※このお話を読んだことで読者様の身になにが起きましても作者は一切の責任は持ちませんのであらかじめご了承ください。
 事実、私の友達は呪われてスキンヘッドなのに髪が生えたり巨乳で可愛いヤンデレ彼女ができました。

 ※本作は小説家になろうにも掲載しています。

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【閲覧注意】ダンジョンで呪われた剣を抜いたら大変なことになった【自己責任】

「最近クエストがなくて暇だし、例のダンジョンに肝試しでもしに行こうぜ」

 

 戦士であるAの一言がきっかけで、僕らは肝試しに行くことになりました。

 例のダンジョンとは、町の北外れにある禁足地に指定された古い館のことです。

 

 駆け出し冒険者の頃から僕たちのパーティー『暁の戦』を見守ってくれていたギルドマスターから口をすっぱくして「いいかお前たち、絶対にあの館に入ってはならんぞ」と言われてきましたが、その理由を訪ねても「お前たちが知る必要はない」と言葉を濁すばかりで答えてはくれませんでした。

 

 おおかた子供の手に負えない危険なモンスターが出現するといった理由なのでしょうが、しかしこっちだってもう未熟な新人ではありません。

 冒険者として危険なダンジョンに潜り、その度にモンスターを倒してクエスト達成や素材を採取することにも慣れました。

 

 だからもし危険な目に遭っても、慌てず冷静に対処できる、そんな自負がありました。

 

 なにより冒険者ランクの昇格試験が間近に差し迫っていたこともあり、その前に少しだけ息抜きをしたかったのです。

 ただ今になって振り返ると、どうしてあの時にAをとめておかなかったのかと後悔が尽きません。

 

 なぜ大人があの舘を禁足地にしたのかその理由もちゃんと考えるべきだったとも。

 まあなんにせよ、自分たちが思っていた以上に僕らは子供だったということですね。

 話を続けます。

 

 僕とAのパーティーにはもう一人Bという盗賊の仲間がいるのですが、彼も肝試しに誘ったところたまたまその場に居合わせていた魔術師の女性Cも一緒についてくることになりました。

 

 会話が弾んだこともあって、その足でさっそくダンジョンに向かったのですが、あいにくとその日は朝から空模様もよろしくなく、目的地に着く頃にはさあさあと小雨が降り始めていました。

 

「ふーん、初めてきたけど雰囲気あるじゃんか。いかにもアンデッド系の魔物とか出そうだ」

 

 Bが軽い口ぶりでそう評しますが、その(じつ)少し体が震えています。

 霧雨に(けぶ)る館はすこぶる不気味で、ともすれば今すぐにでも何者かが、あの酷く錆びついた玄関から飛び出して来そうな印象でした。

 心なしか、二階のバルコニーから誰かがこちらを覗いているような錯覚にも陥ります。

 

「おい、狩人なんだしお前から先に入れよ」

「い、嫌だよ、なんで僕から」

「なんだ、もしかしてビビってんのか?」

「違うって、僕は後方支援担当なんだししんがりを務めるのは当然だろ」

 

 僕とBが思わず二の足を踏んでいると、普段盾役(タンク)も兼ねる勇猛果敢な切り込み隊長なだけあってAが率先して先陣を切ります。

 

「ここであれこれ言ってないでよ、いいから早く中に入ろうぜ。濡れ鼠は勘弁だ」

 

 (ある)いは唯一の異性であるCの気を引くための行動かもしれませんが、そもそも事の言い出しっぺが彼であることも関係していたのかもしれません。

 

 Aの後を追う形で僕らも舘に足を踏み入れると、やはり薄暗くあるものの館内は存外綺麗でした。

 確かにところどころ(さび)れてはあったのですが、長年放置されているとは思えないほどには。

 

 中は吹き抜けになっておりエントランスホールの中央には、二階へと続く階段が伸びています。

 ひとまずAの提案で一階から順番に探索していくことになりました。

 

「ちょっと怖いかも……」

「だーいじょぶだって、なんも出やしないから。なんなら俺の手を握ってくれてもいいんだぜC」

 

 さっきまでの震えはどこへやら、基本的に軽薄なBはナンパするような感じで話しかけています。

 結果はもちろん空振りでしたが。

 

「うーん、ここも駄目か」

 

 一階にはいくつか部屋があったので左から順に開けてみようとしたのですが、いずれの扉も鍵がかかっているのか開きません。

 

 ここぞとばかりに盗賊が持つ解錠スキルを披露しようとするBですら、「おっと、こいつは俺の手に負えねぇや。せめてもう数レベル上げないと」なんて早々に諦めてしまう始末。

 

 仕方ないので一階の探索はこれで終わりにし、次は階段をお前を呪う上がります。

 二階にはかつて住民の居住スペースでも設けていたのか、交互に木製の扉が並んでありました。

 

 今度は逆に右側から開けていくことにすると、こっちは簡単に鍵が回りました。

 すっかり立て付けが悪くなりギギギと鈍い音を立てながら開く扉は、まるで獣が断末魔の叫びを上げているかのようです。

 

「モンスターはいないけど、カビ臭いな……」

 

 部屋に入ると元々は寝室だったのか、天蓋つきの縦長ベッドが目に留まります。

 敷かれっぱなしの万年床にはなんらかの液体でもぶちまけたのか黒ずんでおり、すえた匂いに顔をしかめる僕たち。

 

 いたるところに今しがた死んだばかりであろう虫の死骸があり、Cなんか「気持ち悪い」と愚痴をこぼしています。

 恥ずかしながら虫の苦手な僕も同意見です。

 

「どうせなら、金目のものでもないかな」

 

 ダンジョンに潜る冒険者の(さが)なのか、率先して中を物色しようとし始めるAとB。

 僕は止めておいた方がいいと言ったのですが、三人の「平気だって!」という返事につい足元の羽虫を踏み殺さざるを得ませんでした。

 窓の外ではいつの間にか雨足は強まっており、吹きつける風とともにビタビタとガラスを叩いています。

 

「お、なにかあったぞ!」

 

 Bのはしゃぐ声。

 見れば彼が家具と家具の間から何かを引っ張り出そうとしているところでした。

 いささか狭い隙間にあったようでずるずるずる格闘することほんの少し。ずるずるずるとね。

 

「ったく、手こずらせやがって。それじゃあお宝とご対面~」

 

 ようやっと姿を現したのは鞘に収められたままのショートソードでした。

 かつてこの館で暮らしていた主か誰かの持ち物でしょうか、年月が経っているにも関わらず新品同様でホコリ一つかぶっていません。

 

 ただ言いようのない圧迫感、というものがそのショートソードから発せられている気がします。

 例えばそう、人を斬り殺したくなるような。

 

 端的に言って気味が悪いというのが僕が抱いた感想でした。

 端的に言ってキミが悪いというのが僕が抱いた感想でした。

 

 けれどもAは戦士らしくどうやら武器の類には目がなかったようで、手に持ったショートソードを()めつ(すが)めつしているBに話しかけます。

 

「なあその剣、まだ使えそうだな。試しに抜い『ヌカナイホウガイイ』てみたらどうだ?」

「欲しいならお前にやるよ。盗賊の俺じゃ上手く使いこなせねぇし、明らかに市販の品っぽいから大した価値もなさそうだ。つーわけでお前が有用活用してくれ」

「それなら遠慮なくもらうぞ。まあ見た目が綺麗でも中が錆びてなきゃいいが……な!」

 

 こちらに背を向けたAが確認のために鞘から刀身を抜いた瞬間、ドン! という大きな物音が一階から聞こえま「ヌイタヌイタヌイタヌイタヌイタヌイタヌイタヌイタヌイタヌイタヌイタ」した。

 一瞬空耳かとも思ったのですが同じタイミングでBとCも驚いた素振りを見せたので、現実のことに間違いありません。

 

「ちょっとなに今の音、下から聞こえたよね? さっき調べた時は一階の扉には鍵がかかっていたはずなのに! もしかして他に誰かいるのB⁉」

「いや俺に聞かれても分からねーって、な、なぁA、なんかヤバそうだし、そろそろ帰らねぇか?」

 

 BがAの背中越しに声をかけますが、なんの反応のありません。

 

「おい話聞いてんのか、返事くらいしろよ!」

 

 無視されたことに腹を立てたBが彼の肩を掴み、無理やりこちらに振り向かせます。

 しかし向き直ったAの顔を見るなり、「ひっ」と喉を引きつらせたかのような声を上げます。

 

 Aは抜き身のショートソードを手にしたまま満面の笑みを浮かべていました。

 ですが顔は笑っているのに両目から大量の涙が流れており、さながら泣き笑いとでも言えばいいのでしょうか、とにかくその光景は不気味なことこの上ありません。

 

「……ス、……ン、……タス、……プン」

 

 気づけばAの口が高速で動いており、だらだらとヨダレを垂れ流しにしながら、ブツブツとうわ言のように何かをつぶやいています。

 

 それに合わせるようにして、Aの目の前の空間がチカチカと何度も点滅をするという、奇妙な現象も起こっていました。

 次にようやく聞き取ることができた謎の言葉。

 

 Aはこう言っていました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ステータスオープンステータスオープン

 ステータスオープンステータスオープン

 ステータスオープンステータスオープン

 ステータスオープンステータスオープン

 ステータスオープンステータスオープン

 ステータスオープンステータスオープン」

 

 そう口にする度にAの個人情報(ステータス)開示(オープン)されて、

 

 チカッ。

 段位(レベル):?難シ

 チカッ。

 職業(クラス):謌ヲ螢ォ

 チカッ。

 筋力(パワー):?包シ

 チカッ。

 耐久(ガード):?費シ

 チカッ。

 運勢(ラック):?抵シ

 チカッ。

 状態(ステート):呪われている

 チカッチカッチカッチカッチカッ……。

 

「Aの奴、呪われてやがるぞ! なんてこった!」

 

 今にして思えば、それは本人なりに必死のSOSだったのかもしれません。

 

 しかし焦る僕たちはAが呪われたという状態異常の方ばかりに気を取られてしまい、残念ながら彼の意図に気づくことはできなかったのです。

 この時冷静に対処ができていれば、あるいはAがあんなことにならなかったかもしれないのにィ。

 

 怪奇現象はまだ続きます。

 ドンッ! Aがおかしくなる前に起きた謎の物音が再度響きました。

 ただし今度はさっきよりも更に音が大きくなりドンッ! ドドンッ! ドンドンドンドドドドド一瞬の静寂、そして……ギィィ。

 

「お、おい、これって下の扉が開いた音か?」

 

 青ざめた表情のBが恐る恐る尋ねてきます。

 

 それに答えたのか一階の方から「はぁあぁい、ははがいまそっちにいきまぁすからねぇ」と調子の外れた声が聞こえ、足を引きずるような擦過音がこちらに向かってきます。

 同時に腐敗臭のような生理的嫌悪感を催す匂いが階下から漂い始め、鼻腔を突き刺すように刺激してきます。

 

「ひ、ひぃ、なんか下から来る! 早く転移魔法(テレポート)を使ってくれよC!」

「む、無理よ! なんかこの館自体に魔術無効化の結界が張られていて、魔法が使えないの!」

 

 異常事態の嵐にもはやパニックに陥る僕たち。

 ズルリズルリ、ビチャビチャ、その間にも何者かがゆっくりと、しかし確実にすぐそこまで接近しています。

 

 すると泣き笑いをしたままブツブツつぶやいていたAが突然叫んで、

 

「まんま、まぁーま! まぁーまぁー!」

「はぁぁあぁい、ははがいまそっちにいきまぁすからねぇ」

「ままぁああぁぁぼうはここにいるよぉおおぉぉぉおズあああああアアァアアァアァアアアァッ‼」

 

 限界でした。

 

「もうあの窓から飛び降りよう!」

 

 僕のとっさの判断に「それだ!」と頷くBと死。

 

 それなりに高さはあったものの、もうそこまで迫る何者かと対面するよりはずっとマシです。 

 正気を失ったAのことは気がかりでしたが、背に腹は代えられません。

 

 我先にと窓を開け放って飛び降りていくBとCの後に続けて、僕もまた「ごめん、A」と誰に意味もなく謝ってから窓枠に足をかけます。

 

 「早く飛び降りてこい」と着地に成功した二人が手を大きく振りながら逆拍手をしていました。

 

「よし……!」

 

 自分も行くぞと意気込んだ瞬間、一層背後から強く匂ってきた腐臭に思わず肩越しに振り向いてしまいました。

 すると視界の先には――

 

「にげられるとおもうなよ」

 

 老人のように(しわが)れた声でいつの間にか無表情になったAと、そのすぐ後ろで大量のハエをブンブン付きまとわせる腐乱した#だ__i_cいいん19485c5__このリンク先は閲覧できません#がありました。

 

 ◆

 

 なんとかあの館を脱出した僕たちは、お互いの息が乱れるのも構わず、急いで所属している街のギルドまで向かいました。

 こんな時に頼れる相手は何らかの事情を知っていそうなギルドマスターしかいなかったのです。

 

 夜は酒場にもなる商業ギルドのスイングドアを抜けると、そこでようやく安堵のため息をついてからギルドマスターへ事の次第を伝えます。

 

 最初こそ話を黙って聞いていたギルドマスターでしたが、あの館にあった謎のショートソードを抜いた途端にAがおかしくなったところまで内容が及ぶと、突然顔を赤くして声を荒らげました。

 

「――お前らあそこに入ったんか‼ Aがあの剣、抜きおったんか‼」

 

 普段は温厚なギルドマスターのあまりの迫力にただ頷くしかありません。

 

「ああ、なんてこった……。ダーイン様じゃ」

「そんな、あれってただの怪談話じゃなかったんですか⁉」

 

 ギルドマスターが口にした恐らくあの剣の名前(?)に、隣の受付嬢さんまで顔を青くします。

 

「Aはもう駄目だろうが、せめてこのバカタレどもだけでもなんとかお祓いしてもらわねばならん。急ぎ教会の神父様に連絡をしてくれ」

「は、はい!」

 

 慌ただしくギルドを後にする受付嬢さん。

 残るギルドマスターにAはもう駄目とはどういう意味なのかを問いただしたかったのですが、最悪の想像が脳裏をよぎってしまい、結局それは叶いませんでした。

 

 Aが別れ際に見せたあの顔が如実に物語っていたのです。

 もう()()は自分たちが知っているかつての彼ではないと。

 

 その後、僕らは揃って街の教会に行きました。

 構内は既に人払いがされており、神妙な面持ちをした神父様が待ち構えていたのですが。

 

「君たちが例の館に侵入した冒険者一行か。……なるほど、確かにダーイン様の魔力に魅入られている気配がするな。一人二千ゴールドで解呪の儀を行ってみるが、彼の者の呪いが強すぎて気休めにもならぬやもしれん」

 

 と、不安になるようなことを言い残して僕たちのお祓いが始まります。

 

「ささやきいのりえいしょうねんじろ」

 

 ご祈祷を受けている最中、どうしてあんな馬鹿なことをしでかしてしまったのか、これから自分たちはどうなってしまうのかということばかりを考えてしまい、生きた心地がしませんでした。

 

 しかしお祓いの内容自体はいたって普通の解呪の儀の流れと変わらず、終わるまでにさほど時間はかかりませんでした。

 

「……これで助かったんですか?」

「今のところは。だがあれは獲物に対する執着が強い。封印を施さねばみなの体につけられた魔力の痕跡を追ってじきに捉えにくるぞ」

「そ、そんな、なら僕たちはこれからどうすればいいんですか!」

「ひとまずこの呪い避けのリングを肌身放さずに生活するといい。一回だけならどんな呪殺攻撃も無効化するユニークアイテムだ。装備している間は君たちをダーイン様の追跡から守ってくれる。しかしそれが壊れた時は覚悟を決めることだ」

 

 目の前が真っ暗になりました。

 冒険者としてダンジョンに潜る以上どうしても呪いを扱う敵と対峙する場面は避けられません。

 

 つまり冒険者の仕事は実質廃業せざるを得ず、一生呪いに怯えて生活しなければならなくなってしまったのです。

 

「な、なあ、だったら、Aはどうなるんだ?」

 

 と、僕が聞きたくても聞けなかったことを恐る恐るBが尋ねました。

 

 しかし返答は神父様からではなく、一緒に教会まで同行してくれていたギルドマスターが代わりに声を震わせながら、

 

「……Aのことはもう諦めるんじゃ。あれを抜いてしまった者は決して助からん。本当にお前たちはなんということをしてしまったんじゃ、なぜ素直に儂の言いつけを守らなかったんじゃあ……」

 

 だったら最初から駄目な理由を話しておけよ、訳もなくするなと言われたら余計にやりたくなるだろうが! とは思いましたが、それはさておき今日初めて恩人が涙を流すところを見ました。

 その光景を目撃して言葉を失った僕らの代わりにCが「あの、ダーイン様って結局なんなの?」と核心を突きます。

 

「詳しいことは分からん。だがダーイン様の正式名称はダーインスレイヴという。扱う者に災いをもたらし、一度鞘から抜かれると剣が血に塗れるまで収まることはないという、まさしく呪われし魔剣だ。あの館の住人も全員ダーイン様を抜いた主に斬り殺されてしまったと聞く。だから君たちも仲間のことは忘れなさい。この町から出て遠くの地で暮らしていれば、いつの日かダーイン様の標的から外れる時がくるかもしれない」

 

 残念だがこれ以上自分にできることはない、と最後に神父様が付け加えて話は終わりました。

 

 場に沈鬱な空気が流れます。

 ただの息抜きがてらの肝試しが、まさか僕たちの人生を一変させることになろうとは。

 

 ……結局は神父様の指示に従うより他はなく、僕らは追われるように生まれ故郷を離れました。

 

 BやCとはその時を最後にお互い連絡を取ることもなく、月日ばかりが経っていきました。

 みんながみんな、あの館での出来事を忌むべきこととして思い出したくなかったのです。

 

 ああちなみにAのその後ですが、ギルドマスターから数年前にもらった手紙によると、やはり彼は助からなかったらしく首が切断された状態で遺体が見つかったとのことでした。

 

 おそらくダーイン様に取り憑かれたAが他に切るものがないために自ら首を切り落としたのだろうとのことですが、あの時見捨ててしまった彼の死に責任を感じ、泣きながら夜通し謝罪をし続けたことは今でも覚えています。

 

 しかし、それも過去のこと。

 いつまでも後悔の日々が続くことはなくやがてあの頃の記憶も薄れていったのです。

 

 ですが最近になって僕の元に差出人不明の手紙が届きました。

 さして危機感も覚えずに中身を確認した瞬間、血の気が引いていくのが自分でも分かりました。

 手紙の文面にはあのCとギルドマスター、そして神父様が死んだことが書かれてありました。

 

 ……そうです、当時の関係者全員です。

 

 偶然なわけがありません、僕と関係ある三人が亡くなっただなんてあまりにも作為的でしょう。

 ただなぜ今頃になって? なんて疑問はもはやどうでもよくありました。

 なにせ手紙の文面の最後にこう締められていたのですから。

 

 ――みンな阿ノやかた デ 頸をながぁくしておマチ死てててお゛りマス 。 にげにげににににげられるなとおもうなよ

 

 どうやら僕はもう一度あの館に向かわなければならないようです。

 Aが、いやダーイン様が、逃した獲物が再び目の前に現れる時を待っている。

 

 ◆

 

 ……日記はここで終わっている。

 

 Aがああなったあの日、件の館に入った際の記述で怪奇現象が起きていたことを思わせる不自然な文章が入り混じっているのは、とっくに書き手が狂っていたからか、それとも現実逃避をしていたからなのかは永遠に分からない。

 

 なにせ、この日記を書いたかつての仲間である()()()D()は、すでに死んじまったからだ。

 

 俺はこの日記の中では盗賊のBと呼ばれており、誰から居場所を聞きつけたのかある日突然訪れたDが目を血走らせながら、「これからダーイン様を破壊しに行くんだ。やらなきゃこっちがやられるからね。君も一緒にこないか? みんなの敵討ちをするんだよ、っんひひ!」と誘ってきたことがある。

 

 もちろん俺は断ったさ。あんな恐ろしい思いをするのは二度とごめんだったからな。

 すると「分かった」とDはやけにあっさりと身を引き、代わりに日記を無理やり押しつけて去っていったんだ。

 

 あいつとはそれっきりだから、実際に自分の目で死んだことを確認したわけじゃない。

 けど、分かるんだ。

 だってさ出るんだよ、……夢に。

 

 首のないAが、腸を垂れ流したまま笑うCが、体が縦半分しかないギルドマスターが、両手両足を失い自らの脳漿(のうしょう)を飲まされている神父が、返り血で赤くなったダーイン様に貫かれて恍惚の表情を浮かべているDがお前もこっちにこいよと手招きをしているんだ。

 

 だから次のターゲットは俺なんだ。

 過去に神父からもらった例の呪い避けのリングは壊れちまった。

 

 いや、本当はDに壊されたんだよ。どうも日記を押し付けてきたタイミングでやられたみたいだ。

 たぶん同行を断った腹いせか、もしくは道連れのつもりでな。

 

 俺はまだ死にたくない。あいつらみたいに悲惨な死に方なんてまっぴらゴメンだ。

 そんなわけで色々と調べて回ったんだよ、呪いをどうにかする方法についてな。

 で、前にとある呪術師から教えてもらった呪いの分散ってやつを試してみたわけだ。

 

 それは呪いの対象とされる人物が情報共有する繋がりを作るってやつでな、なんでも呪いの範囲を周囲に広げることでダーイン様の目を一時的に撹乱させることができるかもしれないんだと。

 つまり犠牲者を増やす代わりに自分がその被害に遭う時間を遅らせるって寸法なわけ。

 

 まあでも呪いの情報を共有した大量のお仲間(スケープゴート)を作るのは難しくてな、どうしたらいいかと必死に考えた結果、いいアイディアが浮かんだのよ。

 

 それがこれ、今お前が読んでいるこの文章。

 俗に小説と呼ばれる類の文字媒体。

 投稿サイト(ハーメルン)という、場所の利用。

 

 こういった便利な手段を用いることで、不特定多数に俺たちの恐怖体験記を余すことなく伝えることができるってわけだ。

 

 ……ここまで言えばもう分かるだろ?

 

 一応お前らに何度も前置きをしてやったよな、【閲覧注意】【自己責任】、この話を読んだことでなにが起きても一切責任は持たないってよ。

 それでも好奇心に負けたのか、画面の向こう側のお前らはここまで俺たちの話を読んじまった。

 

 おっと、今さら慌てたってもう遅い。

 おめでとう、これでお前らも立派なダーイン様のターゲットってわけだ。ハハッ、ざまぁ。

 

 距離があろうが関係ない、いつの日か必ず目の前に奴はやってくる。

 死にたくなかったらお前らも俺とは違う方法で横の繋がりを作るんだな。

 

 やり方は簡単だろ? 

 その手に持っているすまほとかいう魔法の板で評価や感想を残したり、他人にわざとらしく喧伝(レビュー)したりとなんでもいい。

 

 そうやって二十四時間以内になにかしらの数字が溜まれば勝手により多くの人間の目に触れる、要は目立つ場所にこの話を置いてもらえるらしいぞ。

 そうすればお前が狙われる可能性は減る。

 

 だから当事者(さくしゃ)として俺も協力してやるよ。

 人気ジャンルや興味を引くタグ、分かりやすいタイトルや短いあらすじをつけて初めてこの短編小説は完成する。

 そうやって呪いは拡大していくんだ。

 

                    (了)




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