老練ラットは胡坐をかく   作:すすのて

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12.幕引き*

 貫いた――ように、男には見えた。

 

「よし、直撃だ!」

 

 双眼鏡の向こうの景色に、男は子供のように悦んだ。

 

「油断したな! あんなちゃっちい光で最大まで強くした白い光を壊せるわけないだろう馬鹿め! 他の光も全て叩きつけてやる!」

 

 リモコンのボタンを弾くように操作する。

 残っていた白い刃が、一斉にブロリーへと向かった。

 

「切り刻め!!」

 

 光が弾ける。

 

 双眼鏡のレンズが白く染まり、巻き起こった砂埃が男にまで届いた。白衣がはためく。

 

「おっと、やりすぎたか? あの金髪もなかなか強かったし、死体を再利用してやろうと思ったんだが……髪の一本も残ってないかな? ふふふ」

 

 ゆっくりと爆煙が晴れる。

 

 人影が見えた。

 

「……は?」

 

 そこには、ブロリーただひとりが佇んでいた。

 男は慌てて双眼鏡の拡大率を上げた。

 

 ――無傷だ。

 正確には、胸元に浅い爪痕はある。

 それだけだ。貫いたような傷跡はない。

 

「どういうことだ!?」

 

 双眼鏡がブレた。

 レンズの中で、少年の横顔がゆらりと振り向いた。

 

 ――目が合う。

 

 双眼鏡越しに。遠く離れているというのに。

 ブロリーの目が、わずかに細められた。

 

 瞬間、その姿が消えた。

 

「なっ――」

 

 慌てて周囲を探す。双眼鏡を忙しなく動かすが、見つからない。

 

「ど、どこに行った!?」

 

 歓喜は恐怖で上塗りされた。不安が加速する。

 

 双眼鏡のレンズの上部が、金色に照らされる。

 ぞわりと背筋が粟立った。

 

 男は弾かれたように見上げた。

 影が落ちる。

 

 

 ――ぐしゃり。

 

 理解する間もなく。

 上空から降ってきた黄金に、男は踏み潰された。

 

「……フン。虫けらに似合いの死に様だ」

 

 汚れた白衣が赤い地面に沈む。

 

 ブロリーの視界に転がっているリモコンが映り。

 これも踏み潰した。

 

 

 

 

 

 

 

 地上に降りたパラガスは、肩に担いでいたガルハッタを抱え直した。

 

「やれやれ……」

 

 ブロリーに声を掛けた瞬間、ガルハッタを投げて寄こされたのは驚いた。

 

「……ん? これはなんだ」

 

 幼子を抱えるようにガルハッタを腕に座らせた、その時。髪の隙間に、鈍い光を見つけた。

 うなじを掻きあげる。

 

「…………機械、か。どこの奴も、同じ事を考えるものだな」

 

 同じ事――それを、ゆっくりと引き抜いた。

 びくりとガルハッタの体が跳ねた。うなじから血が一筋、流れ出る。

 

「……まあ、手土産にはなるか」

 

 その機械を、パラガスは懐へと仕舞った。

 

 

 

 

 

 

 

 ふと、ガルハッタは目が覚めた。

 少しの頭痛。意識がぼんやりする。

 

(……あたたかい……)

 

 大きな手のひらが視界を覆い、そこからあたたかい気が流れてくる。

 

「起きたか」

 

 パラガスの声が聞こえた。

 

「見るからに気が少なくなっていたからな。少しばかり補填させてもらった」

 

 手が顔から離されると、目の前に奇妙な光景が広がっていた。

 

「………………」

 

「こ、こっちを見るな!」

 

「こわいよぅ」

 

 ブロリーが、あの兄弟を睨みつけている。

 

「……どうなってんだ?」

 

 パラガスの膝に座らされた状態で、ガルハッタは目を丸くした。

 

「ガルハッタ」

 

 いつものように名前を呼ばれ、振り向いた。

 ――振り向いてしまった。

 

 見上げた先のパラガスが、面白そうに目を細める。

 

「やはりそうか」

 

 視線を逸らした。

 

(いや別に隠し通したいわけじゃないが、今更名乗り出るのはちっとばかし気まずい……)

 

 視界の端で、ブロリーが動いたのが見えた。

 猫のように服を掴まれ、持ち上げられる。

 

 目が合った。

 ムスッとした顔で、ブロリーが見上げてくる。

 

「…………よお、相変わらず不機嫌そうだな」

 

「…………」

 

「なんだい、嫌なことでもあったか?」

 

「……」

 

「ああ、いや……そうか。さっきは悪かったな。傷見せろ、治してやる」

 

「……」

 

「ブロリー?」

 

 ブロリーの眉がピクリと動いた。

 視線が泳ぎ、困り眉に変化した。

 口が小さく開き、閉じる。

 

「どうした?」

 

「………………ガルハッタ」

 

「なんだい」

 

「……ガル」

 

「はいはい」

 

 しばしの沈黙後。

 ブロリーの頭が、胴体に押し付けられた。

 

「…………昔より小さくなった」

 

「……ほっとけ」

 

 目の前にある髪の毛をわしゃわしゃと掻き回すと、背に腕が回された。

 服をぐっと掴まれて――引き剥がされた。

 

「……ごりごりする」

 

「ん? ……ああ、これか」

 

 服に手を突っ込むと、すぐに堅い物に触れた。それを掴み出す。

 

「あっ!! 宝石!!」

 

「ばか!」

 

 声をあげたのは、じっとこちらを窺っていた兄弟だ。

 

「空気読め! ばか!」

 

「だって~」

 

「なんだ、逃げなかったのか。殊勝だねぇ」

 

「約束は守るもんだ!」

 

「宝石ほしいもんね」

 

「ばか!!」

 

 引き剥がされたと思ったら、今度は肩車された。

 

「……重くねぇか?」

 

「……」

 

 当然のように無視された。

 

(……そういうとこも変わってねぇなぁ)

 

 なんとなく痒みを感じ、うなじを掻こうとして、ようやく気付いた。

 

(……ない)

 

 刺されたものが無くなっている。

 

「……科学者はどうなった?」

 

 首に手を当てたまま、ブロリーを見下ろす。

 ちらりと横目で見られた後、すぐに逸らされた。

 

「白衣の男ならブロリーが片付けた」

 

 パラガスから答えが返ってきた。

 

「お前の首にあった機械もオレが外した」

 

「……そうか」

 

 首に刺された後遺症なのか、かすかに全身の痺れが残っている。

 けれど、自由は戻ってきた。

 

「…………そうか……」

 

 ふっと息をついた。

 

「じゃあ、問題なくこの星から出られるな」

 

「それだ! そのために俺たちあんたを待ってたんだからな!」

 

「どこ行く? いつでも出発できるよ~」

 

 わいわいと騒いでいると、掴まれている足の圧迫感が増えた。ブロリーの手にぐっと力が入る。

 ブロリーを見下ろすも、視線は合わない。

 

「……ガルハッタ。お前はそいつらと行動するのか?」

 

 パラガスからの問いに、言葉が詰まった。

 

「ああ、いや……そのつもり、だったんだが」

 

 ブロリーを見下ろす。

 掴んでいる手を離す様子はなく、肩から降りようとすると横目で睨まれた。

 

「ん~~~」

 

 困った。

 わかりやすく眉を下げてブロリーを見返すが、視線を逸らすだけで黙殺された。

 

「どうしたんだブロリー。妙に懐いてくるじゃないか……」

 

「まったく……」

 

 様子を見ていたパラガスが、全身の疲れを吐き出すようにため息をついた。

 

「ガルハッタ、我々と来い。こうなったブロリーはテコでも動かん」

 

「えっ」「えー!」

 

 ガルハッタと兄弟の声が重なる。

 ブロリー、パラガス、兄弟を順に見渡し、ガルハッタはため息をついた。

 

「そうするか……。すまんな、約束はナシだ」

 

「えーーーっ!!」

 

「そんな~」

 

「宝石はやる。乗り物を駄目にしちまったしな。弁償代だ」

 

 懐からテキトーに宝石を掴んで、兄弟に放り投げた。キラキラと放物線を描く。

 

「あっあっ」

 

「落ちる傷付く!」

 

 兄弟が滑り込む勢いで慌ててキャッチした。

 二人の手の中に、虹色が三つ転がる。

 

「みっつも!?」

 

「いいの?」

 

「乗り物が無いと不便だろ。もっといるか?」

 

 懐に手を突っ込んでじゃらじゃら言わせると、兄弟がごくりと喉を鳴らした。兄がハッとして顔を振る。

 

「だ、駄目だ! 欲を出すと身を滅ぼすからな!」

 

「えっ。あ、うん……」

 

「話は済んだか? なら宇宙船に戻りこの星から出立するぞ」

 

 パラガスの言葉に反応して、ブロリーが俺ごと振り返る。

 

「待て待て待て。まだやりたいことがある」

 

 ブロリーの髪の毛を掴み引っ張る。

 

「ブロリー。ちっと手伝ってくれや」

 

 見上げてきたブロリーと目が合った。

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

 

 上空から見下ろした花々は、広大な範囲に広がっていた。その一部分が地割れや焦げ付いた草などでぽっかりと空いている。

 

「どこでもいい。降りてくれ」

 

 ガルハッタに従い、ブロリーが地面に降り立つ。

 一緒に付いてきたパラガスもまたブロリーに並んだ。

 

「花を一掃する」

 

「一掃? ここ一帯を焼き払うのか?」

 

「焼くわけじゃない。この星が無くなるのは惜しいだろ?」

 

「それはそうだが……。方法はあるのか? かなり広いぞ」

 

「ある。……推論だがな。ブロリー」

 

 肩車されたまま身を乗り出し、ブロリーを覗き込む。

 

「降ろしてくれ」

 

「……」

 

 ムッとブロリーの眉間にしわが寄った。

 

「ほらほら。いいこいいこ」

 

 わしゃわしゃと髪の毛を掻き回し、ぐりぐりと頭を撫で回す。

 と、掴まれていた足を持ち上げられ、逆さのまま投げ捨てられた。

 

「子供扱いするな」

 

 地面に激突する前に、ガルハッタはふわっと浮遊した。浮いたまま、あぐらのように足を組む。

 

「危ねぇなぁ。まあいい。それよりも花だ」

 

 そのまますいーっと滑るように、花へと近付いた。

 動かない花のツタを地面から引き剥がし、気のナイフでスパッと切り落とす。

 

「ブロリー、来てくれ」

 

 ブロリーはチラリと、周囲の花を見上げた。

 

「宝石を渡しただろう。それを持ってれば花は敵対しない。大丈夫だ」

 

「フン」

 

 傍まで来たブロリーに、持っていたツタの断面を見せる。

 

「ここにスピリットを流し込んでくれ。俺はもうすっからかんだからなぁ」

 

 眉間にしわを寄せたまま、黙ってツタを受け取る。

 

「パラガスもやらないか? 二人掛かりなら早く終わる」

 

「……気を流すとどうなるんだ?」

 

「たぶん、限界量を超えると破裂する」

 

「……花がか?」

 

「花が」

 

 ガルハッタの返答を聞いて沈黙したパラガスは、周囲の花を見渡した。

 

「……だとすると、一掃するのにいったいどれだけの気を消費すると……」

 

「ここの花は全部ツタで繋がっている。ここからスピリットを流すだけで全ての花に波及する」

 

 パラガスから視線を外し、ブロリーを見た。

 

「……まあ、ブロリーでもかなり疲れるだろうな。無理に一掃しなくていい。星の寿命を伸ばすことができれば、俺がひとりで少しずつ処理するさ」

 

 じっとツタの断面を眺めていたブロリーが、ガルハッタの言葉に顔を上げた。じろりとガルハッタを睨む。

 

「……舐めるな」

 

 ブロリーの手に力が入り、ツタを握り潰した。

 

「全て枯らす」

 

 ブロリーの手から、眩いほどの金色の光が猛る。

 瞬間、握ったツタがボコボコボコと内側から膨れ上がった。

 

 ――バァン!!

 

 白い花が弾け飛んだ。

 それを皮切りに、ブロリーを中心に周囲の花々が次々に破裂し始める。

 波及するスピードが徐々に早まり、破裂する音が重なりすぎてもはや耳が機能しない。

 

「はは、爽快だなぁ」

 

「ぬう……」

 

 裂けた茎のみが直立している光景が円状に広がり、散らばった種で地面が黒く染まっている。

 上空に浮き上がり遠くまで見渡すと、すでに地平線まで黒く塗りつぶされていた。

 

 シュゥ……とブロリーが纏う黄金の気が静かに消え去った。逆立っていた髪も下がり、黒く戻る。

 ふぅ、と小さく息をつくブロリーを眺めて、ガルハッタは更に上空へ昇った。

 

「……まだあるか。しぶとい花だな」

 

 黒く見える大地の端の方。末端にチラホラと緑が見えた。けれど、その量は十分の一ほどに減少している。

 一気に下降し、ブロリーとパラガスの元へ戻った。

 

「ブロリー、助かった。疲れただろ?」

 

 疲労を感じさせる表情で、しかしブロリーは何も答えずにそっぽを向いた。

 

「どうだ? 全滅していたか?」

 

「ああ、バッチリだ」

 

 破顔してパラガスに報告すると、ブロリーが顔を背けたまま視線だけガルハッタへ向けた。

 

「種が残ってるが、これはこのままでいい。こいつはスピリットがないと成長しないだろうからな。そのうち干からびるだろうさ」

 

 ゆるく風が吹く。

 ガルハッタは軽く述べながら、その目は静かに様変わりした風景を眺めていた。

 

 

 

 

 

 

「お前さんら、まだ花を捕獲する商売を続けるつもりかい?」

 

「花が残ってるなら続けたいかな~」

 

「宝石を換金して飛行機を手に入れてからだけどな」

 

 花がまだ残っている。

 まだ星に残っていた兄弟とその話をして、ガルハッタはふと思い付いた。

 

「だったら、お前さんらがあの花の管理者にならないか?」

 

「え?」

 

「あの花を作った科学者はもういない。そしてあの花はこの星の奴らに駆逐される対象だ。あの花を欲しがるのはお前さんらだけ。だったらお前さんらが管理すればいい。だろ?」

 

「ど、どうやって?」

 

「宝石をいくつか持っとけば、あの花に狙われたりはせん。たぶんあの花は、鳥とか迷い込んだ動物とかを捕まえて増えているんだろう。それをこっちで管理して、花が増える数やスピードを調整すればいい」

 

「な、なるほど……」

 

 

 

 

 

 

 ガルハッタがあの兄弟と会話しているのを、ブロリーは離れた場所からじっと見つめていた。

 

「見張らなくともガルハッタは逃げたりはせんぞ」

 

「……そんなつもりはない」

 

「ほう」

 

 意味ありげに目を細めるパラガスに、ブロリーはじろりと睨め付けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「管理するなら追加で宝石をやる。全部売らずに残すんだぞ?」

 

「お、おう。やってみる」

 

「ありがとう!」

 

「じゃあな」

 

 更に五つほど宝石を兄弟に渡して、ガルハッタはその場から離れた。

 その背中を兄はぎこちない表情で見送っていた。

 

「…………」

 

「行っちゃった」

 

 ゆっくりと視線が落ち、新たに増えた宝石を握るよう、優しく指を丸めた。

 

「兄ちゃん、フリーザ様のお願いはどうする?」

 

 こっそりと、ポケットにしまっていた青いカプセルをひとつ、弟は取り出した。それを兄に見せる。

 けれど。

 

「…………無理だろ」

 

「だよね。僕も嫌だなぁ」

 

 二人の脳内に浮かんだもの。

 『サイヤ人のクローンを作り出した科学者と、その成功作であるサイヤ人を捕獲すること』というフリーザが語ったお願い――という名の命令。

 

「フリーザ様のお願いを聞いたら、人さらいになっちゃうもんね」

 

「科学者はもういない。もうひとりは――……」

 

 言いかけて、兄のイコンは顔を上げた。

 ガルハッタの小さな背を、不貞腐れた顔で見つめる。

 

「……人さらいするほど、落ちぶれたくねぇもんな」

 

「ねー」

 

 兄イコンの複雑な表情を窺い見て、弟のトスは嬉しそうに笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「待たせたな。行こうか」

 

 ガルハッタが声を掛けると、腕を組んでいたブロリーはすぐさま踵を翻した。

 

「もう心残りはないか?」

 

「ああ、だいじょ――……いや」

 

 パラガスに尋ねられ、ガルハッタにとある人物が脳裏に過った。

 

「思い出した。ちょっと行ってくる。瞬間移動で合流するから宇宙船に向かっててくれ」

 

「む」

 

 そう言うなり、ガルハッタはその場から姿を消した。

 パラガスは静かに顎を撫でた。

 余計なことを言ったか、と一抹の不安を抱いた時。

 

「……親父、あいつはどこに行った」

 

 ブロリーが戻ってきた。言葉に詰まる。

 

「……やり残しがあったらしい。先に宇宙船へ向かおう」

 

 ひくり、とブロリーの眉が歪んだ。

 

「問題ない。ガルハッタを信じろ」

 

「油断ばかりするアレを信じろと?」

 

「それは否定しないが……」

 

「……なにやってんだ? さっきのとこから動いてないじゃないか」

 

 ブロリーを諌められないうちに、ガルハッタが戻ってきていた。

 

「早かったな」

 

「まあな」

 

「さ、ブロリー。宇宙船へ戻るぞ」

 

「……フン」

 

 眉を顰めつつも、ブロリーは背を向け宙に浮かんだ。

 パラガスとガルハッタも、それに習って空に浮かび飛翔する。

 

「どこへ行っていたんだ」

 

 パラガスが聞く。それにガルハッタは肩をすくめた。

 

「ただの野暮用だ」

 

「……そうか」

 

 パラガスはそれ以上探らない。ガルハッタは答えるべき問いには答えると、知っているから。

 

「それよりも腹が減ったな。そろそろ燃料切れで寝落ちそうだ」

 

「ああ……、お前もサイヤ人になったんだったな。……二人分しか確保してないぞ。次の星まで食料が保つかどうか……」

 

「なあに。餓死しそうになったら瞬間移動で調達してやるよ」

 

「……そういうところは頼もしいんだがな……」

 

 パラガスとガルハッタの会話は、昔と変わらない温度のまま続いた。

 興味なさげに、しかし耳は傾けているブロリーを先行にして、彼らの宇宙船へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あら?」

 

 民家の扉を開けて外に出た女性が、穏やかな声をあげた。

 扉近くに落ちていた丸い石を一つ拾い上げる。

 

「まあ、綺麗ね~」

 

 それを日を翳すと、虹色に輝いた。角度を変えるとオーロラのように色を変化する不思議な石だ。

 それが地面にまだ五つほど転がっている。

 

「誰かの落とし物かしら……でも、ドアの近くにあるってことは、贈り物なのかしら? あらあら、どうしましょう」

 

 年配の女性は困った笑顔でおっとりと首を傾げる。そうして家から刺繍が施された布を持ち出して、それに落ちている石を全部包み込んだ。

 

「どなたかが探しに来るかもしれないわ。大切にしましょう」

 

 その石を布ごと裁縫用テーブルに乗せて。

 女性は干していた洗濯物を取り込むことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そういやよお、あれから何の連絡もこねぇな」

 

「……何のことだ?」

 

 フリーザ軍に所属している男が二人、とりとめのない会話を始めた。

 

「惑星コスラの花を売り捌いていた兄弟のことだ。サイヤ人のクローンを捕まえる命令を下されていただろ?」

 

「ああ……。サイヤ人でも子供なら躾けやすいだろうとおっしゃっていたあれか」

 

「死んじまったのかね……ふっふっふっ」

 

「だろうな。子供相手とはいえ、あんな低俗な奴らがサイヤ人に敵うはずもない。フリーザ様も、すでに忘れられておいでだろう」

 

「少し興味があったんだがな。クローン技術で作られたサイヤ人」

 

「ふっ。どうせベジータ達と変わらんだろう。たかが知れている」

 

「そりゃそうだ。ぎゃっはっはっはっ!」

 

 大きな笑い声が静かな宇宙船内に響き、意図せずその会話を聞くことになったフリーザは静かにため息をついた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 星海へと飛び出した宇宙船内。

 使い慣れたコップで紅茶を飲みながら、星海図を眺める。

 そんなガルハッタに、パラガスは声をかけた。

 

「目的地でもあるのか?」

 

「んー、ナメック星」

 

 故郷の近くに、どんな願いも叶える不思議な道具がある。

 そう説明するとパラガスは怪訝そうに眉を寄せた。

 

 ガルハッタはいつものように笑い飛ばすのだった。

 

 

 




▼フリーザ軍
ゲスト出演みたいになってしまいましたが、科学者がガルハッタを捕獲してフリーザ軍に売り込みそのまま加入するルートにしようと考えていたので、そのなごりです。
その場合あまりにもブロリーが可哀想なので急遽取り止めました。
ここまで情緒をぐちゃぐちゃにしておきながらネタバレも和解もなく放置とか、鬼の所業すぎるので。

▼あとがき
とりあえず、ひとつの章の終わりです。
次回の更新は未定です。
お付き合いいただきありがとうございました。
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