無個性でヒーロー!? できらぁ!   作:にょわ

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なんか書けたので投稿します。やっと1回戦が終わった、、、、。


舐めんなって感じのお茶子!

『さぁ一回戦もこれでラスト! トリを飾る二人の生徒の入場だァ!』

 

 静かに、しっかりと前を見つめてお茶子ちゃんが歩いてくる。

 対するかっちゃんはいつも以上に不機嫌そうだ。釣り目の角度がいつもより5度鋭い。

 

「かっちゃーーーん、負けんなよ~~」

「ったりめーだボケ!」

 

 周りのクラスメイトが「えっそっち応援すんの!?」みたいなギョッとした顔をしするが、そりゃするでしょアレでも幼馴染なんだから。

 

「お茶子ちゃーーーーん!!! 鼻っ面叩き折ってやれ――! けちょんけちょんだーーーーー!!」

「ちょちょ、言いすぎ言いすぎ!」

 

 ま、片方しか応援しないなんて言ってないけど。

 ふふ、お茶子ちゃんわたわたしてて可愛い。それにかっちゃんも今のでさらに目が5度吊り上がってかわいい。

 

『オーケークラスメイトの熱い激励も届いたところで早速始めて行くぜぇ! なんでも浮かすグラビティガール麗日ヴァーサス! なんでも壊すボンバーボーイ爆豪!』

 

 二人が構え、相対する。

 勝負の火蓋が今……。

 

『試合……開始ィィィィィ!!』

 

 切られる。

 

「APショットォ!」

 

 スタートと同時に撃ちこまれたにっくきAPショット(一回戦の思い出)が文字通り、開戦の狼煙を上げる。

 個性による防御手段のないお茶子ちゃんではこれだけでも試合が決まりかねない一撃だが……初手にソレが来ることを読んでいたのか、体が沈む。

 

『爆豪容赦ナシ! 開幕爆撃が麗日のに叩きこまれる! おっとしかし! 爆炎の下からなんか飛んでったぞ!?』

 

「はぁぁぁぁ!」

「ちぃ!」

 

『謎の弾丸の正体は姿勢を極限まで低くした麗日お茶子本人! 地を這う魔弾から逃れるように、爆豪空へ退避!』

『麗日の手で触れられたら無重力になってついた慣性が止まらなくなる。場外アウトのこのルールじゃ触れられた瞬間ゲームセットだからな』

 

 うわ、惜しい。一番簡単に決まるかもだったのが今の奇襲だよなぁ。

 まぁでも狙い通りではあるか。かっちゃんを空に飛ばすことができたし。

 これでやっと、スタートラインだ。

 

『奇襲に失敗した麗日だが、なんだぁ? 姿勢は下げたまま、獣のように四つ足で立ち低い姿勢を維持!』

『どちらも地に足を付けた状態なら的を絞るために姿勢を下げるのはわかるが、相手が頭上にいる今むしろ的が増えかねん、まぁ何かしらの狙いがあるんだろう』

 

「……ちっ」

 

 面倒くさそうにお茶子ちゃんを睨むかっちゃんを見て、狙いが上手くいっていることを悟る。

 え、なんで私がそんな狙いだなんだに詳しいのかって? それは……(ほわんほわんほわん)。

 

『話は聞かせてもらったよ!! デク! お茶子ちゃん!』

『架沙音!?』

『未来ちゃん!?』

『確かに、自分の力だけで勝つ……それは立派なことだし、カッコよく見える(・・・)と思う……でも、それはその意思を貫き通せる強さを持った人にだけ出来ることで、悪いんだけどお茶子ちゃんじゃまだ足りない……例えば私とかね!』

『架沙音……』

『未来ちゃん……』

『だから、みんなで勝とう(・・・・・・・)!

何を使ってでも、なんとしてでも勝つ! それだって立派な強さだから!』

『そっか……うん、わかった! ごめん2人とも、手伝って!』

『……! うん!』

『全然! 一緒にあのバカで調子乗りでプライド爆発してる人を敬う気の欠片も無い不良男の尊厳粉々にしてやろ!』

『すごい言うやん』

 

 みたいなことがトーナメント発表のすぐ後にあり、一緒に考えていたのだ。

 

『まず一番大切なのは、かっちゃんを近付けさせないことかなぁ』

『え? 私の個性は触ったらかなり有利になるし、どうやったら爆豪くんに触れられるか、だと思ったんだけど』

『ん~まぁたしかに触れれば勝ちではあるんだけど……多分無理』

『多分無理かぁ』

『かっちゃんは自他ともに認める戦闘センスの化け物だし、個性も小回りが利く。だからインファイトじゃ手も足も出せずにボコボコにされると思う……悔しいけど、私でも個性アリのかっちゃんとサポートアイテムなしで殴り合えって言われたら触れるか怪しい……いやできるけどね!? まぁ私くらい(無個性で主席)動ければギリって言えば、その難しさは伝わるよね?』

『あはは……つまり大事なのは』

『"近づくことにリスクがある"と思わせること、ひいては遠距離からの爆撃っていう戦法を取らせること、だね』

 

 一見無意味に思える戦法、そしてお茶子ちゃんのあの強い瞳、その二つがあれば、かっちゃんは何かあるかもしれないとありもしないリスクを考えてインファイトは選ばない筈。まぁ実際触れられたら負けってのは充分すぎるリスクではあるしね!

 かっちゃんはクレバーだけどみみっちいから、あんななのに安全策ばっか選ぶケがあるんだよねぇ……面白くない。

 

 だけどお茶子ちゃん、わかってるよね? あくまでここはスタートライン(・・・・・・・)。進む先もまた地獄だってことを。

 

「関係ねぇ! ブッ潰れろ!」

 

『ホントに容赦ねぇなぁオイ! 制空権を制した爆豪による絨毯爆撃ィィィ!! 本日の天気は晴れ時々爆発ゥゥゥ! 会場からのブーイングがすげぇぞ!』

『真剣勝負の場で手加減する方が失礼だろ、あれは対戦相手に対する礼儀だ。なぁ架沙音未来』

 

 ナ、ナンノコトカナー。ワタシワカンナイナー。

 ……三奈やめて、そんな目で見ないで。

 いやほら、私のはあれだから、相手の力をより引き出してプルトラするための合理的手段ってやつだから、うん。

 

「……ごめんなさい」

「うむ、わかればよろしい」

「三奈……!」

「未来……!」

 

 ひしっ。

 

 閑話休題(それはともかく)。

 

 ステージはかなり地獄絵図だ。

 空を飛ぶ爆撃機が撒き散らす爆発の雨を、素早いスタート&トップで躱し続けるお茶子ちゃん。

 

『麗日わずかな隙間を縫って躱し続ける! 細かな急発進急停止を繰り返し、地を奔り続けるぅぅ! なんかアレみてぇだな! ゴk』

『言っていいことと悪いことがあるぞ山田』

『本名はらめぇ!』

 

 ……プレセンほんとサイテー。うららかほんわりかわいいお茶子ちゃんをよりにもよってゴ……黒い虫に例えるとか。

 ありがとうイレセン、止めてくれて。

 

『……そうか、四つ足はそのためか』

『知っているのかイレイザーヘッドォ!』

『恐らく麗日は個性で自身を一瞬だけ無重力状態にして強く蹴り出すことであの細かなステップを可能としている』

『ほうほう』

『しかし通常の立ち姿勢では上への力が大きくなり、縦の動きが生まれてしまうことで動きのロスが大きい』

『なるほど! だから地面との距離を短くして、着地したいと思った時にすぐ踏み込めるようあの姿勢にしてんのかァ! これは……来るかぁぁぁ?』

『…………はぁ……合理的だ』

『合理的ヨイショォォォォ!』

 

 ……イレセンほんと可哀そう。わざわざノッてあげなくてもいいのに。

 でもありがとうプレセン、ちょっとおもろい。

 

「チッ……すばしっけぇな」

「はぁ……はぁ……爆豪くん、もう息切れ……? うぷ」

「ハッ! そっちこそもう限界じゃねぇか!」

 

『お互い一度息を整える! 絶えず降り注いでいた爆撃が止んだが、おいおいステージ穴だらけじゃねぇか!』

 

 かっちゃんの魔の手により破壊し尽くされたステージにはいくつものクレーターができ、そこら中にかつてステージだった瓦礫が転がっている。

 これで完全に舞台は整った! ……ただ、お茶子ちゃんもかなり限界が近い。

 もともとお茶子ちゃんの個性には自分にかけると酔ってしまうという反動があった。

 私謹製の"目指せ個性酔い解消! 360°大回転スペースショック"による訓練で限界値はかなり上がったが、それでも一瞬とはいえここまで連続して使い、かつ過度のスタート&ストップを繰り返したとなるとお茶子ちゃんの三半規管にはかなりのダメージが溜まっている筈。おそらく立っているだけでもしんどいんじゃないだろうか。

 

 それでも(・・・・)。

 

「はっ……はっ……はぁ……」

 

『麗日、息も絶え絶え、しかし立つ!! 頑張れェェェェェ!』

『片方に入れ込みすぎだろ』

 

 未だに無傷で安全圏(空の上)からバカスカ撃ちまくって無双してる悪人面の男の子とそんなかっちゃんにボロボロになりながらも懸命に戦ってる女の子の図は……まぁ、仕方ないよねうん。

 未だにかっちゃんに対するブーイングしてる人いるし。あ、イレセンキレた。

 ふふ、論破されてやんの、カワイソ〜。

 

 いやだって、アレ(・・)が見えてない人が何言っても……ねぇ?

 

「やっと……準備が整った……!」

 

『なんだぁ? 麗日がステージに入った割れ目に腕を入れて……うおぉ!? クソデケェ石柱みたいに割れたステージを引き抜いたァ!? なんつぅ怪力、全然麗らかじゃねぇぜ!』

『いや個性だろ。あそこは明らかにステージへのダメージが大きかった、恐らく意図的に破壊させたな』

『Oh! そいつぁクレバー! そして周囲には礫が浮遊する……まさか!?』

 

「星屑千本ノックぅぅぅ!」

 

『打ったァァァァ!! 浮遊する礫を爆豪目掛けて打つ! 打つ! 打つ! ナイスバッチィィィ!!』

 

 空中を爆発の反動で浮かぶかっちゃんを、大量の瓦礫が襲う。

 これだけでも充分な弾幕ではあるが……当然かっちゃんなら……。

 

「オラァ! そんなもんが秘策かよ丸顔ォ!」

「そんなわけ……ないやろ!」

 

 最後に大量の瓦礫を一振で纏めて打ち出し、バットにしていた石柱も投げつける。

 そして間を置かず、両の掌をぴと、と合わせた。

 ここで初めて、かっちゃんの顔に焦りが浮かぶ。

 

「まさか……!」

「もう遅いよ! 落ちろォォ!!」

 

『なんと、挟撃ッッ!! 前半下に意識を持っていかせたのは空を飛ぶ爆豪の更に上に浮かべた瓦礫に気付かせないためだったのかァ!』

 

 あんだけ分かりやすくぷよぷよ浮いてる瓦礫に気付かなかった推定プロヒーローさんはイレセンの言う通りとっとと転職した方がいいと思う。目ん玉ついてんのか。

 

「……らに……こう、へ」

 

『麗日ァァァ! 攻撃の行方を見届けることなく、倒れ込むゥゥ!』

『個性のキャパオーバーだろうな、さっきの段階でも限界そうだったのに加えて今の攻撃だ、無理もない』

『しかし、投げた賽は戻らない、ぶっ飛ばした礫は止まらない! 防げるか爆豪ォォ!』

 

 上下両方からの面攻撃! 拳大の瓦礫はひとつでも頭に当たれば充分意識を刈り取れる!

 いくらかっちゃんでも、これなら……。

 

「チッ! ッルァァァ!!」

 

 ……ッッ! おいおい、マジかかっちゃん!

 ここまで……!

 

『なんてこったァァ! 爆豪、まず上空へ特大の爆発をBOMB! それを推進力にみずから彗星☆ホームランの中に突っ込み全方位へ小規模な爆撃を連打ぁ! あの量の攻撃を防ぎ切りやがったァァ!! そんなぁぁぁぁぁぁ!!!』

『流石に爆豪とはいえ、これにはもしやと思ったが……予想以上だな』

 

「残念だったなァ丸顔ォ! これで終いだぁぁ!」

 

『爆豪倒れるお茶子へ一直線! 勝負ア』

 

「さか、さ…………あめ……!」

「あ? ……ガッ」

 

 ここまで、お茶子ちゃんの予想通りになるなんて(・・・・・・・・・・・・・・・・・)!

 

『な、な…………なんだぁぁぁぁ!? 急にステージ上に落ちる瓦礫が発射……いや、上に落ちたァァァァ!?!? 意識外からの急襲! 爆豪の頭に直撃ィィィ!!』

 

「あははっ! すっっっっご!」

 

 興奮しきった心のままに、席から立ち上がり身を乗り出す。

 だってあんなの見せられて、平静でいるなんて無理に決まってるじゃん!!

 やばい、口元が緩むのがわかる。顔が熱を帯びているのもわかる。

 ……絶対今、ちょーだらしない顔してる。

 

 でも、そんなこと気にならないくらい胸の内で熱が暴れて仕方がない!

 

 今回の作戦を立案したのも、構成をしたのも、実行したのも、全部お茶子ちゃん自身だ。

 と、いうのも……ほわんほわんほわん(回想)。

 

『まずはやっぱり〜〜が〜〜で……』

『うん、そうだね。でもそれだと〜〜が……』

『ちょちょちょ、ちょっとストップ!』

『ん? あぁごめん二人でもりあがっちゃってたや、やっぱかっちゃんの倒し方なんて盛り上がるテーマもらっちゃったらね』

『ううん、いいのいいの! それよりさ……さっきは手伝ってなんて言ったんだけど……やっぱり手伝いすぎないで欲しくって』

『ふんふん』

『でも勿論、私一人で戦えるなんてもう思ってない……だから、アドバイスとか前提知識だねください! そこからは私が自分で考えてみるから! わがままでごめん……いい、かな?』

『『勿論』だよ!』

『わ、わ! ありがとう!』

『でも、どうしてそこまで自分でってのに拘るの?』

『ここまでみんなの力に頼ってばっかりで上がってきて、最後くらい自分の足で立ちたい……ってのもあるけど、何より爆豪くん、トーナメント表見た後すぐ物間くんと切島くんの方見てて、私なんて障壁にも思ってなくて、あ、舐められてるなぁって……』

『あいつマジ……』

『ま、まぁまぁ架沙音』

『……そんなの、ムカつくやん?』

『あははっ! 間違いない!』

 

 と、言うことで私達はあくまでも情報屋に徹して、作戦立案に使えそうなかっちゃんマル秘情報を渡し続けたのだ。

 例えば、近接戦は危ないとか、最初は右の大振りとか、攻めてくる時の特徴とか、カレーはスパイスから作るとか、甘い物が苦手とか、身長があんまり高くないのを気にしてるとか……まぁとにかく色々。

 

 そして最後の逆さ雨と名付けた必殺技! あれにはこの1ヶ月で身につけた新要素を2つの合わせ技である。

 ひとつは、個性の遠隔発動。触れた瞬間に浮かすのでは無く、触れた時にマーキングして任意のタイミングで個性を発動するというもの。

 そしてもうひとつが、"無重力"から"反重力"への昇華。個性による浮遊を"重力からの解放"では無く"自由落下と同じ速度で上昇し続けている"と解釈し、個性を重ねがけすることで"上に落ちる"状態を作り出したのだ。

 

 ……めっちゃ大変だった。めっっっちゃ大変だった!! ただここまで最高のお披露目ができれば苦労も一塩といったところだろう。

 

 ふふ、ここまで言ったらもうわかるよね?

 最初の四つん這い移動は的を絞るためでも上への意識を逸らすためでも無い。手を移動に用いることで自然に瓦礫へマーキングを施し、上空の礫すらブラフに最後の矢を隠し持つためだったのだ!!

 ……いや、お茶子ちゃん天才すぎない??? 最初聞いた時思わず飛び跳ねちゃったもんね。最高! って。

 

 ともかく、努力の甲斐あって見事切り札はかっちゃんに突き刺さった。

 上空で脳を揺らされ、意識をドばしたかっちゃんは勢いのままに場外へすっ飛んで行く。

 そのまま落ちていき、今まさに地面へ激突する…………という瞬間、かっちゃんの目が開いた。

 

「……ッ!! っぶねぇ!」

 

 信じられない体幹と瞬発力で小刻みに両手を爆破させ、体勢を立て直す。

 そして再び、警戒を露わにしながらお茶子ちゃんの方へ向かい、隣に降り立つ。

 

 対戦相手がすぐ側に立っても、倒れるお茶子ちゃんはピクリとも動かない。

 

「……ミッドナイト」

 

 うつぶせのお茶子ちゃんを一瞥した後、傍で待機するミッドナイト先生(審判)の名前を呼んだ。言わなくてもわかるだろう、と。

 

「……麗日お茶子さん、戦闘不能! 勝者、爆豪勝己!!」

 

『あああああああ! 負けちまったァァァァ! でもナイスガッツだったぜ! サンキュー麗日ガール!!!!』

『もう隠す気も無いな、讃えろ勝者を……完璧に分析されてたな爆豪、だがそれを基に立てられたら作戦を上から叩き潰す対応力は見事だった、おめでとう』

 

 ……お茶子ちゃん、負けちゃったかぁ。

 自然と全身に張っていた力が抜け、ストン、と椅子に座ってしまう。

 なんでだろ、すっごいいいのも見れたし、かっちゃんのデタラメな強さもかっこよかったし、テンションぶち上がって然るべき場面な筈なんだけど……なんでだろ、悔しいなぁ……最後、勝ったと思ったんだけどなぁ……。

 って、当人でもないのにただのアドバイザーがこんなに落ち込んでたら本人困っちゃうよね!

 ぱちん、と両手で頬を叩き、改めて立ち上がる。

 

「ちょっと控え室行ってくる!」

「あ……僕も!」

 

 続けて立ったデクと一緒に控え室へ駆ける。

 先生方のありがたいお言葉(廊下は走るな)を無視してガンダしたお陰で思ったより早く着いた私達は、お茶子ちゃんの控え室の扉を開け……いや。

 

「ほらデク、行った行った」

「え、ちょ、ちょっと押さないでって……てか架沙音は?」

 

 デクを扉の前へ押し込み、私はその場を後にする。

 だって、今会ったら私ちょっと泣いちゃいそうだし……そういうのはデクに任せて、私の役目は多分馬鹿みたいに笑うことだから。

 それに……ふふ。

 

「ないしょ、兎に角お茶子ちゃんは任せたからね」

 

 未来ちゃん'sアイは感情の機微に敏感なのだ! まだ芽の段階とはいえ、私の前で隠し通せる想いなんて皆無!

 だからここは、デクが適任ってわけ。

 

「ほーら、行ってこい、頑張れって感じのデク」

「……うん!」

 

 デクが扉を開け、中に入っていくのを確認してから、私はとなりの部屋の扉を開ける。

 

「たのもー!」

「……チッ」

 

 扉に貼ってある紙には、"爆豪勝己控室"。

 

「ふふん、どーだった? お茶子ちゃん」

 

 ムスッとしていたかっちゃんの肩が跳ねる。

 悪いけど私はデクと違って優しくないから、思いっきり突っ込ませてもらうよ。

 

「……強かった……ってンだよ、鳩が波動砲喰らったみたいな顔して」

「いやダメージデカすぎでしょ、どんな顔よ……いや、まさかそんな素直に認めるとは思わなくて」

 

 明日はニトログリセリンの雨が降るか?

 

「最後、あの一撃で完全に意識トんでた……あと0.5秒でも起きるのが遅かったら負けてたのはオレだ」

「ふふーん、でっしょ〜? やーいやーい、眼中にすらなかった女の子に負けかけた気分はどーお?」

「っせボケ……たく、お前と、それにデクも、どんな入れ知恵しやがった」

「してないよ」

「……は?」

 

 微笑みを浮かべ、鳩がレールガン喰らったみたいな顔をしている幼馴染に真実を告げる。

 ふっふっふ、待ちに待った答え合わせの時間だ。

 

「だから、私達は何もしてないよ……まぁ思考のきっかけになる情報くらいは渡したけど、そこからどうやってかっちゃんに勝つかを考えたのは、全部お茶子ちゃんなんだから」

「……チッ、そうかよ」

 

 あ、そっぽ向いちゃった。

 まったく可愛いんだから。

 

「ね、これでわかったでしょ?」

「なにがだ」

「ヒーロー科に、モブなんて1人もいないんだよ……全員、自分のじゃない、世界の主人公たりうる素質を持ってるんだから」

 

 正直私も、最初は舐めてたよ? 体育祭だってサクッと優勝しちゃおうと思ってた。

 けど、みんなが魅せてくれた、一人一人が持つ可能性ってやつを。

 みんなが思い出させてくれた、私の原点を、無個性如きがお山の大将で調子乗ってんじゃないぞって。

 

「別に仲良しこよししろとは言わないよ? かっちゃんの爆発してるプライドは立派な強さだし、自尊心があるってことは誰よりも自分に厳しいってことだからね! 私はかっちゃんが小さい頃から毎日ストイックに自分を追い込んでるの知ってるし……まぁ私の方が追い込んでるけど」

「イチイチ茶化さなきゃ気ぃ済まねぇんかテメェ!」

「だからさ、ここのみんなは舞台にすら上がれないモブじゃなくて全員が主役の座を狙ってるライバルなんだから……強くなるためには、視界に入れないよりもお互い利用し合う方が合理的でしょ?」

「そう、だな……」

 

 ん、よろしい。

 

「じゃあほら行こ? デクと轟の試合見逃しちゃう」

「寄ってくんなキメェ、1人で歩けるわボケ」

「あはは! 相変わらず素直じゃないなぁも〜」

 

 さっきのセリフは、勿論私自身にも言えることだ。

 ……もう縛りプレイなんて、やってられないな。

 

 こうしてついに、決勝トーナメント1回戦が全て終了した。

 勝ち上がったのは、デク、轟、電気、飯田くん、私、常闇くん、物間くん、かっちゃん。

 さーて、生き残った紅一点として、バカな男子共けちょんけちょんにしてやるかーーーー!!!!

 

 

 

 ……いやでも最初は分かりやすい舐めプして相手挑発した方がウルトラしてくれるんだよなぁ……それにアイテムも有限だし……んんんん、どうしよっかな〜〜〜〜〜!!!

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