ならば、どう解釈しても従えない指令も指令の意思なのだろうか?
それは人差し指の利益になるのか?
「『人差し指』の事どう思ってる?」
「めちゃくちゃ意味不明な組織。」
とある情報系フィクサーがとある飲食店で黒スーツの女性に取材をしていた。
「どうしてそう思うんですか?」
「『鶏肉を生で食え』から『自分の目をフォークで突き刺せ』、挙げ句の果てには『翼の禁忌を犯せ』だの『指令』が致命的な事を書くのは日常茶飯事、それなのに指令に従えばより良い人生が得られるって盲信してる人達がどんな役職にも居る…どう考えてもおかしいでしょ?」
黒スーツの女性は不敵に笑う
「では何故人差し指に所属を?」
「信仰、そして好奇心。」
黒スーツの女が半端に脱色された自分の髪を撫でる。
「どうして私の様な不信心者を代行者にしたのか、どうして私への罰はなんとかできるものばかりなのか、どうして私を人差し指に入らせたのか、どうして指令は私への指令をやめないのか…」
恐ろしい事を淡々と、さも当然という風に黒スーツの女は言う。
人差し指の指令に従わなければ、近日中に死ぬか、もしくは死ぬよりも恐ろしい事が起きる。全てが指令次第と言えど、それは人差し指の暗黙の了解であった。
「最初の頃にね、どこだったかの子供を殺せって言われて、無理そうだったから無視したの。そうしたらとても遠い区から代行者達が私を殺しに来た。彼らに下された指令は『一ヶ月以内に殺せ』だった、死ぬのが嫌で一ヶ月逃げたら『自分は殺されなくてもいいと伝えろ』って指令が私に届いたのよ?それで恐る恐る伝えたら代行者達は帰って行ったわ…殺そうとしたのも生かそうとしたのも指令なの。」
「それは、興味深いですね。」
「でもしばらく指令をこなしてたらまたある日無茶苦茶な指令が来たわ、戦争に参加しろとか、特色フィクサーに喧嘩を売れとかね。当然そんなのしたら死ぬでしょ?命惜しさにまた逃げだして…そしたらまた代行者に追われて…」
「また生き残った?」
「そうよ、今度はただ逃げたじゃなくて、無理を承知で戦ったの。それで気づいたわ、指令を無視したのに武器が力を与えてくる事に。」
「それは…」
「その直後、戦闘中に指令が届いたのよ『代行者として活動せよ、期限は不死の川に未来の影を見るまで』ってね。」
「未来の影ですか、T社の新製品ですかね?」
「さあね、ただ私はこの指令の時から少し考えを改めたわ。指令の意思は指令の意思、私の意思は私の意思。交わらず、相容れなくとも、指令も私もお互いを利用する事ができる。」
「利用…」
「ここまでの話はどのくらい外に話していいのかわからないけれど、まあ問題があったら私に指令が届くわ、何も届かなかったら予定通りに━━
「おい、ここに人差し指の女が来てないか?黒いスーツで髪を中途半端にブリーチしてる女だ。」
その時、外からチンピラ(本当にチンピラとしか形容できない)達が入ってきた、どうにも黒スーツの女を探していたらしい。
「もしかして、私を探してるのかしら?」
「…これも指令なんだ、悪く思ってくれるなよ!」
チンピラ達は人差し指の庇護を受けるために指令を受け取ったようだ、その内容は定かではないが、スーツの女がまともな目に遭う確率は低いだろう。
「…貴方達みたいなのをぶつけられるのは久しぶりね。」
「うおおおお!!!」
『強制解禁』
『神託端末機[ハルペー]』
黒スーツの女の手から小さな端末が落ち、床に着いた瞬間
四方八方へショーテルの斬撃が繰り出される。
チンピラ達は斬撃に耐えられず、切り刻まれ、倒れていく。
「…」
フィクサーは絶句していた。
黒スーツの女は所属組織から命を狙われているのに平然と組織の情報を話し、あろうことか追っ手を返り討ちにしたのだ。
正気とは思えない。
『(ビープ音)』
「…これを読めって?断るわ、趣味じゃないもの」
フィクサーには、黒スーツの女の手元にある端末の文字がいやに鮮明に見えた。
『ディアブルへ、「それはそれ、これはこれ」である事を表明しろ。期限は1分』