キラーチューンとの生活   作:雪夜

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トラックメイカーの話です。一旦当初の目標は達成!嬉しいですね。お気に入りや評価をして下さった皆さん、ありがとうございます。


キラーチューン・トラックメイカーと市役所

「や、トラックメイカー。昨日ぶりだね」

 

「来たかマスター。悪かったな、急に呼び立てて」

 

 

「構わないさ。これといって予定も無かったからね」

 

 ある朝、僕はトラックメイカーに連絡を受けてジュークジョイント"Killer Tune"を訪れていた。彼いわく、やるべき事が出来た、ということらしい。

 

「それで、やるべき事ってなんだい?」

 

「ま、そう大した話じゃない。そろそろ俺たちの戸籍を取らなきゃなって話だ」

 

 なるほど、と頷く。今、キラーチューンの皆は自分の戸籍を持たない状態でいる。精霊は戸籍を取らずともこちらに留まることが出来るが、それはそれで不便が生じる。恐らく、この店を正式に開店させるために、戸籍が必要になったのだろう。

 

「ただ、それなら皆を呼んだ方がいいんじゃないのかい?精霊の戸籍に関する知識はないけれど、本人不在で戸籍が取れるとは考えづらいな」

 

 そう言うと、トラックメイカーは首を振って否定した。

 

「普通の人間ならそうだろうが、俺たちは精霊だ。マスターとの縁を頼りにこっちに来てる訳だから見る人が見れば、どんな精霊がいるのか、なんて一目で分かるさ。多少、書かなきゃいけないこともあるだろうが、すぐ終わるだろうよ」

 

 それなら大丈夫か、と考え、トラックメイカーと市役所へ足を向けた。

 

 

 ただ、気になることが1つ。精霊との繋がりは見る人が見れば分かる、と言う。しかし、見る人────つまるところ、精霊についてよく知る人物は、市役所にいただろうか?

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━

 

「いらっしゃいませ。本日は精霊の戸籍登録で宜しかったでしょうか?」

 

 

「あ、はい。そうです」

 

 市役所に着いて、精霊担当の窓口へ行くと、そこにいたのは水色の長髪に眼鏡をかけた、ド級の美人であった。前来た時はこんな人、いなかったはずなのだが最近入ったのだろうか?前からいたのならこんな美人、忘れるはずもないだろうし──

 

「ほらマスター、あんまり見とれてるとアイツらにどやされるぞ。早く着いていく着いていく!」

 

 気づいた時には既に窓口から出てきた水色の髪の人がこちらを見ていた。どうやら別室で手続きをするらしい。慌てて、僕は彼女へとついて行った。

 

 

 

「こちらが、必要になる書類にです。こちらの太枠の部分に必要な情報を記入して頂き、ここに印鑑をお願いします」

 

 

 言われた通りに書類へと書き込んでいく。そこまで大した情報は求められなかった。とはいえ、6枚分ともなるとそれなりに時間がかかる。ようやく書き終わって渡せば、担当の人はペラペラと紙を捲って確認し、小さく頷いた。これで終わり、という事だろうか。

 

 

「あ、少しお待ちを。あと少しだけ、確認する事がございますので」

 

 確認、とはやはりトラックメイカーの言っていた縁の事だろうか?担当の人の見定めるような視線が少しこそばゆい。しばらく視線を受けたあと、また彼女は小さく頷いた。

 

「はい、大丈夫です。しっかりと縁が結ばれている事を確認しました。……しかし、6人ですか」

 

「あはは……。やっぱり多かったですかね?お手数お掛けします」

 

 

「いえ、そこは構いません。しかし、多いのは確かです。精霊界からこちらに来るのも簡単ではありませんから、よほど愛されているのだな、と」

 

 ふと違和感を感じた。彼女の言い方だと、こちらへ来る方法を知っているようにも感じる。というより、精霊界の事情について詳しいのだろうか?

 

「その、少し聞きたいんですが……精霊界からこちらに来る方法って、解明されてるんですか?うちのはどうやって来たのかがよく分からないそうで」

 

「あ、いえ。方法自体が技術化されている訳ではありません。カードを通して渡る、とか魔術を使う、とかそれらしい話はいくつかありますが。でも、条件だけは明確に判明しています。それが少し簡単ではない、と」

 

「なるほど。……その、精霊界についてお詳しいんですね」

 

 それを聞いた瞬間、一瞬彼女が固まった。すこしずり下がったメガネを上げながら、彼女が口を開く。

 

「私も精霊の1人ですから。……あの、この際聞いておきたいのですが、そんなに馴染んでますか?私」

 

 え、と今度はこちらが固まる番だった。少し視点を下げて、名札を見れば、そこにはファイメナ、という5文字が記されていた。

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━

 

「全く、気づいてなかったのか?役所で水色の髪をしてるってだけでも分かりそうなもんだけどな」

 

 市役所から出てすぐ、トラックメイカーはニヤニヤとして僕のことをつついた。どうやら彼は彼女が精霊だとはなから気づいていたらしい。確かに、職場での髪型や服装がかなり自由になったこの時代でも、水色の髪というには違和感を覚えるべきだった。

 

「いや、言われてみればそうだけれど……。それにしてもスーツが似合いすぎじゃないかな、あの人。こう、事務作業している姿が妙に様になっていた気がするのだけれど」

 

「そりゃまぁ精霊も多種多様だ。スーツの似合う精霊もいるだろうさ」

 

 そう言われてしまえば返す言葉もない。なんとか話題を変えようとした時、ふとファイメナが言っていたこちらにくる条件の話を思い出した。

 

「そういえば、トラックメイカーは知っているかい?こちらにくる条件、とやら。気になっていたのだけれど聞き損ねてしまったよ」

 

 

「ん?あ~……。言ってもいいものかな……」

 

 反応的には、彼も知っているらしい。とはいえ、歯切れが悪いのは少し気にかかる。少し考えたあと、まぁいいだろ、と言って、彼は話し始めた。

 

 

「条件ってのはな、精霊本人とマスターが相思相愛って事だ。精霊からの一方的な愛じゃこっちには来れないし、逆に使い手側がどんだけ想いを寄せても精霊が来るとは限らない」

 

「なるほど。そういう訳だったんだね」

 

 

「あぁ。あの担当が驚いてたのもそういう訳だ。なんせ、俺たち6人が全員別々の所に行く可能性があった中で、全員があんたの所に集まったって訳だからな」

 

 それはなんとも嬉しい話である。しかし、一瞬言い淀んでいたのは何故だったのだろうか。

 

「そりゃ、俺はマスターの事を気に入ってるのを隠すつもりなんてないから良いが、アイツらは別だろ。お前のことが好きすぎてこっちに来た、なんて第三者の口から言うのは俺だって悩む。ま、面白そうだから言ったけどな」

 

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━

 

「マスター、おかえり。……あとトラックメイカーも」

 

「レコ、俺をついでみたいに扱うなよ。傷つくんだぞ?これでも」

 

「ついでにした訳じゃない。マスターしか目に入らなかっただけ」

 

「余計傷つく……と言いたいところだが、俺も気持ちは分かるからヨシとしよう。俺たちはマスター大好きクラブみたいなもんだしな」

 

「信じられない。間違いじゃないけど、わざわざマスターの前で言う?乙女心を分かってないね」

 

「ヨシとはしたが傷ついたのには変わりないからな。やり返しってやつさ。はっ、その状態で殴られようと痛くも痒くも───って、レッドシールになるのは反則だろ!?マスターも止めてくれ!スクラップになるのはごめんだ!」

 




可愛いキャラとの恋愛も素晴らしいですが、こういう重めの友情とか親愛の情も素晴らしいと思います。
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