無個性でヒーロー!? できらぁ! 作:にょわ
書置きが尽きたので、ここからは更新頻度が落ちます、ごめんなさい。
ただ週1投稿くらいは維持したい……の気持ち……!
うぉぉぉ!Plus ultraしろ!!!
”ぴとり”。
顔中を手で幾つもの手で包んだ男の右手が、私の顔に触れる。
「あ」
恐らくこの男の個性は、触れたものを崩壊させる。
つまり、私は……。
やけにゆっくりと感じる時間の中、15m程先の水辺に身をひそめるデクをみつけた。
うわ、これはトラウマになるだろうなぁ、申し訳ないことしたなぁなんて、場違いな心配が頭を過る。
……せめて最期は、笑ってやろう。
「ごめんね、デク」
今際の際のボーナスタイムは終わったのか、ゆっくりだった時間の流れが元に戻る。
そのまま私の体は、個性により崩壊し……てない?
「……ははっ、かっこいいなぁ……イレイザーヘッド!」
さっきの脳無にやられたのか地に伏して、それでも顔だけは上げてこちらを睨む相澤先生と目が合った。
「せ、せんせぇ……」
反撃も忘れ、へたり込む。やばい、涙止まんない、こんなとこで泣いてる場合じゃないのに……。
「逃げろ、かさ……」
まずい、今ので力を使い果たしたのか先生の体から力が抜けた。
”抹消”の個性の発動条件である瞳が、閉じる。
目の前には、未だ手男が立っている。
あ、今度こそ死……。
「SMAAASH!!」
「がはっ!」
そこに、緑色の流星が飛び込んできた。
「架沙音! 大丈夫!?」
……あぁもう、ズルいじゃん。
…………かっこいいなぁ、もう。
「……うん、おかげさまで」
「それならよかっぐべぇ」
手男を吹っ飛ばして私の前までやってきた流星は、止まりきれずそのままド派手にすっころんだ。
「ぷっ、なにやってんのさ……」
「き、気が付いたら体が勝手に動いてて……」
なにそれ、まったく。
と、そこまでしてなんとか平静を取り戻した私は辺りを改めて見渡し……ってデク脚!!
「ちょ、ちょっとそれ!! デク!! 脚が!!!」
両足とも変な方向に曲がりくねってんだけど!?
びっくりしすぎてついワンピースみたいになっちゃったじゃん!!
「ごめん、また制御失敗しちゃって、へへ」
「へへじゃないってあぁもう今はアドレナリン出平気かもだけど絶対後から傷んでくるだから……」
「ごめん、でも……腕は無事だよ」
にししっと笑い、誇らしげに折れてない右腕を見せてくるデク。
……? あっそうかさっき手男の事殴ったのに!
「折れてない! 制御できたんだ!」
「もう一回やれって言われてもできるかわかんないけどね」
ひっくりかえったデクに手を差し出して起こ……いや両足いってるし無理か。
「よいしょ……っと」
「ふぇっ!? ちょ、ちょっと架沙音!?」
デクの背中とギリ無事なひだ上を持ち、お姫様抱っこしてやる。
ふぇだって、ふふ、か~わい。
「さ、逃げるよお姫様」
「に、逃げるったってどこに」
明ちゃん作の『絶対救助軍団蟻』ちゃんを解き放つと、倒れている相澤先生の基に黒い砂粒みたいなのが集まっていき体を持ち上げた。そしてえっちらほっちらと私の方へ運んでくる。
これは読んで字の如く、蟻さんくらいのサイズのミニロボ×たくさんが要救助者を持ち上げて、発信機を持つ人の方へ運んできてくれるというサポートアイテムとなっている。
ん~~さっすが明ちゃん! 優秀過ぎて怖い!
っとそれよりどこに逃げるかだったよね。そりゃあ勿論……。
「わかんない!」
「わかんない……ってえぇ!?」
だって閉鎖空間だからこそ襲撃場所がここになったんだし、かといって闇雲に逃げ回って他のみんなのところにヴィランが突撃なんてしたら目も当てられない。
でもゆっくりもしてられないんだよなぁこれが……。
だって……。
「いらつくなぁ」
決して声量が大きいわけではない。けれどはっきりと、まるで脳に直接響くような怨嗟の声が聞こえてくる。
「こんなにイラついたのはいつぶりかな……決めた、お前ら二人だけは絶対に殺す」
デクに吹っ飛ばされた手男が幽鬼のようにゆらゆらと立ち上がり、苛立たしげに頭を掻いている。
う~んキレてるね! カルシウム不足じゃないかな!
「おい脳無、こいつらをぐちゃぐちゃにしろ」
そしてさっき私が脳無とやらを地面に突き刺した箇所を見ると、大きな穴が開いているだけで半裸の大男はどこにも見当たらない。
「随分と
黒い霧を纏ったヴィランも戦線に復帰し、退路を塞ぐようにその体を広げる。
う~ん絶体絶命! これは困ったなぁ!
え? 全然困ってるように見えないって?
ふっふっふ、バレてしまってはしょうがない。
「か、架沙音……!」
「ふふっ、だいじょーぶだよデク」
さっき脱出した飯田君は、全力で走ると大体時速100km程出るらしい。
そして彼が脱出して今で6分。雄英からUSJが約10km。
つまり……。
ドゴォォ!!
そのとき、ヴィランによって固く閉ざされたUSJの扉が、ミサイルでも直撃したかのような轟音を立てて吹き飛んだ。
「「もう大丈夫……」」
では問題です。時速100kmで進むことができるI田くん(音的にはE田君すぎるね)が、10km先にある建物まで行って帰ってくるのに係る時間は何分でしょうか。
ヒント! 時速100kmは分速に直すと約1.67km。つまり10km進むには6分必要だから……。
「私が……」
「ヒーローが……」
私と謎の人物の、声が重なる。
「「来た!!!」」
「お、オールマイト!!」
私に抱えられるデクが、感極まる! って感じで声を上げる。
はい、というわけでさっきの問題の答えは6分でした。なぜなら帰りはオールマイトがバトンタッチしてくれるからね! 復路の所要時間は多く見積もって1秒である!!
……うん、オールマイトはんぱないなやっぱ。
アメリカ行きの飛行機がジャックされた事件の時、離陸から1時間頃に知らせを受けたオールマイトはアメリカに急行、飛行機の着陸時に目的地で待ち構えたオールマイトによりヴィランは制圧された……というのが数あるオールマイト伝説のひとつでしかないという時点でという感じだ。
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そこから先は、見事なまでの蹂躙激だった。
オールマイトとの戦いの最中、死柄木と呼ばれていた手男が自慢げに語っていたのが真実であるとすれば”ショック吸収”に”超再生”とかいうゲームのトレモ用の耐久無限案山子みたいな性能だった脳無をPlusUrtra(動詞)してぶっ飛ばし、その際かっちゃんや轟くんといったA組つよつよーずも黒霧の足止めに尽力するといった大活躍。その後増援のプロヒーロー達が到着するも、ワープの個性で惜しくもヴィラン達を逃がしてしまった……が、終わってしまえば死傷者ゼロで”本物の敵意”に触れるという、敵の言葉を借りてゲームで例えるならまるでチュートリアルのような経験になった。
……その過程で相澤先生は全治一か月程度の重症を負ってしまったが。
私はあの時、相澤先生を助けたくて行動を起こした。
しかし結局先生はヴィランに傷つけられ、なんなら逆にピンチに陥った私を助けてくれた。
「……強くなりたいなぁ」
帰りのバスに揺られる中……ぽつりと、自分でも気が付かないうちにそんな呟きが漏れる。
「んに言ってんだテメェ」
何気なく零れた本音を、隣に座るかっちゃんによって拾い上げられる。
「あっいやっ! 今のはえっ、と……」
そこで自分がなんと言ったかに気付いてハッとし、誤魔化そうとするが……あ~、これダメだな。かっちゃんの目がマジだ。
自分が進むまなくてはいけない、ずっとずっと遠く。そこを真っすぐに見つめる幼馴染の視線を見て、わちゃわちゃと動かしていた手を下ろし、思っていることをそのまま流す。
ちなみにデクと相澤先生は救急車で運ばれているため、ここでは不在だ。
「私、先生のこと助けようとしたのに、迷惑しかかけられなかった……それに、デクにも助けられて……」
「んに言ってんだテメェ」
あれ? リピートしてる???
こっちも真面目に答えてあげたんですけど?? もしかして私おちょくられてる???
「最初、黒霧とかいうヤツがこっち来た時、何も考えず突っ込んじまった」
心の中で盛り上がる私を無視して、かっちゃんもゆっくりと想いを溢す。
「避けられた後。振り向いたらこっちに手ぇ向けてる13号が見えて……俺が邪魔だったって気付いた」
「いや、それは」
「あの時!」
あそこでかっちゃんの攻撃があったからこそ、あいつに実態があるってわかったんだって伝えようとしたが、他でもない本人に遮られる。
「……13号先生の個性は吸い込む個性で、アイツは気体だ。あの時13号が即座に個性ブッ放せてたら、余計な
「そ、れは……でもそんなのたらればじゃん」
「バカクソボケカス」
「すごい言うじゃん」
コツンと肩を小突きながらとんでもない罵倒をぶちかまして来た。
え? やっぱこいつおちょくってきてるよね??? 出していい? 手。
「おめぇもだろーが」
「え」
続いた言葉に、一瞬思考が止まる。
「……あ」
そっか……そっか。
「確かにイレイザーヘッドはぶっ倒れた。けど生きてんだろ、あの状況じゃ死んでたっておかしくなかった」
流石にそれは極論すぎない?
「お前がいなきゃ、あの
あ、そっちはすっごい想像しやすいかも。
「だから……一緒だ。やらかしちまったのも……強くなんなきゃいけねぇのも」
……なにそれ、年中大爆発人間の癖に。
そんな、いつも強気な方の幼馴染の珍しい励ましを受けた私は……。
「大丈夫? 変なの食べた? 拾い食いはダメって言ったじゃんまったく」
「てっめマジでぶっ殺すぞコラ!」
「あははは!! こわ〜い!!」
溢れそうになる涙を笑顔で誤魔化し、静かに、でも今度ははっきりと呟いた。
「強くなりたいね、かっちゃん」
「……チッ、っせ」
窓の外に目をやると、真っ赤な西日が目に入る。
沈みかけの太陽は嫌気の差すほど眩く輝き……けれど同時に、暖かく私達を照らしていた。
バスはゆっくりと、でも確実に進み続けている。