メシマズ世界でご飯をつくる!   作:あれなん

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<鯛めしの作り方>
〈材料〉※炊飯器使用時
米 2合 / 鯛の切り身 2切 / 醤油、酒、みりん 各大さじ2
①炊飯器に米、調味料を入れる
②2合のメモリ線まで水を入れかき混ぜる
③切り身を入れ、炊飯を始める
※油揚げを加えても◎
※鯛の臭みが気になる場合、事前に酒か塩を振ってしばらく置くか、湯引きすると臭みが抑えられます



鯛めし

 

おにぎり自体馴染みがないためか、初回は2個しか出なかった。残った6個については少年と帝襟で分け合った。

帝襟に1つ同僚に持って帰ってもいいかと言われたので少年は了承し、明日もきっと余るので是非食べてくださいとお願いをしておく。

 

食に対する楽しみや欲がこの世界では他の娯楽に向けられているらしく、スポーツ、とりわけサッカー関連の市場規模は前の世界よりも大きい。そのおかげで少年も今回恩恵を受けているので悲しんでいいのか喜んでいいのか微妙なところだった。

 

鯛のアラを塩ふりした後熱湯にくぐらせたり、大根などの野菜をいちょう切りにし下準備をする。鍋に水や酒を入れ煮立たせた後、下準備したものをすべて煮込む。最後に味噌を加えると鯛のあら汁の完成だ。

事前に鍋で炊いて置いた鯛の炊き込みご飯を皿に盛り、ついでに昆布締めした鯛のさくを食べやすいように切る。

 

「ぐへへへ…」

 

鯛の炊き込みご飯にあら汁、鯛の刺身まで揃うと少年はにんまりとした顔を抑えきれなくなった。

 

「なんの匂いだ?」

 

「…えーっと?」

 

「絵心甚八。アンリちゃんからここで料理してるって聞いたんだが。…おにぎりではなさそうだな」

 

「これは定食です。おにぎりがいいんでしたらおにぎり作りますよ」

 

「定食でいい」

 

「今日の定食は鯛の炊き込みご飯、あら汁、浅漬けです」

この世界では箸の使い方は幼稚園で習うぐらいで大半はスプーンしか使わない。

絵心の定食には箸に加えてスプーンを付けた。

 

「鯛という魚を使ったスープ、鯛を加えて炊いた米、あとは胡瓜を塩水につけた浅漬けというものです」

 

「その皿が俺の方には入っていないけど」

 

「これは刺身、生の魚を切ったものなので初見だと厳しいと思いまして」

 

「魚を生で…腹壊さないの?」

 

「念のため毒見は済ませてます」

 

「じゃあそれも」

 

「ダメそうだったら無理しないでください」

 

鯛めしをよそった器を手に取る。醤油と鯛の香りがふんわりと漂ってきた。鯛の白い身はふっくらとしている。口に入れると身からはぎゅっとつまった旨味がじんわり広がっていく。香ばしい醤油も合わさるとたまらない。口直しに浅漬けを食べるとさっぱりとしていてさらに鯛めしが食べたくなる。

あら汁からまだ湯気が立っているのが目に入り、器を引き寄せた。スプーンでひと匙掬う。

 

「……料理など非合理的だと思ったんだがな」

 

飲み込んでも続く余韻に浸りながら絵心はそう言う。

 

「合理性が必要な時もありますけど、ちょっとぐらいふらふらした方が楽しくないですか?」

 

「…そうかもな」

 

あら汁は海の香りが詰まっているようで、その味と少年の言葉に思わず笑みがこぼれた。初めて食べる生の魚は透き通っている。少年に勧められわさび醤油を少し付けた。

わさびの強い香りの中で噛むたびに淡い甘さが広がっていく。繊細で透明感がある旨味だ。

 

少年の説明をBGMにあっという間に完食してしまう。

エナジーバーでは経験したことがない満ち足りた感覚だった。

 

「今日帰るんだっけ?」

 

「16時頃に帝襟さんが送ってくれる予定です」

 

「来週までに用意しておいて欲しいものある?」

 

「甘いものが食べたいので多めに砂糖とバターが欲しいです」

 

「わかった。用意する。まだ時間あるなら1週間分の料理、作っておいてくれない?おにぎりでいいから」

 

「え」

 

「材料まだあるよね」

 

「材料はありますけど。冷蔵でも1週間は日持ちしないですよ」

 

「冷凍してもダメそう?」

 

「冷凍しても解凍するなら湯煎する必要がありますし…」

 

「レンジで解凍もできない?」

 

「レ、レレレンジ!?あるんですか、ここに?!」

 

「うわ、びっくりした。ブルーロックは最新設備を入れてる。後ろの壁の白い部分がレンジだよ」

 

少年の記憶にある箱の形ではなく、それは壁に埋め込まれていてただの大きな長方形の白いタイルのように見えた。この世界でレンジは高級品だ。用途がリキッドジェルか飲み物を温めるぐらいしかなく、一般家庭では電気ケトルで十分足りる。

 

右隅に小さくマークがあるのを発見し、恐る恐る触れてみる。ピッという音を立て扉が開いた。扉を開いて中をのぞくと、少年の知っているレンジの中とそう変わらないことに安心する。もしかしてレンジの存在に早く気が付いていれば下ごしらえの時間を短縮できたのでは…ということに気が付き、少年は落胆した。

 

「ふ、ふふ」

 

表情がくるくる変わり忙しない少年の様子が面白かったのか絵心が笑い出す。

 

「絵心さん、これの説明書とかありますか?」

 

吹っ切れた少年は絵心に訊ねた。絵心はタブレット端末をすいすいと操作すると少年に渡す。それを流し読みした少年がぱっと顔を上げた。

 

「『オーブン機能』…オーブン!?」

 

「オーブンなんてよく知ってるね。酔狂な金持ちがエナジーバーに均等に焼き目を付けたいとかで発明したらしいんだけど。全く非合理的だ」

 

「これさえあれば、百人力です!1週間分の料理作って冷凍しておきますね」

 

「うん」

 

「あ、追加で欲しいものがあって、…重曹に小麦粉とあと…」

 

「後でメールしといて」

 

「はい!」

 

【少年はオーブンレンジをゲットした!】

 

 

 

 

 

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