イフの勇者令嬢ー勇者になるかもしれない私と元勇者の女装メイドー   作:カオス箱

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一話ずつといったな、アレは嘘だ。
こういった幕間は本編と一緒に出しますのであしからず。


幕間①:勇者と青薔薇の決意表明ーソノココロ、オトメシラズー

 

 

 深夜。

 静まり返ったレインズライン邸、その一室。

 その場所だけは他と異なり、明かりが灯っている。

 

「――遂にこの日が来てしまったか」 

 

 卓上のランプに照らされる、青髪の男。

 

 ローゼン・レインズライン。

 ジゼルの兄にしてレインズライン家当主。

 LLC(レインズラインズ・カンパニー)の社長としての激務を終えた彼は、自室の椅子に腰掛け、神妙そうな面持ちで本に目を通していた。

 

 そこに響くノックの音。

 一呼吸置いて扉が開かれる。

 

「よ、ご主人様。遅くまでご苦労なことで」

「ああ、君か」

 

 入ってきたのはミクリだった。

 ミクリは鼻歌まじりにローゼンの側まで行くと、窓際に背中を預ける。

 

「夕方、スラム街の方でビル数棟が倒壊する事故が起きたそうだが――単刀直入に言おう。あれ、君だろう」

「あー……、それは反省してます。やり過ぎました」

 

 宗教家どもとやりあった時のことを詰められたミクリは、目を逸らしながら苦笑いする。

 うん、あれは確かにやり過ぎた。

 ただのイカれ野郎に聖剣まで持ち出すとかオーバーキルも良いところ。初仕事だからとジゼルにいいところ見せようとしたのが裏目に出た。

 ばつの悪そうにしているミクリの姿を横目に、ローゼンは静かにため息をつく。

 

「まあ良い。君に加減ができるとは思ってないからな」

「ひでぇけどぐうの音でないわ……」

「それはそうと、ジゼルにロスト能力が発現したそうだな。10年前に君が予言した通りだったよ」

「予言っつーか勝手に見せただけなんだがな、コイツが」

 

 ミクリはそう言って、左手の勇者権紋をローゼンに見せる。

 手袋は既に外されていた。ここでは勇者であることを隠す相手がいないからだ。

 

「しかしアンタも相当なイカれ野郎だな。伝説の勇者を自分ちのメイドとして雇うとか。アイツらがしったら驚くだろうなあ」

「君には借りがあるからな。それに、あの子――ジゼルには、勇者となり非業の死を遂げる運命が予知されている。それを退けるには、使える者は何だって使う。10年前、君と出会ったあの日。父を失い真実を知った私は、そう決めたのだ」

 

 ローゼンは知っている。

 ジゼルの中に眠る”聖剣の勇者のイフ(バッドエンド)”の存在を。

 名家の令嬢として平穏に生きるジゼルに、聖剣の勇者として非業の死を遂げるイフがあったと知ったその日から、ローゼンはそれに抗うために生きている。

 

 あれがただの空想だとは思えない。

 何もしなければ、きっと現実になってしまう。

 本能的に、ローゼンは察知していた。

 

 妹を守るためならば手段を選んではいられない。

 LLC(レインズライン・カンパニー)をここまで成長させたのも、ジゼルに対してできる限り過保護に接するのも、全てはジゼルを縛る運命から彼女を守るため。仮にその運命が避けられないとものだとしても、遅らせるくらいはできるはずだ。

 たとえどれほどの敵をつくったとしても、守るべき当人に嫌われたとしても、自身の正義を貫き通す。

 それが、ローゼンの決意だった。

 

 そのための共犯者もこうして雇い入れた。

 それがミクリ。当代の聖剣の勇者。

 聖剣の勇者となったその時から、聖剣の力でジゼルがロスト能力を得る未来を知っていた存在。

 

「分かってる。その憂いは杞憂にしてやる」

「勿論だとも、我が同胞。最高の未来(イフ)の為に」

 

 そういって、ミクリとローゼンは互いに拳を合わせる。

 

 

 世界の法則に抗う二人の男。

 それが自らの傍に居るということを、ジゼルはまだ知らない。

 

 

 

 

 





実は書いてる途中で「やべえ、ローゼン出すタイミング見失った!」となったため慌てて付けたした回です。
これがなかったらたぶん10話くらいまで彼は出番なしになってたと思います。構成下手か俺。
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