リンゴォ氏に言われた通り、リア様の部屋まで戻った。リア様は私が部屋に入るとすぐに近く寄るようにジェスチャーをした。何故だか怒られているような気がして、行くのは気が引けたが、行かないわけにはいかない。
「#$#$%$」
「え?」
なんて言われたかわかりなかった。もしかして怒っている? 私が勝手なことをしたから?
リア様が手を上げた。
「あっ」
ぎゅっと目を瞑った。
自分でも何に怯えているかわからない。殴られると思ったからではないと思う。リア様がそんなことするはずがない。でも、私が隠し事をしたのがバレてしまった様な気がして、自分自身を守りたくなってしまった。
しかし、想像とは違いリア様は撫でてくれた。私には優しくされる様な権利はない。でも、リア様は優しいので私をそう扱う。私は敵といつでも対峙できるように心に氷の壁を作っていた。それは見栄にに近いものなんだけれど、それがなければ、私は震えて立つことすら難しい。でもせっかく作った氷の壁が瞬時に溶かされてしまったかのように、その瞬間安心してしまった。
「##(“」
なんと言われたかはわかりませんが、優しい言葉をかけられました。くすぐったいような感情に陥るのは、きっと撫でられたからだけではありません。
もし、言葉と裏腹に怒っていたらどうしようと思い、恐る恐るリア様の顔を見上げてみても、顔も優しいのです。ただ、なんだか怒られるよりも罪悪感が酷く強い。
「でも、何を言っているかわからないじゃない。私はもうリア様のお言葉を聞くといっぱいいっぱいになってしまうわ」
突如フラッシュバックするように私に仕事を変わってくれと頼んできたメイドのことを思い出した。
そうか、そういうことだったんだ。
私はリア様が怒ったことをあまり見たことがなかったから、怒ったのが怖いのだと思った。実際今日食事会の出来事は怖かった。
でも、違う。
きっとあのメイドは優しさが怖いのだ。
リア様はイスカ様や旦那様とも全く違った考えの持ち主で、別に何か失敗したからと言って怒ることはない。基本的に優しいのだ。でも、その代わりに人に興味があるわけではない。
人に興味がないと言っても、別に無関心ということではない。ただ、人に対して何かをすることがないのだ。誰かに頼まれたり、誰かにお願いされたら、全力で応えてくれる。受動的と言い換えればいいだろうか? しかし、受動的とも違う気がする。何かうまく言葉にできない。
「リア様怒っていないですよね?」
そんなことはわかっている。なのに聞いてしまった。
言葉にしてから気づいた。私はリア様からの関心がないことを恐れているのだ。その優しさが私への無関心なのではないかと恐れているのだ。
「#」
リア様は精一杯頷いた。でも、一瞬だけ悲しい顔をした。それを笑顔で覆い隠した。
私は何を聞いているのだ。リア様が言葉を喋れるかなんて関係ない。それを信じないといけないのに。
「変なことを言ってごめんなさい。でも、私リア様に隠し事をしていたんです」
せめてこれは言わないといけない。
リア様が怖くなって言ったのではなく、私が負い目を感じているのだと。
そして、イスカ様の使用人がおそらく犯人だと言うことを。
しかし、その機会はドアのノックによって中断された。きっとリンゴォ氏だ。カードを取ってきたのだろう。私がドアを開ける前に、ドアは開いた。
「リア様。失礼します」
「え?」
しかし、入ってきたのは、イスカ様の傍付き。それも兵を率いるようなガタイのいい指揮官が入ってきた。
私がどうすることもできないままに、傍付きの指揮官はリア様に近寄った。この人はあの時イスカ様と言い争っていた。
「失礼します。リア様、私はエドガーと言います。犯人を見つけたので、リア様にご報告をと」
「#」
「実は料理人が犯人だと思われていましたが、外部から来たスパイの可能性があります。調理部屋の裏口から森へと伸びる足跡がありました。スパイにとって雪が降ることは想定外だったのでしょう。」
それは明らかな嘘だ。一番最初に裏口を確認したのだ。もちろんそれ以外は確認できてはいないが、可能性は低い。しかし、今私はそんなことを言えるような立場にはない。
「#$」
「犯人は徒歩で森を移動しています。馬なら追いつける可能性があります。私たちだけが行くこともできますが、リア様が殺されそうになったのに、リア様に報告しないととも思いまして」
「#」
「もちろん、来てくれますよね」
面の皮が厚いなんてもんじゃない。こんなのあからさまな罠だ。私が気づいていなかったとしてもそんな要求は飲まない。
「#」
でもリア様はそれを飲んだ。
貴族とは戦う人を意味する。だからここで断ることは貴族の沽券に関わる。
「り、リア様、リア様が行く必要はありません!」
流石に目の前でこいつが怪しいと言うのはできない。
「なぜメイドが口を出す?」
それは至極当然の疑問であった。
「リア様は行かれると今頷いた。しかし、それを止めるのはおまえだ。お前がリア様の傍付きならば、言葉にするのを理解しよう。だが、お前はただのメイドであり、軍事作戦に口を出せるだけの知識があるわけではないはずだ」
そんなことは分かりきっている。私の進言はあまりにも身分不相応だ。しかし、私はこの人が犯人であることを知っている。どこかで二人きりになってこの人たちが犯人だと伝えないといけない。
だったら何を言うべきか?
私は実際役立たずだ。魔術なんてできない。弓を射ることも槍を持つことも怪しいだろう。私ができることなんて強いて言うならば嘘をつくことくらいだ。
「私も付いていくからです」
「なに?」
「##!?」
「当然です。リア様が行くところについていくのがメイドとしての仕事。戦場であろうとどこであろうと付いていきます」
そんなわけがない。噓に決まっている。
「第一、貴方たちにリア様の言葉を理解できるのですか?」
「……」
相手がイラついているのがわかる。
こんなことメイドに言われたくないだろう。
「一番位の高いリア様の言うことを聞くのが、当然のはずです。それなのに言葉がわからないという失態をするつもりではないですよね」
リア様の言葉なんて私ですらわからない。それにそんな戦場の采配なんてものできるわけがない。
「良いだろう。そこまで言うのならリア様と一緒に来るが良い」
「#$##?」
リア様は行かせる気がないのがわかる。だっていくらなんでもメイドが付いてくるなんて正気ではない。
「リア様、行かせてください」
「…#」
「それでは行きましょうか? 兵を表で待たせています」
「お待ちください。この寒い気温で防寒着を着ずに出るなどということはないでしょう?」
「…もちろんです」
嘘だ。連れ出せれば良いと思っていたに違いない。今、嘘とうそがぶつかり合っている。リア様を陥れるための嘘とリア様を救うための嘘だ。
「少し出て行ってくれませんか?」
「何がです? 別に男の着替えを外で待つ必要もないでしょう」
「…そうですね」
どうやらリア様と二人になることもできないようだ。
そのまま二人で話すこともできず、結局馬に乗ることになってしまったのである。
馬には前回と同じようにリア様の馬に乗せてもらった。今回で二回目の乗馬だったが、この前乗せてもらったのは幸運だったかもしれない。少なくとも今は馬に乗っても落ち着いている。もし、これが初めてだったら、馬に乗るだけで手いっぱいだったかもしれない。馬が走り出すと私はリア様に向かって喋りかけた。リア様を囲うように従者たちは馬を走らせる。まずい。周りには敵だらけだ。
流石に城の近くではこいつらもリア様を謀るような動きはしないだろう。
チャンスを見てこの隊列からリア様を逃がさないといけない。
「リア様、聞こえていますか?」
しかし、声が風に流されて聞こえていないようだ。
仕方がない。
「リア様、聞こえていますか?」
今度はリア様の胸に直接顔を当てるように声を出す。振動が直接伝わる方がいいだろう。
「#%!」
なんだか驚いたような声を出しているが、今はそれどころじゃない。
「聞いてください。リア様」
「#」
「今目の前にいるあいつらは敵です」
「#?」
聞こえていないのか?
「もう一度言いますよ。あいつらは敵です」
「#?」
どうして聞こえていないの?
リア様の顔を振り返って見ると勘違いだということにすぐに気が付いた。
聞こえていないのではない。わからないのだ。
リンゴォ氏が言っていたことを思い出した。リア様はそもそも私たちの言葉がわかっていない可能性があると。
「リア様、もしかして私の言っていることがわからないのですか?」
馬はどんどんと進んでいった。森に入ると、木々の枝が時々私に当たりそうになる。まずい。どんどんと城から離れている。それに森に入ってしまえば、周りから何が起こっているかわからない。
「#」
顔は見れないが、困っていそうな顔なのがわかる。
リンゴォ氏は言っていた共通の話題がなければわからないのだと言っていた。リア様は誰を指しているのかも、そして「敵」という単語もわからないのだ。
仕方ない。
「あいつらが私たちの敵です」
指を指して示した。少なくともこれで奴らを示していることがわかる。でも、これはリスクだ。
「そこのメイド一体何を話している?」
バレた。おそらくはあいつらもリア様に気づかれることを警戒しているのだ。
「#$?」
しかし、リア様もまた気づいていない。わからないのだ。
どうすればいい?
まだ、こいつらが敵だと言うか?
でも、リア様にわかって貰えるのか?
リア様にわかって貰えないまま、これを続けたら流石に気づかれるだろう。そしたらこいつらはいきなり攻撃してもおかしくない。そうなったらリア様が襲われてしまう。
だったら、タイミングを見計らって言うべきか?
しかし、この森に進んだのは罠を仕掛けたからではないか?
これ以上進んでいいのか?
何が正しいかわからない。
こうやって付いてきたのはほぼ我儘に近い。私が付いて来たからって本当に役に立ったのか?
それに何より信じて貰えるのか?
リア様は私とこいつらどっちを信じる?
何の身分もない私か?
それともイスカ様の御付きか?
「ははっ」
緊張で笑いが出てきた。
一体何を考えているのだ。
あの時、そうだ、あの時を思い出せ!
ハーッと思いっきり息を吸った。肺を凍らせるような冷たく乾いた空気で満たされる。
私は大きな声で叫んだ。
リア様は強盗の言うことよりも私を信じてくれたんだ。
「リア様! こいつらはあなた達を騙す敵です。あなたが排除すべき敵は目の前にいるこいつらです」
横を並走する御付き達は顔を真っ赤にさせて、血走る目をこちらに向けてきた。それは人間の皮を被った化け物が正体を現したように、恐ろしい形相だった。瞬時に魔術を組み立て、槍のような形状の魔術を作り出した。
まずい。
それを見てもリア様は馬を止めようとした。だが、馬を止めても急には止まれない。あれが発射されたら馬を止めても避けられないだろう。
「リア様! お覚悟を。【第四術式 擲廻転槍】」
急に止まろうとした馬が後ろ脚で立ち、本意ではないだろうが、リア様と私の盾になった。しかし、それを貫いて槍が私たちに向かって発射された。
間に合わなかった。
槍は私たちを挟み込むようにして、貫かんと迫った。
しかし、拍子抜けするほどに目の前を交差した後、すり抜けていいた。そればかりか御付き達とどんどんと距離が離れ、前を進んでいく。
どういうことかと周りを見渡すと景色が止まっているように見えた。そう、これではおかしいのだ。だって私たちは馬に乗って前に進んでいたのだから。でも、その馬は死んだ。だが、空中に投げ出されるわけでもなく、その場を停止していた。リア様の足元を見ると何か足場のようなものに立っていた。その足場は前方に風を出し、馬が走る勢いと風の勢いで相殺し、空中に一時的に留めていたのだ。私が前に飛ばされるのを抑えるために、私を抱き寄せ、そして私が前に進んでいく力を代わりに受けてくれていたのだ。その均衡が崩されるとリア様は私を抱く手をそのままに空中に抱き寄せた。
Piiiiiiiiiii
森の中から口笛が聞こえた。
御付きの人たちが馬を反転させ戻ってきた。
「#€>##」
しかし、一定の間隔を保って近づいて来ない。きっと仲間を待っているのだ。
「##€÷」
リア様がしゃがむとその意図を直ぐに理解した。リア様に背負って貰った。リア様の足元が魔術の反応で光ったと思うと宙を浮いた。前に見た馬に乗る方法で一瞬飛び上がった。その後リア覆うように様を中心に球体の魔術が展開された。見たことがある飛行魔術だ。
「絶対に飛ばせるな! 飛行魔術の弱点は初速が遅いことだ!」
兵士達が魔術を放ってきた。大小様々狙いが正確なのもあれば全く関係ない所に飛ぶものもある。リア様も当たるものだけ迎撃していたが、それに混じって大きな槍の様な魔術が飛んできた。それを避けるとリア様を全く狙っていなかった魔術が不運にも当たってしまった。飛行魔術はどうやら繊細な魔術の様で、かすり傷程度の当たり方でもグラグラと揺れる。リア様が飛行魔術を解いて地面に着地した。後ろでしがみついている私でさえ相当な衝撃だ。リア様の方が大きな衝撃を食らったことは想像に難くない。
「墜ちたぞ! 囲え! 囲えええ!」
何処に隠れていたか、馬に乗ったままリア様を囲った。軽く数えて二十人はいる。囲まれたことにも驚いたがそれ以上にリア様に謀反しようとこんなにもの数が集まったことに動揺してしまう。
「全員! 第二術式を放てえええ! 相手に攻撃の隙を与えるなああああああ!」
その号令と共に四方八方から魔弾が飛んできた。イスカ様が使った魔術と同じ魔術。しかし、あれよりも素早く、当然数が多い。壁と見間違うような連続した光の弾。
無理だ。
処理しきれない情報の波で私の頭はこの状況と同様に真っ白くなっていた。
そんな私に走馬灯の様にある記憶が流れ込んで来た。
「リア様ってどれくらい強いんですか?」
これはリンゴォ氏と喋った記憶。
「最強だ」
リンゴォ氏にしては語彙力のない言葉だと思った。こんな状況に何の役にも立たない思い出。
しかし、予想していた痛みも光の壁もやってこない。
「「は?」」
指揮官と私の驚きが重なったことなど誰も知らないだろう。壁とも言えるような光弾の群れを一人で押し返していたのだ。自らも同じ魔術を放って。イスカ様の魔術よりも側仕え達の魔術は早かった。しかし、そんな側仕え達の魔術など比べものにならない程リア様の魔術は早い。百に迫る数の魔弾をたった一人で相殺していた。
そればかりか魔弾の壁の隙間を縫って、一人に魔弾を直撃させた。
一瞬、相手の緊張が走るのがわかる。それもそうだ。あれだけの数がいて1人を殺しきれないのだ。そればかりか反撃された。
「全員、陣形を崩すな。時間を稼げ」
時間を稼ぐ?
リア様の体力を消耗させるつもりなのか?
でも、1人、2人とリア様の魔弾が当たり、1人ずつ数が減っていく。これ以上時間をかければきっとリア様が勝てる可能性も上がる。それにリア様は息切れもしていない。
これなら勝てる。
「精霊魔術準備整いました」
「精霊魔術、起動」
「精霊魔術起動! 【土精よ。陥没させろ】」
その言葉と共にリア様の立っていた地面が無くなった。3メートル程の大穴がリア様の真下に発生した。
これの為の時間を稼いでいたのだ。
しかし、リア様は落ちる訳ではなかった。魔術でできた壁を足元に作り出し、その上に立ったのだ。私でもわかるあの穴に落ちたらおしまいだ。森の中にいる獣と同じだ。肉食動物は山の高い場所に行く。獲物がよく見えるからだ。だから草食動物も山の上に行く。先に見つければ、逃げられるからだ。山での戦いは高い場所にいる方が勝つ。それと同じで今は均衡を保っているこの戦いもあの穴に落ちれば、負けてしまう。
だからリア様は落ちないように踏ん張っている。
「落とせ! 第四術式を放って落とせ! お前は穴を広げろ」
今度は大きな魔術の槍、魔槍が飛んできた。これは防ぐのが難しいのか、見てから避ける。新しい足場を作り出して空中を跳び回る。しかし、私を背負っているせいか、動きにキレがない。
「第二術式も放ち続けろ。魔力が切れたら近くの石を投げろ。何でもいい。常に攻撃を続けろ」
その時、その時の対処をリア様は決して間違えない。魔弾は魔弾で相殺するかバリアで防ぐ。魔槍は避けるか魔弾でズラす。かれこれずっと相手の攻撃が続くのに決して対処を間違えない。しかし、どんどんとジリ貧になるのがわかる。
私が重荷なのだ。動く必要がない時はまだ良かった。しかし、足場が無くなってから、リア様が大きく回って避けると私はもっと大きく回ってしまう。更に私が飛ばされない様にリア様が踏ん張ると余計に体力を消費してしまうのだ。
それに腕が笑っているみたいに震えている。
いつか力尽きてリア様にしがみつけなくなる。そうなったらただでさえ不利なのに私を守ろうとするだろう。そうなったら本当の意味で負ける。
そうなる前に、本当の意味で負ける前に、私がリア様を救うべきだ。
「リア様⋯」
「⋯⋯」
リア様は精一杯魔術に対処して声を出す余裕もない。
私にできることなんてほとんどない。私ができるのは精々手から力を抜くことだ。
「後はお任せします」
そうして大穴へと落ちていった。
「#÷€€##><###!」
リア様がこっちを振り返った。何を言っているかわからない。でも、驚きと怒りが混じった表情をしている。思い違いじゃない。今度は本当に怒っている。
でも、怒られる覚悟はできている。だってこれ以上リア様の荷物にはなれない。
「リア様前を向いて戦って!」
リア様は私がいなければ万全に戦える。リア様だけであればこの状況をひっくり返せる。リア様だけならこんな人達目じゃない。
なのに。
「私を見捨てて!」
なのにどうしてリア様は私に手を伸ばすの?
足場を降りて私を抱き寄せた。
そのまま減速する様に足場を作りながら、穴へと降り立った。まだ穴に向かっての攻撃がされていないため、一時的に空白が生まれた。
「リア様、私を置いて上に上がって下さい」
「%」
拒否された。
「それが一番勝てる可能性が高いです」
「%」
またもや拒否だ。
「じゃあどうすれば良いんですか」
「#!」
勝つと言われた気がした。文脈に合わない馬鹿みたいな解釈だが、直ぐにそれが正しいと証明された。
「下に降りたぞ! 一方的に打てるぞ」
そう言って顔を出してきた四人は直ぐに死んだ。リア様が魔槍を4つ正確に顔に叩き込んだ。
「気を付けろ! 顔を出さない様に撃て」
決して有利にはなっていない。なのに追い返していた。むしろ手でも出そうものならリア様がやり返すため、誰も穴の淵から顔を出せない。穴に落ちた結果、攻撃は緩まっていた。
「これなら⋯」
しかし、そんな希望も直ぐに途絶えた。穴が更に深くなった.。それと共に穴の側面が揺れた。
最初それが何の揺れかわからなかった。
「#€##!」
リア様が穴の側面に魔術の壁を立てたことでやっとわかった。
側面が狭まっている。土壁と魔術の壁がぶつかり、ギチギチと音を立てている。この土の壁を動かしたのは、さっきこの大穴を作った魔術だ。確か精霊魔術と言っていた。この大穴を作ったのは有利な位置を作るのではなく、最初から生き埋めにするつもりだったのだ。
「そのまま死ねえええ」
そう言って顔を出してきた御付きの兵士をリア様は瞬時に殺した。
上からは兵士が横からは壁が迫って来る。
「誰も顔を出すな! そのまま押し潰せ」
穴の出口が狭まって来る。
リア様が壁を作るが、その壁の隙間から土が入ってくる。
「上から土を掛けろおおおおお!」
その叫び声で私達の頭上から大量の土が降ってきた。