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アリオーン
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セリス
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シャナン
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アレス
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「兄上、もう止めて下さい‼」
蒼白な顔で、全軍に響き渡るような叫び声。
背後には、3騎と一人の剣士が佇んでいる。
「アルテナか……元気そうだな」
お前はここに来るべきではなかった。
血のつながった弟や従弟のセリス皇子たちと、豊かな場所に行けばよかったのだ。
「こんな戦いに何の意味があるのですか‼」
お前は、いつもそうだ。
感情のまま父上に反抗していた。
今ならわかる。
父上は、その実直な感性を守りたかったのだ。
この不毛な大地には芽吹くはずのない、優しさを。
「お前と戦えるなら、私は本望だ」
天槍を空に突きつける。
神器の加護が、淡い聖光と共に身体を包む。
我らトラキアは、奪うことでしか生きられない。
お前たちのような、明るい場所など存在しない。
「手加減はしないぞ。
さあ、かかってこい‼」
騎竜の横腹を蹴り、空へ飛ぶ。
視界が白くなる。
乗り越えてみせろ。
さもなくば、二度と私の前に顔を出すな。
―――――
白雲を突き抜け、槍を構える。
背後からアルテナが追ってきた。
天と地は相争う定めからは逃れられないか。
「兄上‼
民を苦しめるのをお止めください‼」
父上と、同じことを……‼
今戦わなければ、北の連中に食い物にされるだけだ。
国王すらハイエナと蔑まれる。
そんなことまでしなければ命脈を保てぬ。
それがトラキアだ。
「構えろ‼
それでも槍騎士ノヴァの末裔か‼」
「兄上……」
ゆったりとした動作で、地槍を構えるアルテナ。
神器同士で打ち合うのは、これが初めてか。
―――――
アルテナが果敢に騎竜を近づけ、槍を突き出す。
膂力と技の冴えが、磨かれている。
受ける度に、多少手がしびれる。
普段の訓練とは威力が違う。
いや、槍を戻す際の癖は治り切っていない。
竜への指示も雑な部分が隠せていない。
……ゲイボルグの加護か。
考えてみれば、我らの槍は元々兄ダインと妹ノヴァに与えられたもの。
似たような加護であっても不思議はない。
所詮、この程度か。
槍に振るわれている。
絶対的に自力が足りない。
右踵で騎竜を二度叩く。
相手の竜に噛みつかせ、アルテナの操竜が乱れる。
「寝ておけ。起きる頃には終わっている」
アルテナの肩を突き刺し、そのまま抉るように回す。
鐙ごと空へ投げ飛ばす。
驚愕した表情のまま堕ちていくアルテナを、傷ついた竜が追う。
―――――
眼下を見渡せば、グルティア城周辺と足元以外に他の敵は見えない。
本当にたった5人で攻め込んでいるとはな。
寡兵相手に、部下たちはまだ仕留め切れていない。
神器2つが相手、仕方がないか。
せめて、アグストリアで出稼ぎ中の精鋭が居れば。
……詮無い事を考えても意味が無い。
魔剣の直系を討てば、そちらから追加報酬をもぎ取れるか。
それよりも、想像以上に騎士団の損耗が激しい。
私と数騎を残し、別の城へ向かわせるべきだ。
相手の注目を集め、その隙に移動させるとしよう。
セリス皇子とリーフ王子。
どちらから、狙うべきか。
両者とも神器を持っていない。
今なら不意の一撃で戦闘不能には出来るだろう。
皇子を討てば、戦は終わる。
だが、グランベル帝国の勢いを削いでもらいたい。
さもなくば、彼の国の矛先がこちらに向きかねない。
ただでさえ、子供狩りなどという訳の分からない要求をしてきている。
やはり、リーフ王子か。
倒した所で、北トラキアが手に入るわけでもない。
父上のようにグランベルとの陣取り合戦か、解放軍とのにらみ合いか。
だが、ノヴァの血族が減ればこちらにも占領の正当性が増える。
穂先を王子に定める。
一度、騎竜を撫でる。
こいつの呼吸も、心拍も収まっているな。
いつでも行ける。
王子が次の一射を放ったら、貫く。
―――――
部下達へ王子が矢を放った。
騎竜の横腹を蹴り、垂直に落ちる。
風切音で何も聞こえない。
ただ、あの茶髪を穿つだけ。
―――――
「上だ‼」
遅い。
既に王子は貫いた。
天槍にかかる重さが伝えている。
直前で気づかれたのか、脇腹を貫くだけになってしまった。
直系でなくとも、ノヴァの末裔か。
槍を振るい、離れた位置に身体を投げ捨てる。
息は残っているか。
随分と頑丈だな。
乗馬がリーフ王子へ駆け寄り、服を咥えて引きずって行く。
良く躾けられている。北にも優れた乗騎があるものだ。
神器の使えぬ者など、後からどうとでもなる。
まずはこの三人だ。
「流石剣神と呼ばれる神器。
私の速さに気が付くとはな」
唯一、私の動きに気が付いた剣士に声をかける。
―――――
手を上げ、部隊長達に指示を飛ばす。
各城の攻略へ向かわせる。
「私達相手に兵を減らすか。
後ろから斬られるとは思わなかったのか」
速さだけなら、シャナン王子が上か。
落下を用いれば上回れる。
「だからリーフ王子を刺した。
お前達は地を這うだけだからな」
青髪の青年、セリス皇子が割って入る。
「アルテナ王女はどうなったのですか⁉
彼女は、貴方のことを想っていたんですよ‼」
……言われなくても分かっている。
あいつが、どんな妹かなんて。
「お前がセリス皇子か。
相手にとって不足はない。
手合わせ願おうか」
聖剣を携えていない。
三人では指揮も無い。大した脅威にはなりえない。
最後まで生かしておかなければ。
賠償金を請求する先がなくなる。
「おい、俺も忘れるな。
お前は三剣士の末裔を相手取る気か」
漆黒の馬に黒鎧。
先祖ヘズルにあやかっているつもりか。
致命の一撃にさえ気を付ければ、魔剣など問題ではない。
「それにしては、聖剣が足りないな。
セリス皇子、侵略の対価を払い、こちらの指示に従えば見逃してやる」
「アリオーン王子‼
貴方はまだ分からないのか‼
アルテナ王女が、何を思っているか‼」
穂を突きつける。
「もう何も言うな‼
行くぞ、セリス‼
剣が槍に勝てぬこと、教えてやる‼」
騎竜の横腹を蹴る。
視界が白くなる。
―――――
低空を周回し、敵の注意を集める。
その隙に、怪我を負った騎士たちは城に退避する。
2周して、黒騎士へ襲撃。
「その、程度か‼」
穂先に合わされた剣が振られる。
後ろに飛び退き、更に数度突きを放つ。
全て、防がれた。
しかも、こちらの態勢を崩すことまで狙っている。
追撃が来ない内に、射程外へと逃れる。
魔剣は魔法への耐性を与えると聞いていたのだがな。
それ以外にもありそうだ。
膂力はこちらが上、速さもそれ程ではない。
アルテナの物と同じく、技量も向上する加護があるな。
相性の悪い槍、それも素早い相手を受けきるなぞ達人にしか出来ない。
それも私の腕に対応するなど、そうとしか考えられない。
目の端に、違和感。
「逃がすと思ったか‼」
シャナン王子が、真横で剣を振るう。
辛うじて、柄で受け止める。
なんて重さだ、歩兵とは思えない。
それに、空中戦を挑むとは。
「我らの領域だ‼」
腿を締め、竜に宙返りを指示。
その勢いで剣を押し返す。
間合いを取りながら、三段突きを放つ。
またも、全て防がれる。
バルムンクは速度と技量か。
一番の難敵だな。
だが、所詮は曲芸。
空中制動など、知らぬのだろう。
今度は、重力を載せ渾身の突き。
防がれたが、それでいい。
地を這え、剣聖。
「ぐッ‼」
受け身も取れないか。
この場に杖の使える人員は居ない。
致命には程遠いが、多少は動きも鈍くなっただろう。
こいつらは、私単独で相手をすべきだ。
部下達では、ここには入れない。
無駄に国力を削るだけだ。
―――――
青髪が叫ぶ。
「僕の番だ‼」
剣先をこちらに向けている。
ぎんの剣か。
軽いながらも、十分な威力がある。
刀身は輝いているが、使い込まれた形跡がある。
悪くはない選択だが、この場に上がるには不足している。
「神器も持たずに挑むとは、自殺志願か」
「意思に神器は関係ない‼
アルテナ王女だって、槍を構えず貴方に呼びかけた‼」
槍を握り直す。
「……それがどうした」
「僕達は邪神から世界を解放するための軍だ。
聖戦士の末裔として帝国に挑んでいる。
トラキア王国が戦う必要はない‼」
「貴様等が攻め込んで、父上を殺したからだ。
これでは、水掛け論になってしまうな」
「……それは、申し訳なかった。
だとしても、これ以上戦う意味なんてない」
「父は私に民を託して逝った‼
天槍を持たずに戦地に赴いたんだぞ‼
自らの死に場所を求めていたとはいえ、貴様は親の仇、アルヴィス皇帝を許せるのか‼」
「……分からない」
「ならば、剣を構えろ‼」
強く騎竜の横腹を蹴る。
―――――
重力を味方につけて襲い掛かり、逆光を利用し、射程も活用した。
騎乗していた二人は、馬を降りて移動速度よりも動きやすさを優先し始めた。
最大の障害のシャナン王子も、空に挑むことは無くなった。
それでも、決着は付かない。
本来なら天槍を何度も受けられる者はそういない。
違う。
こちらの動きに、対応し始めている。
それどころか、無言の内に連携が行われている。
待ちの体制を崩さず、反撃のみを狙っている。
一人が受け止め、一人が追撃を庇い、最後の一人が竜を傷付けようとしている。
騎竜の身体に血痕が浮かび始めている。
「まだ、やるのか」
時はこちらの味方。
この三人を釘付けにすれば、戦略で勝てる。
私が王都にすら通さなければ、配下が城を陥落させる。
帝国からの更なる増援も来るはず。
「僕達は……最後まで諦めない……。
王子こそ……まだ継戦する気か」
息が上がり、傷と砂にまみれながらも続けるつもりか。
この態度が気に入らない。
幻想に縋り、あり得ぬ未来を夢想する。
我らトラキアの民には、そんな余裕すらない。
汚名を被り、食料を収奪し、それでも進むしかないのだ。
「僕は敵討ちのためだけに戦っているんじゃない‼
今も隣の自由都市群では子供狩りが行われている。
どんな時でも、悪に立ち向かうのが聖戦士だ‼」
その矜持こそ、末裔が持つべきもの。
……だが、この大地では意味をなさない。
ゆとりがあるから言えるのだ。
貴様等が、この荒野を顧みたことなどないだろう。
皮と骨だけの民を、安堵させることなど出来ない。
理想なぞ、トラキアの民には関係ない。
父上の道を、空虚な言葉で詰るな‼
一度、深呼吸。
膝を竜に当て、合図する。
最速にして、最重量の一撃で終わらせる。
シャナン王子さえ倒せば、こいつらに勝ち目は無くなる。
「これ以上長引かせるつもりはない」
騎竜の横腹を蹴り、空へ飛ぶ。
視界が白に包まれる。
「トローン‼」
―――――
身体中を、駆ける痛み。
傷口が何処か分からない。魔法か。
急いで、空へと逃げる。
普段と違う風切り音。
右の加速が足りない。
翼を見ると、矢が刺さっていた。
鐙を足場に、竜から丘へ跳び下りる。
口笛を吹き、王都に戻らせる。
お前は良く戦った。死んではならない。
まさか、大地に足をつけさせられるとはな。
父上との訓練以来だ。
奴らにとっては、僥倖だろう。
竜がいなくなれば、敵ではないとでも考えているのだろう。
こちらも三次元戦闘を考える必要がなくなる。
槍にだけ意識を割けば良いのだ。
地に足をつかせたこと、後悔させてやる。
敵を高所から見下ろせば、初見の女と倒したはずのリーフ王子が居た。
あの女か。
高位魔導士が王子を治療し、戦線に復帰したか。
グルティア城を捨ててまでこの場に来たのか。
髪色からして、忌まわしいフリージの係累。
実力が唯一分からない。
先に排除すべきだ。
「アリオーン王子‼
私はトラキア半島の動乱を望みません。
我らレンスターと共に手を取り合い、帝国を討ちましょう」
恵まれた者の傲慢だ。
レンスターが復活すれば、貴様等が我らにとって次の帝国になる。
トラキアへの仕打ちを忘れたか。
昔のように、我らを経済で虐げるのだろう。
「既に半島統一でも成し遂げた口ぶりだな。
神器すら持たぬ身で、皇帝にでもなったつもりか‼」
駄目だ。
表に出す感情は、選ばなくては。
心拍を無駄に上げる意味が無い。
「違う‼
邪神の元では、それも幻想だ‼」
悪寒。
背筋に氷が差し込まれたようだ。
大山脈の上よりも、冷たい。
反応が遅れてしまった。
背後に向け、全力で槍を振るう。
「随分な物言いだな。
神の元でなら、大陸の統一すら容易いというのに」
手ごたえが無い。だが、槍が動かない。
少年の前に広がる黒い靄に、天槍が止められている。
横から、少年と同じ赤髪の女が歩み寄る。
「グランベル帝国第一皇子、ユリウス=バーハラ様の御前です。
皆さま、武器を納め、御静粛に願います」
場違いな凛とした声音だけが響き渡る。
女性の手が軽く天槍に触れ、押し返される。
アリオーンが強すぎると感じられた方もいらっしゃるかもしれません。
原作では、物理戦では最強格の一人です。
しかも彼だけ最終章でもLv27。まだ伸びしろまで残しています。
ドラゴンマスターなのに弓特効無効、66ダメージを36%で連続、さらに指揮レベル5。(自身含め周囲3マスに命中・回避+40%)
悲しいことに、アルテナに愛を注いでも……。
その強さのせいか、イシュタル共々倒さない解決法が用意されています。