「あっ……」
私の口から飛び出す言葉は、いつだってこの情けない二文字から始まる。誰かと話そうとするたびに、どうしても頭にこの音が付いてしまうのだ。これは、相手との距離感がまったく掴めない私の、ひどく臆病で、それでいて少しでも自分を守ろうとする悲しいクセだった。
私の名前は、日之影(ひのかげ)りんな。残酷なくらい純粋で、ちょっと触れただけで傷ついてしまいそうな「中学生」という時期に足を踏み入れたばかりの中学一年生だ。
三十五人もの生徒がぎゅうぎゅうに詰め込まれたこの教室で、私の立ち位置をひとことで説明するなら「完全なる透明人間」だ。休み時間を知らせるチャイムが鳴り響いても、私は誰とも目を合わせない。ただひたすらに、図書室の一番奥にあるホコリだらけの本棚の裏や、誰も近づかない薄暗い階段の下へと逃げ込む。そこで息の音さえ消して、ただ早く時間が過ぎてくれることだけを祈りながら待つ。息が詰まるけれど、波風の立たない平穏な毎日だ。
私には、短い人生の中で「友達」と呼べる人がただの一人もできたことがない。もちろん、最初からすべてを諦めていたわけじゃない。誰かの目に留まるように、カバンにこっそりと流行りのキャラクターのキーホルダーをぶら下げてみたり、クラスで話題になっている音楽を知っているようなフリをしてみたり……自分なりに、血がにじむような涙ぐましい努力はしてきたつもりだ。けれど、私が仕掛けたそんな小さなアピールに気づいて声をかけてくれるほど、この世界は優しい人ばかりではなかった。
それに、私にはひどく厄介な「持病」がある。それは「まぶしいものに対する、極度のひどいアレルギー」だ。
クラスの中心で一番目立っていて、いつもキラキラと笑い合っている明るい子たち。彼女たちが放つ光を浴びるだけで、私の目はチカチカして痛くなり、心臓がギュッと苦しくなる。世間の大人たちが無責任にほめたたえる「さわやかな青春の空気」なんて、私にとっては息ができなくなる猛毒のガスと同じだ。「青春なんて……」というひねくれた気持ちを限界までこじらせ続けた結果、私の心の中の空は、いつも分厚い雨雲に覆われたまま、どんよりと暗く沈んでいた。
だからこそ、私は誰とも関わらず、ひっそりと息を潜めて、この苦しい中学校生活の三年間をやり過ごしていくしかなかったはずなのだ。しかし、そんな私のささやかで壊れやすい平和な日常をバラバラに打ち砕く、とんでもなく恐ろしいイベントが、今まさに目の前に迫っていた。
■ 体育館という名の処刑場と、あぶれた四人組
「はい、じゃあ今日の女子のダンスの授業は、四人一組のグループを作ってねー!」
広々とした体育館に、体育の先生の無駄に明るい、耳の奥までガンガンと響くような声が響き渡った。 その瞬間。私の体中から、一気に血の気がサァァァッと引いていくのがわかった。指先から急激に体温が奪われ、手足が氷のように冷たくなる。心臓が「逃げろ!」とものすごい勢いで警報を鳴らし始めた。
(で、出たぁぁぁッ! 学校生活で一番のトラウマ、恐怖の『自由にグループ作って』の合図!!)
私は心の中で声にならない悲鳴を上げながら、体育館の冷たい壁際で、まるで石の彫刻のようにカチコチに固まった。これは、学校という残酷な世界で一番恐ろしい生き残りゲームの始まりだ。おしゃべりが上手という強力な武器を持った明るい子たちは、磁石みたいにあっという間に引き寄せ合い、「ねえ、一緒にやろー!」「いいよー!」と無邪気に笑いながら、あっという間に仲良しグループを完成させていく。
「あっ、あっ……」
私には、そのまぶしい輪の中に「入れて」と声をかけるだけの勇気なんて、ミジンコの細胞ほども持っていなかった。かといって、「私は一人でいいです」と堂々と断るような強さもない。ただ、強い川の流れに飲み込まれる落ち葉のように流されるまま、ぼんやりと立ち尽くす。誰とも目が合わないように、ひたすら体育館の床の木目を数え続けることしかできないのだ。
気がつけば、熱気と笑い声にあふれた体育館の中で、私の周りだけがぽつんと取り残され、凍りつくような空気のない空間ができあがっていた。
「あー、まだグループが決まってない子たち……そこの四人! 一緒にやりなさい」
先生のその冷たい言葉は、まるで「死刑宣告」の合図みたいだった。私は、まったく話したこともない三人の女子生徒たちと一緒に、体育館の一番薄暗い隅っこへと、ほうきで集められるゴミのように寄せ集められた。これが、クラスの底の方にドロドロと沈んで取り残された「あぶれ者」たちによる、奇跡と絶望が入り混じる四人組が誕生した瞬間だった。
息が詰まるような、重くて苦しい沈黙が、私たち四人の間を完全に支配していた。誰も、一言もしゃべらない。全員が全員、床のシミを見つめたり、何もない宙の遠くを眺めたりして、徹底的に『目を合わせること』を避けている。私の頭の中のコンピューターが、この絶望的な状況をなんとかしようとフル回転で目の前のメンバーの戦力を分析した結果は——
『ゲームオーバー確定のパーティー』
その一言に尽きた。そんな私たちのお通夜のような空気なんてまったく気づくことなく、体育の先生はホワイトボードに、今回のダンスのテーマをこれ見よがしに大きく書き込んだのだ。
『テーマ:青い海、はずむ心、自分を信じて明日へと続く道を駆け抜けよう!』
(……っっっ!!)
その、目が潰れるほどまぶしすぎる「ザ・青春」という文字を見た瞬間、私は強烈なめまいを感じて、危うくその場に気持ち悪くて倒れそうになった。青い海? はずむ心? 明日へと駆け抜ける? 冗談じゃない。そんな夏の太陽みたいにキラキラした言葉は、暗闇と押し入れを何よりも愛する私にとっては、浴びた瞬間に倒れてしまう猛毒と同じなのだ。
「はい、それじゃあこのテーマに合わせて、各グループでオリジナルの振り付けを考えて、最後はみんなの前で発表してもらいまーす!」
(はっ、発表……!? みんなの前で!? さらし首の刑!?)
あまりの恐怖とストレスに、私の顔面は内側からドロドロと溶け始め、まるでスライムのようなグニャグニャの状態に変わっていった。「ギュルルル……」という、人間が出してはいけない謎のうめき声が口から漏れたけれど、幸いなことに、他の三人もそれぞれのパニックのどん底に落ちていて、私の顔がバケモノみたいになっていることに気づく余裕すらないようだった。
「あ、あの……」
地獄のような十五分が過ぎても、誰一人として一言もしゃべらないこの異常な事態。それに耐えきれなくなった私は、なけなしの勇気を全身の毛穴から振り絞って口を開いた。普段の私なら絶対にありえない行動だ。でも、ひどい緊張しいで、テストでパニックを起こして0点を取ることもある私だけど、一度覚悟を決めて落ち着いて挑めば、ギリギリ赤点を逃れるくらいの力は隠し持っているのだ。ここでこの全く動かないグループをなんとかしなければ、全員そろってクラスメイトの前で大恥をかくという最悪の結末を迎えてしまう。
「あ、あっ……テ、テーマ、どう、しますか……?」
蚊の鳴くような、かすれた私の声。それに反応して、三人の肩がビクッと大きく跳ね上がった。一番背の高い女子、雫(しずく)ちゃんが、ガタガタと震える手で持っていたメモ帳を、恐る恐るこちらに向けてきた。そこには、ミミズがのたうち回ったような震える文字で、こう書かれていた。
『ごめんなさいごめんなさいごめんなさい、私、人前で踊るなんて無理です、消えたいです』
(わ、私とまったく同じタイプの重症ボッチだー!)
次に、かたくなに壁の方を向いていた千佳(ちか)ちゃんが、ついにこちらを振り向いた。彼女は大きな瞳に涙をいっぱいに溜めて、金魚みたいに口をパクパクさせながら何かを必死に訴えかけてきた。
「う、うち……こんなん、たいぎいけん……無理じゃけえ……」
(えっ!? なに語!? 異世界から来た人!?)
突然の呪文のような響きに、私はさらにパニックになった。あとで知ったことだけど、千佳ちゃんは広島からの転校生で、極度の緊張状態になると、地元の方言である広島弁のストッパーが外れて、抑えきれずにあふれ出してしまうらしい。ただでさえ他の人と話すのが絶望的に難しいのに、知らない方言という言葉の壁まで立ちふさがるとは。このグループの会話の難しさは、先が見えなくて急な坂道が続く危険な山道を歩くような、とても過酷で生き残れる確率の低い道のりと同じだった。
「あ、あの、落ち着いて……とりあえず、はずむ心、みたいな、動きを……」
私がドロドロに溶けかけた顔面を必死に保ちながら、両手を小さく上下させてみせると、今度は一番小柄な留美(るみ)ちゃんが、コクンと力強くうなずいた。彼女は決意したように、勢いよく一歩前に踏み出した。
ドンッ!!
「きゃっ!」
留美ちゃんは、邪魔なものなど何一つない平らな体育館の床で、見事に両足をもつれさせて豪快に転んだ。どうやら彼女は運動神経がまったくなく、普通の何もない空間でも足がもつれて転んでしまうという、これまた私とまったく同じ仲間のようだ。
「あわわわ! 大丈夫ですか!?」
慌てて助け起こそうとした私も、彼女の投げ出された足に見事に引っかかって派手に転び、二人で冷たい床に重なるようにして倒れ込んでしまった。
「うち……もう帰りたいけえ……」『(メモ)この世の終わりです』
床にみっともなく倒れ伏す二人。泣きながら謎の呪文(方言)をつぶやき続ける一人。メモ帳という筆談の道具で絶望を実況中継する一人。開始からわずか二十分。私たちのグループは、何も生み出すことなく完全に崩壊していた。
■ 誰も見たことがないような、不思議なダンスの誕生
しかし、無情にも時間は私たちの都合なんておかまいなしに過ぎていく。みんなの前で発表するという、公開処刑の時間は、確実に足音を立てて近づいていた。私たちは体育館の一番薄暗い隅っこに寄り添い合い、どうにかして「ダンスっぽいもの」を作り出さなければならなかった。私たちは人間や大きな音に対しては激しい拒絶反応を示すけれど、暗闇に対しては親のような安心感を抱いていて、狭くて暗い場所にいると不思議とドキドキが落ち着くという習性があったのだ。
「えっと……明日へと続く道、を、走る動き……」
私が震える声で提案すると、留美ちゃんが立ち上がり、走るポーズをとった。しかし、彼女の運動神経の悪さは異常だった。右手と右足が完全に同時に出る、奇妙なスキップのような動きになり、三歩進んで、またズテーッと盛大に転んだ。
「る、留美ちゃんは、無理して走らなくていいです……その、床を這う(はう)感じで……」 「うち、もう動くのたいぎい(しんどい)……」
千佳ちゃんは完全に心が折れてしまったのか、体育館の床にうつ伏せになり、ピクピクと痙攣(けいれん)するように手足を動かし始めた。それは「はずむ心」という前向きなテーマからはほど遠く、どう好意的に見ても「砂浜に打ち上げられた深海魚の最期」にしか見えなかった。
雫ちゃんに至っては、もはや言葉を出すことを諦め、メモ帳を口にくわえたまま、なぜか両手を高く上げてフラフラとゾンビのように揺れ始めていた。彼女なりの「青い海」の波の表現らしいのだが、周りから見れば、ただ悪い霊に取り憑かれたかわいそうな人にしか見えない。
そして、私だ。極度のストレスと、他人から見られることへの恐怖によって、私の体はすでに人間の普通の骨格を保っていなかった。顔は有名な絵画の「ムンクの叫び」のように縦に伸び、腕はタコのようにグニャグニャと波打ちながら、「ギョロロロ……」という、謎の機械音のような変な音を喉の奥から出し続けていた。
誰も、目を合わせない。会話もしない。ただ、薄暗い体育館の隅で、四人のボッチが、それぞれの抱えるトラウマと恐怖と絶望と戦いながら、ひたすらにもがき苦しんでいる。明るくて健康的な「青春」に対する強い苦手意識が、私たちの体の動きを、無意識のうちに気味の悪いものに歪めていたのだ。
私たちは「希望に満ちた青い海」を表現しようとしていたはずだった。だが、そこに出来上がったものは、暗闇を這いずり回り、変な声を出し、呪文のような方言で文句を言い、バタバタと倒れては這い上がるという、この世の地獄を大きな鍋でグツグツ煮込んだような、不気味でたまらない儀式だった。
「あっ、あっ……これ、ヤバいんじゃ……」
私がドロドロに溶けた顔のままつぶやいても、もう時計の針は止められなかった。発表の順番が、ついに私たち「あぶれ者グループ」へと回ってきてしまったのだ。
■ 限界を超えた、パニック状態の発表会
「次は、日之影さんたちのグループね。どうぞ!」
体育の先生の明るい声が、ギロチンの刃が落ちる音のように響き渡る。私たちは、死刑台へと引き立てられる大罪人のように、鉛のように重い足取りで体育館の中央へと歩み出た。一瞬にして、クラス中の女子たちの好奇心の視線が、無数の矢となって私たちに突き刺さる。
その瞬間、私の心の耐えられる限界は、とうの昔に突き抜けていた。
(見ないでええええええ!! お願いだから、私を見ないでええええええ!!)
心の中で血を吐くように叫んだ瞬間、私の体は完全に「理性」という名のストッパーを外し、「バケモノ・モード」の最終形態へと変わった。
「ピッ……ピギィィィィィィィィ!!」
私の口から、マイクがキーンと鳴ったときのような、甲高い悲鳴が漏れた。それをスタートの合図にするかのように、私たちのパニック状態のダンスが幕を開けた。
「うち、たいぎいけん! ぶちたいぎいけん!!(しんどい! とにかくしんどい!!)」千佳ちゃんがボロボロと涙をこぼし、叫びながら床を転げ回る。彼女の口から飛び出す広島弁は、もはや言葉の枠を超え、異世界への扉を開く魔法の呪文のように体育館に響き渡った。
雫ちゃんは長い前髪をお化けのように振り乱しながら、頼みの綱であったメモ帳を空中に放り投げ、カクカクとしたロボットのような動きで天井を見上げた。その姿は、安っぽいお化け屋敷の仕掛けのようでもあり、日頃から私たちが親近感を抱いている「幽霊」そのものだった。
留美ちゃんは、テーマに合わせて走り出そうとした瞬間に予想通りつまずき、そのまま床をズザーッと勢いよく滑っていった。そして、なぜかブレイクダンスのすごい技のようにもがいて立ち上がろうとし、ぐるぐると回る力で再び派手に転んだ。
そして私は、顔面をスライム状に溶かし、体を液体のように波打たせながら、謎のステップを踏み続けた。運動神経がゼロの人間が極限の恐怖に追い詰められたからこそ生み出せる、物理の法則を完全に無視したピクピクダンス。足がもつれ、腕が変な方向にねじれ、「ボシュ……シュー……」というガスが漏れるような音を響かせながら、私はただひたすらに、まぶしすぎる「明日へと続く道」から一歩でも遠くへ逃げ出そうともがいていたのだ。
誰一人として協力し合っていない。誰一人として、正しい動きをしていない。ただ、四つのまったく違う強烈な「孤独」と「恐怖」が、体育館の中央という同じ場所で、同時に大爆発を起こしているだけだった。
しかし、その圧倒的なまでの情報量の多さと、常識を外れた必死さは、その場にいる全員の頭の中で、思いもよらない不思議な化学反応を引き起こしていた。
体育館は、文字通り「水を打ったような」完全な静けさに包まれていた。あんなに騒がしくてキラキラしていた明るい女子たちも、みんな一様に口をぽかんと開けたまま、誰一人言葉を発することなく、私たちの狂ったような舞から目を離せなくなっていたのだ。
「……っ!!」
最後に、四人全員が完全にバランスを崩し、体育館の中央で重なるようにして、ドサッと倒れ込んだ。奇跡的に、それが計算し尽くされた最後の決めポーズのように見えた。
沈黙。永遠に続くかと思えるような、恐ろしい沈黙が降りてきた。
私は冷たい床に顔を押し当てたまま、(ああ、終わった。これで私の人生は完全に終了した。私の残りの三年間の学校生活は、二度と直せない黒歴史として語り継がれ、誰も私のことを知らない遠くの高校へ夜逃げするしかなくなるんだ)と、深い絶望のどん底に沈んでいた。
しかし。
「……す、すごい……!!」
その凍りついた沈黙を破ったのは、体育の先生の、感動で震えるような声だった。
「な、なんて斬新で新しい振り付けなの……! 『青い海』という明るいテーマにあえて真っ向から逆らい、中学生特有のドロドロとした悩みや、若者が抱える言葉にできない不安を、見事に体全体で表現している……! 今までの枠にまったく縛られない、素晴らしい現代アートのようなダンスだったわ!!」
(えっ?)
私は、溶け切った顔を床から少しだけ持ち上げた。先生は、なぜか目に涙を浮かべ、感動の表情で全力の拍手をしている。それにつられるように、ポカーンと魂を抜かれていたクラスメイトたちからも、パラパラと、そして次第に波のように大きな拍手がわき起こったのだ。
「なんか……ヤバかったけど、凄かったね……」「あの動き、どうやってんの……関節ないみたいでマジ凄い……」
ざわめく声の中には、明らかなドン引きや恐怖も混じっていた。だけど、少なくとも「大失敗してクラス中の笑い者になる」という最悪の結末だけは、どうやら避けられたようだった。
私たちは、這う(はう)ようにして体育館の隅っこ、自分たちにとって唯一の安全な場所である暗がりへと逃げ帰ってきた。
「あっ、あっ……」「うち……死ぬかと思うたけえ……」『(メモ)生きててごめんなさい』「ふぇぇぇ……膝すりむいたぁ……」
相変わらず、私たちはまともな会話なんて成立させられない。誰一人として、お互いの目を合わせようともしない。
でも、ハァハァと荒い息を吐きながら、四人並んで薄暗い壁に寄りかかっていると、ほんの少しだけ……本当にわずか1ミリだけ、お互いの間にあった分厚くて冷たい見えない壁が、薄くなったような気がした。
それは決して「友情」なんていう、まぶしくてキラキラした簡単なものじゃない。もっと泥臭くて、ドロドロとした、「同じ地獄の釜の底を這いずり回って生き延びた戦友」のような、奇妙で不思議な仲間意識。
私は相変わらず、変人で極度のボッチな女子中学生だ。今日も明日も、図書室の隅っこで息を潜めて、透明人間のまま生きていくことに変わりはないだろう。でも、このパニック状態のダンスの熱い記憶だけは、私の永遠に灰色だと思っていた毎日に、ほんの少しだけ「おかしな色」を塗りつけてくれたような気がした。
「あっ……お、お疲れ様……です……」
私が喉の奥から絞り出した、消え入りそうな小さな声。それに、三人は無言のまま、コクリと小さくうなずいた。
相変わらずコミュニケーション能力はゼロで、この先の未来は不安しか残っていないけれど。ぼっちと、ぼっちと、ぼっちと、ぼっちによる、限界を超えた予測不能の学校生活は、まだ始まったばかりである。
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