『英雄になりたいおっさんの聖杯戦争』
――1917年。第一次世界大戦のただ中、七つの陣営が聖杯を巡る。
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英国代表
マスター
ジョン・ブル(コードネーム)
英国政府より派遣された国家代表。
魔術師としての名誉にも、聖杯に託す個人的な願いにも興味は薄い。
必要なのは、英国にとって最善の結果を持ち帰ること。
そのためなら時計塔の協力も使うし、召喚術式にも手を入れる。
本人曰く、
「禁止されていない」
のでズルではない。
家に帰れば、妻と娘と庭を愛する普通の英国紳士。
なお、庭を荒らすウサギには勝てない。
サーヴァント
セイバー(規格外召喚)
勇猛にして苛烈なる騎士。
正面からの戦いを好み、一度決断すれば容易には退かない。
本来ならばセイバークラスでの現界時には持ち込めないはずの**対国宝具**まで、時計塔の召喚術式によって強引に保持している。
本人すら、
「これはズルではないのか?」
と疑問を呈した。
マスターからの回答は、
「違反ではない」
だった。
――英国代表
我は真実を見たり。
されど逃げた。
逃げて、逃げて、なお逃げた。
剣を握りながら、
王の末路すら見届けられず。
ならば此度こそ。
血に濡れようと。
呪いに沈もうと。
我はもう、逃げぬ。
フランス代表
マスター
ジル・ド・レイ(上層部によるゲン担ぎ)
西部戦線から選出された若いフランス兵。
もちろん本名ではない。
フランス上層部が、
「この名前なら、あの英雄を呼べるんじゃないか?」
という極めて雑なゲン担ぎで押しつけたコードネーム。
昨日まで塹壕にいた青年にとって、聖杯も魔術も英雄も遠い世界の話。
彼が気にしているのは、戦場に残してきた戦友である。
サーヴァント
ランサー(二度目の旅)
フランスと深い縁を持つ少女。
かつて祖国のために戦い、そして祖国の歴史へ名を残した。
数百年を経て再びフランスへ呼び戻されてみれば、故国はまたしても戦争のただ中。
今回は裁定者ではない。
槍を持つ者として戦場へ立つ。
――フランス代表
故国を救う、二度目の旅。
あの日、炎の向こうへ置いてきた祈りを、
もう一度この手に。
失うのは命か。
誇りか。
それとも祈りか。
それでも私は歩くだろう。
そこに、守るべき人々がいるのなら。
アメリカ合衆国代表
マスター
アンクル・サム(綽名)
アメリカ合衆国代表。
聖杯への願い――特になし。
ヨーロッパへの興味――薄い。
聖杯戦争への意欲――さらに薄い。
そもそも、
「なんでヨーロッパの魔術師の揉め事に、アメリカが付き合わなきゃならないんだ?」
と思っている。
ただし、やる気がないことと無能であることは別問題。
必要と判断した仕事については、きっちりやる。
サーヴァント
アーチャー(戦争見物)
歴戦の古強者。
聖杯への願いはほぼない。
むしろ興味を持ったのは、英霊として蘇った先に広がっていた近代戦争そのもの。
騎士との一騎討ち?
敵が一騎討ちに強いなら、一騎討ちをしなければいい。
戦争とは、相手の得意なことに付き合う競技ではない。
妙なところでマスターと気が合っている。
――アメリカ合衆国代表
この光景なら、もう見ている。
鉄。
炎。
火薬。
人が人を殺すために重ねてきた工夫。
違うのは、その大きさだけだ。
これは我らが作った地獄の末裔。
ならば見届けよう。
その先を駆け抜けるのも、また人なのだから。
ロシア帝国代表
マスター
ピョートル(自称)
ペトログラードで逮捕されていた中年の銀行強盗。
魔術師ではない。
軍人でもない。
貴族でもない。
ロシア帝国への忠誠心も、特にない。
政府から提示された報酬は、自分と仲間たちへの恩赦。
召喚したサーヴァントのクラスがライダーだと知って、最初に確認した。
「逃げ足に自信は?」
その数十分後。
銀行を襲った。
本人は軍資金の調達だと主張している。
サーヴァント
ライダー(初仕事・銀行強盗)
馬とともに大地を駆ける勇猛な英雄。
召喚直後、マスターへ堂々と宣言した。
「この戦い、お前の脚となろう」
なった。
本当に脚にされた。
召喚初日に銀行強盗の逃走を手伝わされ、愛馬とともにペトログラード上空を疾走。
早くも、
「マスター選びを間違えたのではないか?」
と疑い始めている。
ロシア帝国代表
名もなく。
冠もなく。
玉座もなく。
ただ生き延びるために走り。
何者かになるために足掻き。
泥と血の中から、何度でも立ち上がる。
誰もまだ知らない。
本人さえも知らない。
生き果てて――鋼。
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ドイツ帝国代表
マスター
カーラ・マルクス(願望)
ドイツ帝国代表。
社会主義者。
名前はどう考えても本名ではない。
帝国政府から聖杯戦争への参加を命じられたが、本人が夢見ているのは革命である。
致命的な思想的不一致。
しかし仕事は真面目。
聖杯戦争への参加が決まるなり政府高官へ要求した。
「軍団を用意して!」
サーヴァント七騎で戦えとは聞いた。
軍隊を連れてきてはいけないとは聞いていない。
「革命のためー!」
ではなく。
「ていこくのためーに、がんばりまーす」
サーヴァント
キャスター(物語の始まりにいた女)
神代から召喚された一人の女性。
王ではない。
勇者でもない。
怪物を討ち果たしたわけでもない。
ただ一人の人間と出会い、その人生を変えた。
そして、その小さな出会いの先に巨大な英雄譚が生まれた。
本人にとって、それが祝福だったのかは分からない。
――ドイツ帝国代表
私の祈りは、意味を知ること。
私の罪は、人を人にしたこと。
私の裏切りは、王を疑うこと。
私は英雄ではない。
王でもない。
神でもない。
ただ一人に触れ、
その人生を変えただけ。
私はただの、きっかけに過ぎないのに。
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大日本帝国代表
マスター
くノ一・田中義一(名代)
日本政府より送り込まれた工作員。
当然、田中義一本人ではない。
そもそも日本には、聖杯戦争を正面から勝ち抜くつもりがほとんどない。
隠れる。
観察する。
記録する。
他国同士で争わせる。
そして、誰かが聖杯へ手を伸ばしたなら。
最後の一瞬だけ潰す。
勝利する必要はない。
誰にも勝たせなければいい。
サーヴァント
アサシン(鬼を討った英雄)
日本最古級の英雄伝承へ連なる存在。
派手な戦闘よりも、潜伏と観察を優先。
マスターとの相性は極めて良好である。
英雄が鬼を討った。
物語にすれば、それだけで終わる。
だが本人は、英雄と呼ばれた者にも、鬼と呼ばれた者にも、それぞれの歴史があったことを知っている。
――大日本帝国代表
敕を果たして、栄誉に浴し。
勅を果たして、鬼が生まれた。
勝者が英雄と呼ばれ。
敗者が怪物と呼ばれるのなら。
せめて覚えていよう。
剣を振るった者にも。
剣を向けられた者にも。
名があったことを。
聖杯戦争主催者
マスター
新兀枝・森羅万象令嬢卿
吸血鬼。
とても強い。
とても長生き。
そして、自力で聖杯を作った。
根源?
興味なし。
魔法?
興味なし。
世界征服?
興味なし。
彼女の願いはただ一つ。
**恋がしたい。**
素敵な殿方と出会い。
胸をキュンとさせ。
普通の女の子みたいな恋をしてみたい。
そのために第一次世界大戦の西部戦線で聖杯戦争を開催した。
恋愛経験ゼロ。
恋愛レベル1。
サーヴァント
バーサーカー(自称・陛下)
円卓に由来する触媒から現れた、謎の白い女。
長い金髪。
白い肌。
そして、湖水より深い青の瞳。
「バーサーカー」と呼ぶと無視する。
「バーサーカー様」なら返事をする。
「バーサーカー陛下?」と呼べば、
「花丸をあげるわ♡」
と笑う。
なぜか円卓に縁のありそうな騎士や魔術師たちとの距離が異常に近い。
本人曰く、
「私にこそ“Your Majesty”は相応しいわよね?」
なお周囲からの評判はあまりよくない。
――主催者
剣に遊び。
剣に泣き。
剣で愛し。
剣で傷つけ。
剣に果てる。
王も。
騎士も。
魔女も。
あの美しい国さえも。
みんな真剣な顔をしていたけれど。
全部、私が与えたおもちゃでしかないのに。
CLASS:???
メイド一号(本人は断固否定)
バーサーカー陛下の傍らにいる銀髪の女。
どう見ても普通のメイドではない。
本人も、
「私はメイドではない」
と主張している。
バーサーカーとは生前からの知り合いらしく、かなり仲が悪い。
現在メイド服を着せられている理由は、生前の嫌がらせへの仕返し。
なおバーサーカー本人は、
特に恨んでいない。
恨んではいないが、仕返しはする。
メイド二号(本人は非常に不満)
白髪の女。
どこか浮世離れした雰囲気を持ち、たいていのことには余裕の笑みを崩さない。
バーサーカー相手を除いて。
こちらも生前の嫌がらせへの仕返しとしてメイド服を着せられている。
ある日、バーサーカーから、
「ネイル♡」
と言われた。
拒否した。
そして最終的に、ものすごく嫌そうな顔で足の爪を塗ることになった。
本人曰く、
「ボクを苛立たせられるのはキミだけだよ」
やはりバーサーカー本人に恨みはない。
謎の騎士(母親思い)
バーサーカーの周囲に侍る騎士の一人。
メイド一号を「母」と呼ぶ。
バーサーカーに対する態度は露骨に悪い。
母親を庇って怒ったところ、
「立派な親子愛ね。素敵よ」
と褒められた。
そして頼んでもいないのに恋愛対象として査定され、
結婚するならあなたみたいな人がいいんでしょうねぇ。でも、いい人止まりって感じ。燃えないわね」
と評された。
本人は激怒した。
1917年。
英国はルールの穴を突く。
フランスは再び故国を救う。
アメリカは帰りたい。
ロシアは銀行を襲う。
ドイツは軍団を要求する。
日本は隠れる。
吸血鬼は恋がしたい。
そして。
七騎の英霊と七人のマスターは、まだ知らない。
この聖杯戦争が、誰一人として想定した通りには終わらないことを。