無個性でヒーロー!? できらぁ! 作:にょわ
難産でした………………!
かっちゃん's控室の扉を開け、外に出た私達の目に入ったのはなんとエンデヴァー……とデク。
2人のただならぬ雰囲気から察するに何やら話していたっぽいけど、丁度終わった所のようだ。
ゲートへ向かうデクを、一言呼び止める。
「あっ待ってデク!」
「架沙音? どうかした?」
「がんばれ!」
「……うん!」
ふふ、いー目してんじゃん。
ぶんぶんと手を振り見送った後、残されたのは私、かっちゃん、そしてエンデヴァー。
「……で」
用は済んだとばかりに立ち去ろうとするエンデヴァーの前に立ちふさがり、言葉を続ける。
「デクめっちゃキレてたけど、何言ったんです?」
ふぉぉぉぉぉぉ生のエンデヴァーだ~~~!! こんな近くで見るの初めてだけど二重の意味であっつ~~!! ほんとに常時燃えてるんだすごい酸素とかどうなってるんだろ~~~~~!!!! …………という内心をグッッッッッと飲み込み、努めて真剣な顔をつくる。
「ケッ、どーせ半分野郎のことだろ」
「……自分は、オールマイトではない。同時に焦凍は俺ではない、と」
は~~ん、なるほど……さてはこのNo2ヒーロー、教育に失敗したな?
「焦凍はオールマイトを超えるために作った最高傑作だ。俺にできなかったことをしてもらうのだから、当然焦凍は俺ではない……その程度わかりきったことだろうに、彼は何を言いたかったんだ?」
は~~~~~~~~~ん??? なるほど…………さてはこのNo2ヒーロー、人として失敗したな??
「ねぇエンデヴァーさん、
「愚問だな、火を見るより明らかだろう」
はっはっは、ファイヤージョークうける。いや偶然か?
どちらが勝つかなんて言うまでもない、か……まぁ私も同意見だけど。
「かっちゃんは?」
「あ? ンなもんデクだろ、腹立つけどな」
「……なに?」
予想していた答えと違ったのか、目をむくエンデヴァ―。
「ま、今のうじうじ悩んで無駄に意固地になってる舐めプ轟なら、ですけどね」
「ふん、気付いていたか」
いや誰でも気づくでしょあれは、まだ入学してから戦闘関連で
そっかぁ家族との確執が原因か~~~……この短い時間でもこの人が一流のヒーローであって一流のパパではないことは十二分に伝わってくる。
ま、詳しくは知らないけどなんかあったんだろうなぁ……理由が親への反抗だったってのは、まぁ嫌いではないけど。
「ほら、勝負において勝ち負けより重要なことってあるじゃないですか」
「ねぇだろ」
「ごめんかっちゃん、一旦黙って」
今大事な場所なの! 突っ込ませないで!!
「え~、コホン……半分も生きてない小娘が何言ってんだって感じだとは思うんですけど……ひとつだけ」
「言ってみろ」
「道具じゃ限界は越えられませんよ《・・・・・・・・・・・・・・・》」
一瞬、エンデヴァーの大きな体がたじろいだように見えた。
ちょっと前にクラスのみんなにも言ったけど、
だから今の、いろんなしがらみに捕らわれた
「……ふん」
「さぁほら、はやく客席戻んないと見逃しちゃいますよ、試合!」
かっちゃんの手を取り、客席の方へ駆けだす。もうここで言うべきことはないだろう。
「掴むな気持ちワリィ!」
「あはは、まーまー!」
あ、嘘! もう一個あった!
「エンデヴァー、言い忘れてた! さっきはああ言ったけど、この試合、どっちが勝つかなんてまったくわかんないですよ!」
脚は止めずに顔だけで後ろを振り向き、満面の笑みを向ける。
「デクは、ヒーローなので!」
アイツのことだ、きっと轟のしがらみもなにもすべてふっ飛ばしてしまうだろう。そっからウルトラした轟相手に食らいつけるかはまぁ……がんばれって感じのデクだ。
……いや、ホントは勝って欲しいし、今のデクなら全力轟相手でもワンちゃんあるとは思うけど……まぁ勝負には勝ち負けより大切なことがあるからね!
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《Side:緑谷》
試合開始から数分、僕と轟君の勝負は膠着状態に陥っていた。
すさまじい勢いで襲い掛かってくる大量の氷を指を犠牲に防ぎ、全身にOFAを薄く纏うことで機動力を上げ、懐に潜り込む。
それを氷でいなしながら距離を取り、再び大規模な氷結。これを指を犠牲にして防ぎ……という流れを3度ほど行った。
このままじゃ平行線だな……それに指の本数っていう残機のある僕がこのままじゃ負ける……4度目の氷結を左中指を犠牲にしたデコピンで止めながら思考を回す。
しかし考えてるだけでもいられない、思ったより軽く吹き飛んだ氷を尻目にもう一度距離を詰め……ん? 待って、今何か……。
『おぉっとどうした緑谷ァ! 常に走り続けて的を分散させていたが、急に立ち止まったぞ!?』
あのとき、架沙音も一緒に個性の話をしてた時、轟くんは……それにこれまでの種目の中で……いや、でも……それならつまり……。
「どうした緑谷、来ねぇならこっちから行くぞ!」
試してみる価値は……ある。
『あぁぁぁぁぁっと! 立ち尽くす緑谷、氷の波に飲み込まれたぁぁ! なんだなんだ足でも攣ったかぁ!? だから水分補給はしっかりしろとあれほど!』
『自分で指ぶっこわすやつだぞ、仮にそうだとしてもその程度で止まる訳ないだろ』
全身を低温の氷が包み込み、体温を奪う。冷たいを通り越して痛いくらいだ。
……
「OFA……フルカウル5%」
全身にOFAを薄く纏い、全身に力がみなぎる。同時に供給される膨大なエネルギーにより、冷えた体が熱を持つ。
氷が解け、体との間にほんのわずか、隙間ができた。
「はぁぁぁぁぁぁ!!」
一瞬だけ腕に8%の力を付与、少ないスペースで強引に腕を振るう。
それだけで、見た目だけは強固に見える氷の牢獄は、いとも簡単に砕け散った。
『なんだぁ!? 天を衝く氷の城壁がブッ壊して緑谷復活! すっげぇパワーだぜ!』
『今度はどこも壊してないな。緑谷がさらに高出力の制御に成功したか、もしくは……』
「轟くん」
「アレを壊されるとはな、やるじゃ」
「どうしてそんな、苦しそうに戦ってるんだよ」
「っ!?」
何かを言いかけた轟くんにかぶせるようにして、言葉を叩き込む。
ごめん轟くん、でも……どうしても我慢ならないんだ。
「震えてるじゃないか」
「っ! これは、個性の副作用で」
「わかってる!」
個性、半熱半冷。燃焼と氷結を同時に行う、強力な個性。
その個性の真骨頂は、最大出力でも、展開速度でも、対応力でも、攻撃範囲でもない。
炎と氷、互いのデメリットを互いに打ち消し合うことで成り立つ、圧倒的な継戦能力だ。
だから"体が震える"なんて、ホントはあり得ない筈なんだ。
『焦凍は俺がオールマイトを超えるために作った、最高傑作だ』
……その強みを出せない理由にも、心当たりはある。
轟くんが過去のしがらみに縛られてその強さを引き出せないっていうんなら。
「今度はこっちの番だ……! 行くよ、轟くん!」
ボクがその鎖ごと、断ち切ってやる!
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《Side:架沙音》
「ね? 言ったでしょだいじょーぶだって」
どうも、デクが氷漬けになり、どんまいコールが起こり始めていたA組~ズでまぁまぁ見てなってと啖呵を切ってしまったため、無事脱出ができてちょっと安心している架沙音未来です。
「いやぁガチ焦ったわマジで! つーかやっぱ轟めっちゃ弱くなってね?」
「あ、やっぱ瀬呂くんわかる? どんまいバトルでも感じるところがあったのだね……いやだからこそ?」
「どんまい言うな、つーか爆豪こっちくんの珍しいな、さっきのバトルクソ熱かったぜ」
「ちっ、うっせ」
あの個性、炎と氷の相互補完によるデメリットの無効化が一番の強みなのに、氷しかつかってなかったらそりゃ低体温症くらいなるよねって。
ほんっと勿体ない。エンデヴァーとの確執があるんだろうけど、どうせアンタの力じゃん。ねぇ?
「キミの力じゃないか!」
うわめっちゃ被った、ちょっと恥ずいな。
もし轟が"父を否定するために"とかの理由で右を封印してるんだとしたら、それで負けた時に肯定したかった左の力をより否定してしまうことに気付いているんだろうか。いや、わかったうえで"だからこそ"、っていう力にしてるのかもしれない。それならまぁ、悪くはない動機だと思う。あくまで私の感想だけど。
実際轟の氷結の精度はとんでもない。きっと血の滲むような努力をしたんだろう。あの繊細なコントロールととてつもない最大出力を両立させている個性を見れば、そこは一目瞭然だ。
だからこそ、惜しい。そんな轟が右も使えば、どれだけ強くなるんだろう、ってのが気にならないわけがないんだから。
……いや、逆に弱くもなるっていう可能性もあるか? 選択肢を広げるっていうのは、同時に明確な"1"を捨てることにも繋がる…………ん~~~~~気になる!!
「なんか未来ってさ、やっぱデクに似てるよね」
「あ、わかる! 特にめっちゃ頭回してるときとか!」
「うぇ、そ、そうかな」
思考の海に溺れかけていたところを、響香ちゃんとお茶子ちゃんに引き上げられる。
え、嘘私口に出てた?
「あーたしかに、緑谷みたいにブツブツなることはねぇけど、顔見るとなんとなくわかるよな」
「めっっちゃおめめキランキランなるもんね! 緑谷くんは自分の内に入ってくけど、未来ちゃんは外にグワーッてなる感じ!」
そ、そんなこと……あるかも……。
まだあって一か月程度しか経ってないのに私のこと見すぎじゃない?? 恥ずかしいんですけど!
「うわ~ん明ちゃ~ん! みんなが事実を並べてくる~~」
「私は好きですよ? そういうところ、皆さんもそうなんじゃないでしょうか」
「「「「うんうんうん」」」」
「みぎょわー!」
もう無理、キャパオーバー。
明ちゃんのたわわなおむねに顔をうずめ、外界をシャットアウトする。
うっうっ……なんでこんなことでにやけてしまうんだ私ぃ! 恥ずかしい筈なのに~~!
お願いです神様……なんかなんやかんやドカンとなにかが起こって今の空気を吹き飛ばしてください……!
と私が生まれて初めての神頼みをまさかのこんなところで消費していると、スタジアムを橙色に染め上げる巨大な火柱が立ち上がった。
そして吹き荒れる突風により、物理的にこの場の空気が吹き飛ばされる。
「嘘……願い届いた……?」
って違うそうじゃないそんなこと言ってる場合じゃない!! マジか! デクマジか!!
ホントに轟に
「この好きなもの見つけた時のテンションの上がり方ってか切り替り方とか、めっちゃ架沙音だよね」
「ね」
おだまり。あと人の名前を形容詞にするな。
次の瞬間。火柱によって温度の上がった競技場が、再び急速に冷やされる。でも今度は氷結がデクに向いてない……てことはなんらかの準備か。
「デクーーーーー!! 頑張れーーーーーーーー!! 轟も、全部ぶっとばしちゃえーーーーー!!」
気付いた時には、叫んでいた。
二人の中で、力がたまっていくのがわかる。おそらく決着は間も無くだろう。
おそらく轟がやろうとしてるのは……あ。
「瀬呂くんみんなにシートベルト付けて!」
「おう? おう!」
声だけかけて振り向かず、幾つかのカプセルを取り出して手すりに腕を固定してゴーグルを被る。
この瞬間を見逃すわけにはいかないんだ、最低限の指示はしたし、あとはみんなはみんなでなんとかしてくれるだろう。
「はぁぁぁぁぁぁ!!」
「おぉぉぉぉぉぉ!!」
次の瞬間、再び世界が"赤"に包まれた。
そして、先程とは比較にならないほどの暴風。
あはは! 余波だけでこれか! とてつもないな!
ほんとは口に出して叫びたいんだけど、今口開けると多分巨大扇風機を顔で受けるコメディアンみたいになるからグッと我慢し、心の中で歓喜の声を上げる。
局地的に冷やされた空気を急激に熱することで起こる、空気の膨張! この場外=敗北のルールにおける防御不能回避不能の文字通り必殺技!
それに対し、デクは……。
「SMAAAAAAAASH!!」
拳一つで、真正面から立ち向かう。
普通に考えれば、どうにかできる訳がない。実際私が一回戦でどうにかできなかったし。
でも、
そして、赤く塗り潰された世界は、今度は蒸気と土煙の混じった"白"が上書きしていく。
自分の腕すら見えなくなった視界の中、それでもステージのあった方角を見つめ続け……煙が晴れた時、ステージに立っていたのは…………轟焦凍のみであった。
世界を揺るがす衝撃の後の、一瞬の静寂。
「緑谷出久、場外! 勝者、轟焦凍!!」
「「「……ワァァァァァァァァァ!!!!!」」」
静寂を切り裂いたのは、ミッドナイト先生の力強い宣言と、割れんばかりの大歓声だった。
あんなにカッコよかったデクが、それでも負けた。轟の才能と覚悟が、それを上回った。
"勝てるかも"と信じた仲間が、それでも力及ばす敗北する……構造としては、さっきのお茶子vsかっちゃんと同じだ。
でも……にも関わらず……。
「……あはっ!」
笑顔が、胸の高まりが、止まらない!!
「ね! ほら言ったでしょかっちゃん! 勝ち負けより大切なこと、が……Oh」
興奮のままに振り向いた先に広がっていたのは、衝撃と暴風で頭とあんよがさかさまになっている幼馴染及び愉快なクラスメイト達。
「……ぷっ、あはははははは!」
「タス……ケテ……」
「は~い、みんな今助けるからね~~!」
準決勝第一試合!完!
勝者、轟焦凍!