才羽モモイとマンディブラリスフタマタクワガタのお話。
短編とはいえ、基本的にブルアカの登場人物はモモイ以外はほんとにちょい役です。
ムシキングとのクロスオーバーとしてますが、ムシキング要素もそこまで濃くはないかも。



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最近小説を書き始めましたが、最初からオリジナル作品は流石にきつかったかなと思うこの頃。
というわけで、とにかく好きなものを組み合わせてシチュエーションを妄想すること自体はよくやるのでそれを文章に表現してみました。
稚拙な文章ではありますが、温かく見守っていただけると幸いです。
ちなみに今作はモモイが主人公ですが、推し生徒はスズミです。


モモイと偉大なる大アゴ

「先生、これ何―?」

モモイ達が見つけたのは、かつてキヴォトスの外で人気を博した一つのアーケードゲーム。

じゃんけんというわかりやすいルールと子供たちに人気の甲虫たちを組み合わせたそのゲームは先生からしたらとても懐かしいものだった。

「ムシキングかあ。何でミレニアムの倉庫にこれがあるかわからないけど、久しぶりにやってみたいなあ」

「え、先生知ってるの?」

「うん、100円入れるとね、カードが出てきてね・・・」

ゲーム開発部に運ばれ、電源を入れると、その筐体は何事もなかったかのように起動した。

「あ、ポポだ!懐かしいなあ、私も昔、ポポと一緒にアダーから森を守ったんだよなあ」

「先生、一人で思い出にふけっていないでよ!」

「ああ、ごめんね。じゃあ100円、試しに入れてみようか」

先生に促され、モモイ達はお金を投入する。

「あっ!なにこれ、マンディブラリスフタマタクワガタ?だって!強そうだしカッコイイ!」

「おお!いきなり強さ200のムシを引き当てるなんてモモイはついてるね!」

「お姉ちゃん、二つ名みたいなのも凄そうだよ。偉大なるオオアゴだって」

「よーし、私とマンディ君でムシキングのトップを目指すよ!」

 

ゲーム開発部の発見したムシキングは、単純で覚えやすいルールとキヴォトスではなじみの薄い様々なムシたちが繰り出す派手な技で、一躍有名になった。

 

それからしばらく。

 

キヴォトスの神秘が外の世界から本物のムシたちを呼び込んだ。

憧れのムシたちの実際に生きて動いている姿は、多くの生徒達の注目を集めた。

そして、ムシキングのように実際のムシを戦わせる生徒も多くいた。

甲虫たちの持ち合わせる闘争本能がキヴォトスの気軽に銃撃戦を繰り広げる生徒達の精神と上手くマッチしていたこともあり、昆虫相撲はキヴォトスで一大ブームとなり、モモイも憧れのマンディ君で様々なムシを相手に勝負に臨んでいた。

 

しかし、当のモモイは困惑していた。

「マンディ君また負けちゃった・・・

 何で?マンディ君は強さ200の最強のムシなんじゃないの?

 この前なんてろくに組み合うことすらせず逃げ出すし・・・」

そう、ゲーム上の演出として強さ200に設定された文字通り最強のムシだったマンディブラリスと、現実の生物としての彼のギャップに気づいてしまったのだ。

 

モモイはおろか、キヴォトス中の生徒達にとっては知る由もないことだが、マンディブラリスフタマタクワガタという種族は、体長や気性の激しさこそクワガタの中ではトップクラスだが、その細く華奢な体型から、パラワンオオヒラタクワガタのような本当に強い相手には簡単に力負けすることや、不利を悟ると自分より小さな相手にもすぐに戦意喪失することから、「うまくハマれば強いが安定性に欠ける、同じフタマタならパリーの方が強い、本当に勝ちたいならドルクス系のクワガタを育てるべき」というような微妙な評価を得ていた。

 

幸か不幸か、キヴォトスには外の世界の昆虫相撲に関する情報が乏しいため、モモイは「たまたま調子が悪かっただけかもしれない」と思い、実力を疑いつつも彼を使い続けるのであった。

 

しかし、いつの世も悪い噂というのは簡単に広まるもので、いつしかモモイのマンディは「見掛け倒し」の烙印を押されていた。

もちろん、モモイと仲の良い生徒達は彼女とマンディを励ましたが、人間というのは良いことよりも悪いことの方が心に残ってしまうものである。

いつしかモモイは勝つことを諦めた。

もっと言えば、マンディに強さを期待しなくなってしまった。

「実力が足りなくても、見た目でいえば負けないよ。このスマートで長く伸びた大アゴ、内歯だって鋭くとがってるし、一番かっこいいのはマンディ君に決まっているよ!」

「お姉ちゃん、本当にそれでいいの・・・?本当はやっぱり勝ちたいんじゃないの・・・?」

「ミドリ、私は大丈夫だよ!見掛け倒しってことは見掛けは最高ってことなんだから!」

「お姉ちゃん・・・」

開き直って強くなくてもよいと言い張るモモイだったが、その姿は痛々しく、去勢を張っていることは誰の目にも明らかであった。

それは偶然にも、勝負には弱くとも大アゴを振りかざし威嚇するマンディの姿と似ていた。

 

しかしながら、去勢であるとわかりつつも、戦うことを辞めたモモイとマンディは次第に揶揄されることはなくなっていった。

皮肉にも、「見掛け倒し」であったからこそからかわれていたのであり、「見掛け倒し」ですらないクワガタの存在は最早誰も思い出さなくなったのである。

・・・が、このことは新たなからかいの被害者を生み出していた。簡単なことだ。動かなくなった玩具に飽きたスケバンが新たな玩具を発見した。それだけのことである。

 

「おいおい!そんなチンケなムシで私らと戦うつもりか!笑わせやがって!」

「み、皆に迷惑かけてるあなたたちが悪いんですよ!それとディディはチンケじゃない!」

「じゃあ力尽くでやってみろよ、もっとも私のコーカサスに勝てるとは思えないけどなぁ!」

力の差は明らかであった。シカクワガタの中では最大種とはいえ、それでも精々90mmにも満たないディディエールとアジア最大にしてヘラクレスとも渡り合えるほどの強豪たるコーカサス。体格からしても勝てるはずがない。

「ほらほら、どうした?抜け出してみろよ、この三本のでっかいツノからなあ!」

「や、やめて!それ以上は・・・それ以上やったらディディが・・・」

コーカサスという種類はその凶暴性から相手を殺してしまうこともあるといわれているほどのカブトムシだ。ディディエール危うしと思われたその時だった。

「ちょっと、何やってるの!もう勝負はついてるでしょ!それ以上はムシを傷つけるだけだよ!」

「ああ?なんだモモイじゃねえか。まさか助けに来たとでもいうつもりか?その見掛け倒しで?」

「モ、モモイちゃん・・・だめだよ、こいつのコーカサスすごく強いよ。そりゃあモモイちゃんのマンディは私のディディよりは大きいし強いかもしれないけど・・・」

「確かにマンディ君は弱いかもしれない。でも、だからってこんな一方的な虐めを見過ごすわけにはいかない!大丈夫!何てったってマンディ君は強さ200なんだよ!」

「ケッ!そりゃゲームの中の話だろ?いい加減に現実見やがれってんだ!」

二人の戦意が乗り移ったように大アゴとツノを振りかざし組み合う2匹のムシ達。両者とも元から気性の荒さで知られる種ではあるが、それに輪をかけて激しい戦いであった。

「いけ!そこだ!」

「なんの!今度はこっちの番!」

マンディが巨大なアゴで持ち上げたかと思えばコーカサスが3本のツノで締め上げる。

2匹の戦いは苛烈さを極めるものであった。

「なんだ、見掛け倒しのくせに意外とやるじゃねえか!」

「強さ180のコーカサスで簡単に勝てると思わないでよね!」

言い返すモモイではあるが、同時に多少の違和感も覚えていた。

(マンディ君が逃げない・・・?)

今まで散々戦意喪失を繰り返していたマンディが、戦いを続けている。助けに来たモモイからしたらそれは勿論喜ばしいことではある。しかし、あのコーカサスは今まで戦ってきたムシたちの中でもトップクラスに強い。だというのに何故戦うのか。

(いや、何故なんて関係ない。マンディ君が戦うことを決めたのなら私はマンディ君を信じるだけ・・・!)

 

 

 

1999年11月24日。植物防疫法の改正により、多くの外国産昆虫が日本に輸入されるようになり、多くの昆虫愛好家は今まで夢だったムシたちを飼育できることに歓喜した。

マンディブラリスフタマタクワガタもそんな外国産昆虫ブームによりインドネシアから連れてこられたムシたちの一種だった。

 

最初は良かった。

人間の事情で連れてこられたとはいえ、大きく強い彼らに誰もが憧れた。

子供たちは「すごい!かっこいい!」とはしゃぎ、大人は「図鑑でしか見たことがない憧れのムシだ」と丁重に扱った。

(故郷の森とはまるで違う環境・・・でもこの人間たちは俺を見て喜んでくれている)

 

しかし、中には彼らの大きさや強さにしか興味がないものもいた。

狭いケースの中で死ぬまで戦わせ、見世物にされた。

(本当は勝ち目のない相手となんか戦いたくない)

 

そして、いつしかブームは過ぎ去り、心無い人間によって捨てられることさえあった。

(ここでだって生きていくことはできなくはない・・・でも本当は懐かしいスマトラ島に帰りたい)

 

その後、人間たちの中に環境問題や自然保護への理解が深まると、野外に捨てられた彼らは「人間に捨てられた被害者」から「日本の生態系を破壊しかねない加害者」となった。

(勝手に連れてきて勝手に逃がしたくせに何が外来種だ・・・俺はただ生きていただけ・・・)

 

 

(・・・ここはどこだ?さっきまでいた日本の森じゃない。かと言ってスマトラの森でもない)

「み、見て、先生!私のマンディ君が・・・本物になってる!」

(マンディ君だと?俺はこの少女に捕まえられたのか・・・?)

 

「マンディ君、いっけー!偉大なる大アゴの力を見せてあげて!」

(戦うこと自体はいいが、何だその仰々しい呼び名は!)

 

「あれ・・・もしかしてマンディ君って実はそんなに強くない・・・?」

(何だあのパラワンとか呼ばれているのは!あんな奴に勝てるわけがないだろう!)

 

「仮に弱くたって、カッコよさで言えばマンディ君が一番だもんね!」

(カッコよさが一番というのは悪い気はしないが、それより俺が弱いだと?いつもいつも相手が悪すぎるだけで、俺は十分強いはずだ!)

 

「確かにマンディ君は弱いかもしれない。でも、だからってこんな一方的な虐めを見過ごすわけにはいかない!大丈夫!何てったってマンディ君は強さ200なんだよ!」

(久しぶりの戦いだ!俺の力を見せてやる!・・・と思ったけどコーカサスかよ・・・モモイのやつ、また格上相手と戦わせやがって・・・俺だって命は惜しいんだぞ?)

 

無謀な戦いにマンディが諦めかけていたその時、声が聞こえてきた。

「頑張れマンディ!」「コーカサスに挑むなんてやっぱりマンディは凄いなあ!」「私、本物のマンディは初めて見たけどカッコいいね!」

騒ぎを聞きつけてやってきた生徒達の、純粋にマンディを褒め称える言葉。

(ああ、懐かしいなあ)

それはかつて、日本の子供たちが投げかけてくれた言葉。

(あの頃、皆が俺に憧れてくれてたんだっけな)

キヴォトスに来てから、モモイが何度も言ってくれた言葉。

(そうか、モモイだけじゃなくて、他の皆も俺を好きだと言ってくれるんだ)

「いけー!」「負けるなー!」

(・・・皆が喜んでくれているのなら・・・・・・)

 

 

 

「中々頑張ったが、所詮マンディごときがコーカサスに勝てるわけがなかったな!やっちまえ!」

「マンディ君、危ない!」

コーカサスによる渾身の突き上げがマンディを襲う。

・・・が、マンディがそれを食らうことはなかった。

サイズの割に華奢な体格とその軽い体から生み出される俊敏さがうまくかみ合い、コーカサスの三本ヅノを上手くすり抜けたのである。

そして、コーカサスの横に躍り出たマンディはコーカサスの巨体を持ち上げ振り回し、投げ飛ばした。

「なっ・・・コーカサス!」

「これは、まさか・・・!いっけえええええ!」

落ちてきたコーカサスに対し、飛び上がって回転しながら突進。捕まえたその勢いのまま引きずり抑え込む。

現実のムシでは不可能なはずの派手な攻撃。

それはモモイがゲームで何度も見てきた超必殺技そのものだった。

「クロスダイブがバッチリ決まったね!コーカサス、敗れたり!」

「わああああああああ!!!!」

周囲から歓声が上がる。

「やった!やったね!マンディ君!やっぱりマンディ君は最高だよ!」

「す、凄い!本当に勝ってしまうなんて・・・ありがとう、ディディを助けてくれて・・・!」

「見掛け倒しって言ってごめんね、マンディってこんなに強いんだね・・・!」

モモイとマンディを取り囲む生徒達。

「どーよ、偉大なる大アゴは伊達じゃない!」

モモイは手のひらにマンディを乗せ、胸を張って宣言するのだった。

 

 

 

 

 

 

「・・・チッ、何だよ、負けちまいやがって!強いから使ってたってのにさ!」

スケバンが文句を言いながらコーカサスを持ち上げる。

しかし、彼女は負けたことにイライラするあまり、一番大事なことを失念してしまっていた。

それはコーカサスの一番危険な部分。胸部と前翅の間。うっかりそこに指を挟んでしまった結果・・・

「痛ああああああああああああああああああ!!!!!」

モモイとマンディを称える歓声にも負けない程の悲鳴がキヴォトスに響き渡ったのであった。

 




マンディブラリスって巨大なアゴっていう意味らしいんですけど、実はマンディブ=アゴ、ラリス=巨大という成り立ちなので略すとしたらマンディブという方が区切りとしては正解とのこと。ですが日本語の語呂の良さとしてはマンディの方が聞き心地がいいので今作ではマンディとしました。
スケバンの使う悪役としてコーカサスを選んだのは、「やっぱりムシキングの悪役といえば」という感じに思い浮かびました。ちなみに現在はキロンオオカブトですが、今作ではムシキング当時に使われていたなじみ深いコーカサスの名で出演。
ディディエールはモブちゃんと共に虐め被害者枠になっちゃいましたが、コーカサスやマンディほど強くはないものの、スケバンに目を付けられるくらいには存在感あるムシとして選出。赤い体と大アゴの曲線美でチヤホヤされていましたが、スケバンはそれが気に入らなかったようで。

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