イフの勇者令嬢ー勇者になるかもしれない私と元勇者の女装メイドー   作:カオス箱

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誕生日迎えました。
25歳ですよもう! 何も為せないまま歳だけくっていってます!
怖い!


■前回のあらすじ
・レヴィ、父親から釘を刺される
・ローゼンとミクリ、ジゼルに関する方針でもめる
・ジゼル、ビビる





第10話 勇者の資格

 

 

 三日後。

 魔術決闘当日。

 

 学園の近くにある運動公園、その奥地に存在する競技場(アリーナ)が決闘の舞台だった。

 決闘開始時刻の2時間ほど前にジゼル達は到着し、競技場に併設された更衣室内にて決闘にむけた最後の準備をおこなっていた。

 

「ももももももうすぐだねねねね…………」

「めっちゃくちゃ震えてんなお前」

 

 更衣室内のベンチに腰掛けたジゼルは、めちゃくちゃビビり散らかしていた。

 汗はダラダラ、顔は真っ青、足はプルプル震えて輪郭がぼやけて見える始末。多分だが、生まれたての子鹿でももうちょっと上手く歩けるんじゃなかろうか。

 そんなジゼルの様子を見て、ミクリは思わずため息をついてしまう。

 

「あ、あのさぁ……変わってもらうことできないかなぁ………………? なんか急に頭とかお腹とかとても痛い痛がりたくなってきちゃって」

「はい仮病はやめようねー」

「何直前になって臆病(チキ)ってやがんだ馬鹿。昨日の威勢はどうした」

「いやいざ本番になると、めちゃくちゃ緊張してきたというか……つーか私、魔術はまるっきり駄目だし」

「大丈夫、三日間ボクと一緒にやった特訓の成果をみせてやろうよ!」

「セレニア、残念だけどそれって一夜漬けと変わんないよね」

「酷くないかなぁリチャードッ!?」

 

 一応この三日間、セレニアの熱心なコーチングのおかげで壊滅的だった魔術の腕は僅かながらも改善されてはいるものの、レヴィ相手にそれは焼け石に水という言葉すら生温い。RPG的に言うとレベリングが全然足りていない。

 特訓している間はそれに集中することでなんとか現実逃避できていたものの、こうして本番直前になって現実を直視した瞬間これである。

 

 どうしたものかと頭を悩ませるセレニアやリチャードだったが、その時、更衣室のドアが開く音がする。

 ドアの方を見ると、小箱を抱えたスーツ姿の小柄な女性がいた。

 

「ジゼル様、遅くなり申し訳ございません」

「えっと、どちら様?」

「兄様の秘書のリシェルさん。でも、なんでここに……?」

 

 会社に居るはずの兄の秘書が、何故ジゼルの元に現れるのか。

 予想外の来客に戸惑うジゼルに、リシェルは持っていた小箱を手渡す。

 

 見た感じは真っ白な箱だ。大きさは五センチ四方くらいか。

 だが、どこにも開け口らしきもの蓋らしきものも見当たらない。どうやって開ければよいのだろうか?

 

「これは…………?」

「社長からお話は伺っております。これから魔術決闘に挑まれるのだとか。これは社長からのちょっとしたプレゼント――とのことです。中身は私も存じ上げておりませんが、早急に渡してくるように頼まれたので」

「いや、でもこれどうやって開ければ」

「それも存じ上げておりません。条件が整えばひとりでに開くと社長はおっしゃっていましたが」

「…………餞別のつもりならもうちょっとどうにかならなかったのか?」

「それは私も同感です。こんな訳のわからないものを運ばされるとかほんと理解に苦しみますよね」

 

 どうやらリシェルにもわからないらしい。このまま返答を重ねたとて彼女から返ってくるのは愚痴だけだろう。

 意図の読めない兄からのプレゼントに、ジゼルは困惑と苛立ちを覚えてしまう。

 リシェルは全然悪くない。決闘の直前に訳分からんガラクタをプレゼントと称して送りつけてくる兄が悪いのだ。

 

 こんなもんを渡されたとことで、ジゼルのへっぴり腰は治ることはない。むしろ頭を抱える要素が増えたせいで余計に増しているような気すらする。

 

「やっぱ無理な気がしてきた…………どーすりゃいいんだ」

 

 箱を片手に頭を抱えるジゼル。

 こうしている間にも着々と決闘開始時刻は迫っている。

 レヴィがジゼルの不戦敗を許すはずがない。もしここで逃げ出せば、学園内でのジゼルの居場所はなくなるも同然だ。しかし、本番を前にして、負け戦に挑む勇気が出ない。

 

「…………」

 

 どう声をかけようかと思案するセレニア。

 その時、ミクリがジゼルの肩をがっしりと掴む。

 

「にゅあいっ!? ななななななにッ!?」 

「ジゼル、自分を信じろ」

「そんなこと言ったって…………」

「お前さ、勇者だったんだろ? ならこの程度の修羅場くらい乗り越えてみせろ」

「でもそれはイフの話であって……今ここに居る私は勇者とは無縁な女の子であるわけでぇ……」

「それがどうした? イフだろうがなんだろうが、どっちもお前だろう。ならお前にもあるはずだ、勇者となりえるだけの勇気ってもんがな」

「っ‼︎」

 

 ミクリに指摘されて、ジゼルは聖剣の勇者(みずからのイフ)について思いを馳せる。

 眼を背けたくなるほどに苦しくて悲惨だったもしもの自分。しかし、あの夢では確かにジゼルは勇者となっていた。ならば、ただ悲惨なだけじゃなく、勇者の称号を得るに相応しい在り方をしていたはず。 

 ロスト能力は”もしもの自分”の発露。イフの自分と現実の自分は完全に切り離された存在ではなく、どこかで繋がっている。たどった道が異なるだけで、根本的には”聖剣の勇者のイフ”も人間的には同じジゼルであるはずなのだ。

 だからこそ、今生きているジゼルの根底にもある。

 勇者の資格を得られるだけの何かが。

 ミクリはそう言っているのだ。

 

「――わかったよ、ミクリ。やればいいんでしょっ‼︎」

「その意気だ、行ってやれ!」

 

 ミクリに発破をかけられたジゼルはやけくそ気味にそう吐き捨てて立ち上がると、皆に見送られながら更衣室を後にする。

 

 負け戦がなんだ。

 こうなったらやけっぱちだ。

 出たとこ勝負、後のことは後で考えればいい‼︎

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

      ◇      ◇      ◇

 

 

 

 

 アリーナのフィールド上に足を踏み出したジゼルは、あたりを見渡す。

 サッカー場並みの広さのフィールドに立っているのはジゼル一人。レヴィの姿など何処にも見当たらない。

  

「レヴィの奴は何処に……?」

 

 彼女が逃げるなんてまずありえない。気に食わない奴は必ず自分の手で直接始末する。それがレヴィ・ヴィダールという少女だからだ。

 緊張に呑まれながらも、ジゼルがレヴィの姿を探していたその時だった。

 

「遅い遅い遅すぎます。愚図の分際でわたくしを待たせるとは極刑に値しますわよ」

 

 声の出元は上だった。

 むっとしながら空を見上げたジゼルは、ソレをみて唖然とする。

 

 そこにいたのは、幻煌魔装(エスペラント)を装着したレヴィだった。

 

 “ディアマンティ”。

 イゴールが用意した、レヴィ専用の幻煌魔装(エスペラント)

 銀色の機体に身を包んだレヴィが、烈風を撒き散らしながらジゼルの眼前に降り立つ。

 

「ひっ……卑怯でしょこんなのォッ⁉︎  こっち生身‼︎ そっち幻煌魔装(エスペラント)‼︎ 公平の概念をご存知ないのッ⁉︎」

「それを決めるのはわたくしッ、いつの世も強者がルールを作るのですっ‼︎」

「暴君だぁっ‼︎⁉︎」

 

 レヴィの無茶苦茶っぷりに文句の止まらないジゼル。

 幻煌魔装(エスペラント)は言うなれば、人間が身に纏う戦闘機のようなもの。戦闘機と生身の人間が戦えばどちらが勝つかなんて論ずるまでもない。

 

 しかし、非情にも。

 レヴィは幻煌魔装(エスペラント)の砲門を前方のジゼルに向ける。

 

「徹底的にぶっ潰して差し上げますわッ、ウィダールの名にかけてッ‼︎」

「っ…………!」

 

 砲門を向けられたジゼルの全身から、冷や汗がどばっと溢れる。

 こんなもんをくらったらただじゃすまないはず。最悪の想像をしてしまったジゼルの身体は震えていた。

 

「両者、フィールドに揃いましたね。それでは始めましょうか」

 

 いつのまにかボックス席にいたニーナ・トリチェーリ理事長が、マイク越しに決闘開始の合図をする。

 どうやらレヴィの幻煌魔装(エスペラント)持ち込みに関しては知らんぷりを決め込むつもりらしい。公平を謳っておきながら不公平を実行するダブスタっぷりに、ジゼルは頭を抱えるしかなかった。

 

 しかし、いくら文句垂れたところで現実は変わらない。

 レヴィは圧倒的不利な勝負を持ちかけてくるし、決闘の発案者たる理事長も止める気配がない以上、ジゼルにはそれらを受け入れるしかないのだ。

 

 覚悟を決めろ、ジゼル・レインズライン。

 お前が勇者であるならば、この程度の逆境くらい越えてみせろ。

 電光掲示板に表示されるカウントダウン表記を横目に、ジゼルは深呼吸する。

 

 

 

『3、2、1――READY FIGHT!』

 

 

 

 カウントダウンが終わった直後。

 凄まじい轟音と閃光が瞬時に辺りを埋め尽くした。

 

 

 

 

 

      ◇      ◇      ◇

 

 

 

 そのころの観客席。

 

「うわーお…………レヴィ、本気だね」

「ちょっ、あれ止めた方がいいんじゃ⁉︎」

 

 流石のミクリやセレニアも、レヴィが幻煌魔装(エスペラント)を持ち出してくるとは思わなかったようで、レヴィの横暴に対して本気で引いていた。

 あんなの勝負になるわけがない。というか半分くらい殺すつもりじゃないか。

 居てもたってもいられなくなったセレニアは観客席を飛び出すが、

 

「アレの何処が卑怯だっていうんだ?」

 

 そこに、レヴィの取り巻きらしき少女達が立ち塞がる。

 

「お前ら……!」

「知らないのか? 幻煌魔装(エスペラント)は、厄災戦時代に作られた身体補助用の魔術礼装が前身となっている。つまり、幻煌魔装(エスペラント)もれっきとした魔術礼装。魔術対決に持ち込んでもオッケーってこと」

「それでも文句あるなら言えばァ? ま、庶民のあんたらが幾ら喚いたとて、公爵令嬢のレヴィ様の敷いたルールに逆らえるわけないんだけどさっ」

「理事長も何も言わないし、うちらの意見が正しいってことなのさ」

 

 取り巻き達はそう笑いながら、指先から炎やら電気やらを生成する。

 これ以上邪魔する様ならば容赦しない、ということだ。

 

 セレニアの実力ならばこの取り巻き連中を倒すのは朝飯前だが、自分がレヴィとのトラブルを起こしたせいで今回の事態が生じているというのに、そこからさらに暴力沙汰起こすわけにはいかない。

 その時、歯噛みするセレニアの肩にぽんと置かれる手があった。

 リチャードだった。

 

「よすんだセレニア、ジゼルを信じてやるんだ」

「リチャード…………」

「そうだぜセレニア。アイツはただ庇護されるだけの人間じゃない。そもそも、ジゼルがこうして試合に挑んでるのもお前のためなんだぞ」

「…………それは、そうだけど」

 

 リチャードとミクリの言葉に、セレニアはぐうの音も出なかった。

 

 そうだ。ジゼルはセレニアのために戦ってくれている。

 セレニアが一番に信じてやらないで誰がジゼルを信じるというのだ。それこそ、彼女に対する侮辱だろう。

 

 意を汲んだセレニアは、フィールドのほうに目をやる。

 あれはジゼルのための戦い。今の自分達にできるのは応援することだけ。

 

「ジゼル、頑張ってね」 

「見せてくれジゼル――お楽しみはこれからなんだろう?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 




…………ご安心ください。貴方が呼んでいるのはIS二次ではございません。




なんでこうなったんでしょうね、ほんと。
決闘する展開だけは当初から決めていたのですが、そこに幻煌魔装を絡めた結果、ハーメルン民おなじみの某作品みたいになってしまいました。
ホントなんでこうなったんでしょうね…………!?

ちなみに筆が乗りに乗ったのでまだ続きます。
既視感に苦しみながらお楽しみください…………!
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