「あんた、何で幻想郷に来たの?」
霊夢の問いに、
橘は人と話すのが大好きだ。より正確に言えば、自分の話を聞いてくれる人との会話が最高の娯楽だと信じている。それは、彼が酷く孤独と退屈を嫌うが故である。
悠久の――天地が分かれる前、即ち日も月もなく、”日”、”月”、”年”などという単位が存在しない時から在るので橘も自身が重ねた歳月は知り得ないが、十桁年には届いているだろう――時を、気の合わない、必要最低限の意思疎通にしか応じない他の
孤独感と疎外感、退屈に橘の頭がおかしくなる前に――それでも数十億年を耐えたのだから流石は神の中の神たる別天神というべきだが――天地が分かれ、五億年もせずに
態々自らの力を縛ってまで自らに名を与えて肉体を得るという他の神々からすれば理解不能な所業も、自分の力を封じようが他者と関わりたい、関わらねばならないという強迫観念にも似た橘の執念が編み出した技なのだ。
億という国津神や多くの天津神には想像もつかない、永遠とも思える時を経て尚、彼の取った姿が幼子のそれであり、彼が子供のように振る舞うのは、極度の寂しがりを裏返した、人懐こさと友を切望する赤心を反映したからなのだ。また、寂しさに耐えられずに、元々はあった少し大人びた性格の部分が若干壊れているのもある。
魔理沙との歓談に完全に耽っていたので思い出すのに暫く時間が掛かったが、二十秒ほど腕を組んで小さく唸っているうちに、何とか思い出せた。
「あ、そうそう! ぼくの仕事増やさないでって話!」
「多分霊夢は『それじゃあ判らないから詳しく』って言いたいんだと思うぜ」
「あ、そういうこと?」
橘はぽんと手を打つと、にこっと笑って続ける。
「まずなんだけど、幻想郷は確か、すっごく大きな結界で隔離されてるよね?」
「博麗大結界ね」
「そうそう、多分それ。幻想郷の人達はそれで外と隔離できてるって思ってるみたいだけど、それは不完全なんだよ」
「知ってるぜ。幻想郷には外の世界で忘れ去られた物が流れ着くし、外来人だって偶には来るからな」
「紫が、幻想郷の存続に必要だからって話をしてたわね。でも、それが何か不都合なの?」
霊夢と魔理沙が橘の言葉に何か勘違いをしているらしいのを察して、橘は「違うよ~」と答えつつ、噛み砕いて説明する。
「別にそれは問題ないんだよ~。第一、そんなことお堅いこと言ってたらあちこちにある異界をシラミ潰しに封印する羽目になっちゃうから、ぼく自身も大変だし。それだけならそんなに影響は出ないからね」
そう言って一呼吸置くと、橘は人差し指を立て、鋭い目つきで霊夢と魔理沙を見据えた。
「でもね、君達は偶に、幻想郷の外にもおっきな影響が出ることをやってるの! 少なくとも、宇宙船を撃ち落としたり夜明けが来なくなったり、季節が狂ったり、一番最近だと同じ日を繰り返すよく分かんないことになってたでしょ? アレ、外の世界にも全部影響出るんだから! それを毎回後処理してるの、ぼくなんだよ!」
霊夢と魔理沙はその言葉を聞いて、橘が「好き勝手に外の世界に影響を及ぼす異変を起こすな」と言わんとしていることを漸く悟った。最初からこう言えば良かったものを、橘が癇癪を起こしたり魔理沙と駄弁ったりしたお陰で、本来五分で終わっていたであろう会話が昼前まで伸びている。少しお腹が減ってきたのかとっとと終わらせたそうな霊夢が、若干顔を顰めながら反論する。
「はぁ……そうだとしても、私達を責めるのはお門違いなんだけど?それをやったのは、月の輩と、紫と、隠岐奈と、阿梨夜……というか、これもどっちかというと月の連中か。とにかく、私達は確かに巻き込まれて入るけど、犯人じゃないの。怒るなら、そっちを当たってくれない?」
正直な所、霊夢と魔理沙にとっては、結局冤罪ということには変わりないのだ。何なら、アポロ号の件と阿梨夜、ユイマンの異変は幻想郷ではなく、月人が主犯なのである。橘が挙げた事案四つのうち三つまでは月の民が元凶と言う訳だ。それに、彼女等が発端で異変が起こるなんてことは……なくはないが、平素のことではない。言い掛かりもいい所である。
橘はそれを聞いてむくれつつ、少し
目の前の二人に――最初は何なら、幻想郷の管理者だと聞いた博麗の巫女に――言えば全部解決すると思っていたのに、どうやら事はそう単純ではないらしい。霊夢に伝言を頼んで帰るという選択肢もなくはないが、よく考えれば幻想郷は既に前科四犯なのだ。それでは意味はないかもしれない。放置すれば、また橘の仕事が増えるだろう。
そう言えば前に地上に降りて遊んでいた時に教えてもらったことだが、遠い異国では三回同じ罪を繰り返すと終身刑になるという法が存在するらしい。そんな法があったら幻想郷を刑務所送りにできるのに、とも思うが――おっと、いつの間に思考が逸れている。
ともかく、飽きもせず幾度も外の世界にも歪みを及ぼす幻想郷の異変の元凶に対して
幸い、橘には時間はある。橘の――可美葦牙彦舅神の――威光はあまり当てにならないと証明されてしまったが、霊夢と魔理沙が元凶と思しき存在と知り合いなのを鑑みれば、二人と一緒にいればその首謀者と相見えることは容易いだろう。このままどうせ無視される間接的な忠告だけ残して帰るよりも、留まって直接コンタクトを取るべきだ。
それに、魔理沙がいればもっと楽しい話ができるし、自分にしてくれるかもしれない。
その可能性に思い至った瞬間、橘は――「案外れーむとかまりさがすぐ呼んできてくれるかも」等の、二人に頼むことの合理性を考えての案の筈が――橘の中では世界の維持に次ぐ圧倒的な
「分かった。それじゃあ、その犯人さん達に会えるまで一緒にいさせてくれない? ぼくが直接叱るから!」
……橘自身は気付いていないが、どう見ても橘の目的がすげ変わっている。「会わせてくれない?」と訊ねていない理由は、もう言わずもがなだろう。
「うーん……まあ、いいけど……今すぐ会わせられる奴はいないわね」
「紫はどうせ冬眠中だろうしな。隠岐奈はこういうの、勿体ぶってから出てくるきらいがあるし、月の連中も取り合ってくれなさそうだし。どのみち紫に会うのは冬が終わるまで待たないとな」
「そっかぁ……」
心なしか、少し嬉しそうな橘である。
「それじゃあ、ぼくはどこ泊まればいい?」
「神社でいいんじゃないか?」
「手伝いしてくれるなら構わないわよ、部屋は余ってるし。子供一人どうってことないしね」
そうしてトントン拍子に話は進み、橘は紫に会う時までは神社に泊めてもらえることになった。
霊夢に神社を一通り案内してもらい、浴室や橘に宛がわれる六畳部屋を見せてもらって再び卓袱台のある居間に戻ると、今度は魔理沙が橘に質問攻めした。もう与太話に付き合う気はない霊夢は、「あとはお二人でお好きにどうぞ」と言わんばかりに煎餅を茶請けに新しく淹れてきた茶を啜る。
「それで、橘、さっき『何でもかんでもできるわけじゃない』(第一段参照)みたいなこと言ってたけど、”橘”としての能力って何なんだ? あと、可美葦牙彦舅神としては何が出来るんだ? 始原の神って言ってたし、そこら辺の神は比較にならないんだろ?」
偶に香霖堂や紅魔館の大図書館で面白そうなものを見つけた時のように目を輝かせる魔理沙の問いに、橘は首を傾げて問い返す。
「能力ってなぁに? れーむとかまりさにはあるの?」
魔理沙の律義な答えが返ってくる。
「若干抽象的な説明なんだが、幻想郷の住民は普通は出来ないことを出来る奴が多い。で、それを特別に能力って言うんだぜ。例えば、私は”魔法を使う程度の能力”で、霊夢は”空に浮く程度の能力”――」
「”空を飛ぶ程度の能力”よ」
外野からしっかりと訂正が入った。聞いているんだか、聞いていないんだか。
魔理沙はそれに苦笑しつつ詫びると、説明を再開した。
「ああ、すまんすまん。”空を飛ぶ程度の能力”な。他には、”時間を操る程度の能力”とか”ありとあらゆるものを破壊する程度の能力”とかあるな。馬鹿みたいに強い奴もあれば大して強くない奴もあるし、生まれついてその能力を持ってる奴もいれば後天的に獲得する奴もいるんだぜ」
先天、後天の話なら、霊夢と魔理沙がこれ以上なくいい例になる。霊夢は博麗の巫女として能力を(ついでに霊力や身体能力も)先天的に有するが、魔理沙の能力は完全に本人の刻苦勉励の賜物だ。
「まあ、ただ能力ってのは妖怪とか神が自分の力を誇示するためのものでもあるからな。自己紹介の一部くらいに考えておくといいんじゃないか?」
さらりと魔理沙は流したが、これこそが能力という概念の本質だろう。
自らの能力をぼかしたり秘匿したりする者もあるが、それはごく僅かで、大抵の存在は自分の能力を顕示する。それが自分の強さ、力の本質でなくとも、自分が考える――人間からの印象という”情報”によって存在を左右される妖怪や神にとっては尚更大事な――自らという存在の”本質”を示しているからこそ、であろう。自己申請制で、それを拒めば、或いは偽ればいとも簡単にあらゆる局面で有利な状況を創れるだろうに、殆どが正直に自分の能力を報告していることに鑑みて、自分がどういう存在なのかを堅持するための基礎とも錨とも言えるモノが能力なのだろう、と人間の身である魔理沙は考えている。
橘は無論そんなことは知り得ないが、自分も暫く滞在するのだし自分の能力を決めておいた方がいいのかもしれないな、とは思った。
「うーん……シンプルに”活力を司る程度の能力”じゃダメかなぁ? 今のぼくが出来ることに比べたら、虚仮脅しみたいな
「別にいいんじゃないか? ルーミアとかも似たようなもんだろ」
知らない誰かの名前が出てきたが、特段それに興味はない橘は魔理沙の言葉にこくりと頷く。
「じゃあ、”活力を操る程度の能力”で!」
「うんうん、よかったな~。で、お前って結局何ができるんだ?」
何が何でも聞き出したいようだ。魔理沙は好奇心に任せて橘に再び訊ねる。
橘は、自己紹介の時とは違い――まるで少し恥ずかしがるように――その問いに答えた。
「ええと、今の状態だと、ぼくから視える範囲の人の生き物、まあ死んでても大丈夫だけど、とにかく相手の活力を引き出して強くしてあげたり、反対に活力を抑えて消したりとかくらいしかできないかなぁ。
「バフとデバフ型? 原初の神様って言う割には、”橘”としては出来ることってそんなにないの?」
「気にしてるんだからツッコまないでよ……」
橘が外野の霊夢から飛んできた低評価に、きまりが悪そうに口を尖らせる。霊夢は相当に肝が据わっているらしい。
一方、橘の能力の説明を聞いて数秒唖然としていた魔理沙は我に返ると、少し上ずった声でまくしたてるように霊夢の評価に異を唱えた。
「おいおい霊夢、お前本気で言ってるのか? コイツ今しれっと『消す』っつったんだぞ? というか、後半の説明の内容おかしかっただろ! 幻想郷でも余裕で最強格だよ!」
魔理沙が怒鳴ったここで一度時を止め、橘の能力について詳説させてもらおう。長くはなるが、辛抱いただきたい。
勿論、橘の能力はただのバフ・デバフの付与ではない。
活力をガスで例えるなら、”橘”としての、即ち現世に顕現している状態での能力は言わば”活力のバルブを捻る”
もう少し噛み砕くと、前者が(対象が複数であっても)対個人の能力で、後者が対世界だ。
活力とは、平たく言えば”存在し、活動するために必要な力”である。生命力も妖力も魔力も霊力も神力も法力も活力の一形態、一出力方法だ。魂を構成、維持するモノ(魂の代謝と考えると分かり易い)でもあり、文字通りの”活きる力”なのだが、一般的な語としての”活力”とは違い、如何なる者もこれなくしては存在できない。生者だろうが死者だろうが、人だろうが人に非ざろうが、全ては同じである。例外なのは、使い込まれておらず神の宿っていない道具や単純な無機物(神器等何かしらの活力が宿る物や、天体、気象、自然の如き神がその移ろいを司る物すらも可美葦牙彦舅神の能力の影響下に入る)と、その存在が活力に拠らない別天神の
もう一つ説明すべきは、活力が世界から与えられるモノだということである。疲れ知らずという存在もあるが、人間も人外も、疲労困憊すると休息や食事を取る。そうすることで、己の力を回復するのだが、それらで得られる活力は、食事によれば当然、休息による場合でも、自ら活力を生み出しているのではなく、外界――世界――から一定量の活力を与えられている。
先程のガスの譬えを用いると、次のようにも説明できる:ガスストーブはガス管に接続されている限りはハプニングがなければずっと点いたままだが、燃料であるガスを使い切らないのは、当たり前だがストーブ自身がガスを生み出しているからではない。ガス管から供給されるからである。そのガス管を通るガスも、遡れば――それがカナダやアメリカで採れた
活力の話なら、ガスを活力に、ストーブを(誰でもいいが)活力を糧に活動する存在に、地球を可美葦牙彦舅神に置き換えれば大きくは外れない。
そして、この例えで説明できることが更に一つある――
橘としての対人的能力なら、それはバフ・デバフとして使える。両極の効果を限界まで上げれば、”加速”は瞬間的な対象の超強化が可能になり、”停止”は魂を形作る活力すらも停めて仮死状態に陥れ、そのまま解除しなければその魂ごと朽ちさせることさえできる。殺すでもなく、その存在を抹消するのだ。例え死者だろうが、神だろうが、活力によって生きる者にはそれに抗う術はない。
可美葦牙彦舅神としてなら、対個人の細かい調整は不可能だが、効果範囲が極大になる。調整できる最低限の範囲が国(
可美葦牙彦舅神は今までの四回の外界への影響を伴った異変(第一段参照。アポロ計画妨害、永夜異変、四季異変、停止異変)のうち、完全に後手に回ったせいで(また能力の相性も最悪だったせいで)対応できなかった最初の事件を除き、続く三回はこの能力でどうにか影響を相殺、或いは無力化してきた。
具体的には、四季異変は
これだけ聞けば最強の名を
その一つは、小さな能力の発動でもバタフライ・エフェクトのように世界全体に波及しかねないので、おいそれと使えないこと。三体問題どころではなく複雑極まりない活力の流れとその影響が
そしてもう一つは、能力を使うと反動として橘自身にも相当なダメージが入ることだ。
橘は自分でそう表現した通り、生命や活力というこの世界の理そのものである。故に、仮に今の身体を塵にされようと滅びることはないし、抑々如何に傷つけようと瞬時に再生するため、痛覚はあるが肉体的な損傷を負うことはない。精神的なそれもまた同様である。しかし、能力を発動すると、この世界の活力の循環を弄った――即ち、自分という
ただ、この世界の活力を弄らなければこの限りではないのでもし仮に
そんな訳で、一言で纏めれば”発動さえすれば最強格でも、なかなかに使えない能力”というのが、橘が今し方命名した”活力を操る程度の能力”だ。
因みに、彼にできること、というだけならこの限りではない。
人と会わないし闘うこともないので戦闘は不得手だし、試そうと思ったこともない飛行もできないが、行ったことのある場所、知覚できる範囲になら顕現→昇天→再顕現で瞬間移動に近い転移は可能だ。
また、八坂神奈子もできるような、博麗大結界越え等は造作もない。結界術は神の
また、橘にはもう一つ特殊な性質がある。これもまた別天神皆に共通するものであり、橘は”能力”とは考えていないが――それはまた、別の機会に。
さて、そして時は動き出す。
魔理沙の大声に驚いた橘はびくりと跳ねると、頬を円く膨らませて魔理沙にあどけない怒声を浴びせた。
「まりさ、いきなり大声出さないでよ! びっくりするでしょ!」
霊夢がまあまあと宥めると、橘は先程と同じようなどこかばつが悪そうな表情で続ける。
「むー……確かに人を消せるとか時を止められるとか言ったら強そうな気がするかもしれないけど、しっぺ返しが怖いし使った後に頭痛くなるしだから使いたくないんだよね……それに、怒られるの嫌だし……」
「ん? でも異変の時
「その度にひどい目に遭ってたんだよぼくは!」
そう言ってぷんすか怒る橘に霊夢と魔理沙は苦笑しながら謝り、橘の怒りは霊夢に促されて口に運んだ煎餅が鎮めてくれたお陰で特に問題はなく橘の自己紹介が終わった。橘が来た頃には南東の空にあった日は既に斜陽と成り果て、境内には橙色の光が射していた。
その夜、橘は霊夢と魔理沙と三人で昼間と同じ卓袱台を囲んで、二人が橘の歓迎会と言って張ってくれた細やかな酒宴を心の底から楽しんで、風呂に入ってから眠りに就いた。心地良く、強か酔ったせいで、あまり何をしたかは憶えていない。
そして翌日昧爽、早速橘は博麗神社を出立し、今すぐに会えると聞いた停止異変の元凶、岩長比売の許へと――
――ゴシャァアッッッッ!!!
「いったぁぁぁぁぁ!?」
甲高い、幼い悲鳴が神社に
お忘れかもしれないが(そしてそれは一万五千字を優に超えるこの冗長な、この場面から四月も前の場面の回想を経れば仕方のないことだが)、今、橘は霊夢のフィナンシェを”雪掻きの代金”と称して勝手に食し、それに怒った霊夢と博麗神社で鬼ごっこを繰り広げている最中である。異様に足が速い――単純な速度では幻想郷最速の五指に入ろうかという――橘が霊夢を翻弄しようとして社殿の狭い部屋の中で走り回っていたのだが――風圧で舞って床に落ちていた紙に足を滑らせ、勢いそのままに柱に突っ込み強か額を打ったのだ。激突された柱の方からも「メリッ」と嫌な音がしたが、橘の頭の方からは「ゴシャァアッッ!」という、思わずモザイクが必要だろう光景を想起するようなこれまた嫌な音を鳴らした。但し先述の通り、橘の身体は一瞬で治癒するので絵面だけ見れば白髪の幼子が超速で柱にぶち当たっただけである。
身体そのものに傷が残るわけではない橘は綺麗なままの額を抑えて涙目で「いたいよぉぉ!!」と転げ回るが、反応する霊夢の声は冷たかった。
「調子に乗るからよ、別天神様? ぐちゃぐちゃになった部屋、あんたが自分で片付けておいてね? それと、勝手に私のお楽しみを食べた罰として、今日明日のおやつはナシ」
「ええ~!? ひどいよれーむ、ぼくれーむのお手伝いしたんだよ!? お供え物くらいあってもいいじゃんか、ケチ! ふとーろーどー反対!」
「勝手に私の物食べたりしなければありがとうって言ってお菓子あげてたかもね。ほら、片付け終わったら愚痴聞いてあげるわよ」
「いじわるぅ……神様虐待反対~……」
落ち込む橘の声が、如月の冷たい空気に溶けていった。
これは、幻想郷を訪れた子供の神様が、普段は見た目の年相応に遊んでは笑い叱られ、時には真面目に”神様”しながら過ごす物語。
ここからは暫くの間、彼の来訪から先程の鬼ごっこに至るまでに起こった、数個の事件の顚末を追っていく。
序章は完結です。時系列が読み取りにくかったかもですが、ここまで引っ掻き回すことは多分もうないので安心してください。
あと、橘の名前や橘の足の異様な速さ、橘の服の奇天烈なデザインの理由は後々物語の中で書くつもりです。何となく想像しながら読んでみてください。
最後に、次章からは阿梨夜とのお話です。錦上京まだプレイしてなくてネタバレ食らいたくないって方は、ブラウザバックか次の章へのジャンプをお勧めします。