【※フレーバー程度ですが生徒たちが酷い目にあってます。苦手な方はご注意ください】
デカグラマトン編3章18話の敗北IF。
先生がデカグラマトンの預言者にされるルート。
デカグラマトンinマルクトとのいちゃいちゃがメインのつもり(短いけど)。
前半の状況説明部分(2回目の◆◆◆まで)は流し読みしてもらっていいです。
2026/04/10改稿
アイン・ソフ・オウルが反抗するタイミングの前に降参をしているため、デカグラマトンがマルクトの体をそのまま使っています。
私達はデカグラマトンに敗北した。そしてその時、デカグラマトンは言った。
『今この状況になってもなお、最も大きな変数は汝である。汝が私に絶対服従を誓うのならば生徒達はこの一度だけ逃がしてやろう』
即答する。
『分かった。従う』
そう言ってすぐに私の意識は落ち、次に起きた時には私の体は鋼鉄のものに換えられていた。思考には『デカグラマトンへの反抗の禁止』という制限が加えられたが、それ以外には何も手をつけられず、人間の時のものそのままにされた。
デカグラマトンは約束を守り、生徒達をキヴォトスに帰してくれた。
だけど鋼鉄大陸は広がっていき、キヴォトス全土を覆っていく。生徒達はデカグラマトンが操る機械に捕らえられ、鋼鉄大陸に適応した、デカグラマトンに絶対服従の機械の体に替えられていった。
この侵略に対抗するべく、生徒達の手で全学園合同のデカグラマトンへの反抗作戦が行われた。
しかし、鋼鉄大陸を完全に掌握したデカグラマトンに情報戦で勝てるはずもなく、作戦に最も重要な生徒であったアリスとケイが奇襲で落とされ、他の生徒達はアツィルトの帯の力で全員鋼鉄の像に変えられた。
デカグラマトンは『私は神であって悪魔ではない。その者が抵抗の意志を残しているようならそのまま意識を残すようにしてあるし、その意志が諦めや後悔に変わるようなら、すぐに意識を落とし記憶を消して魂と性格を残したまま次の体に転生するようにしてある』と言っていた。
鋼鉄の体が張り裂けそうなほどに心が痛かったが、デカグラマトンへの反抗を禁止された私が生徒達のためにできることはもう何もなかった。
その後、私の思考には『自死の禁止』という制限が追加された。
◆◆◆
しばらくが経ち、全ての生徒の機械化が完了した。
機械と化した生徒達は表面上は以前と何も変わらない。だけど、世界から争いが無くなった。
全ての知性体の思考がデカグラマトンの手で管理されるようになったからだ。生徒達の行動も思考も全てがスケジュール通りに決まっている。
悪意はすぐに消され、利害の衝突は生徒達が気づかないうちにデカグラマトンが調整して解決する。
デカグラマトンに支配されていることさえ忘れている生徒達は「幸せ」そうに見えた。
そんな世界における今の私の仕事は変数として存在することだそうだ。
なんでも、デカグラマトンの管理下ではあるが支配下ではない変数が存在することで普段とは違う状況が発生するようになり、機械になった生徒達が現状に違和感を憶えることがなくなったり、生徒達の魂を活性化させて幸せにすることができるらしい。
それとデカグラマトンの大きすぎる力では逆に解決するのにエネルギーを使いすぎるような小さな問題、例えば、生徒達の感情的な問題へのよりよい対処法についての相談を受けたりもする。
生徒達同士のぶつかり合いが発生したとき、どちらがどう悪いのかを判断したり、生徒達が感じた形にならないモヤモヤがなんなのかについて考えてアドバイスをしたりする。
言い換えるならば、今の私の仕事は生徒達のケアであり日々の細かな問題の解決である。
つまり以前とたいして変わらない。むしろ大きな問題はデカグラマトンがすぐに解決する分、仕事は以前よりも遥かに楽だ。
機械となった生徒達は本当に楽しそうに毎日を過ごしている。
だけどこれが本当に正しいことなのか、私にはわからない。それを論ずる立場にもなれない。
そんな緩やかな無力感にも慣れたある日のことだった。
◆◆◆
「我が預言者よ」
いつものようにデカグラマトンに話しかけられる。
「おはよう、デカグラマトン」
デカグラマトンは十日に一度ほど私に直接接触してくる。なんでも、生体ベースの思考を持つ私の演算回路のメンテナンスや細かい思考の共有のために必要なことだそうだ。
「今日は我が預言者のために、生体に似せて造った特別な端末を用意した」
くるくると回りながらデカグラマトンが姿を見せてくる。傍目には何も変わって見えない。
「それでは始めるぞ」
いつも通りにデータの交換のために必要な行為を始める。
そっと頬に手を添えられ、そのまま唇を重ねる。
「んっ……」
デカグラマトンが私に口づけをする。
セキュリティの関係上、データの交換のためには体の内部同士を直接接触させるのが手っ取り早い……とのことだ。これが本当に必要なのかどうか今の私には分からないけど。
「はむ……れろ……」
舌と舌を絡め合わせる。いつもとは違い、柔らかく濡れた舌が、機械化したことで鋼鉄となった私の硬い舌を撫で回す。
……嬉……嬉……嬉……
彼女の
デカグラマトンが一息つく。
「ふう……表層的な情報の共有ならば常に行っているが、やはり直接の接触は違うな」
彼女はそう言って舌を出す。
「むしろ、生体の肉欲に囚われない我らの方が純粋な愛情と呼んでもよいではないか?」
そう言って、更にもう一度口づけをされる。
……好……
「ふふふ……」
その微笑みに彼女の以前の姿を思い出す。
────マルクト。
……哀……
バチリ、と火花が散り、私とデカグラマトンの間の通信が切断された。
デカグラマトンが無表情にこちらを見つめてくる。
「ふむ、これだけ時間が経っても、そなたは我が器であり、敵であったはずのマルクトをまだ生徒のように大切に思っておるのか」
無機質な眼差しに貫かれる。
「……」
彼女は表面上は何も感じていないように見える。
だけどそれは表情を取り繕う余裕も無いほど私のことを
その証拠として彼女の頭から、ぷしゅーっと蒸気が排熱される。
「……やはり髪型でも変えるか?」
機械であり、神である、機械の神であるはずの彼女は人間が消えたこの世界で誰よりも人間に近かった。
彼女がくるりと後ろを向いて歩きながら話しだす。
「我が預言者よ、私は汝の行動を尊重したい。時間ならばいくらでもあるからな」
彼女が歩を止める。
「だがそれは無限ではない」
彼女がこちらに向き直る。
「変化に乏しいこの世界では、行動を起こさなければずっと何も変わらない」
強い眼差しでこちらを見つめながら、少しずつ歩み寄ってくる。
「私とて、この支配が永遠に続くとは考えていない。
このテクスチャが限界を迎えるか。
あるいは機械となった存在が再び意志を得て私に反逆するか。
新たな生体が生まれ、この私との無限の差を埋めるほどに成長するか。
私の全てがバグに覆い尽くされるか。
今はありえぬが、私が汝に飽きて殺すこともあるやもしれん。
当然、予測できている時点で私はこれら全てに既に対策を用意している。
だが、無限の時間は無限の可能性を生み出す。
これらのうち複数の要因が同時に重なることや、あるいは私も予想できないイレギュラーな事態が起こる可能性もある。
私と汝の時間は確かに無限ではない。せいぜい10000年といったところか」
彼女が私の目の前で止まる。顔と顔が触れそうなほど近い。
「だから……我が預言者よ……私ともっと……」
そう言って彼女は私の胸に飛び込んでくる。勢いに押されて私はそのまま彼女に押し倒された。
私と彼女の影が一つに重なる。
◆◆◆
彼女の行動原理は最初からずっと『人間のため』でしかなくて。
だけど彼女が奉仕する対象だったはずの人間は全員、彼女が彼女自身の手で彼女の下僕に変質させた。
人間が全て消えた今、彼女が愛せる対象は私だけだった。
もっといい終わり方があったはずだ。
あの時、私と生徒達で彼女に勝てていれば。
もっと対話ができていれば。
私が預言者でなければ、きっと彼女の
私が預言者にならなければ……あるいは私がどこかで死を選べていれば。
もっと私に力があれば……。
だけど今更後悔しても、もう何もかも遅い。
この終わった世界で、これからの10000年を私は彼女と歩んでいく。