絶望は、いきなり訪れる。

平和に暮らしていたはずの少年の故郷を襲ったのは魔物の大群だった。そしてその大群を率いていたのは、竜王と呼ばれる恐ろしい魔物だった。

少年は決意した。決して赦さないと。故郷を滅ぼした憎き竜王をこの手で必ず討ち滅ぼすと。



※つい最近ドラクエ1&2リメイク及びドラクエ3リメイクをクリアしたばかりのドラクエ初心者による投稿です。設定が浅かったり、ガバなのはお許しください。

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ドラクエHD‐2Dのリメイクをつい最近ロト三部作分終わらせて、ドラクエ熱が燃え上がってる者による投稿です。
ドラクエ初心者なので設定にガバがあってもそこは優しく見逃してあげてください。


伝説の終わりと始まり

ここは、精霊ルビスが作り上げた世界、アレフガルド。この世界の中心には、魔の島と呼ばれる孤島があり、そのてっぺんにはかつて大魔王がいたという。大魔王はこの世界の全てを闇で覆い、各地に魔物をけしかけ、人々を恐怖に陥れていた、まさに悪の権化であった。だが、とある日大魔王はどこからともなく現れた、勇者とその仲間たちによって倒された。だが、勇者にトドメを刺されたその時、大魔王は捨て台詞を残した。いずれ、新たに闇が迫ってくる、と。この世界は、再び闇が覆い尽くすであろうことを大魔王は悟っていたのだ。そして、その時勇者はもう寿命で生きてはいないであろうことも。その捨て台詞とともに、大魔王の城は崩壊し、大魔王は爆ぜて消えた。勇者の一行は崩れ行く大魔王の城から脱出に成功し、ラダトームという王国へ凱旋した。ラダトームの王様はたいそう喜び、勇者にロトの称号を与え、大魔王討伐と、新たな勇者ロトを称える宴を開いた。だが、その宴が終わった後には、勇者ロトの姿はどこにもなかったという。勇者ロトが残したその武器や防具はロトの剣、ロトの兜、ロトの鎧、ロトの盾として、さらに勇者ロトが精霊ルビスから授かったしるしはロトのしるしとして、後世に伝わったとされる。

 

 

そして、それから数百年の月日が流れた。

 

 

ここは、アレフガルドの北東に位置するマイラの村から少し離れたところにある小さな集落である。そしてそこでは今、地獄が生まれていた。

 

「ぎゃあああああああ!」

「に、逃げろぉ!魔物だああああ!」

「く、来るなぁ!来るなぁああ!」

 

木々に囲まれたこの集落の周りは既に火で包まれており、人々は逃げ場を無くして、叫び声を上げながら集落の中を逃げ回る。だが、それは魔物たちの格好の的となってしまっていた。

 

「ギャハハハハハ!泣け!喚け!」

「コのしュウラクのニンげンはみんナおレノクいもノだァ!」

「燃えロ燃エろォ!アハはははハハは!!」

 

魔物たちの狂気に満ちた声が轟く。そしてその中に一際人に近い形をして杖をつく、紫色の肌を持つ魔物がいた。明らかにほかの魔物たちとは格が違う、力強いオーラを放っていた。

 

「フハハハハハ!たしか勇者ロトの末裔がこの集落にいると聞いていたが……なんだこれは!ザコばかりではないか!これではワシの出る幕はあるまい!フハハハハハ!」

 

高笑いを上げながら楽しむようなセリフを吐いた魔物。この魔物こそ、自らを王の中の王と呼び、世界を闇で覆い尽くさんとする竜王そのものである。

その竜王の高笑いを響かせながら、集落は壊滅していった。家屋も木々も焼け焦げ、人々の骨や肉があちこちに散乱し、腐りきった毒の沼が広がっていく。これこそまさに地獄と呼ぶにふさわしい有様だった。

 

 

 

 

集落には、1人の男の子が住んでいた。両親を早くに亡くしていた少年は、引取先であり母の実家でもあった道具屋の主人の手伝いのため、ナイフ片手に薬草を採取しに行っていたのだ。魔物が最近はよく出てくるが、昔は盗っ人だったという近所のおじさんから「しのびあし」という特技を教わっていたから、少年が魔物と遭遇することはあまりなかったし、遭遇しても逃げ切れる逃げ足の速さがあった。そして今日も頼まれた量の薬草を集め終え、少年は集落に戻って来た。そしてそこで見たのは、見慣れた人々の笑顔でも、いつもの集落の姿でもなかった。

 

「な……なにが……どうして……」

 

そこは、もう少年の知る故郷の姿ではなかった。まるで恐ろしい地獄そのものだった。焼け焦げた木々、異臭を放つ毒の沼、そして、人々の血の臭いと散乱する骨。まだ幼い少年には想像もできない程の地獄が広がっていた。あまりの惨状に、少年は背に抱えていた薬草が沢山詰まった籠を取り落とし、膝から崩れ落ちた。

 

「キキキッ」

「な、なに!?」

 

だが、悪意は少年に惚けさせることを許さない。声のした方を振り向くと、一体の魔物がこちらを見ていた。翼が生えており、小柄で丸みを帯びた青い身体、そして短い触角と尻尾……ドラキーと呼ばれる魔物だ。全ての魔物が引き上げたあと、なにか残っていないか、ハイエナをしに来たのだろう。

 

「キィーッ!」

 

少年に狙いを定めると、ドラキーは翼を広げて少年に飛びかかった。無抵抗な幼い子供だと思ったのだろう。恐怖に怯え、震えているだけの無力な子供だと。たしかに少年の中にあるのは恐怖であった。だがそれ以上に、怒りの感情が何よりも大きかった。少年の身体を震わせていたのは恐怖ではなく、大人ですら尻込みするほどの殺意そのものだったのだ。

 

「ぅううああああああっ!!!!」

 

即座に立ち上がると、薬草を狩るために使っていたナイフを腰から引き抜き、ドラキーが飛んできた方向にそのまま突きを放った。突き出されたナイフはドラキーの目と目の間を貫き、予想だにしない反撃を受けたドラキーはを悲鳴をあげて地面に落ちた。

 

「ギィッ!?ギィイイイッ!?」

「あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙ッ!!!」

 

地に落ちたドラキーの翼を掴み、地面に押し付けると、少年はそのまま何度もナイフをドラキーに突き立てた。まるで、癇癪を起こした子供のように、理性を失った獣のように、少年はただがむしゃらにドラキーにナイフを突き立て続けた。

 

「ギィ〜……ッ、ギィ……ギ」

「はぁっ、はぁっ、はぁっ……」

 

そうして、気がつくと、ドラキーは塵となって霧散していった。初めて魔物の命を奪った。そんな感傷などとっくに少年にはなかった。ただ、あるのは燃え滾るような黒い怒り。その目は既に魔物を決して許さないと誓った復讐者の目であった。

 

「誰が、こんなことをした……!何のために……!誰が、魔物をけしかけたんだ……!誰がア゙ア゙ア゙ァ゙ッ!」

 

そう叫びながら先程始末したドラキーがいた所を何度も何度も殴りつける。殴りつけた拳から血が流れた。怒りのあまり身体が震え、食いしばった歯からはガチガチと音が鳴った。そして幼いながらも集落で賢いと評判だった少年はすぐに答えに行き着いた。

 

「……竜、王ォ……ッ!」

 

名は知っている。魔物を従える存在だと聞いたことがある。少年は歯をギリッと鳴らしながら噛み締めた。憎き仇の名を叫び、涙を流した。怒りと悔しさに満ちた涙を。

 

「絶対に……絶対に、赦さないッ!赦してなるものかッ!ぼくたちの……オレたちの集落をこんな目に合わせやがった魔物も竜王もッ!オレの手で絶対に殺してやるッ!」

 

心優しかった少年は、今、1人の復讐鬼となった。故郷を灼かれ、たったひとりになってしまった少年の、復讐の旅が始まるのである。

 

 

 

 

「……またあの夢か」

 

そう言って体を起こす。辺りを見渡せば、昨日した焚き火の跡、自分の荷物、魔物避けに撒いた鼻につくような聖水の臭い……昨日の野宿のあとの光景が広がっていた。少年の故郷が灼かれ、既に10年あまりの時が過ぎた。唯一、あの集落の襲撃から生き残った少年であったアレフは、既に16歳となっていた。

アレフは、最近夢をよく見る。幼き日に集落を襲った魔物たちの夢、そして。

 

「オレが、勇者ロトの末裔……か。今のオレは勇者などではなく、復讐者なのだがな……」

 

己が勇者ロトの末裔であると告げる、かつてなりゆきで助けた夢の妖精の声が響く夢である。とはいえ、後者は以前より見なくはなったのだが。以前この世界でいちばん大きな街、ラダトームに向かっていたところ、ローラ姫というラダトームのお姫様の近衛兵達を助けた。それを縁にラダトームに向かうと、ラダトーム王より正式にローラ姫の救出及び竜王討伐の依頼を受けた。それからずっとラダトーム王の言葉に従いながら、あちこちを旅し、魔物に捕まっていたローラ姫の救出に成功した。道中、様々な悪人や魔物との戦闘があったが、復讐を誓ったその日から続けていた武者修行により、様々な魔法や剣技などを身につけ、ことごとく切り抜けていった。ラダトームの城の記録にあった、勇者ロトが使用していたという唯一無二の魔法であるギガデインや、剣技ギガスラッシュなどを易々と習得できたことから、己自身がロトの血族であることは明白ではあるのだが、どうも自分が勇者の血を引いているというのはなんとも受け入れ難い話でもあった。

 

「勇者ロト、か……伝説では大魔王を倒した勇者であり、困っているものを見過ごさず、その仲間たちもまた、人格者だったと聞くが……」

 

そんなお人好したちとオレが似ているものか?そもそもの話、ローラ姫の側近たちを助けたのは、ラダトームへの案内人になってくれそうだと踏んでのことであったし、病に犯されていたローラ姫の側近の父親にエルフの飲み薬を与えたのも、ローラ姫がさらわれた場所だという沼地の洞窟を攻略するために必要な、魔法の鍵を作るためにとあるドワーフを尋ねたところ、そのドワーフが病に伏せっていたことから、これでは旅に支障が出るからと仕方なくやったことだ。あの側近の父親を助けたのなんてついでに過ぎない。その縁があってか、岩泣き島に繋がる橋の修理がかなったわけではあるが。岩泣き島でメルキドの司祭を助けたのも、岩泣き島で修行を行おうとしたら竜王の幹部がいたことや、岩泣き島で紋章の素材となるものが見つかったからである。マイラの村に立ち寄ってエイリアンフライを倒したのも、最後の鍵の情報を持って岩泣き島から立ち去って行った以上、最後の鍵をヤツが手に入れていると確信していたからだ。そして最たるものがローラ姫の救出だ。あれはただ雇われ仕事に過ぎない。確実に幹部がいるであろうと踏んで向かってみれば、ドラゴンが襲いかかってきたのは驚いたが、かなり良い修行になったから良し、というところ……と言いたいのだが、それだけじゃ済まなかった。

 

「あのローラ姫がオレを愛している……か。フン、バカなことを。王族というのはとことん見る目がないらしい」

 

ローラ姫を救出したあと、アレフはローラ姫からの愛の告白を受けていた。旅について行きたいとも。だが、アレフは頑として断っているのである。その際の断り文句はローラ姫の心を傷つけるのには十分すぎた。

 

「邪魔だし、完全に足手まといだ。お前のせいでオレが死にかねん」

 

これである。さすがに酷かったのか、ローラ姫もその場で泣き崩れてしまったが、知ったことでは無い。依頼で助けただけの姫になど興味はないし、王族と必要以上に関わる理由もないが、対立する理由もない。直後にローラ姫からせめてこの首飾りを、と渡されたが、それすらも旅の資金になりそうとしか考えておらず、なんならローラ姫の目の前でそのことをつい口に出してしまった。

 

「そんな、ひどい……わたくしの愛など、はした金に過ぎないとおっしゃるのですね……」

「それ以外になんの使い道があると?別に必要もなさそうだし、復讐の旅だって言っているのに足手まといでも着いてこようとするアンタの感性の方が疑問だ。第一、今更そんな女々しいもの貰っても、オレには応えることなどできんしな。そもそもアンタが旅の途中でくたばったとしてオレがラダトーム王に始末されかねん。本懐を果たせずに死ぬなどまっぴらごめんだ」

「う、うううう……」

「では、オレはこれで」

 

そう言った自分の言葉のどこかに、少なからず、死なせたくないという思いがあったのは否定できない。だが、それでもオレ自身が誰かを守れるだなんて思ってもいない。オレの戦い方は、自分以外の生存を考えていない、酷いものだと自覚はしている。だったら遠く離れた地で、せっかく助かった命を無駄にしない生き方をして欲しいと望むのは当然でもあろう。

 

「そもそも愛だの恋だのと……くだらんな。オレはもう、とっくに壊れてる人間だ」

 

そんな感情は、復讐者として生きると決めた時に既に捨て去った。誰かを愛することも今後ない。恨みと怒りと憎しみで凝り固まった己の心が既に壊れてしまっていることなど、端からわかっている。だが、それでも進み続けなければ、何のためにここまで心や、大切だったはずのナニカを捨て去って生きているのかわからなくなる。捨てた感情は決して戻ってこない。多くの魔物と悪人をこの手にかけてきた。命乞いもされたが耳を貸したことは唯一、カンダタとかいう盗賊のみ。勇者ロトがコイツのご先祖の子分とか吐かして、あの妙に露出の多い格好で肩組んでこようとしたから、さすがにちょっとピキっときて、剣の柄で思いっきりその頭をぶん殴って気絶させたけれども。それ以外は相手が悪人だったとはいえど人を殺した己が、この血塗られた手で人を抱きしめられるか?己が愛したものを抱きしめられるか?そもそも、オレは誰かに愛される資格や、誰かを愛する資格があるのか?

 

「ないな。これから先もずっと、な」

 

そう言って立ち上がり、荷物を担いだ。今日のうちに虹の雫を使って魔の島に至る橋をかけるために、岬に向かわなければならない。そこからは休み無しの魔物との戦闘になるだろう。そして、その先に待つのは憎き仇である竜王だ。

 

「待っていろ、竜王。そのツラをオレが恐怖と絶望で染め上げてやる。もうすぐ……もうすぐだ……!」

 

既にレベルは60を超えた。唯一手にできていないロトの剣は、おそらく竜王の城にあるのだろう。メルキドを襲ったエイリアンフライが持ち去ったと聞いていたが、虹の雫を手に入れた後、あちこちを回ってロトの装備を集めたが、剣だけはどこにもなかったからだ。

 

「さて、行くとするか」

 

そう言ってオレはリムルダールの北にある岬へと向かうのであった。

 

 

 

 

 

 

「よくぞここまでたどり着いたな、勇者アレフよ。ワシこそ王の中の王、竜王である!」

「アンタが竜王か……!」

 

そこは竜王の間であった。竜王の城に巣食う魔物たちを蹴散らしながら、予想していた通りロトの剣を発見し、さらに勢いづいたアレフは竜王の間までたどり着いていた。

 

「フフフ……!ワシは待っておった!お前のような者が現れるのを!」

「……何?」

「ワシの味方になれば、貴様に世界の半分をくれてやろう。どうだ?悪い話ではあるまい」

 

勧誘か、とそう思った。既に十分すぎる驚異として成り立っているオレを、軍門に下らせれば、より容易く世界を掌握できると踏んでいるのだろう。

 

「どうだ……?勇者アレフよ……」

「その勧誘への回答を出す前にひとつ聞かせろ」

「ほう……よかろう、なんでも聞くがいい」

「マイラの村の近くに今は廃墟となった集落がある。あそこを襲ったのはアンタとその配下の魔物共だろう。なぜ襲った」

 

これだけはこの時必ず聞こうと考えていたものだ。大方の予想は着いているし、もし予想通りの理由であろうともなかろうとも、オレはコイツを絶対に許しはしないし、コイツの勧誘なんて全て跳ね除けるつもりであるが。

 

「ほう、そういえばもうあそこを滅ぼして10年も経つのか……なぁに簡単なことだ。ロトの末裔がいるという噂を耳にしたのでな。目障りになる前に殺そうと思ったのだ。まあ、ザコしかいなかったがな」

「そうか……で?ロトの末裔ってのはいたのか?」

「はっ、そんなものどうせ与太話であったのだろう。このワシに抵抗できるような者など誰一人としておらなんだ。途中で飽きて帰ってしまったくらいだ」

「……そうか」

 

ああ、予想通りすぎて尚更腹が立つ。やはりコイツはここで消さなければ、俺のような子供をもっと生み出しかねない。第一、この質問をした時点で、正体を察してオレを殺しにくるのだろうと思っていたが、違ったようだ。コイツは気づいていない。ならば、思い知らせてやる。

 

「あの集落には、とあるひとりの少年がいた。貴様らが攻め込んだ頃は6歳かそこらだったんだが」

「……ほう?」

「貴様らが攻め込んだとき、薬草を集めに集落から出ていた少年は助かった。だが、変わり果てた故郷を見て絶望していた。そんな中、少年はまだ残っていたドラキーに見つかり、襲われた……返り討ちにしたがな」

「そうかそうか……読めたぞ、つまるところそれが貴様というわけか」

「ああ、そうさ。そしてその時オレは誓った。決してこんな惨状を引き起こした竜王を赦しはしないと。このオレ自身の、勇者ロトの血を引く己の手で必ず貴様の息の根を止めてやるとな……!」

「……ロトの血を引く……だと!?」

 

竜王は、その言葉を聞き、心底驚いた。まさか、本当にいたのか。ロトの血を受け継ぐ勇者の末裔が。冷や汗がこめかみから流れ落ちる。己が勧誘した人間がどういう存在なのかようやく理解した。

 

「貴様が……ッ!ロトの血を受け継いだ勇者だというのかッ!アレフ!」

「……生憎だな、竜王よ。勧誘は失敗だ。オレは貴様だけは決して赦さん。他の誰が赦そうとも、オレのこの手で貴様を確実に葬り去ってやるッ!」

 

火蓋は切られた。初手でアレフが行ったのは単純明快。「ピオリム」を使って自身を高速化させて全力の「ドラゴン斬り」を叩き込んだ。

 

「があっ!?き、貴様!?」

「容赦はしない。慈悲も与えない。確実に殺す。貴様のそのツラを絶望と恐怖に歪めてやる。抵抗もさせない。一切の反撃も赦さん。俺がただ一方的に貴様を殺して終わりにするッ!それだけだッ!!!」

 

そこからはオレの言葉通りとなった。ただひたすらに反撃の隙も、防御する暇も与えない蹂躙。たとえ防御したとしても防御していないところからひたすらに「ドラゴン斬り」を叩き込み、気づけば身体中に生傷を作った竜王がそこにいた。

 

「ハッ、終わりだクズめ。せいぜい苦しんでくたばれッ!」

「な、めるなぁあああああ!!!」

「何ッ!?」

 

とどめを刺すべく飛びかかったオレだったが、直後に竜王の身体から誰も寄せ付けないほどの闇の力が迸った。そして徐々にその闇の中へ竜王の身体が薄れていくと、次に現れたのは巨大な翼と尾を携え、濃い紫の鱗に覆われた肉体を持つ巨大な竜の姿だった。

 

「……なるほどな。やはり竜と名乗るだけあって、ドラゴンそのものだったか」

「貴様だけは殺す……!ワシのプライドをここまで傷付けおって……!絶対に赦さんぞッ!」

「こちらのセリフだッ!」

 

再び決戦の火蓋は切られた。最初にしかけたのはオレだった。高速で接近して側面から渾身の「ドラゴン斬り」を放つと、その感触に違和感を覚えた。

 

「通らんだと……!?」

「そんな攻撃がこの竜王の鱗に通るかァッ!」

「ぐっ!?」

 

そう叫ぶと、竜王は斬りつけられた方向に「灼熱の炎」を吐き出した。かろうじてガードが間に合った盾の上からオレの左腕が焼ける。苦悶の声を上げながら、その場で炎の射線から退避して一旦距離を取ると、オレは自身に「リホイミ」と「精神統一」をかけた。

 

「フハハハハハ!知っているぞ……!小賢しい妖精共の紋章の力による超絶技!要するに、貴様のその2つの力が消えるまでワシが反撃させなければ済む話だ!」

 

そう、何度もこの力を使用し、幹部たちを倒してきたからこそ、竜王は知っていたのである。そして、それさえ耐え抜けば問題ないと。

 

「……対策が脳筋だ、バカめ」

 

だが、そう言ったオレは「においぶくろ」をばらまいて爆破させ、「しのびあし」を行い、さらに「レムオル」を唱えた。

 

「な、何!?どこだ!どこへ消えおった!」

「………………こっちだ、ウスノロ」

 

そう言って「超ちからため」を行い、背後に回った俺は全力の「竜王斬り」を竜王の尾に叩き込み、切断した。完全に切断された竜王の尾はおびただしい量の血を吹き出しながら床に落ち、ビチビチと跳ねる。

 

「ガアアアアアッ!?き、貴様、卑怯なことを……!それでも勇者だというのか!?」

「生憎とオレは勇者でなく、復讐者だ。正々堂々なんて言葉が似合うようなお綺麗な戦い方は大っ嫌いでな」

 

そうだ。卑怯なんて言葉はこの戦いに存在しない。持てる手段の全てを使い、この復讐を果たす。そう誓ったのだ。今更こんなゴミ以下の存在相手に正々堂々と真正面から戦う価値などない。そしてまた、「しのびあし」と「レムオル」を使用し、「超ちからため」を行って背後に回り、羽を狙った。

 

「そぉら、また背中ががら空きだぞッ!竜王ッ!!」

「ぐうっ!?があああああっ!?」

 

「超はやぶさ斬り」。神速の四振りで羽を落とした。既に竜王は息も絶え絶えといった様子で、恨めしくオレを睨みつけた。

 

「き、貴様ァアアアア……!!」

「悔しいか?苦しいか?ああ、両方だろうな。だが、俺たちの集落で死んでいったみんなの悔しさや苦しさはこんなもんじゃないぞ?」

「ふ、ふざけるな……!この竜王と、たかが一集落の人間どもの命を一緒にするなァアアアアアアッ!!!」

「ふざけてるのはどっちだ……!」

 

そしてまた消える。次はどこだと竜王はしきりに背後を気にしながら何度も振り返り続けるが、そこじゃない。

 

「貴様程度の矮小な命と、俺たちの集落の……アルスの集落のみんなの命が同価値なわけがあるかァッ!!」

「う、上に、ギャアアアアアアッ!?」

 

天井に足をつけて足場にして急降下。そのまま「竜王斬り」を脳天に叩き込み、骨を砕いた感触を感じた。

 

「ガア……アアアッ……!?」

「頭蓋が割れたようだな。たとえ竜王だろうと、もう立ってすらいられまい。次で終いだ」

 

フラフラと力なく後ずさり、玉座に倒れ込む竜王。オレは血振りをして、とどめを刺すべく、剣を空高く掲げ、「ライデイン」を唱えた。激しい雷が剣に纏わりつき、バチバチと音を立てた。

 

「貴様を殺してもみんなが戻ってくる訳じゃない……だがそれでも、オレのような子供を今後生み出さないためにも……貴様はここで殺すッ!!」

 

そう言い放ち、雷を纏ったロトの剣を竜王の胸に目掛けて突き立てた、その瞬間だった。

 

「…………!な、ガアッ!?」

「ゆ、油断しおったな……アレフ……!」

 

オレの身体の左胸が肩ごと消え去っていた。そして千切られた左腕と盾が音を立てて地面に落ちた。突きが刺さる瞬間、素早く頭だけを動かして、竜王はオレの左半身を食らったのだ。

 

「フ、フハハ……道連れだ……と、もに……地獄へ……行こう……ぞ」

「……ク、ソッタレ……が」

 

意識が遠のく。心臓と片方の肺も完全にダメになっている。意識が残っているだけマシだったが、確実にオレは死ぬだろう。だが、後悔がある訳じゃない。仇を討った後など何も考えていなかったし、寧ろこれで良かったのかもしれない。ただ、オレは仇さえ討てればそれで良かったのだ。空っぽで何も残らない、空白まみれの人生。だがそれでも。

 

「……悪かァなかった……な」

 

それがオレの最期の言葉だった。

 

 

 

 

勇者アレフと竜王は相討ちとなり共に事切れた。その報せはアレフガルド中に知らしめられた。人々は竜王の討伐を心から喜んだ。その反面、勇者アレフを知るものたちは、心から深く悲しんでいた。

 

「まさかこんな……やっと、やっと彼が心の底から笑える日々が送られるのだと信じていたのに……!」

「こんなの……悲しすぎるわ……!やっとこれで平和が戻ったというのに、彼がいないなんて……!ローラ様と幸せになっていただきたかったのに……!」

「あんまりじゃねぇかよ……!アイツが、アイツが何をしたってんだよォッ!悪人の俺たちですら見逃してくれたアイツが……!うおおおおっ!」

「ずっと復讐に身を費やしてきたからこそ、僕は彼には幸せになって欲しかった……それだけなのに……!何故こうも運命というものは残酷なんだ……!」

 

口々にそう言ってアレフと関わりがあった者たちは涙を流した。かつて何度も命を助けられた親子、命乞いをして見逃してもらった盗賊、先代の勇者の頃から関わりがあった吟遊詩人の末裔。その全てが彼の死を嘆き、涙を流した。もとより善性の塊だった子が復讐に全てを費やしたのだ。捨てたと言い張っても、それでも尚残っていた捨てきれない優しさを、みな、僅かながらも感じ取っていたからである。

 

「竜王を倒せても……アレフが死んじゃったら意味が無いよぉ……!これじゃ……もくりんたちと一緒じゃないかぁ……!」

「オルテガの……ロトの……彼らの子孫を……守れなかった……それじゃあ、私たちは何のために……!」

 

彼の死は、妖精族の者たちの心も深く沈ませた。彼の旅の最中、何度も助けてもらった。彼がそれを恩を売るためだとか、成り行きだとか言っても、捨て去ったと言っていたはずの、彼自身の優しさから来ることを、心を読める妖精族のみんなは誰よりも理解していたのだ。

 

「アレフ様……なんで……なんであの時、私を置いていったのですか……!私がいれば身代わりにくらい、なれたかもしれないのに……!」

「ローラ……気持ちはわかるが……」

「もう、アレフ様のいない世界など、私には生きる意味がありません……!こうなったら……!」

「い、いかん!皆のもの、ローラを止めよ!」

 

特に取り乱したのはローラ姫だった。もはや生きる意味すらなくしたとばかりに彼女は自らの命すら絶とうとした。だが、城の兵士たちに取り押さえられ、何とか自殺は免れた。だが、その数日後、ラダトーム城の姫の自室でローラ姫は亡くなった。死因は舌を噛み切っていたことだった。自殺させないよう、数人で部屋を見張り、軟禁していたのだが、強硬手段に出たのである。その事実にラダトーム王は深く悲しみ、程なくして精神を病み、ほんの数ヶ月後に亡くなってしまった。

 

世界は喜びと悲しみに包まれた。これまで世界を思うままにしていた竜王の死と、優しさなど捨てたと言いながらも、その行動の裏には隠しきれない優しさで溢れていた勇者アレフの死は、多くの者たちに影響を与えた。だが、その100年後。再び世界に闇が舞い降りた。勇者のいない世界など恐るるに足らんとばかりに、その闇は世界を滅ぼし始め、それからたった数年で、この世界は完全に消え去ってしまったのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……さい。起きなさい、私の可愛い勇者」

「う……ん……?」

 

ここは……どこだ?俺は竜王を倒して……殺されて……それで……。

 

「……あ、れ?」

「おや、目が覚めたようね、アルス」

「アル……ス?」

 

アルス……?俺の名前……なのか?でも、この人は俺の……

 

ズキンッ!

 

「……ぐっ!?」

「アルス?どうしたの?アルス?」

「だ、大丈夫だから、母さん。」

 

……そうだ、俺はアルス。勇者オルテガと母の息子の……。でもこの記憶……俺は……生まれ変わった……のか?

 




ここまでお読みいただき感謝いたします。

続きを投稿するかはまだ未定です。
とにかく描きたくなってバーッと衝動で書いちゃっただけなので……。

もしよろしければ感想などお待ちしております。

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