呪力は呪力でも呪力かよ!? 作:パンツ男
『さぁ!最終トーナメントも二回戦が始まるぞ!!二回戦!最初の試合は決勝って言っても過言じゃねぇコイツらだ!!』
︎︎葉隠のおかげで吹っ切れた俺は、スタジアムに上がり轟に向き合う。轟は昼休みより機嫌が悪そうで、その瞳は俺を見ているようで全く別の何かを見ている。
『身体強化に結界に式神等々エトセトラ!その手数まさに無限!!ヒーロー科……蘆屋晴臣!!』
︎︎プレゼント・マイク先生の前口上が始まり、会場全体に緊張が走る。
『対するは!凍てつく氷はブリザード!!ヒーロー科……轟焦凍!!』
(お前の初撃は……瀬呂に使った氷結だな……俺に隙を与えたら何するかわからねぇもんな)
(……この初撃に最大をぶつけるのはリスクがデケェ……かといって出し惜しみすりゃ……やられる)
『START!!!』
((だったら!))
(その氷結ぶっ壊してやるよ!!)
(隙を与えずに凍らせてやるよ!!)
︎︎開始の合図と同時に轟は氷結攻撃を繰り出してきた。範囲的に瀬呂以下だが、弱攻撃と侮れない程度には威力がある。
「……来い!ポチ!タマ!」
︎︎俺は二体の式神を召喚し氷結を受けた。
501:名無しの転生者
イッチ!?
502:名無しの転生者
モロに受けたぞ!?
503:縁柱ドンモモタロウ
イッチのことだ何か策があるんだろ。
504:聖剣使いのプロブレーダー
そうだな。
505:竜舞ガブ
……なぁペンギンニキ。
506:ペンギンストライカー
なんですかガブリアスニキ。
507:竜舞ガブ
俺の聞き間違いやなかったら……今、イッチが召喚した式神って……。
508:ペンギンストライカー
えぇ……恐らく……
509:聖剣使いのプロブレーダー
二人がそんな反応するってことは……原作で登場した有名なやつなのか?
510:竜舞ガブ
……有名……というより轟の地雷やな。
511:ペンギンストライカー
はい。
イッチは本気で轟を潰しに行くみたいですね……。
『轟の氷結が直撃!!蘆屋動けるのかぁ!!?』
「……
「ッ!やっぱり今のじゃ無理か……!」
「……
︎︎俺は先程召喚した式神を呪装する。
「式神呪装ッ!!
︎︎原作において陰陽師のトップを務めていた陰陽頭……
︎
「自分自身を超えてみな……轟!!」
︎︎拳を放つ構えを取り右腕で印を結ぶ。左腕を引き絞り呪力を込める。
「
『蘆屋晴臣ファイヤー!!炎で轟の氷を溶かして脱出ゥ!!』
︎︎全力で左拳を放つ。瞬間、炎が一直線に放たれ氷塊を破壊し、轟を襲う。咄嗟に氷の壁を生成して防御した轟は俺の腕を見て目を見開いた。
「また炎……ッ!」
「驚いてる場合か?ちゃんと防御しろよ」
︎︎今度は右腕の呪装を通して大気中の水分に呪力を込める。呪力により水分が急激に冷やされ、轟の周りに氷塊が生成されていく。
「
︎︎氷塊が一斉に轟に向かって放たれる。轟はまた氷をドーム状に生成し防御する。
『蘆屋!お返しと言わんばかりに轟に氷をお見舞いだァ!!』
「テメェ……ッ!!」
「言っとくが……先に地雷を踏んだのお前だからな」
『蘆屋対轟……奇しくも同じ構えだ!!』
513:名無しの転生者
なんなんですかあれ!?
514:名無しの転生者
轟と同じ力だぞ!?
515:竜舞ガブ
あれは双星の陰陽師に登場する土御門有馬が使用した式神呪装や。
516:ペンギンストライカー
見ての通り、左が炎属性を右で氷属性を持っています。
517:名無しの転生者
それって……。
518:レジェンドプロデューサー
ある意味、エンデヴァーが望む轟の完成系を再現出来るな。
519:名無しの転生者
確かに今の轟はイッチの地雷を踏んでるとはいえ……。
520:縁柱ドンモモタロウ
むしろこの程度で済んでる分、温情だろ。
521:名無しの転生者
ドンモモニキ!?
522:縁柱ドンモモタロウ
イッチにとってあの日の一件は今も尚、忘れることの出来ない出来事だ。
それを知らないとは言え、刺激した轟がこうなるのも当然だろ。
523:名無しの転生者
それでも……やっぱり他人の地雷を踏むのは……。
524:縁柱ドンモモタロウ
イッチだってただ轟の地雷を踏むだけじゃないと思うぞ。
だってやりようによっては、轟に何もさせずに甚振ることだってできるはずだし……なぁガブリアスニキ。
525:竜舞ガブ
せやな。
イッチが捕縛用に使っとる止縛法の上位互換に
イッチの“呪力”が“個性因子”由来なことを考えると、“個性”もしくは“個性因子”を無力化することができるんちゃうかな。
526:名無しの転生者
やっばぁ……。
527:レジェンドプロデューサー
ならドンモモニキはイッチがそういった術を使っていないことから、まだ温情はあると判断したわけか。
528:縁柱ドンモモタロウ
>>527 そういうこと。
それに、イッチが轟の地雷となる呪装を使ったことにも多分、仕返し以外にも理由があると思ってな。
529:名無しの転生者
え?
530:アサシンディケイド
荒療治ってやつか。
531:フィジカルギフテッド石化中
さっき自分を超えてみろって言ってましたもんね。
532:聖剣使いのプロブレーダー
なるほどな。
「さて、お披露目も済んだし……飛ばすぞ?」
「ッ!!」
轟に呪装の効果を見せつけた俺は、体勢を低くして一気に走り出した。
「轟ッ!」
『蘆屋が動いた!!』
︎︎左の拳が氷壁に防がれる。俺は続けて右の拳で氷壁を破壊し、轟との距離を詰めていく。
『轟は攻撃を防いでいくが!着実に蘆屋との距離は縮まってるぞ!!』
「防御と回避ばっかだな!」
「うるせぇ!」
「そうカリカリすんなよ!」
「黙れェ!!」
︎︎俺の呪装に怒りを露わにした轟が至近距離から氷塊を生成しぶつけてくる。
「意味ねぇよ……
『蘆屋のパンチ!轟の氷を一撃粉砕!!』
「ッ!」
︎︎炎とともに放たれた左拳が氷塊を破壊し轟を襲う。轟は後ろに飛び炎を回避する。
︎︎着地した轟は更に顔を顰め、親の仇のような目で俺を見る。
「その腕はなんなんだ……ふざけたことしやがって……!」
「ふざけてる?そんなわけないだろ……お前の“個性”対策だよ」
「あァ!」
「一々キレんなよ」
「ッ!!」
「それはもう見た」
︎︎冷静さを欠いた轟は大雑把な氷塊で攻撃するが、流星拳で破壊する。衝撃でスタジアムを転がる轟は、起き上がるとまた氷塊をぶつけてくる。
『轟は氷塊による物量で攻撃するも蘆屋はものともしない!!』
「ワンパターンだな……もっと工夫しろよ」
︎右腕で氷塊を生成し轟の攻撃にぶつける。氷塊同士が衝突しスタジアムの半分が氷塊が埋め尽くされた。
「自分で不利な状況作ってどうすんだよ」
︎︎体に霜が降り始めた轟はよろよろと立ち上がり、攻撃の体勢をとる。
「何回同じことすんだよ……
︎︎詠唱を終えると目の前の呪印を殴る。轟の周りに展開された呪印から衝撃波が放たれた。
『クリーンヒット!蘆屋の遠距離攻撃が轟を襲う!!』
「がァっ!?」
「まだまだ行くぞ!」
「ぐっ!」
『腹にモロだァ!こいつはキツイぞ!!轟大丈夫かァ!!』
534:名無しの転生者
一方的すぎる……。
535:名無しの転生者
轟……。
536:ペンギンストライカー
……まずいですね。
537:竜舞ガブ
せやな。
538:名無しの転生者
二人も轟が心配?
539:竜舞ガブ
いや、ちゃう。
イッチの消耗の方や。
540:名無しの転生者
え?
『轟!蘆屋の猛攻を受けダウン!!立ち上がれるのか!!』
地面に倒れる轟を見て、俺は腕の呪装について思考する。
(……あと10分……いや5分持てばいいか)
︎︎式神呪装、総天無限腕は現時点で俺が使える呪装の中で最大出力を誇っている。しかし、そんな力をなんのリスクもなく使える道理はない。
︎︎俺は総天無限腕を使用している間、他の呪装が使えなくなる。もう少し詳しく言うと、呪装自体はできるが維持するのが難しくすぐに消えてしまう。原作でも一つの呪装にかかる力が大きくなれば、他の呪装を維持するのが難しくなると言われている。
︎︎更にもう一つデメリットがあり、単純に燃費が悪いのだ。全力で使い続ければ5分ちょっとで呪力を使い切ってしまう。
(やっぱりおかしいよ……土御門有馬……威力も出力も原作と比べて低いのに……これだけ消費してんだぞ)
︎︎原作に登場した式神呪装を再現できないか試した時に、炎と氷というわかりやすい能力で選んだが、俺が使えばこれほど燃費が悪いとは思わなかった。
︎︎土御門有馬はこの呪装に加えて砕岩獅子や鎧包業羅等を幾重にもかけて使用していたとスレ民が言っていたので、その規格外差が身に染みてわかる。
「もう終わりか?」
「ま、まだだッ!」
「そんな状態でよく言えるな……氷を防御に使ったことで体に霜が降りてるじゃないか……それがお前の限界を表してるんだろ?」
「ッ……」
「そのデメリットを左の炎が帳消しにしてくれる……使えよ楽になるぞ」
「黙れッ……!」
「今のお前を見て誰が安心できる?」
「あァ……?」
「ヒーローってのは人に安心を与えるもんだろ……使える力も使わずこうして地に伏せてるお前を見て……誰が安心できる……オールマイトと大違いだ」
「……ッ」
「エンデヴァーを否定するために左を使わないんだろ?俺程度に負けてちゃ夢のまた夢だぞ……オールマイトを超えるなんて不可能だ!」
「……ッ!!」
「もういい……これで終わらせる……降参するなら今のうちだぞ」
「……」
「大叫喚魔凍氷殺……」
︎︎右腕を構え、詠唱を唱える。
「負けるな!轟くん!!」
︎︎会場全体に轟を応援する声が響いた。
「頑張れ轟!!」
「負けんじゃねぇ!!」
「頑張ってください!轟さん!!」
「頑張れ!轟くん!!」
「負けちゃダメだよ!轟くん!!」
︎︎緑谷の声がきっかけとなり、A組の観客席の方から轟を応援する声が溢れ出す。
「……ッ……うぉ……ぉぉおお!!」
『轟!A組のエールで立ち上がった!!』
︎︎応援に応えたのかそれとも意地なのかわからないが、轟はよろよろと立ち上がり俺を睨みつける。
「……まだやるのか?」
「あァ……アイツを否定するために……なァ!」
「あっそ……じゃあ終わらせてやるよ」
「……ッ!」
「大叫喚魔凍氷殺!喼急如律令!!」
︎︎右の拳を轟に向かって放つ。大気中の水分が呪力により急速に冷やされ氷塊が轟に向かって襲いかかる。
「轟くん!!
︎︎緑谷の声が響き渡る。轟の目が大きく開き重荷が降ろしたように瞳にハイライトが灯った。
BOOOM!!!!
︎︎スタジアムが白煙に包まれる。
『ワッツハプン!?何が起こった!!?突然の大爆発!!2人は無事なのかァ!!?』
「……お前……これ狙ってたのかよ」
「さぁな」
「ははっ……敵に塩……送りやがって……」
「そうこなくっちゃ面白くないだろ」
「後悔すんなよ……ッ!!」
「上等ッ!!」
542:名無しの転生者
轟が炎使ったぞ!!
543:竜舞ガブ
……イッチ……いやA組や緑谷くんの力あってこそやな。
544:ペンギンストライカー
えぇそうですね。
545:縁柱ドンモモタロウ
イッチ!ここからが本番だぞ!!頑張れ!!!
546:聖剣使いのプロブレーダー
負けんなイッチ!!
547:名無しの転生者
頑張れ!!
548:レジェンドプロデューサー
イッチなら大丈夫だ!頑張れ!!
549:竜王ガブ
いっちょかましたれ!!イッチ!!!
550:アサシンディケイド
好きにやれイッチ!
「焦凍ォォォォ!!!」
︎︎観客席の方からエンデヴァーの叫び声が聞こえる。
「やっと己を受け入れたか!!そうだ!!良いぞ!!ここからがお前の始まり!!俺の血をもって俺を超えて行き……俺の野望をお前が果たせ!!」
「……」
「……」
「……」
︎︎エンデヴァーの言葉に全く反応しない轟。それに対して黙ってしまうエンデヴァーと会場。
『エンデヴァーさん……急に“激励”か……か?親バカなのね』
「……邪魔入ったな」
「気にすんな」
︎︎沈黙の後、俺達は互いに距離を詰め、接近戦を始めた。俺が氷を使えば轟は炎で対応し、炎を使えば氷で対応する。一進一退の攻防がスタジアムで繰り広げられる。
「近接もいけんだな!」
「一通りはなッ!」
『蘆屋!轟!互いに一歩も引かない攻防だ!!』
︎︎氷を纏った俺の右腕の拳を、轟は左の炎で防御し反撃する。後ろに飛び距離を取った俺に轟の氷塊による追撃を炎で破壊して、煙に紛れて接近し腹に拳を叩き込む。
「ぐッ……!まだだ!!」
「がハッ……!やるな……!」
︎︎腹に一撃を入れたが、肉を切らせて骨を断つと言わんばかりに轟は俺の鳩尾に拳を放っていた。
「ッ!」
「ッ!」
︎︎ほぼ同時に拳を放ち、ノーガードの殴り合いになる。顔面やボディを殴り合い削っていく。
『殴り合いだァ!!まさに意地と意地のぶつかり合い!!』
「ハァッ!!」
「アァッ!!」
︎︎互いに炎を推進力にした左拳がぶつかり合い、衝撃に吹き飛ばされる。
「ぐッ……」
(クソ……もう限界か……)
︎受身を取りながら体を起こすと両腕の呪装にヒビが入った。轟も序盤で受けた攻撃が響いているようで立つのも限界のようだ。
「……互いに限界みたいだなぁ」
「そうだな……」
「次で決めるぞ」
「あァ……」
「大焦熱煉獄炎羅!喼急如律令!!」
「膨冷熱波!!」
︎︎二つの炎がぶつかり合いスタジアムを破壊していく。
「ハァァァァァァ!!!」
「ウォォォォォぉ!!!」
︎︎俺も轟も炎の放出を止めず全力でぶつかり合う。右腕の呪装が砕け散り、轟の炎に押され場外へと押し込まれそうになる。
「勝って!晴臣くん!!」
「ッ!……あぁ……もちろんだ!!」
「ハァァァァァァ!!!!」
︎︎左腕の呪装が崩れ始めるが、全力で呪力を込めて轟を押し返す。
「……ッ…………ありがとな」
「次は最初から本気でこいよ」
「あぁ……」
BOOOM!!!!
︎︎会場全体が光に包まれ、衝撃によって揺れた。光が収まると全てを隠すように黒煙がスタジアムを覆っている。
『何がどうなった!!?主審ミッドナイト!!2人は!?勝負の結末は!!?』
︎︎ミッドナイト先生が半壊したスタジアムに上がり、俺達を探して辺りを見渡している。
「……2人とも大丈夫!?」
「えぇ……」
「蘆屋くん!」
︎︎ミッドナイト先生の声に返事をすると、先生は声を頼りにこちらに近づいてくる。
「……大丈夫!?」
「はい……」
「轟くんは……!」
「……あそこです」
︎︎俺を見つけたミッドナイト先生は、轟の安否確認をするためにキョロキョロと辺りを見渡す。俺が指差した方向を見ると、煙が晴れ観客席の壁にぶつかり気を失っている轟がいた。
「……ッ!轟くん場外!!蘆屋くん……三回戦進出!!」
︎︎ミッドナイト先生の言葉を聞き、俺は安堵して意識を手放した。