ガーディアン解任   作:slo-pe

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おまけ ~達也出場のIF~

 

 

『チーム山岳部』に達也IN、服部OUT。

 将輝たち『余り物チーム』との試合IF。

 

 

 第一試合

『チーム山岳部』。エリカ・幹比古の九校戦モノリス・コード出場者二人に加え、一昨年の新人戦モノリス・コードで将輝を下した達也を擁する、優勝候補筆頭チーム。

 それに対するは通称『余り物チーム』。一条将輝・七草香澄が率いる、こちらも優勝候補の一角とされるチームだ。

 

 優勝候補二チームが初っ端からぶつかる事で、一高から九高まで盛り上がりは十分だった。

 

 試合が開始される。ブザーの合図と共に、各選手たちがそれぞれ動き出す。

 一方のチームは王道な攻守分配を、もう一方は歪な配置をしていた。

 

『余り物チーム』は王道。片方のモノリスを将輝が単独で防衛し、もう一方は三年生三人が担当する。残りの一二年生の四人を、二人ずつの攻め要員に分ける。

 

 一方の『チーム山岳部』は、達也とエリカが攻撃。レオたち五人の山岳部員は、彼らが『庭』と称する演習林に潜み、敵チームが攻めてくるであろうルートで待ち伏せていた。

 そして、守備はと言うと、二基のモノリスの中央の林間で潜んでいる幹比古が、条件発動型の魔法を設置しただけで、肝心のモノリスはガラ空きだった。

 

 攻めてくれと言わんばかりの配置だが、彼らにとってはこれが最適解だった。

 

 一つが、レオたちの奇襲により、敵の攻撃陣を人数・精神の両面から削ることができるから。

 一つが、幹比古の隠密性を最大限に生かすなら、開けた空き地で敵を迎え撃つよりも、林間に潜んで遠隔奇襲を仕掛けた方が良いから。

 そして、これが一番の理由で、達也とエリカのコンビならば、相手が自陣のモノリスに到着するまでに、決着をつけることができるからだ。

 

「エリカ、こっちでいいんだな?」

「当然。こっちの方が面白いじゃない」

 

 猛スピードで演習林駆けていた達也とエリカが、静かに足を止めて、最終確認をする。

 

 達也は存在を認識する『眼』で、エリカは想子(サイオン)の陰影を知覚する『目』で。二人は足場の悪い演習林をものともせず、圧倒的な速度で駆けることができた。

 それにより『余り物チーム』の攻撃陣が演習林の半分も進んでいないにも拘わらず、二人はモノリスの間近に迫っていた。

 

 彼らの視線の先にいるのは、林間に開けた空き地に設置されたモノリスと、それを守護する一条将輝。

 

「二対一だけど、一昨年の再戦よ」

「分かった──行くぞ」

「りょーかい!」

 

 短く気合を入れた二人が、高速で駆ける。

 

 見通しの悪い林間部から踊り出たことで、将輝も彼らを認識した。

 

 将輝が圧縮空気塊を二人へ放つが、決定打にはならない。

 二人の高速移動と『術式解体(グラム・デモリッション)』『サイオン・ブレード』という魔法式破壊技術により、攻撃は尽く躱され、そして壊されている。

 将輝は二人の接近を阻むのに精一杯だった。

 

 そして、実力が五分であれば、守る物がある防衛側が不利になるのは自明。

 

 モノリスから十メートル。「鍵」となる魔法式の有効射程に、将輝は達也の侵入を許してしまった。

 一瞬、ほんの一瞬だ。だが、達也はその隙を逃さず「鍵」を撃ち込むと、モノリスが二つに割れ、蓋だった物が音を立てて落ちた。

 

 その瞬間、三人の動きが止まった。

 

 将輝は「やられた!」という思いから。

 エリカは「勝った」という確信から。

 そして達也は、モノリスに表示された暗号を読み取るため。

 

 コンマ一秒にも満たない時間、達也はモノリスを視て、そして離脱した。

 

「っ、しまった!」

 

 将輝は、チームメイトである桐生の戦法を知っている。

 九校戦エンジニアに選ばれた優秀な魔工師である桐生は、モノリスに記されたコードを暗記することで、相手守備を無力化することなく勝利するという離れ業を可能にしていた。

 

 桐生が五百十二文字のコードの暗記にかかるのは、およそ十秒。

 達也なら、一秒も要らない。

 

 森林に入られては分が悪すぎる。将輝は慌てて達也を追おうとするが。

 

「っ、ぶな……!」

 

 横手から来たエリカの斬撃を、ギリギリで躱した。

 

「させないよ、一条くん」

 

 将輝は小さく舌打ちを漏らす。

 扱いづらいウェアラブル端末のキーボードとはいえ、達也ならそれほど時間をかけずに打ち込みを終えるだろう。

 それまでにエリカを倒し、魔法の痕跡無しで逃げ隠れた達也を見つけるのは、困難を極める。

 

「くそっ……!」

 

 将輝はエリカとの戦いを優勢に進めながら、試合終了を告げるブザーを聞いた。

 

 

 

 

 第一試合を制し、幸先のいいスタートを切った『チーム山岳部』。

 その立役者であるエリカは、林間内の達也のもとへ向かった。

 

「達也くんおつかれー!」

 

 そして、足元の悪い演習林をものともせず駆け寄ると、全力で飛び付いた。

 

 達也はそれを、一回転して勢いをいなす。首に抱きついたエリカの長い脚が、ぐるりと円を描く。

 そして、達也はシームレスにお姫様抱っこの体勢に移行した。

 

「エリカ……」

「流石だね達也くん」

 

 呆れを含んだ達也の視線に、エリカは満足げな笑みを向ける。

 

 一昨年のリベンジ。

 将輝に勝利したこともそうだが、その後の抱き着き事件も。エリカとしてはやり直し、成長を見せつけたかった。

 

 ルール違反監視用のカメラは、未だ二人を映している。

 

 エリカはそれに目掛けて、思い切り手を振った。

 剣士として、婚約者として。

 二つの意味での成長を、魔法科高校九校へ知らしめた。

 

 

 

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