YMT(ヤオモモの弟マジ天使) 作:HIGHレボリューション
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不定期ではありますがちょくちょく投稿していきたいです
「おいクソ共! 休日の朝っぱらからギャーギャーうるせェんだよ!!」
リビングの扉がバーン!と勢いよく開き、不機嫌オーラを全開にした爆豪勝己が怒鳴り込んできた。手には歯ブラシ、寝起きのツンツン頭はいつも以上に爆発していた。
「あ、爆豪……ヤバいタイミングで……」
切島が冷や汗を流す中、爆豪の鋭い三白眼が、リビングの中心にいる見慣れない小さな影――千を捉えた。
「あァ? なんだこのガキ……」
眉間に深いシワを寄せ、チッと舌打ちをして千を見下ろす爆豪。
その極悪人ヅラと、威圧感たっぷりの低い声に、千の小さな肩がビクッと跳ねた。
千は慌てて八百万の背中に隠れると、そのドレスの裾をぎゅっと握りしめ、涙目の上目遣いで呟いた。
「ももねえさま……あのツンツンのおにいちゃん、お顔がこわい……」
ピシッ。
その瞬間、爆豪勝己の中で『何かが弾ける音』がした。
普段なら「あァ!? 誰が怖いだクソガキ!!」と怒鳴り散らすところだが、爆豪は目を見開いたまま、完全にフリーズしてしまった。
(こわい……? 俺が……この純度100%の無垢な生き物に、恐怖を与えた……?)
爆豪の脳裏に、千の怯えた顔がスローモーションでリフレインした。
数秒の沈黙の後、爆豪は持っていた歯ブラシをポロッと落とし、一切の感情を失った顔でクルリと踵を返した。
「おい爆豪!? どこ行くんだよ!」
切島が呼び止めるが、爆豪は無言のままフラフラと廊下の奥へ消えていった。
そして、きっちり30分後。
ガチャリ、と再びリビングの扉が開いた。
「やぁみんな。今日もいい天気だね」
『いや誰ェェェェェェェェ!!?!?』
A組全員の絶叫がハイツアライアンスを揺らした。
そこに立っていたのは、いつもの凶悪な爆発頭ではなく、高級トリートメントとアイロンを駆使して完璧にキューティクルを整えられた、サラッサラのストレートヘアーの爆豪勝己だった。
しかも、眉間のシワは消え去り、口元には爽やか俳優のようなスマイルを浮かべていた。
「ば、爆豪……お前、その頭……! ていうか喋り方!!」
上鳴が恐怖のあまり後ずさりする。
「幻覚だ……俺たちついに集団幻覚を見始めたんだ……」
瀬呂が頭を抱えた。
しかし、当の爆豪はクラスメイトの阿鼻叫喚を完全にスルーし、優雅な足取りで千の前にひざまずき、そして王子様のように優しく微笑みかける。
「ごめんね、さっきは驚かせちゃったかな? もう怖くないよ」
そのサラサラの金髪が、窓からの光を反射してキラキラと輝いていた。
千はぱぁっと顔を輝かせ、
「わあ! さっきのおにいちゃん? かみ、さらさらでキラキラ! おうじさまみたい!」
「! ――っ……!!」
千の小さな手がサラサラの髪を撫でた瞬間、爆豪は胸を強く押さえ、声にならない歓喜の叫びを上げてその場に崩れ落ちた。口からは一筋の魂(エクトプラズム)が抜けかけていた。
「爆豪まで陥落したぁぁぁぁ!!」
「あの爆豪が、ガキの『怖い』の一言でアイロンかけて出てきやがったぞ!!」
「ちょ、ちょっと待ちなさい! 爆豪さんまで千にすり寄るなんて許しませんわよ! 千の王子様は私ですわ!!」
八百万がわけのわからないことを言い出し、未だに「一片の悔いなし」のポーズで立つ轟、天井で浮遊し続けるお茶子、そしてサラサラヘアーで爽やかスマイルの爆豪。
最強の5歳児がもたらしたA組の崩壊(カオス)は、ついに引き返せない領域へと突入してしまった。