Lがデスノートを拾った世界~リメイク~   作:梅酒24

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14日目:起死回生

ワタリの焦燥は、尋常ではなかった。

しかし、その理由を測りかねているにもかかわらず、Lの胸中には不吉さよりも、むしろ奇妙な期待が膨らんでいた。

 

(……このまま進めば、夜神月君がキラとして逮捕されるのは時間の問題だったはず。だが、この段階で何かが起きた……。

いや、仮に私がキラでなく、ただキラと疑われている立場――つまり月君の立場であれば、数日のうちに監視カメラや盗聴器の存在に気づくはずだ。そしてそこから、キラが自分をキラに仕立て上げようとしている、という推論に至る可能性もある。

もし月君がここで何の行動も起こさないのなら、彼はそこまでの男だったということになりますが……さて、扉の向こうには何が待っているのでしょう)

 

やがて一同は、モニターの前に集められた。

 

画面には、僕――夜神月の姿が映っている。

僕はベッドに腰掛け、足を組み、腕を組んでいた。

 

机の上には、一枚の大きな紙が置かれている。

 

「……月君の机の上に、大きな紙がありますね。何か書いてある。拡大してください」

 

モニターがズームされる。

 

そこには、はっきりとした文字でこう書かれていた。

 

『16時に僕の推理を話します。キラが誰であるかを伝えたいと考えています』

 

夜神総一郎は腕時計を見た。

 

――15時56分。

 

「えっ……これ、僕たちへのメッセージじゃないですか?」

 

「あと4分か……」

 

誰かが冗談めかして言う。

 

『もしかしてLがキラとか言ったりしてな。まずいんじゃないの?』

 

Lは無表情のまま、モニターを見つめていた。

 

(ここで夜神月君を殺せば、それこそ“私たちの中にキラがいる”という証明になる。

……面白い。聞いてみましょう)

 

やがて、時計の針が動く。

 

「……16時だ」

 

その瞬間、モニターの向こうで僕が口を開いた。

 

『父さん、ごめん。監視カメラと盗聴器には気付いていた。でも、気付いていないふりをしていたんだ。

おそらく今この画面を見ているのは父さん、捜査本部の皆さん、そして――Lだ』

 

「えっ……なんで分かるの?」

 

当然の疑問だった。

 

僕は淡々と説明した。

 

ドアノブのわずかな痕跡。

シャーシンのずれ。

部屋に誰かが侵入した形跡。

 

注意深く観察すれば、発見は難しくない。

 

(……ウエディは侵入の腕はいいですが、他は平均レベルですね)

 

Lは心の中でそう評価した。

 

僕は続ける。

 

『監視カメラと盗聴器を仕掛けるなら、日曜から土曜まで一週間は続けるだろう。

とはいえ、永遠につけるわけにもいかない。だから最低でも今日までは監視されていると考えていた』

 

『もちろん、もっと早く推理を話すこともできた。だが、僕からは捜査本部の全員が見ている保証がない。

だから昼休みが終わる頃――15時に紙を置いた。そうすれば1時間以内に気づき、16時にはここに集まると考えた』

 

『時間をかけすぎれば、もしこの中にキラがいる場合、対策される。だから1時間前の告知にした』

 

僕は一度、静かに息をついた。

 

『もちろん、このことで僕が殺されるリスクはあった。

だがもし僕が死ねば、それはキラ対策本部の中にキラがいる証拠になる。

……だが見ての通り、僕は生きている』

 

僕はベッドから立ち上がり、椅子へ移動した。

 

そして、静かに言った。

 

『結論から言う』

 

部屋の空気が凍りつく。

 

誰もが、僕を凝視していた。

 

『僕はキラを――』

 

一瞬の沈黙。

 

『Lだと断定している。』

 

その瞬間。

 

Lの瞳が、わずかに見開かれた。

 

体が、微かに震える。

 

しかしそれは恐怖ではない。

 

むしろ――歓喜だった。

 

(……そうこなくては)

 

他の捜査員たちは、ただ呆然とLを見つめている。

 

「おい……特定されてるぞ……」

 

僕は構わず続けた。

 

『僕がここで話している理由は単純だ。

僕は、数日続いた1時間ごとの23人の殺害から、キラは警察内部、あるいはその身内にいると推測した』

 

そして僕は説明した。

 

匿名の連絡。

そして仕掛けた罠。

 

『犯罪者データベースの通信プロトコルを少し改変した。

簡単に言えば、一つのデータにつき一人だけ削除された状態で送られるようにした』

 

『つまり、捜査本部のメンバーには同じデータが届いているように見えて、実は一人だけ存在しない犯罪者がいる』

 

キラは――

 

名前と顔が必要だ。

 

『例えばABCDEの5人がいたとする。世界中の犯罪者300人を送ったとする。

AだけにXという犯罪者を送らない。

BCDEにはXという犯罪者を送る』

 

『もしXが死亡したら、Aは犯人ではないと分かる』

 

そうして少しずつ、候補を削っていく。

 

そして。

 

『その結果、“watari”という人物に送られていなかった犯罪者だけが――裁かれていなかった』

 

部屋がざわつく。

 

『もちろん、watariがキラだとは思っていない。

彼は中継役だろう。

つまりwatariからデータを受け取る人物こそがキラである可能性が高い』

 

僕は一度、視線をカメラに向けた。

 

『複数あるデータの一つが欠けているだけなら、自分のデータだけ欠けているとは思わない』

 

そして、静かに続けた。

 

『Lは僕をキラに仕立て上げるため、監視カメラと盗聴器を仕掛け、警察を誘導してきた』

 

『だが逆に言えば、皆が見ている今だからこそ、僕は自分の考えを伝えられる』

 

『なぜなら――』

 

僕は断言した。

 

『Lは、そろそろ僕をキラに仕立て上げるはずだからだ』

 

沈黙。

 

『世界一の探偵がキラを見つけられないなら、それは――』

 

『Lがキラだからだ』

 

捜査員たちは互いに顔を見合わせた。

 

「……おい、これ……」

 

松田が呟く。

 

 

「本当にLがキラなのか?」

 

Lは、ただ僕を見つめていた。

 

微動だにせず。

 

そして。

 

その口元が――

 

わずかに、緩んだ。

 

(……実に面白い)

 

***

 

僕は静かに息を整え、カメラの向こうにいるであろう捜査本部の面々を思い浮かべた。

今この瞬間、彼らの視線はすべてこの部屋に集まっているはずだ。

 

父――夜神総一郎。

そして、世界一の探偵と呼ばれる男、L。

 

彼らの思考の流れを、僕は冷静に想像する。

人の推理というものは、証拠よりも心理に左右される。

だからこそ、論理は静かに、しかし確実に積み上げなければならない。

 

僕は口を開いた。

 

『大丈夫です。』

 

声は落ち着いていた。

むしろ、自分でも驚くほど冷静だった。

 

『Lはここで警察本部の人間や僕を殺すことはできません。もしそんなことをすれば、それこそLがキラだと宣言するようなものだからです』

 

僕は少し間を置き、続けた。

 

『そして、初日に僕が白だと言われた理由――。

 

ポテトチップスの話をするなら、それが指摘されるのは盗聴器が外される時か、あるいは今日あたりではないかと考えています』

 

モニターの向こうで、ざわめきが起こっているだろうことは容易に想像できた。

 

「月君の言ってることが当たってる……でもなんでだ?」

 

僕は椅子に深く腰掛け、両手を組んだ。

まるで、謎解きを披露する探偵のように。

 

『まず事実から整理しましょう。』

 

『僕が外部から持ち込んだものの中で、机の上に置いていたものはポテトチップスだけです』

 

僕は淡々と続けた。

 

『そして家族の中でコンソメ味のポテトチップスを食べるのは僕だけです。

つまり――』

 

僕は静かに結論を置いた。

 

『その袋の中に何か仕掛けを作っても、誰にも不自然に思われない』

 

論理は単純だ。

だが、単純な論理ほど人は見落とす。

 

『そしてもしLがキラなら、この点に注目しないはずがありません』

 

僕はカメラを見つめた。

 

『なぜなら、この部屋でしか軽犯罪者の情報を得ることができないからです』

 

少しだけ笑みが浮かんだ。

 

『もしLがキラなら――

その事実を後日になってから指摘することで、僕をキラに仕立て上げることができます』

 

僕は指先で机を軽く叩いた。

 

『ここで重要なのは“後日”という点です』

 

論理の核心だった。

 

『もし当日にそれを言えばどうなるでしょう?』

 

僕はゆっくり答えを示した。

 

『ゴミ箱を調べればいい』

 

その瞬間、すべてが崩れる。

 

『もし小型機械が見つからなければ、夜神月は完全に白になる。

つまり僕を黒塗りすることができなくなる』

 

だからこそ――

 

『金曜日以降に言う必要がある』

 

僕は静かに推理を完成させた。

 

『ゴミ収集車は回収したゴミを特別区のゴミ工場へ運びます。

そしてその日のうちに巨大なゴミの山になる』

 

僕は淡々と続ける。

 

『そこから小型機械を探すなど――ほぼ不可能でしょう』

 

さらに一歩、踏み込んだ。

 

『軽犯罪者をあえて殺すことで、キラが情報を得る環境にあるように見せることもできる。

つまり、僕をよりキラらしく見せることができる』

 

しかし。

 

僕は首をわずかに振った。

 

『とはいえ、いきなり僕をキラだと断定するのも不自然です』

 

それでは稚拙すぎる。

 

『今まで尻尾を出さなかったキラにしては、あまりに単純すぎる。

だからまずは僕を白に見せ、時間をかけて疑いを濃くする』

 

そして静かに言った。

 

『そういう筋書きだったのではないでしょうか』

 

僕は最後にこう付け加えた。

 

『もしキラがLでないなら、このような推理はそもそも成立しません。

その場合は安心してください。Lはキラではない』

 

僕はわずかに肩をすくめた。

 

『世界一の探偵であるLが、いずれキラを追い詰めるでしょう』

 

そして。

 

『もし今の話に聞き覚えがあるなら――

僕に連絡をください』

 

その瞬間。

 

モニターの向こうで総一郎が電話に手を伸ばした。

 

「月!」

 

しかし。

 

「夜神さん!!!!」

 

鋭い声が響いた。

 

Lだった。

 

彼は手を伸ばし、静かに制止した。

 

電話をかけるな――という合図だ。

 

総一郎はLを睨む。

 

「竜崎。息子の言っている話は筋が通っている」

 

重い声だった。

 

「私は息子がキラだと確信したわけではない。

だが息子がキラの可能性があるのと同様に――」

 

彼はLを見据えた。

 

「竜崎、お前がキラの可能性も十分ある」

 

部屋の空気が凍った。

 

しかしLは微動だにしない。

 

「まずは息子さんの反応を見ましょう」

 

静かな声だった。

 

「それからでも遅くはありません」

 

そしてわずかに口元を緩めた。

 

「……私としては、続きを聞きたい」

 

その頃。

 

僕は画面の向こうを想像しながら話を続けていた。

 

『連絡はありませんね』

 

小さく息を吐く。

 

『まぁ父さんがLに止められて様子を見ようと言われている可能性はありますが』

 

僕は続けた。

 

『そもそも世界一の探偵Lが違法捜査までして調査するというのは、確信を持って行動している証拠です』

 

そして冷静に結論を置く。

 

『もしLがキラでないなら――

一週間以内にキラを逮捕していてもおかしくない』

 

僕は指を組み直した。

 

『過去にもLが違法捜査をしたという噂がありますが、その場合は犯人を断定しており、捜査後すぐに逮捕しています』

 

しかし今回は違う。

 

『それが起きていない』

 

だから僕は言った。

 

『Lがキラだから、キラを逮捕できないのではないでしょうか?』

 

僕は静かに続けた。

 

『では最初からLの行動を追ってみましょう』

 

そして僕は最初の事件へと話を移した。

 

『Lの最初の犠牲者は音原田』

 

僕は考察する。

 

『Lは日本人ではないと言われています。

それにも関わらず最初に日本人を殺した』

 

理由は明白だ。

 

『日本は先進国でありながら、警察を誘導しやすい』

 

さらに。

 

『犯罪者を次々裁きながら、誰かをキラに仕立て上げる計画だった』

 

僕は続けた。

 

『その後、50人以上の犯罪者が殺された』

 

そして。

 

『リンド・L・テイラー事件』

 

僕は静かに言った。

 

『あの出来事は――あまりにうまくいきすぎている』

 

時間差報道。

関東限定の放送。

 

確かに完璧な罠だった。

 

だが。

 

『そもそもキラがたまたまテレビを見ている保証はない』

 

それなのに。

 

『たまたま見ていた』

 

さらに。

 

『たまたま関東で放送された瞬間に殺した』

 

僕はゆっくり結論を置いた。

 

『うまくいきすぎている』

 

もし本当にキラが顔と名前で殺せるなら。

 

『もっと慎重に行動するはずです』

 

あんな挑発に乗る人物なら。

 

『とっくに逮捕されているでしょう』

 

だから。

 

『これはLの自演――』

 

僕は静かに言った。

 

『つまり、Lこそキラという可能性がある』

 

モニターの向こうで。

 

Lは静かに月を見つめていた。

 

(夜神月君……)

 

心の中で呟く。

 

(実に面白い)

 

確かに論理は美しい。

 

だが。

 

(証拠がなければ仮説にすぎない)

 

そしてふと考える。

 

(もちろん、ここで警察本部と月君を全員殺すことも可能ですが……)

 

その瞬間。

 

背後で死神が笑った。

 

『けけけ……見事に見透かされてるなぁ』

 

リュークだった。

 

『いいのか?殺さなくて』

 

Lは小さく笑った。

 

(……いや)

 

彼は決めた。

 

(私はこの青年を完全に論破したい)

 

そして思う。

 

(同じ大学に入学し、正面から戦う)

 

その方が面白い。

 

(日本の大学レベルなら――)

 

(1日あれば十分でしょう)

 

Lの瞳は。

 

まるで新しい遊びを見つけた子供のように。

 

静かに輝いていた。

 

***

 

僕は静かに指を組み、机の前に座ったままカメラを見据えた。

画面の向こうでは、警察本部の面々が固唾を飲んでこの推理を聞いているはずだ。

 

そしてその中には、必ず――

Lがいる。

 

僕はその存在を強く意識しながら言葉を選んだ。

これは単なる説明ではない。

推理の提示であり、挑戦状でもある。

 

『まず、事実から考えてみましょう』

 

僕は落ち着いた声で言った。

 

『関東にキラが潜伏していると断定されてから、日本――特に関東での心臓麻痺による死亡が急激に増えています』

 

少し間を置く。

 

『しかし、ここに明らかな矛盾があります』

 

僕は指先を軽く机に置いた。

 

『もし本当にキラが関東にいるのなら――

そんな目立つ行動はしないはずです』

 

論理は単純だった。

 

『キラの思想は“関東の人間を殺すこと”ではない。

犯罪者を裁くことです』

 

僕はゆっくりと続けた。

 

『それにも関わらず、関東に集中している』

 

そして静かに結論を置く。

 

『これは自然現象ではなく――作為的な偏りにしか見えません』

 

モニターの向こうで、何人かが息を飲んだだろう。

 

僕はさらに踏み込む。

 

『その後、日本の刑務所で変死事件がいくつか起きています』

 

これは重要な点だった。

 

『つまりこの時点で、キラは何らかの実験をしていた可能性が高い』

 

僕は論理を積み上げる。

 

『そして実験結果を知ることができる立場にいる』

 

ここで僕は視線をわずかに鋭くした。

 

『刑務所の変死の詳細は極秘情報です』

 

つまり。

 

『それを把握できる人間は限られる』

 

僕は冷静に数字を出した。

 

『警察内部の一部の人間、その家族、そしてL』

 

頭の中で計算する。

 

『おそらく――150名程度まで絞られるでしょう』

 

部屋の空気が重くなるのを感じた。

 

『この実験もまた、殺害に何らかの法則があることをL自身が確認するためだったのではないでしょうか』

 

そして僕は次の出来事へ移る。

 

『その後、FBI捜査官が殺されました』

 

僕は静かに言った。

 

『もしキラがLなら、FBIの顔と名前を入手することは難しくありません』

 

むしろ簡単だ。

 

『しかしそれをそのまま行えば、Lが疑われる可能性がある』

 

だから。

 

『事前にさまざまな“実験”を行い、偶然のように見せかけた』

 

僕は言葉を区切った。

 

『つまり――

FBIを殺したことでLがキラではないように見せかけた可能性がある』

 

モニターの向こうで松田が思わず口を挟んだ。

 

「でもLがキラなら、警察本部のメンバーも殺してるはずじゃないかな?」

 

「だからLはキラじゃないんじゃ……」

 

しかしLは黙ったままだった。

 

その沈黙が逆に緊張を生んでいる。

 

僕はすぐに答えた。

 

『いいえ』

 

声は鋭かった。

 

『殺していないのではなく、殺す必要がないのです』

 

僕は冷静に続けた。

 

『むしろキラなら――

警察を泳がせておく方が有利です』

 

その理由は明白だった。

 

『捜査本部が動けば、情報が自然に集まる』

 

僕はカメラをまっすぐ見た。

 

『つまりキラは、警察の近くにいるほど安全になる』

 

一瞬、僕は思考を止めた。

 

――FBI。

 

あの出来事。

 

(僕はFBIに尾行されていたことに途中で気付いた)

 

(バスジャック事件の時、FBI捜査官とも会った)

 

胸の奥にわずかな重みがよぎる。

 

(あの人が亡くなったのは残念だ)

 

だが今は感情を挟む場面ではない。

 

(あのバスジャック事件……)

 

ふと一つの疑念が浮かぶ。

 

(あれもLの仕業だったのではないか?)

 

しかしすぐに思考を切った。

 

(死神の話は出さない方がいい)

 

(言っても何の利益もない)

 

僕は再び推理に戻る。

 

『キラがLでないなら――

優秀なLがいずれキラを見つけるでしょう』

 

しかし。

 

僕は声を少し低くした。

 

『では、もしキラがLだった場合――』

 

静寂が流れる。

 

『誰がキラを捕まえるのですか?』

 

僕はゆっくり言った。

 

『僕が最も恐れていたのは、その可能性です』

 

そして視線を鋭くする。

 

『確かに僕の推理は完璧ではないかもしれません』

 

『ですが、もし警察本部の中に

「Lは警察を殺していないからキラではない」

そう考えている人がいるなら――』

 

僕ははっきり言った。

 

『それは誤りです』

 

僕は続ける。

 

『そもそもLが日本を選んだ理由』

 

これは重要だった。

 

『日本の警察なら誘導できると考えたからでしょう』

 

僕は言い切った。

 

『つまり――

舐められているのです』

 

モニターの向こうで空気が凍っただろう。

 

『日本の警察程度なら放置しても危険ではない』

 

『むしろ近くにいることで情報を得られる』

 

僕は静かに締めた。

 

『そう考えているのではないでしょうか』

 

その瞬間。

 

モニターの向こうでLはわずかに目を細めた。

 

(やはり……)

 

(夜神月君は見透かしていますね)

 

彼の胸にわずかな興奮が走る。

 

(こんなことは初めてだ)

 

(私と同程度の思考をする人間がいるとは)

 

僕は最後に言った。

 

『僕が言いたいのは一つです』

 

『Lを信用しすぎないこと』

 

僕は落ち着いた声で続けた。

 

『ここで僕がこれだけ話した以上、もしLがキラでも警察本部や僕を殺すことはできません』

 

『もし殺したら、Lを逮捕すればいいだけです』

 

そして最後の保険を提示した。

 

『もし僕が死んだ場合――』

 

『僕の集めた情報と推理は、インターネットを通じて公開されるようにしてあります』

 

一瞬の沈黙。

 

『Lがキラなら、僕をキラに仕立て上げるのが一番早い』

 

『Lがキラでないなら、早くキラを捕まえればいい』

 

そして僕は時計を見た。

 

『明日はセンター試験なので』

 

静かに言う。

 

『今日はこれで失礼します』

 

僕が話し終えると。

 

モニターの向こうで、ついにLが口を開いた。

 

***

 

「確かに月君の言うことには一理あります」

 

穏やかな声だった。

 

「私はキラではないので、“私=キラ”という視点で考えていませんでした」

 

そして続ける。

 

「つまり、私の意見を盲信しすぎないことです」

 

彼は軽く肩をすくめた。

 

「ただし同時に、月君の意見を盲信するのも良くありません」

 

松田をちらりと見た。

 

「あっ、月君の意見に流されていたのがばれていましたね」

 

場の緊張がわずかに緩む。

 

だが次の言葉で空気は再び張り詰めた。

 

「ちなみに別の見方もできます」

 

Lは淡々と言った。

 

「夜神月君がキラであり、疑いをそらすために私に罪をなすりつけた可能性です」

 

その一言で。

 

場の矛先が再び夜神月に向く。

 

「そういう意味では――」

 

Lは静かに言った。

 

「月君へのキラ疑惑は、むしろ高まりました」

 

そして。

 

まるで何でもないことのように言う。

 

「明日、私も入試を受けます」

 

一瞬、誰も理解できなかった。

 

「同じ大学に入りましょう」

 

Lの目が静かに光る。

 

「直接会って、話したい」

 

それは。

 

挑戦だった。

 

***

 

僕はモニター越しにその気配を感じ取った。

 

(面白い)

 

心の奥で静かに思う。

 

(望むところだ)

 

世界一の探偵L。

 

そして僕。

 

二人の戦いは――

 

まだ始まったばかりだった。




第一章 月高校生編 終了

月とLどちらに勝って欲しいか

  • L
  • 勝者なし
  • 引き分け
  • 月L以外
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