深夜、皆が寝静まった頃。

開店する占い屋さん。

そこで占われた者は願いが叶う代わりに、

近いうちに死ぬと言う。

 

そんな占い店に今日も一人……占いにやってくる者が居た。

1 / 1
新規です。ミスがあったら雰囲気を壊すので、
教えていただきたく願います。


第一夜~伝えたい言葉

誰もが死に際に願う、もしもあの願いが叶うのならば。

そんな願いを叶えてくれる占い屋。

 

占われたものは願いが叶う代わりに死ぬという。

そんな変わった噂が立っている占い屋。

 

その占い屋に今日もまた一人………

 

 

「だから……自由に願いを叶える力なんて……

ないって言っているでしょう。」

 

少し長めの黒髪をした。

落ち着いた目のシンプルな服が特徴的な男。

柊 透(ひいらぎ とおる)はため息混じりに言った。

 

「そこをなんとか!」

男がすがり付く。

 

「はぁ」と柊は呆れた様子で見る。

 

「死んでも良いから!」

 

その言葉を聞いた柊は突然ギロリと睨むように顔を向ける。

 

「貴方はまだ死にませんよ……当分ね」

 

「え?」

 

帰って下さいと店を追い出す。

 

「あの~?」

新しい客が、遠慮がちに声をかける。

振り向くと、そこにいたのは年老いた女性だった。

 

その顔を見た瞬間。

柊の表情が、静かに変わる。

 

「その顔……なにかお困りですね。」

「良ければ占って差し上げます。」

 

柊は人が変わったように優しげな顔つきで接客を始める。

 

(この人……もうすぐ死ぬ。)

 

「お代は必要ありません。どうぞこちらへ……」

 

彼はそういって椅子を引く。

 

「そんな……悪いわねぇ。でもなんででしょう?」

 

彼女はそう言いつつも椅子に腰掛ける。

 

「あなたは知っているでしょう。」

 

彼はフフッと軽く笑みをこぼして、

静かに水の入ったコップを置いた。

 

「噂は本当なのですね。あなたは死が見えると。」

 

「噂になると面倒も多いのですがね……勘違いも多くて。」

 

「はぁ」と息を漏らす彼の癖のようだ。

 

「それで?願いは何でしょう。」

 

柊は静かに問いかけた。

 

「あの子の姿を最後にもう一度見たくてね。」

 

ポツリポツリと声を発していく。

 

「うちの娘は勉強が嫌いでね、

昔からいつもいつも勉強しなさいって口煩くいってたものさ。」

 

昔を思い出すように語る彼女の目にはうっすらとだが、

涙がたまっていた。

「それが悪かったのかねぇ」

ある日飛びだしてそれっきりさ、

彼女はそう言って、小さく笑った。

 

「まぁ、今さら会っても迷惑かもしれないけどねぇ」

 

柊は黙って話を聞いている。

 

「でもね……一目でいいんだ」

「元気にしてるかだけ、見られたら」

 

そう言って、彼女は静かに目を伏せた。

 

柊はしばらく考えてから口を開いた。

「娘さんの名前は?」

 

「……咲だよ」

 

「最後に会ったのは?」

 

「もう十年以上前だよ」

 

柊はゆっくり立ち上がる。

「分かりました」

 

「え?」

 

「その願い、叶えましょう。」

 

柊はそういって外に出た。

 

しばらくして、

その手には手紙のような物があった。

 

「娘さんはこちらにいらっしゃると思います。」

「信じるか信じないかはあなた次第です」

そういって柊は彼女に手渡した。

 

「方法は詳しくはお教え出来ませんが、

出会って良かったと思えると良いですね……。」

と彼は静かに元の位置に戻っていく。

 

「一体どうやって……?」

突然渡された手紙に驚く彼女。

 

「死後のあなたからです。」

 

そう彼は言った。

 

「どうか悔いの無いように」

 

彼女はしばらく手紙を見つめていた。

震える手で封を開ける。

中には、短い文章が書かれていた。

 

もしこの手紙をあなたが見ているなら、

私はもうこの世にいないのでしょう。

ごめんね。

私はあなたを苦しめた母親だったかもしれない。

でも――

あなたが生まれてきてくれたことだけは、

一度も後悔したことはありません。』

 

手紙の最後には住所が書かれていた。

 

彼女は静かに涙をぬぐう。

 

「……あの子、ここにいるのかい」

 

柊は答えない。

ただ静かにコップの水を差し出す。

 

「あなたの願いは叶います」

 

少し間を置いて続けた。

 

「ただし――」

 

「時間は、あまりありません」

 

彼女はゆっくりと立ち上がった。

 

「ありがとうね」

 

深く頭を下げる。

 

柊は何も言わない。

ただその背中を見送る。

 

店の扉が閉まる。

 

静かな夜。

 

柊は一人つぶやく。

 

「……間に合うといいですね」

 

 

彼女は書かれた住所に向かった。

 

その夜。

住所の家の前で、彼女は立ち止まった。

 

震える手でインターホンを押す。

 

しばらくしてドアが開く。

 

出てきたのは、一人の女性だった。

 

「……どちら様ですか?」

 

彼女は言葉を失う。

 

面影があった。

 

小さかった頃のままの目。

 

「……咲?」

 

女性の目が大きく開く。

 

「……お母さん?」

 

長い沈黙。

 

そして娘の目から涙がこぼれた。

 

「なんで……今さら……」

 

彼女は震える声で言う。

 

「ごめんね」

 

それだけだった。

 

娘は顔を伏せる。

 

「……ずっと言えなかった」

 

「私も……会いたかった」

 

二人は抱き合った。

 

 

再会から数日後。

彼女は病院に運ばれた。

 

とある病院の部屋。

 

「何で……何で会えたばっかりなのに」

 

娘が一人、手を握りながら泣いている。

 

遠くから、それを見ている男が一人。

 

柊透。

 

彼は静かに目を閉じる。

 

「……願いは叶いましたね」

「ですが、娘さんは悲しむこととなった。

それは良かったのでしょうか……。」

 

そう呟いて、夜の街へと戻っていった。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。