L視点→〇冊目(デスノートから)+2文字題名
月視点→〇日目(月の満ち欠け日数から)+4文字題名
カラカラ……。
乾いた骨の音が、底の見えない闇の中を転がっていく。
骸骨が二つ、まるで子供が投げた玩具のように、荒れ果てた地面を無造作に滑っていた。
そこは荒野である。
いや、荒野という言葉すら生ぬるい。
空は灰色に濁り、空気は腐ったように澱んでいる。
風が吹いているのか、それとも止まっているのかさえ判然としない。
何も生まれない。
何も育たない。
──いや。
正確に言えば、
死しか存在しない世界である。
死神界。
その陰鬱な大地の上で、二人の死神が退屈しのぎの賭け事に興じていた。
「髑髏二つ。また俺の勝ちだ。ケケケ」
骨でできた長い杖をくるりと回しながら、一人の死神が笑う。
その笑い声は、骨と骨を擦り合わせるような、不快で乾いた音だった。
「ケッ……」
向かいに座る死神は、長く曲がった黒い角を生やしている。
どうやら何度も負け続けているらしく、吐き捨てるように舌打ちをした。
何か言い返そうと口を開いたが、結局は言葉にならず、沈黙してしまう。
その様子を、少し離れた場所から眺めている者がいた。
(あれから……五日か)
死神──リュークである。
彼は賭け事に興じる二人をちらりと見やったが、
勝敗などどうでもよさそうに視線を逸らした。
この世界には、刺激がない。
同じ灰色の空。
同じ退屈な死神たち。
同じように繰り返される、意味のない時間。
リュークは、とうにこの世界に飽き飽きしていた。
だからこそ彼は、ほんの少しばかり危険な悪戯を思いついたのである。
自分のデスノートとは別に、もう一冊のデスノートを手に入れ、
それを──
わざと人間界へ落とした。
「……そろそろ行くか」
リュークはゆっくり立ち上がった。
黒いパンク風の衣服。
背には巨大な黒い翼。
この陰鬱な世界の中でも、彼の姿はとりわけ異様であった。
「ん? どこへ行くんだ、リューク?」
賭け事に勝って上機嫌の死神が声をかける。
「死神界はどこへ行っても不毛だぜ。ヒヒ」
負け続けている角の死神が、投げやりに言った。
自分の不運と、この世界の退屈さを同一視しているらしい。
リュークは少しだけ考えた。
(……まあ、一応言っておくか)
ほんの一瞬の逡巡のあと、彼はぶっきらぼうに言った。
「デスノート……落としちまった」
「ギャハハハ!」
勝っていた死神が腹を抱えて笑い出す。
「またドジやったのかよ! お前は!」
そして、ふと思い出したように言った。
「つーか、おめー死神大王を騙くらかして、デスノート二冊持ってたよな?
まさか……二冊とも落としたんじゃねーだろうな?」
(……めんどくさい)
リュークは心の中で舌打ちした。
「で? どこに落としたんだよ。ケケケ」
勝った死神は妙に楽しそうだった。
この退屈な世界では、誰かの失敗さえ貴重な娯楽なのだ。
リュークは短く答えた。
「人間界」
「……え?」
二人の死神は顔を見合わせた。
意味を理解するまで、少し時間がかかった。
やがて──
「……おい、それって……」
そう言いかけたときには、すでに遅かった。
そこにはもう、リュークの姿はなかった。
灰色の空の下、荒野には再び退屈だけが残っていた。
だが──
人間界に落ちた、たった一冊のノート。
そのノートから、
二人の人間による奇妙な戦いが始まろうとしていた。
この世で起きた数多の難事件の中でも、
特に異様な名で語り継がれる事件がある。
***
ロサンゼルスBB連続殺人事件。
奇妙で、残酷で、そして人間の理性を嘲笑うかのような犯罪だった。
だが、その不可解な事件を解決した探偵の名は、
ただ一文字。
L。
人々はその名を、まるで怪談のように囁く。
だがLは、単なる一つの名前ではない。
ドヌーヴ。
エラルド=コイル。
それらの名義でも、彼は数々の難事件を解決してきた。
警察が匙を投げた事件を、
まるで簡単な算術問題のように片づけてしまうのである。
しかし──
どれほど優れた探偵が存在しても、
この世界から犯罪が消えることはない。
法律があろうと、
警察がどれほど厳しく取り締まろうと、
人類の歴史において、犯罪が完全に消えた時代など一度もない。
そしておそらく、未来にもないだろう。
私は、そう考えていた。
だがそれを悲しいとも思わない。
怒りもない。
失望もない。
むしろ、時折こんなことを思う。
(私は……感情というものを失ってしまったのではないだろうか)
悲しい。
嬉しい。
楽しい。
胸が高鳴る。
そうした、人間が生きるために必要な感情が、
いつの間にか自分の中から抜け落ちてしまったような気がするのだ。
圧倒的な推理力と引き換えに、
何か大切なものを──置き去りにしてしまった。
だから私は、ある小さな習慣を持っている。
事件を解くときは、必ず甘いものを食べる。
甘さで、
血なまぐさい記憶を上書きするのだ。
奇妙な儀式かもしれない。
だが私にとっては、それが唯一の楽しみだった。
その日も私は、自室で甘い菓子を食べながら、
世間では難事件と呼ばれる問題を、
次々と解決していた。
そのときだった。
冷蔵庫を開けようとした瞬間、
私の視線が窓の外に止まった。
ベランダに、黒いものが落ちたのである。
ほんの一瞬。
だが私は見逃さなかった。
(……妙ですね)
私は裸足のままベランダへ出た。
そこに落ちていたのは──
一冊の黒いノートだった。
表紙には英語で書かれている。
DEATH NOTE
私は小さく呟いた。
「……デスノート」
そして、かすかに笑う。
「直訳すると……死のノート、ですか」
その瞬間、私は奇妙な直感を覚えた。
今までの難事件よりも──
このノートの方が、よほど面白い。
だから私はページをめくった。
そこには英語で、こう書かれていた。
このノートに名前を書かれた人間は死ぬ。
私は静かに笑った。
「……悪戯にしては」
そして、こう呟いた。
「ずいぶん手が込んでいますね」
***
ワタリが買ってきた食べログ☆4.5のりんごタルトを、Lは静かに食べていた。
名古屋まで買いに行かせたというのに、
りんごは妙に酸っぱく、口の中でやや尖った味を残す。
(……この程度で☆4.5ですか)
Lは無表情のまま、そう思った。
――まぁ、所詮は食べログ。目安程度です。こういうこともありますね。
世の中というものは、往々にして評価と実体が一致しない。
人間社会の多くの現象がそうであるように。
Lは、かじりかけのりんごを皿の端へ寄せた。
そしてフォークでタルトの部分を刺しながら、
黒いノート──デスノートを読み返していた。
そのときだった。
「気に入っているようだな」
不意に、背後から声がした。
人間の声ではない。
どこか乾いた、奇妙な響きの声だった。
Lはゆっくりと視線を上げた。
そこには──
パンクのような格好をした、
ぼさぼさ頭の異形の存在がいた。
巨大な黒い羽根。
細長い手足。
どこか楽しそうな、不気味な笑み。
死神──リュークである。
Lは、タルトをもう一口食べてから言った。
「いえ、このタルトはハズレです。もっと美味しいものは、いくらでも食べたことがあります」
あまりにも淡々とした答えだった。
逆に、リュークの方が驚いた。
「タルトの話じゃない」
「冗談です。ノートのことですね」
Lはデスノートの角をつまみ上げ、
それをリュークの方へ向けた。
まん丸の目が、死神をじっと見つめている。
だが、その表情には、
一切の動揺がなかった。
まるで、そこにいるのが死神ではなく、
珍しい昆虫か何かであるかのように。
「何故驚かない」
リュークが言う。
「デスノートの落とし主、死神のリュークだ。その様子だと、もうそれが普通のノートじゃないと分かってるんだろ?」
Lはタルトを噛みながら答えた。
「確かに普通の人間なら、驚くでしょう」
「しかし私は、デスノートを利用し、いくつかの事実を直視しました」
「その結果、ますます確信を持って行動できるようになりました」
そしてふと顔を上げる。
「あ、聞きたいことがあるのですが、いいですか?」
Lはリュークの目を、じっと見つめた。
その瞳は、奇妙なほど澄んでいる。
リュークの瞳の中に、
Lの顔が小さく映っていた。
リュークは、その目を見て思った。
(……こいつ)
(まるで子供みたいな目をしてやがる)
純粋な目だった。
デスノートを使った人間は、
たいてい別の目をする。
欲望。
恐怖。
狂気。
そういう濁った光が宿る。
だが、Lの目は違った。
(こいつは普通じゃない)
リュークは直感した。
(……俺の求めてるものを持ってる)
Lはノートを開いた。
端と端をつまみ、
リュークに見せる。
そこには──
びっしりと書かれた名前。
「くくっ……」
リュークが笑った。
「これは凄い」
「逆にこっちが驚かされた」
ノートを受け取り、
リュークは夢中でページをめくる。
「過去にもデスノートが人間界に出回ったことはある」
「だが……ここまで殺った奴は、お前が初めてだ」
「並の人間じゃビビってここまで書けない」
Lは静かに言った。
「私は、このノートの効果を理解した上で使いました」
「そして死神のあなたが来た」
「さて、私はどうなるのでしょう?」
少し間を置き、続ける。
「もっとも、その様子だと……魂を取る取られるという話ではなさそうですが」
Lは、これっぽっちも恐れていなかった。
理由は単純だ。
ここまでの会話で、
答えはほぼ見えていたからである。
リュークは肩をすくめた。
「ん? ああ」
「魂を取るとか……人間が勝手に作った空想だろ」
一呼吸置く。
「俺はお前に何もしない」
「人間界に落ちた時点で、ノートは人間界の物になる」
Lはまん丸の目で聞いていた。
リュークは指をさす。
「もうお前の物だ」
Lはノートを抱きしめた。
「言われなくても、私の物です」
「返しませんよ」
その姿は、まるで子供が大事なおもちゃを守るようだった。
リュークは窓を開けながら言う。
「強情な奴だな」
「まあ、お前なら他人に渡すって発想はなさそうだが……」
「万が一いらなくなったら、他人に回せ」
「そのときは、お前のデスノートの記憶を消させてもらう」
リュークはベランダに出た。
二十五階の空中へ、
ふわりと浮かぶ。
「そして……」
そのとき、Lが言った。
「ノートを使った人間にしか死神は見えない」
「ノートを回したら見えなくなる」
「おそらく声も同じでしょう」
リュークが笑った。
「あ、今言おうとしたんだが」
「すげえなお前」
Lは少し照れたように言う。
「見えていたり聞こえていたら」
「今こうしてのんきにタルトを食べていません」
「合理的に考えただけです」
そのときLは、
自分が久しぶりに笑ったことに気づいた。
何が起こるのか。
自分でも分からない。
その未知の感覚が、
妙に楽しかった。
幼いころに忘れてしまった感覚。
それを、今思い出していた。
リュークが言う。
「デスノートが」
「人間L=ローライトと、死神リュークを繋ぐ絆だ」
Lは静かに呟いた。
「……絆ですか」
(L=ローライト)
(それが私の本名でしょう)
自分でも知らない本名。
だが、死神は知っている。
つまり、
死神特有の能力だろう。
(この情報はいずれ必要になる)
(だが、今ではない)
Lは頭の片隅に置いた。
本名が分かるということは、
このノートと非常に相性が良い。
Lは言った。
「そういえば」
「なぜ私を選んだのですか?」
リュークは呆れたように言う。
「はぁ?」
「俺はただノートを落としただけだ」
「自分が選ばれたとか思ってんのか?」
「たまたまこの辺りに落ちて」
「たまたまお前が拾った」
「だから人間界で一番ポピュラーな英語で説明つけたんだ」
Lはうなずいた。
「では質問を変えましょう」
「落とした理由は?」
「丁寧に使い方を書いている。つまり故意ですね」
リュークは笑った。
「理由?」
そして言った。
「退屈だったからだ」
Lを指さす。
「死神が言うのも変だが」
「生きてるって気がしなくてな」
リュークの目が、
死んだ魚のように濁っていた。
死神界の光景が浮かぶ。
賭け事。
昼寝。
無意味な時間。
「死神は暇なんだ」
「昼寝か博打」
「デスノートで人間の名前を書いてると笑われる」
「『何ガンバッちゃってるの?』ってな」
そして窓の外を見る。
その目に、
少しだけ光が戻った。
「こっちの方が面白そうだと思った」
Lは静かに言った。
「……その気持ちは分かります」
リュークが笑う。
「そして確信した」
「こっちに居たほうが面白いと踏んだ」
死神はそう言った。
黒い羽根をゆらゆらと揺らしながら、まるで退屈な授業をさぼる学生のような気軽さで。
――その気持ち、私も分からなくはない。
私は心の中でそう呟いた。
死神が退屈する。
それは奇妙な話のようでいて、しかし妙に納得できる話でもあった。
人間界の退屈と、死神界の退屈。
形は違っても、その本質はきっと似たようなものなのだろう。
「そして面白いと確信できた」
死神は続けた。
私は頷いた。
「私も退屈でした。同様に面白くなると確信しました」
そして少しだけ言葉を区切る。
「もちろん最初は信じなかった。しかし、そのノートには……人間なら誰でも一度は試したくなる魔力があります」
そう言いながら、私は椅子に腰を沈めた。
背もたれにもたれず、いつもの癖で膝を抱える。
視線は自然と天井へ向かっていた。
そして──
あのときのことを思い出す。
デスノートを手にした、あの日のことを。
***回想***
テーブルの上には、食べかけの栗のタルトがあった。
私は最後に残しておいた栗をつまみ上げ、口に入れた。
甘い。
だがその甘さは、私の頭の中に広がっている思考の苦味を消すほどではない。
皿は空になった。
私は指先を舐め、
そのまま黒いノートをじっと見つめた。
――もし、このノートが本物だったら。
その可能性を、私は真剣に考え始めた。
静かな部屋だった。
ワタリの足音も聞こえない。
遠くの街の騒音だけが、かすかに壁の向こうで鳴っている。
私は考える。
――万が一死んだら、私は殺人犯になりますね。
その言葉は、頭の中でひどく静かに響いた。
だが不思議なことに、
そこには恐怖というものがほとんどなかった。
むしろ、
興味があった。
――殺してもいい人間。
私は指先でテーブルを叩く。
――しかも私とは無関係な人間の方がよい。
さらに思考を進める。
――さらに言えば国も違う方がいい。
もしこのノートが本物だった場合。
身近な人間を避けるのは当然だ。
それは倫理の問題ではない。
実験の条件として当然なのだ。
自国の人間を最初に実験台にするなど、
あまりにも稚拙な判断である。
私は角砂糖の瓶を開けた。
白い立方体を取り出し、
テーブルの上に一つ置く。
そして、その上にもう一つ。
さらにもう一つ。
小さな塔を作るように、
角砂糖を積み上げていく。
カチ、カチ、と軽い音がする。
思考と手の動きは、ほとんど同時に進んでいた。
三個。
五個。
八個。
十個。
――第一条件。
私は心の中で言う。
先進国であること。
警察が熱心に動く国であること。
十二個。
統率が取れている。
つまり単一国家。
十三個目の角砂糖を置いたとき、
私のシミュレーションは終わっていた。
――この計画でいこう。
私は静かに結論した。
先進国。
だが完全ではない。
ある程度の難題に関しては自国では解決できない、
ほどよい無能さがある国。
そして解決に行き詰まったとき、
他国に助けを求める国。
さらに。
私──Lの評価を高くしており、
しかし問題が起きれば責任をこちらへ押しつけるような国。
つまり。
日本。
私はテレビのリモコンを取った。
壁一面のモニター。
十×十以上の画面が並び、
世界中の放送を映している。
私は日本のテレビへ切り替えた。
日本で放送されているチャンネルが、
一斉に表示される。
その中の一つに、
私の目が止まった。
黒いリモコンを操作する。
その番組だけを拡大する。
画面いっぱいにニュースが映る。
「昨日、新宿の繁華街で無差別に六人もの人を殺傷した通り魔は──」
アナウンサーの声が響く。
「今もなお幼児と保母八人を人質に、この保育園に立てこもっております」
私は角砂糖を一つ取り、
飴のように舐め始めた。
――これにしましょうか。
条件は揃っている。
凶悪犯。
立てこもり事件。
全国中継。
私は静かに思う。
――悪魔のサイコロを振ってみましょう。
テレビではアナウンサーが言った。
「警視庁は犯人を音原田九郎、無職四十二歳と断定──」
私は少し笑った。
――ご丁寧に顔写真まで載せてくれるとは。
私はボールペンを取った。
そしてノートに書く。
音原田九郎
日本語を書くのは久しぶりだった。
かつて覚えた外国語の一つ。
少し乱暴な字になった。
書き終えると、
私は時計を見つめた。
――四十秒で心臓麻痺でしたね。
静かな部屋。
テレビの音だけが響く。
私は秒針を見つめる。
三十秒。
三十五秒。
四十秒。
――さて。
四十秒が過ぎた。
その瞬間。
テレビのアナウンサーが叫んだ。
「あっ! 人質が出てきました!」
私は少しだけ眉を上げた。
「皆、無事の様です!」
「入れ替わるように警察隊が突入!!」
アナウンサーの声はどんどん速くなる。
スタジオも現場も、
ざわざわと騒ぎ始めた。
「犯人逮捕か!?」
しかし。
「犯人らしい者は出てきませんね……」
「いったいどうなっているのでしょうか」
アナウンサーは前のめりになっている。
他局に負けたくないのだろう。
そして。
「今情報が入りました!!」
「犯人は保育園内で死亡!!」
「犯人は死亡した模様です!!」
――ほぉ。
私は回転椅子の上で体育座りをしていた。
そのまま床を蹴る。
椅子がぐるぐると回り始めた。
天井とモニターがぐるぐる回る。
――偶然の可能性は捨てきれない。
だが。
――ほぼ、このノートは本物。
私はそう結論づけた。
テレビではまだ騒いでいる。
「警官が射殺したのではないと強調しています!」
「人質の証言では犯人は突然倒れたと──」
私はテレビを消した。
そして部屋を出た。
そのニュースの結末を、
最後まで見る必要はなかった。
数時間後。
私は戻ってきた。
手にはハーゲンダッツの袋。
七つ。
アイスミルクでもラクトアイスでもない。
正真正銘のアイスクリームだ。
私は昔からアイスクリームが好きだった。
――さて。
私はスプーンをくわえながら考える。
検証の結果。
このノートは本物。
そして。
リンド=L=テイラーとの交渉も可能。
残る問題は一つ。
日本で、
誰をスケープゴートにするか。
私は思考を続ける。
世の中は腐っている。
腐っている人間は死んだ方がいい。
そう考えそうな人間。
だが同時に、
正義という倫理で行動する人間。
大人は駄目だ。
利益で動く。
ならば子供。
しかし小学生や中学生では
怖くて使いこなせない。
となると。
高校生か大学生。
さらに──
頭の回転が速い人間。
事件の情報に触れやすい立場。
警察庁。
警視庁。
政治家の子供。
私はアイスを一口食べた。
冷たい甘さが、
ゆっくり舌に広がる。
音原田の事件を考えると、
舞台は東京がいい。
日本の中心。
私は思った。
――まぁ。
いずれ見つかるでしょう。
私の。
生贄の子羊(スケープゴート)が。
***
某先進国。
世界にはおよそ二百ほどの国が存在すると言われている。
その中でも、産業、医療、政治、科学、ありとあらゆる分野において他国より一歩も二歩も進んだ国々がある。
人々は比較的裕福で、街には光が多く、
法律と秩序が一応の体裁を保っている。
アメリカ、日本、イギリス、フランス――
そうした国々は、人類の文明が到達した最も整った舞台として、
人はそれらを先進国と呼ぶ。
だが。
文明が発達すればするほど、
人間という生き物の滑稽さや、
暗い欲望の影は、
むしろはっきりと浮かび上がるものでもある。
その証拠のように、
今、ある一つの奇妙な事件が、
世界中の警察機構を不気味に揺らしていた。
■ICPO 国際刑事警察機構会議■
巨大な会議室であった。
円形に並んだ長い机。
各国のプレート。
そして映画館のスクリーンのように巨大なモニター。
そこには、
INTERPOL――
天秤に剣の刺さった紋章が映し出されていた。
世界各国から集まった警察関係者たちが、
ざわざわと席を埋めている。
年齢層は高い。
大半が白髪混じりの男たちであった。
世の中では「男女平等」という言葉が大義名分のように掲げられているが、
現実の権力の場では、
いまだ男たちの影が濃い。
それがこの会議室の光景であった。
誰かが言った。
「ここ一週間で確認されているだけで五十二人です」
ざわめきが広がる。
別の男が続ける。
「そのすべてが心臓麻痺」
さらに声が重なる。
「しかも全員、警察が追っていた犯罪者です」
「あるいは拘留されていた者たち」
別の席から低い声。
「となると、居場所の分からない指名手配犯も含めれば……」
少し間が空いた。
「軽く百人は超えるでしょうな」
ざわ……ざわ……
会議室は不安な空気で満ちていた。
警察という組織は、
秩序を守ることを仕事としている。
しかし今起きている現象は、
秩序の外側から起こっていた。
犯罪者だけが、
次々と、
まるで神の裁きでも受けたかのように、
突然死んでいく。
それは警察にとって、
あまりにも不気味な出来事だった。
その様子を。
一人の男が、
白いパソコン越しに見ていた。
アップル社のロゴが光る、
真っ白なノート型コンピュータ。
その前で。
男は床に座り込んでいた。
椅子ではない。
床である。
膝を抱え、
猫のような姿勢で。
「そうか……」
男は小さく呟いた。
「ICPOも、やっと重い腰を上げましたか」
ICPOとは対照的に、
この男はまだ重い腰を上げていなかった。
男の名は――
L。
世界で最も名の知れた、
しかし誰もその正体を知らない人物である。
背後で黒い影が動いた。
死神リュークである。
「予想通り一週間だったな」
リュークが言った。
「やっとお前の計画が進み始める」
Lはパソコン画面を見たまま答えた。
「ここまで事件が大きくなれば」
「警察も私の手を借りないわけにはいきません」
画面の向こうの会議室では、
相変わらず議論が収拾のつかない状態になっていた。
「犯罪者ばかり死なれては警察の威厳が……」
「威厳の問題ではないでしょう」
「しかし死刑囚が執行前に死なれるのは困る」
「これは前例がない」
そして誰かが言った。
「こうなると……」
少し間があった。
「またLに頼るしかありませんな」
そのとき。
会議室の一角、
JAPANと書かれたプレートの席。
そこに二人の男が座っていた。
一人は背筋の伸びた男。
オールバックの髪。
眼鏡。
口ひげ。
いかにも警察官然とした風格である。
夜神総一郎。
警察庁の幹部だった。
その隣に、
少し頼りなさそうな若い男が座っている。
髪が耳を隠し、
姿勢もどこか落ち着かない。
彼が小声で尋ねた。
「な……なんですか、その……Lって」
総一郎は少し微笑した。
「ああ、君はこの会議は初めてだったな」
そして静かに説明する。
「Lというのは……」
「名前も、顔も、居場所も」
「誰も知らない人物だ」
若い男は目を丸くする。
総一郎は続けた。
「だが、どんな難事件でも必ず解決してしまう」
「探偵……と言うべきか」
「いや、もっと別の何かかもしれない」
少し考えてから言った。
「世界の迷宮入り事件を解き続けてきた人物」
「影のトップ」
「最後の切り札」
そのような存在だ」
総一郎の説明が終わるころ、
会議室ではすでにLの話題になっていた。
「しかしLは気まぐれな男だ」
「興味を持った事件しか動かない」
「しかも我々から連絡も取れない」
そのときだった。
「Lは、もう動いています」
声が響いた。
機械で合成された声だった。
全員の視線が前方へ向いた。
大スクリーンの前に、
黒ずくめの男が立っていた。
黒いシルクハット。
黒いコート。
顔は見えない。
声も機械音。
年齢も、素性も、何も分からない。
その男が言った。
「Lはすでに、この事件の捜査を開始しています」
会議室がどよめく。
「ワタリ……!!」
その男の名は、
ワタリだった。
ざわ……ざわ……
■Lの部屋■
その様子を見ながら、
リュークが言った。
「おい」
「あれ、ワタリって……」
「お菓子とか持ってきてくれるじじいじゃないか」
Lはゆっくりとリュークを見た。
「そうですね」
そして一つの疑問を口にした。
「ですが、おかしいですね」
「死神の目で見れば、本名と寿命が見えるのでは?」
リュークは一瞬きょとんとした。
「ああ」
そして言った。
「顔を隠されてると見えない」
Lは静かに頷いた。
「なるほど」
「リュークさんは大雑把ですね」
「そして忘れっぽい」
リュークが顔をしかめる。
「え、まじか」
Lは言った。
「あとでルールを全部洗い直します」
「あなたの好きなリンゴをワタリに買わせますから」
リュークの顔が明るくなる。
「うほっ」
「それならいい」
Lは言った。
「今夜は寝かせませんよ」
そのとき。
パソコンからワタリの声が聞こえた。
「お静かにお願いします」
「これよりLの声をお聞かせいたします」
リュークが笑う。
「ほら、自演タイムだぞ」
Lはマイクを装着した。
ボタンを押す。
「ICPOの皆様」
「Lです」
会議室には機械の声が流れた。
リュークが吹き出す。
「おいw」
「これお前の声じゃないじゃんw」
Lは小声で言った。
「機械音です」
「まだ本当の声は公開できません」
そして言った。
「この事件は」
「かつてない規模であり」
「そして――」
Lは深呼吸をした。
「絶対に許してはならない」
「凶悪な大量殺人です!」
その大量殺人を引き起こしているのが、
L自身であることを知っているのは。
人間界ではL本人だけ。
そして。
死神リュークだけだった。
リュークは腹を抱えて笑った。
人間たちは、
犯人に助けを求めている。
その光景が、
あまりにも滑稽だった。
「人間って面白っっっ!!!!」
リュークは声を上げて笑った。
しかしその声は、
Lにしか聞こえない。
Lは何事もないように話を続けた。
「この事件解決のため」
「全世界ICPOの皆様の全面協力を求めます」
会議室がざわめく。
Lはスイッチを切った。
「まあ」
Lは言った。
「私の予想では」
「九十九パーセント」
「全面協力になるでしょう」
■日本 東京■
同じころ。
東京の街では、
ごく普通の放課後が流れていた。
受験生の三人が下校している。
その中の一人。
夜神月。
彼は寄り道をせず、
まっすぐ家へ帰った。
「ただいま」
母親にそれだけ言う。
そして部屋へ入り、
引き出しを開けた。
黒いノートを取り出す。
月はそれを見つめて呟いた。
「こいつを見るまで」
「学校に行っている間も……」
「ずっと落ち着かない」
***
■月の家■
夜神月は机に向かっていた。
部屋は整然としている。
本棚は寸分の狂いもなく並び、教科書や参考書は几帳面に整列していた。
その中央に、まるで儀式の道具のように置かれている一冊の黒いノート。
デスノート。
月はペンを指の間で静かに回しながら、
ここ一週間の出来事を頭の中で整理していた。
世界中の犯罪者が、次々と心臓麻痺で死ぬ。
新聞もテレビも、その話題で持ちきりだった。
人々は恐怖し、
同時にどこかで喝采を送っている。
犯罪者だけが死ぬ。
それはまるで、
神の裁きのようだった。
――だが。
月は目を細める。
神などという曖昧な存在ではない。
そこには必ず法則がある。
顔。
名前。
条件。
すべては論理で説明できるはずだった。
その時だった。
ガーッ……
突然、テレビの画面が切り替わった。
月は顔を上げる。
「ん?」
画面にはニュースキャスターが映っていた。
「番組の途中ですが、ICPOからの全世界同時特別生中継を行います」
「日本語同時通訳はヨシオ・アンダーソン」
その声には、
普段のニュースにはない緊張が含まれていた。
画面が切り替わる。
そこには一人の男が座っていた。
ミディアムの髪型。
整ったスーツ姿。
どこにでもいそうな男。
しかしその男は、
とんでもないことを口にした。
「私は全世界の警察を動かせる唯一の人間」
少し間を置く。
「リンド・L・テイラー」
「通称――Lです」
その瞬間。
月の背筋に冷たいものが走った。
「な……」
月は思わず立ち上がる。
「なんだこいつ!?」
そしてすぐに理解する。
「これはまずいぞ……」
この男は。
■凶悪犯連続殺人特別捜査部■
日本の警察庁でも、
同じ放送が流れていた。
捜査員たちは全員テレビに釘付けになっている。
「ついに始まったな」
「ほう……これがLか」
誰かが言った。
「しかし今まで顔出しなんてしなかったんだろ?」
「なぜ今になって……」
別の男が低く呟いた。
「これはLも本気ということか」
部屋の奥で。
夜神総一郎は腕を組んでいた。
部下たちの雑談は耳に入っている。
だが総一郎の意識は、
別のところにあった。
――さあL。
総一郎は心の中で言う。
――こちらは言われた通りにした。
――ICPO会議で言ったことを証明してもらおう。
総一郎の脳裏に、
数日前の光景が蘇る。
●総一郎の回想●
巨大な会議室。
世界各国の警察幹部が集まっている。
その壇上に、
黒い服の老人が立っていた。
ワタリ。
彼は静かに言った。
「L……」
「ICPOの皆さんが全面協力することを可決しました」
スクリーンから機械音が流れる。
『わかりました』
『特に日本の警察の協力を強く要請します』
会議室がざわめいた。
「えっ」
「なぜ日本だ!?」
総一郎も思わず声を上げた。
「なぜ日本なんだ!?」
スクリーンの向こうの声が答える。
『犯人は単独か複数かは分かりません』
『しかし』
『日本人である可能性が極めて高い』
会議室の空気が凍る。
『仮に日本人でなくても』
『日本に潜伏している』
総一郎の額に汗がにじむ。
「そ……そんな」
「何を根拠に?」
スクリーンの声が言う。
『なぜ日本なのか……』
その瞬間。
Lの部屋で、
リュークが呟いた。
「あ、分かった」
「最初の実験、日本人だったな」
Lは黙って親指を立てた。
グッド、という意味らしい。
スクリーンの声は続く。
『近いうちに犯人との直接対決で証明します』
『とにかく捜査本部は日本に置いてください』
回想は終わる。
総一郎が現実に戻ると、
捜査室ではざわめきが広がっていた。
「つまり……」
「今言ってた直接対決ってやつか」
捜査員たちはテレビを凝視している。
だが。
テレビを凝視しているのは、
Lも同じだった。
スクリーンの男が言う。
『私はこの犯罪の首謀者』
『俗に言うキラを必ず捕まえます』
リュークが笑う。
「おい」
「こいつもLなのか?」
「お前を捕まえるってよ」
Lは平然としていた。
「まあ」
「見ていてください」
テレビの男が言う。
『キラ』
『お前の考えはだいたい想像がつく』
そして。
声を強めた。
『だがお前のしていることは――』
一拍。
『悪だ!!』
■その頃 夜神家では■
月は歯を食いしばっていた。
「まずい……」
彼の頭は猛烈な速さで回転している。
「こんな挑発をしたら」
「キラに殺される……」
月はテレビを見つめた。
そして思う。
――もしキラがこの番組を見ていたら。
――この男は死ぬ。
その瞬間だった。
リンドLテイラーが突然胸を押さえた。
「ぐっ……」
男の顔が歪む。
手が震える。
そして――
ドサッ。
机に倒れた。
動かない。
月は息を呑んだ。
――やはり。
二人のSPが男を運び出す。
黒いスーツ。
サングラス。
顔を隠している。
月の頭がさらに回転する。
――顔を隠している……
――向こうも条件に気づいていた?
だが。
すぐに別の疑問が浮かぶ。
――いや……
――ならなぜ、あの男は顔を出した?
その時だった。
ガガガ……
テレビからノイズが流れる。
そして。
別の声が響いた。
機械音。
「もしやと思って試してみたが……」
「まさか本当に……」
月の瞳が見開かれる。
「キラ……」
「お前は直接手を下さず人を殺せるのか」
「何っ」
月は立ち上がった。
声が続く。
「よく聞け」
「キラ」
「もし今お前がテレビに映っていた男を殺したのなら」
「それは今日処刑予定だった死刑囚だ」
「私ではない」
月の脳が一瞬止まる。
声が続く。
「テレビにもネットにも出ていない」
「極秘の犯罪者だ」
「さすがのお前でも知らなかっただろう」
そして。
「だが」
「Lという私は実在する」
「さあ」
「私を殺してみろ」
■警察庁■
捜査員たちが騒然となる。
「なんだ……」
「すごいことになってるぞ」
「死ぬ気か……L」
■新宿アルタ前■
巨大スクリーンの前に
人々が集まっていた。
若者。
サラリーマン。
観光客。
皆、上を見ている。
「なにこれ?」
「キラ対Lだよ」
「キラって本当にいたの?」
「えっ、Lって誰?」
「こわ〜い」
人々は、
まだ気づいていなかった。
これは単なるテレビ番組ではない。
世界のどこかで。
史上最大の頭脳戦が、今始まったばかりだということに。
***
■Lの家■
「くくっ……良くやるな」
背後から、死神リュークの笑い声が聞こえた。
乾いた、骨が軋むような声だった。
だがLは振り向かなかった。
部屋の明かりはほとんど落とされている。
闇の中で、幾台ものモニターだけが青白く光り、まるで水槽の中の魚のようにゆらゆらと光を揺らしていた。
その中央で、Lは例の奇妙な座り方――
膝を抱えた姿勢のまま、椅子の上にうずくまっている。
長い指先にはマイク。
そして視線は、モニターの向こう――
自分の言葉を聞いているであろう見えない敵へ向けられていた。
Lは静かに口を開く。
「どうやら……」
ほんのわずか、口元が歪む。
「私は殺せないようだな」
リンド・L・テイラーは死んだ。
だがLは生きている。
――仮に他の誰かがあのノートを拾い。
――凶悪犯を次々に殺していたとしても。
――私は同じことをしたでしょう。
なぜなら。
それが一番早く真実へ辿り着く方法だからだ。
そして、もう一つ。
Lは自分でもうすうす気づいていた。
この事件には――
Lは再びマイクへ顔を近づける。
「殺せない人間もいる」
淡々とした声だった。
「いいヒントをもらった」
リュークがまた笑う。
Lは続けた。
「お返しといっては何だが」
「もう一つ教えてやろう」
部屋の空気が、わずかに張りつめた。
モニターの向こうで、
無数の人間がこの言葉を聞いている。
「この中継は全世界同時中継と銘打った」
「だが」
Lはほんの一瞬、言葉を止める。
「実際には日本の関東地区にしか放送していない」
テレビの前で誰もが息を呑んだ。
「時間差で各地区に流す予定だった」
「しかし」
「もう必要ない」
Lは静かに言う。
「お前は今」
「日本の関東にいる」
リュークが面白そうに笑った。
「くくっ」
「そんなベラベラ喋る必要あるのか?」
Lはモニターを見つめたまま、小さく答える。
――そのうち狙いが分かります。
そしてマイクへ向かって話す。
「警察は小さな事件として見逃していた」
「だが」
「この一連の事件の最初の犠牲者は」
「新宿の通り魔だ」
Lの頭の中には、すでに事件の地図ができていた。
新聞記事。
報道の順番。
死亡時刻。
犯人の顔写真。
それらはバラバラの断片だったが、
Lの頭の中ではすでに一つの図形へ変わっている。
「他の犯罪者は皆、極悪犯だった」
「だが」
「この通り魔だけは違う」
「罪が軽い」
「そして」
「この事件は日本でしか報道されていない」
Lは結論を告げる。
「これだけで十分だ」
「推理には」
そして言った。
「キラ」
「お前は日本にいる」
モニターの光がLの瞳に映る。
「そして」
「最初の犠牲者は」
「お前の殺しの実験台だった」
リュークが肩を揺らして笑った。
Lは続ける。
「人口の集中する関東に最初に中継した」
「そこにお前がいた」
「これは幸運だった」
「ここまで思惑通りにいくとは……」
珍しく、Lは少しだけ正直だった。
「正直思っていなかった」
そして静かに言う。
「キラ」
「お前を死刑台に送る日」
「そう遠くないかもしれない」
Lはマイクから口を離した。
部屋に沈黙が戻る。
モニターの光だけが、ゆらゆらと揺れている。
――日本の警視庁には、いくつもヒントを与えていた。
Lは思う。
――しかし誰一人。
――キラが日本にいるという所まで辿り着かなかった。
Lは指先で唇を押さえた。
――私の想定より、日本は無能なのかもしれない。
だがすぐに考え直す。
――いや。
――そうでないと困る。
このゲームは、まだ始まったばかりなのだから。
■警視庁■
捜査本部では、誰もがテレビに見入っていた。
書類をめくる音も、電話の音も止まっている。
松田刑事が呟いた。
「やっぱり……」
「すごいですね」
「Lって……」
隣の刑事が頷く。
「うむ」
「キラの存在を証明した」
「殺人を証明した」
「そして日本にいることまで……」
テレビの中でLの声が響く。
「キラ」
「お前がどんな手段で殺人を行っているのか」
「非常に興味がある」
一拍。
「しかし」
「そんなことは」
「お前を捕まえれば分かる」
その声は静かだった。
だが、どこか冷たい確信があった。
■夜神家■
夜神月は机の前に立っていた。
両手を机につき、
じっとテレビを見つめている。
その瞳は、燃えるように鋭かった。
「キラを死刑台に送る……だと」
月は低く呟く。
「キラ……」
その顔には、怒りとも、興奮ともつかぬ表情が浮かんでいた。
「必ず見つけ出して」
「始末する」
世界のどこかで。
二人の天才による
恐ろしく静かな戦いが始まったのである。
月とLどちらに勝って欲しいか
-
月
-
L
-
勝者なし
-
引き分け
-
月L以外