小人はリリルカに夢中にさせてくれた感謝を、お互いに尊重をするその姿は、この祭りの力を表しているようだった

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 Side・チュール商会の食品女スタッフ

 

 私はオラリオ産まれのオラリオ育ちで年は10代、ちょうどベル・クラネルの子供さんたちが生まれた時代でよく英雄の話を聞いて育った。同世代の男の子はみんな英雄に憧れてた。私はあまり興味がなかったけど、人としての尊敬はしてたと思う。

 

 両親は大きくも小さくもない普通の布屋、兄がいたから何となくお店を継ぐことが決まってて私は自由にしていいと言われてた。デメテル・ファミリアで恩恵をもらって農作業をやるとか学区に行くとか色々考えたけど私にはそんな情熱はなかった。でもそこそこ地頭が良かったから給金のいい仕事を探しててそれで、、、、、

 

「よろしくお願いします、皆様」

 

「「「「「「よろしくお願いします!」」」」」」

 

 ハルモニア・スフォルツァンド・フェスタの食品スタッフとしてここにいる。オラリオ産のジャが丸くんを世界に広めるとか何とかでここに派遣された。

 皆の前に立つのはあの英雄の妻の一人の春姫様、大きくはないけどはっきりとした声量、真っ直ぐと煌めく瞳、雲の上という言葉を彷彿とさせるけどその顔はとても優しさを感じさせるもので壁を感じる立場にあるけど威圧感はなかった

 男達は約得だと喜んでたなー

 人妻何だけどそこがなおいいらしい

 

 

 子供を七人も産んだ春姫は否が応でも成長した。人前でおどおどすることがなくなりいざって時しか見せなかった凛々しさをいつも出すようになった。家の中ではそんなでもないが、、、

 

 べらぼうな子供の数の食事を作りまくってそのスキルもう大きく成長した。そのおかげかこの大規模な食品プランに組み込まれることになった春姫は推しのハルモニアの役に立てると喜んで受諾、同じ嫁仲間達に年少の子供達を託し今はスタッフと共に試作のジャが丸くんを作っている。

 

「どうでしょうか?」

 

「はい!これなら短期間での生産にも適しています!凄いです!」

 

「毎日子供達の料理を作っていたおかげです」

 

 女スタッフをそのジャが丸くんを販売したり売り上げを集計したりする側であり、くじ引きで春姫の担当となっていた。男たちから羨ましがられた

 

「私では商いの事は専門外ですのでどうかよろしくお願いします」

 

「い、いえ!お世話になっているのはコチラです!」

 

 そんな時だった

 

「春母さん」

 

「ディディ様?」

 

 その場所に春姫にとって義娘は立場にあるディディが何やら荷物を持ってやってきたのは

 

「コントラス兄さんが眼晶(オルクス)を届けといて欲しいって、自分は忙しくていけないから」

 

「そうですか、ありがとうございます」

 

 それはなんてことのない会話。だが平均の世界で生きる彼女は少し思案してしまう。一夫多妻で成立している異母と義娘、どことなく心配なワードだがその間に引っかかりのようなものはない、こういう場合どこか生々しい歪みが少なからずあるものだが両者の間にはそれが感じられなかった。

 

(なんというか、、、ほんとに仲良さそう、一夫多妻はもっとドロドロとしたものがあると思ってた。)

 

 誰もが美しいと認める美少女と美人の母が笑い合っている。その光景は絵画のようだなとその女スタッフは思った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そうですか、やっぱり『裏』を感じますか」

 

「うん、ごめんねせっかくのお祭りなのに」

 

「ローザは悪くないよ」

 

 そこは準備期間の間、チュール商会の支部となる建物の大部屋で、コントラスとエイナそして学区時代の友人であるローザとカリィが話し合っていた

 

「コントラスくんが中核にいるから私は繋がりがあって役に立てますのアピールを確かにしたんだけど、、、どうも上手くいき過ぎた気がして」

 

「私も」

 

「二人を代表にした理由が他にもあるってことだね」

 

 エイナは言葉を選ぶ。何となく察しは付いたが、二人をあまり傷つけないようにするためにもどう言うべきかを悩んでいると

 

 

 

「経験の少ない2人に任せていざって時、言いくるめやすくするってところかな」

 

「ちょ!コントラス!!」

 

 コントラスのデリカシーのない発言に母親であるエイナが叫ぶが、コントラスは真顔で2人を見ていた。そしてその2人は動揺した様子もショックを受けた様子もない

 

「母さん、2人はこの程度で傷付く人じゃないよ」

 

 それはある意味信頼しているからこその遠慮のなさ

 そんなコントラスに笑顔を向けながら2人は話を続けた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「殺気」

 

 買い出しをしていたアイズはその建設場所にはびこる少なくない殺気に感を働かせる。メイド服を着た美人ゆえの視線ではない、明らかな敵意を持った視線を感じていた。色々めんどくさい立場ゆえの視線などロキ・ファミリア時代から慣れてはいるが、これは少し違う

 

「時間が経つごとに増えていってる」

 

 アイズは友であるハルモニアの祭りを楽しみにしている。だからこそ、その邪魔は許さないと、今は剣を捨てたその拳を握りしめた

 

 それに何より 

 

 

「ここには私より怖い子がいる。私より頼りになるあの子が」

 

 そう思いながらアイズは買い出しを再開した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そしてしばらくした後に

 

 その場で『問題』が起こる

 

 

 二万人規模の仕組まれたストライキが

 

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