もうひとつの世界の主人公   作:沙野衣千歌

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1:★ 花園百々人 ―― 315プロダクションにて ―― ★

20XX年 1月16日(土) 午後五時三十分

 

 一昨日、ぴぃちゃんから頼まれた雑誌で使うアンケート用紙をしゅーくんやえーしんくんに負けないように、昨日今日とで必死で書き上げて何とか完成させたものを、一昨日の時点で僕はぴぃちゃんが休日出勤をすることを知っていたので、今日事務所に持っていく。

「沙優ぴぃちゃん!」

 僕はデスクで一息入れていたぴぃちゃんを発見して駆け寄る。

「一昨日言われてたアンケート用紙、全部書けたよ♪」

 するとぴぃちゃんは僕の頭を撫でつつ全ての項目に目を配らせる。

「百々人さん! お疲れ様です。特に項目問題ないのでこのまま編集者さんに提出しますね」

 僕はソワソワしながらぴぃちゃんに尋ねる。

「あの、さ、今回は……」

 すると察したぴぃちゃんは即座に回答した。

「今回は百々人さんが一番の提出です!」

 嬉しい気持ちで僕の中がいっぱいになる。

「ふふ♪ 頑張ってよかった。あ、ねえねえ、このお菓子美味しかったんだけど、ぴぃちゃんも一緒に食べない?」

 僕は持ってきていた、たこ焼き味のお菓子をぴぃちゃんにあげる。

「百々人さん、いいんですか?」

「うん♪」

 ぴぃちゃんはデスクを立ち上がり、事務所内のソファがある場所に移動すると、先客がいた。

「あれ? クリスさんいらっしゃったんですか?」

 ぴぃちゃんが古論さんに尋ねる。

「あ、C.FIRSTのプロデューサーさんじゃないですか! ちょっと事務所に忘れ物をしてしまいまして、取りに来ていました。序でにテレビがついていたのでニュースを見ていたところです」

 古論さんがそう言うと、地震関連の情報番組が放映されていた。

 内容としては『昨夜、東京湾で連続して起こった地震について』を放映している。

 

 ――地震か。怖いなあ――。

 

 僕はそう思い不安になって、ぴぃちゃんの方を見ると、ぴぃちゃんはテレビの画面を注意深く凝視していた。

 ぴぃちゃんは興味があるんだろうな。そう思っていると古論さんが声を上げる。

「あ、そういえば今解説してる地震学者の東山拓郎(とうやまたくろう)さんなんですが、私の知人でして。元気でやってそうで良かったなと……」

 古論さんの人脈はすごいなあと感心していると、番組のコーナーが切り替わり、バラエティ色の強い『ご当地おもしろサイダー紹介』に変わる。

 こういうコーナーだと安心して見られる。

「ぴぃちゃん! 魚醤コーラだって。美味しいのかな?」

 僕がぴぃちゃんに聞くと、一瞬の間がありつつも返答してくれる。

「え、あ、うーん……想像ができないですね……。百々人さんは飲んでみたいですか?」

 逆に話が振られてしまったけど、僕はすかさず答える。

「僕はちょっと飲んでみたいな♪ そして普通のコーラだよって言ってしゅーくんに飲ませてみたいかも」

 僕が言うと、ぴぃちゃんは微笑んで

「秀さんに何かされても知りませんよ?」

 と返ってきた。確かに、なんかされちゃうかも……。と思っていると、古論さんが何か言いたそうに僕らを見る。

「私も想楽や雨彦にやってみる、と言うのも面白いかもしれませんね! あと……大変申し訳ありません。私はこの後用事がありましてこの辺りで帰らせていただきますね。お先に失礼します」

 と古論さんは言い、帰って行った。

 Legendersの反応も気になるなあと思いつつも、いつの間にか事務所はぴぃちゃんと二人きりになっていた。

 ぴぃちゃんはコーヒーと、ぴぃちゃんが持参してきていたお菓子も用意して、30分休憩に入ることにしたようで、僕としてもぴぃちゃんと二人きりの状況は嬉しい。

 点いていた情報番組の続きをまったりと二人きりで見つつ、持ってきたお菓子である『たこパイ』を食べる。

 形としては細長い、たこ焼き味のパイ。最初はたこ焼き味なのに、後になってくると甘みが増してスイーツ味が強くなってくる不思議なお菓子。

 ぴぃちゃんはどんな反応してくれるのかな。

 期待しつつぴぃちゃんをずっと見ていると、表情がコロコロと変わっていってとても楽しい。

「え、百々人さん、これすごく美味しいです。お菓子選びのセンスありますね……!」

 ぴぃちゃんに褒められて嬉しいなぁ。

「わあ! 気に入ってくれて嬉しいな♪ また見つけたら買ってくるね」

 僕がそう言うと、ぴぃちゃんの目が輝いて見えた。

 とっても気に入ったようで、自分自身が誇らしく思えてきた。

「お返しと言ってはなんですが、私もこのチョコレート差し上げますね。市販品のものですが……」

 僕としては市販品でもぴぃちゃんの気持ちがこもってたら嬉しいよ。

「ありがとう♪ あ、そうだ。ぴぃちゃん、僕に食べさせて欲しいな♪」

 僕はそう言って口を開けつつ待機する。

 ちらっとぴぃちゃんを見ると、少し呆れながらも笑顔でチョコレートを僕の口に運んでくれた。

 

 甘くて美味しい。

 

 ぴぃちゃんと二人きりで甘く蕩ける時間を過ごせて幸せだなあ。

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