【悪役と人外の戦記】 - 悪役貴族に転生した僕には、神秘の滅びを謳う戦乱の大陸で人外を視る眼があり、ゆえに成り上がる   作:所羅門ヒトリモン

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 チラ裏で供養していた没ネタの生まれ変わりです


第1巻
第1話


 

 

 共感できない。

 Webでオリジナル小説を読むとき、最初のハードルって何になると思う?

 

 僕は、共感の有無だと思う。

 

 一文目から主人公の個性が強すぎると、なんだか感情移入できる気がしなくて、続きを読むのを躊躇してしまうコトってないかな?

 

 一文目から世界観説明がガッツリしていて、横文字と難読漢字がズラズラ並んでいたら。

 これは読むのが疲れそうだぞー? って思わず身構えてしまった経験は無い?

 

 最近はエンタメも超高速消費時代で。

 Web小説をよく(たしな)む人も、実は最初の百文字くらいでブラウザバックするかどうか見切りをつけたりしているらしい。

 

 あ、僕はまだセーフ?

 

 アウトだったら泣くところだけど、涙はあいにく枯れていてね。

 話を戻す。

 

 要するに、大事なのは最初の百文字──欲を言えば一話目で。

 

 どれだけ読者に「素敵だな」「おもしろそうだな」「期待できそう!」って思わせられるか。

 

 共感の大前提には〝寄り添い〟がある。

 

 最初から心の距離が遠くて、遠いままに物語を始めようとしたって。

 近くで話を聞いてくれる人は、悲しいけれど少なくなるよ? って当たり前の事実なんだ。

 

 僕は創作者でね。

 

 十代の半ば頃から、それなりに長いコトこの界隈にいる。

 

 はじめは読み専。

 次第に二次創作。

 

 けど、それが意外にも好感触で。

 自分で思っていたよりも、嬉しい評価や感想をもらっちゃったりしてさ。

 

 自分には才能があるかもしれない、なんて錯覚して。

 

 今じゃ一次創作にまで手を出して。

 

 まんまと抜け出せなくなった沼で、ずいぶん(あえ)いだね。

 

 Web小説って、おもしろいし楽しいんだもん。

 

 なんでこんな話から始めたかって言うと。

 

 この作品を読む人たちには、僕が貴方たちと何も変わらない人間だった、って理解して欲しかったからです。

 

 ここから先はちょっと、共感の難しい話になってくるかもしれないから。

 

 それでも、僕の原動力(根っこ)は「コレなんだよなぁ」って、誰かに知っておいてもらいたかった。

 

 ……うん。

 

 未完の傑作、と呼ばれる戦記ファンタジー小説があったんだよ。

 

 海外の某大手動画配信サイトで独占ドラマ化もされて。

 その年の配信タイトルのなかじゃ、最も違法視聴されたTVショーってネット記事が作られるくらい、かなり世界中で人気を博したタイトル。

 

 独占配信なのに、すごいよね?

 

 ただ、原作小説は最終巻が執筆中で。

 ドラマのほうだけ、先行して最終章が放送されたんだ。

 内容はもちろん、ドラマ版オリジナルストーリー。

 

 だから、原作のファンもドラマから入ったファンも。

 原作小説の最終巻が発売される日を、ドラマ版の最終回が放送された後もずっと待っていた。

 

 原作者が死んだ。

 

 世界はショックと悲しみで大騒ぎになった。

 文句無しに天才と呼ばれて、多くの賞を受賞するほどの優れた小説家(アーティスト)

 

 あるインタビュー記事で、彼はこんな答弁をしたコトでも有名だよ。

 

 インタビュアー:これだけ緻密な世界観と複雑な人間関係を描くにあたり、そのインスピレーションの元となっているのは、ズバリ何なのでしょうか?

 

 原作者:正直に言うと、自分でも分かりません。ただ頭のなかに、突然、注ぎ込まれるように浮かび上がるんです。()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 原作者であり、小説の執筆者に他ならない彼が、どうしてそんなコトを言ったのかは当時も物議を(かも)したね。

 

 一風変わった謙遜とする説。

 真の天才の証左だとする説。

 あるいは、ゴーストライターの存在を暗示する説。

 

 様々な憶測(おくそく)も呼び込んで。

 なかには彼の名誉を貶めるような言説も多くネット上で囁かれたけど、出版社と編集部はもちろん否定。

 

 事実を(つまび)らかにしようと調査をしたマスコミも、彼の才能を最終的には讃える方向で調査を打ち切ったそうだ。

 

 つまり、彼は真の天才だったのだと。

 

 世間はそう捉えて、惜しみなく拍手を送り、彼の死に深い哀悼を示した。

 

 彼の死因は謎の急病と発表されていて、偉大な作品を完結に導くプレッシャーには、彼の原作者、真の天才でさえも耐えられなかったのだろうと。

 

 そんなふうに、死因は心因性のものだったと囁く説も、またSNSにはあがった。

 

 なかなか鋭い。

 

 心因性、というのは惜しかった。

 

 彼の死因は実際、()()だったからね。

 

 これは例え話だけど、引用として優れた状況説明になるので言及するよ?

 

 クトゥルフ神話をご存知だろうか?

 

 アメリカの作家であるH.P.ラヴクラフト氏を中心に展開された架空の神話体系。

 概要はホラー・SF・ファンタジーの要素を融合させた文学的世界観。

 ラヴクラフト氏の死後、百年近く経とうとなお多くの創作物(小説、ゲーム、映画など)に影響を与えているすごい作品群でね。

 

 そのなかに、『クトゥルフの呼び声』って短編小説があるんだ。

 

 詳しいエピソードは割愛させてもらうけれど、この短編小説の一節にはこんなお話がある。

 

 〝世界各地で、芸術家や詩人、感受性の強い人物たちが、共通した奇妙な夢や幻視に悩まされる〟

 

 夢の内容は、コズミックホラー的なもので。

 

 異様な都市や巨大神クトゥルフの姿。

 圧迫感・不安・宇宙的な恐怖をともなうビジョン。

 知られざる言語や象徴。

 

 そういったものが、次々に夢に現れるといったもの。

 

 短編のなかで、ある彫刻家はこの夢の影響が創作、芸術家活動にも現れて、巨大神の彫像を造り始めてしまう──なんて内容だ。

 

 ああ。

 

 要するに、彼は()()と似た事象に遭遇していただけだったんだね。

 

 電波を受信する。

 

 日本では天然が過ぎる人物を指して、一昔前まで電波ちゃん電波くん、などと呼んだりする少々イジワルなからかい方があったけど。

 

 彼はまさしく、()()を受信していた。

 

 外宇宙からの干渉、ってヤツなのかな。

 脳に開かれた第三の瞳。

 前世の記憶だとか来世の未来視だとか。

 

 オカルト的な呼び方は複数あるはず。

 

 ただし、一番の問題なのは。

 彼が〝別世界から届いたビジョンを、小説という形でアウトプットしていたコト〟なんだよ。

 

 彼にはそれが、ある時、不意に、どうしようもないほど直観的に理解できてしまった。

 

 だから、発狂したんだ。

 

 まぁ、仕方がないよねぇ?

 

 彼はインタビュアーへの受け答えでも、自分のアイデアの着想元が分からないと明言していた。

 

 実はその言葉が、()()()()()()()()()()()()というだけの話。

 

 滑稽(こっけい)なのは、彼がそれでもプライドを持っていたコトだよ。

 

 一端の創作者を気取ってさ。

 物書きの端くれとして、半生にも値する時間を文章に費やして。

 

 周囲からの評価も相まって、「まるでそんな気はしない」と謙虚に首を横に振り続けながらも。

 

 心のどこかで、努力が報われた気がしていた愚か者。

 

 すべて、気のせいだったのに。

 

 彼が手掛けたとされている作品には、彼自身の想像力も創造力も関係ない。

 作家としての才能など一ミリも入り込んでいるはずがないし、オリジナリティなど以っての(ほか)

 

 ビジョンをそのまま描いた。

 

 彼が誇れる功績なんて、極論、風景をただ文字という情報に変換して書き起こしたコトだけ。

 

 リンゴが木から落ちた。

 犬が走って転んだ。

 雨が降って地面が濡れた。

 

 そんな程度。

 

 どうだい? これが、物語としておもしろいかい?

 

 目の前で起こった出来事を、ただそのまま事実の通りにキーボードに打ち込んでいただけだ。

 

 余人の目には偶然おもしろい作品に映っても。

 

 書き手である彼には、それは自分自身のアイデンティティ否定に他ならなかった。

 

 絶望だよ。

 

 彼は絶望して、発狂して、脳に開いていた別次元の回線(チャネル)との繋がりから──最期には()()()()

 

 誰より知っていたはずの物語。

 

 この傑作をほんとうに自分が手掛けたのか? と自惚(うぬぼ)れる夜もあったフィクション。

 

 だが実際は、何も知り得てなどいなかった本物の異世界、来世へ。

 

 不思議な話だよね。

 

 創作界隈、創作クラスタ界隈では、物語を作るとき人間は神になるって言う人が多いのに。

 

 彼は、僕は。

 

「神じゃなかった」

 

 流れる星々が血の川となり足裏を濡らす冷たい鉄の匂い火の灯る大地は千の鉄槌の記憶を抱えたまま青く裂けた天球儀は硝子質の悲鳴クルクルと捏ねられた粘土の宇宙ひび割れた柱の塔に絡む蜘蛛の銀糸は焦げた天蓋草花の芽吹きに灰色の祝詞と生命の光を開闢以前の泡立ち巨いなる海は泥濘の胎内で錆びた鐘楼に逆さ吊りの王冠を砕かれ鉄の王女の断頭台は黄金の霧と硫黄の朝焼け白い肺腑に砂嵐骨髄へ沁み込む冷え切った雨に病は溢れ赤い指先は空虚を縁取る月光の腐臭と黒い太陽の裏面羊水に沈む都市に石化した祈り歯車の聖歌つまらない歪む羅針盤愚かにも北を失った旗の群青の静脈を走る雷霆に翡翠の眼窩に溜まる星屑糞まみれ裂帛の無音は裂け目から覗く未誕の王座であり水銀の鏡面に貼り付く影法師焼け残る契約書の端側は煤けた署名に黄金と孔雀石の指輪が脈打つ蠕動動物の奇怪なる様は砂上の王国に未完の設計図を螺旋階段の途中で途切れた足跡のごとし玉座の背後に積まれた頭蓋を聖骸布に染み込む黒曜の雫数えられない数の膨張ガス抜き必須の玻璃の神殿は無風の絶叫屍肉を貪る蝿のアギト天蓋の裏側で繁茂する鉄樹白骨の楽団凍土に招かれ帆船は潮騒のない海面を凱旋門の騎兵隊となりて断章だけが積み重なる書架頁なき書物罫線だけの地図に三点リーダの闇沈黙の重量選ばれた痕跡選ばれていない証明どちらも星喰らいの胎児にして王冠なき王の名もなき因果を嘲笑う未完成品その余白崩落する星辰の回廊に吊るされた燭台は青白い炎を滴らせ熔解した紋章は石畳へ沈殿し逆光の寺院に濛々垂れ込める硝煙は聖句の残滓な裂断された年代記の血の栞かもしれないが凍結した河川に埋没する軍旗を見るに断裂する鎖帷子に刻まれた塩の結晶は地獄を支える梁にひび割れた預言の刻印カブトムシ砂礫に埋もれる王笏ひしゃげた宝珠は黒曜石の祭壇に転がる未洗の盃で乾いた葡萄酒の染みを舐めろ石棺の内壁に刻まれた爪痕が神経を捲りあげる聖油の匂いに混じる焦土の霧烟る薄明の丘に林立する処刑柱はりつけられた喉笛から零れる無音の賛美歌を礼賛せよ星図を焼き焦がす雷光の慈悲ぞ知れ群青の雲海に沈む戦車は輪郭を失う城郭にして白亜の外壁を這う黒蔦翡翠色の瘴気に満ちる潔癖の宣誓それすらも崩壊した円環都市の中心で脈動する虚ろな罪の告白かわいそうでおもしろい空位の王座に積もった白塵煤けた天秤は均衡を失い片側へ傾斜したかと思えば割れた鏡像に映る逆さまの悪魔像と無数の眼孔を持つ神の像の彫刻家たち廃都の広場に転がるくすんだ鐘で舌止まった時刻盤は裁縫道具を落下させた途中の米粒に折れた羽根の天使像砂漠の地平を希望し蜃気楼の遺跡に隠された旗布の縁に縫い込まれた失われた家名と蒼白の月輪に浮かぶ黒点星纏う影群れ進呈された法典の頁間に挟まれた灰色の羽片を沈黙を圧縮したような天空の歪みが歯車仕掛けの暦で季節を拒絶し未誕の戴冠式を待つ俎上壇上カマメシ宮殿の階段に散乱する血晶シャンデリアが黄金の粉塵を帯びた逆巻く風に焦げ跡だらけの粉瘤となって避妊されざる空欄と鉄の香りを孕む雨雲は地平を覆い尽くす墓標のわだちを荒野に横たわる孤独の螺旋凱旋歌なればこそ永劫に届かぬ栄光に変身し代わって涙滴の王国の背骨を走る亀裂を重ねられる創世記に嘲笑をぶち撒け余白の上に重ねられる余白書き損じられた歴史の行間に滲む黒い染みが名付けられなかった者たちの影と戴かれなかった王冠捧げられなかった祝福終わらなかった終章に悲哀絶叫。

 

 ()()()

 

 

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