私はts転生者である。大学入学間近といったところだったのだが、トラックに轢かれて死んでしまったのだ、テンプレである。そんなこんなで「ばぶー」と生まれ変わってから、15年が経過し立派な中学生である。
「パン焼けてるわよ、今日も日向ちゃんと行くんでしょ?」
「ありがと、今日も一緒に行くよ」
「少し急いだほうがいいわよ」
「本当だ昨日夜更かししちゃったから、急がないと」
日向ちゃんというのは幼馴染の名前だ、明るい黒髪の元気で頑張り屋の女の子で家族ぐるみの付き合いである。日向ちゃんの家とわが家はとても仲が良く昔からよく一緒にバーベキューや飲み会などをする中であり、その中でよく話をした私たちも仲良くなって今は親友と言える中になっていると思う。一方的な思い込みだったらとても悲しいがきっとそんなことはないと思う。
「いってきます」
「いってらっしゃい」
家を出てお隣に行き鍵を開ける、日向ちゃんの家である。日向ちゃんは朝が弱い誰かが起こしに行かないとなかなか起きず、遅刻ギリギリになってようやく起きるのだ。日向ちゃんの家は両親が仕事で忙しく私がお世話をすることが多かったのでいつの間にか作られていた合鍵を受け取ったのだ。
「おきて、日向ちゃん朝だよー」
「うーまだ眠いよー」
とても眠そう日向ちゃんだが、そろそろ起きないと朝ごはんが食べれない。でもとても可愛いからあと5分ぐらいならいいかな、でも朝ごはん食べれないと体に良くないし。
「うーんおはよう雪ちゃん」
葛藤している内に起きたらしい
「おはよう、朝ごはんお母さんが用意して行ってくれているから、食べよう?」
「うん、でもその前にいつもの」
「…」
流れで誤魔化せないかと思ったダメらしい、いつものとは朝のハグである。昔から両親の仕事が忙しいことからさみしい思いをしていた日向ちゃんにやっていた愛情表現だったのだが、いつの間にか朝ハグする習慣ができていたのだ。
「ほら、はやくー」
急かされてしまった、別にハグがいなわけではないのだが、日向ちゃんももう大きくなりとても可愛くなってしまった、昔は問題なかったのだけど、今は可愛くなっているのでとても緊張するのだ、前世なら告白して玉砕するような美少女とハグをするというのは役得なのかもしれないが、今は女の子同士で親友にそんな目を向けてはよくないだろう。
「どうしたの?早くぎゅーってして?」
「…わかった、行くぞ」
「うん、ぎゅー!」
「はい!もう終わりご飯食べよう!」
「えーもう終わり?」
「終わりです!ごはん温めておくから早く来るように!」
「仕方ないなぁ、着替えたら下に降りるから待っててね」
それからご飯を食べてながら日向ちゃんの髪の毛をセットして、いつものように手を繋ぎながら学校について友達と挨拶をしている内に日向ちゃんが席に来た。
「ほら、おいでー」
いつも通りに日向ちゃんの膝の上に座りながら周りの友達と他愛もない雑談をしていたのだが。
「ふたりとも、すごく仲がいいよねー膝に座ったり、毎日一緒に登校してりしてて」
「そうでしょ?親友だからねー」
「えー親友と書いて恋人と読むでしょそれー」
「ふふん、雪ちゃんは誰にも渡さないよー」
もしかして、距離感近いのだろうか前世男の子だった時には、もちろんこんな距離が近いことはなかったし、女の子同士は腕を組んだりしていたのだが、もしかしたら普通ではない?帰ったら少し確認をしてみようかな。
「雪ちゃんお昼食べよ?」
「お花摘み行ってくるから待ってて」
「わかった、待ってる」
お手洗いから帰って教室に入ろうとした時だった。
「あの、今少しいいですか?」
「えーと、渡会くん、どうしたの?」
「あのこれ後で一人で読んでください!」
「?わかった後で読むね?」
その時はあんまり気にしないでご飯食べて授業が始まる隙間の時間に手紙のことを思い出してこっそり読んでみたのだが、どうやら放課後に屋上で話したいことがあるらしい。
「これどう考えても告白だよねぇ」
「雪ちゃん何見てるの?」
「うわっ!何でもないよ?」
「ふーん、そうなんだ」
「えーとあれだよ今日委員会で放課後ちょっとお手伝いしないといけなくなって。その連絡」
「だから今日は先に帰ってて」
「ううん、待つよ一緒に帰りたいし」
「わかった、すぐ終わると思うから少しだけ待っててね、帰ったら少し話したいこともあるし」
「?わかった、待ってるね」
危ない危ない、もし告白だとしても違うとしてもあんまり知られない方がいいよねぇ、こっそり渡してきたわけだし、とりあえず放課後になったら行ってみよう。
「じゃあちょっと待っててね」
「わかった何かあったら連絡してね、絶対すぐ行くから」
「すぐ終わるから大丈夫だよありがとう」
「うん待ってるから」
屋上の扉の前で一呼吸いれて、扉を開けると予想通り緊張した様子の渡会君が待っていた。
「来たけどどうしたの?」
「あの、好きです付き合ってください!」
今さらながら、私はやっぱり女の子が好きだし男の子と付き合うのはちょっと難しい、何とか断らねば、でも何といえばいいのだろうと悩んでいたら。
「返事はまた今度でいいので!」
と言って去って行ってしまった、断り損ねたけど今度また、あったときに傷つかない断り文句を考えておかないと。
「…とりあえず、帰ろ」
「日向ちゃんお待たせ!」
「雪ちゃん、終わったの?」
「うん、とりあえず今日は終わったよ、帰ろ?」
「うん…帰ろ」
「…今日、ママもパパもお仕事遅いからお泊りしない?」
「お泊り?うーん話したいこともあるしいいよ」
「お話?わかった、ご飯は私が作るから、雪ちゃんは着替えだけ持ってきてね」
なんだか元気がなさそうだったのは、両親が遅くなる日だからだったのだろうか?
もう慣れていたと思っていたけど、まだ寂しかったんだろうし、話をしようと思っていたしちょうどいい機会かもしれない。
「おじゃまします」
「雪ちゃんいらっしゃい、ご飯できてるよ」
「わかったーあとお母さんがこれ一緒に食べてって」
「わー肉じゃが美味しそうだね、一緒食べよっか」
「「いただきます!」」
「どう?おいしくできてる?」
「うん!このハンバーグすごい美味しい」
「よかったーおかわりもあるからね!」
「わー日向ちゃん大好き!」
「え///」
「いいお嫁さんになるよー」
「////」
うーん本当においしい、日向ちゃんは料理上手なのだこれなら引く手あまただろう、と言っても生半可な男にはやらないが、本当は日向ちゃんはお嫁になんて行ってほしくない、でもそれはライン越えだろう親友というラインを越えてしまう。それはいけない、だから涙をのんでいずれ送り出すことになるのだろう、私はその時どうするのだろうか。
「雪ちゃんどうしたの?」
「ううん何でもない美味しいなって、かみしめてた」
「そっかーそんなに喜んでもらえてよかったよ」
「うん、本当においしいよ」
それからお風呂に入って、布団に入って話を切り出す。そもそも日向ちゃんは私に依存しているところがある。両親がいない時期が長くて私がいたからだろうか、これまでは良かったけど日向ちゃんも大きくなってきた、高校が別になるかもしれないし、それ以外にも離れることはあるだろう。だから日向ちゃんは、
「日向ちゃんお話があります」
「どうしたの?」
「私たちいつも朝ハグしたり、お膝の上に乗ったりしてるけど、やっぱり距離が近すぎるんじゃないかって思うんだ。今日も恋人みたいな距離感って言われたでしょ?だからこういうのやめた方がいいかなって思うんだ」
「…え?」
「もう私たちも大きくなってきたし、ずっとこの感じも変に思われるかもしれないし、少しずつ減らしていかない?」
「…なんで、どうして?これまでだって仲いいねって、恋人みたいだねって言われてきたでしょ!それなのになんで今日はそんなこと言うの?もしかして今日の告白受けるつもりなの?」
「え?告白?」
「今日の放課後渡会くんに呼ばれて告白されたんでしょ?私見てたんだから、渡会くんが雪ちゃんにお手紙渡しているとこ!」
「いや告白は関係なくて」
「嘘だよ、だって告白されて後にこんなこと言ってくるのって、私と一緒にいられなくなるからでしょ?私を置いてどっかに行っちゃうんでしょ?いやだよ、どこにも行かないで一緒にいてよぉ」
まさか泣かれるとは思ってもいなかった、というかすごく勘違いされている気がする。こんなに動揺するとは、とりあえず落ち着いてもらわなくては。
「日向ちゃん泣かないで、告白は断る気だったんだ」
「…そうなの?じゃあなんで急にこんなこと?」
「ちょっと恥ずかしかったから言ってみただけだよ、だけど日向ちゃんが泣くぐらいなら全然続けてもいいから!」
「本当に?いいの?」
「いいの!だから泣かないで?私も悲しくなっちゃう」
「…うん、変なこと言ってごめんなさい、でもハグは続けてほしいです」
「わかった、今日はもう寝よう?」
「うん」
日向ちゃんを落ち着けて、眠ったのを見て考える、少し急ぎすぎたのかもしれない、私が告白されて日向ちゃんが人と付き合う可能性を考えて、逃げたくなったのだろう、だからこんな急に離れようとしてしまったのだ。もう少しやり方はあっただろうに、今度はもう少しいいやり方を考えないと、ずっと一緒に入られないのだから。
「にしても、一緒にいてかぁ、私だってずっと一緒にいたいんだよ。…大好きだよ日向ちゃん
…なんてね」
「起きて日向ちゃん、朝だよ」
「うーん、おはよう雪ちゃん」
「おはよう、目が覚めたらいつものハグしようか」
「うん、ぎゅー」
いつも通りの朝、いつも通りのハグけれども。
「雪ちゃん、私も大好きだよ」
「―――」
いつもとは違う一言を添えて、新たな一日を迎える。