第二のキラからのメッセージが届いたのは、――月君が作成したテープが放映されて、まだそれほど時間の経たない頃だった。
私はモニターの前に座り、相変わらず椅子の上で膝を抱えながら、その文章を読み返していた。
第二のキラは言う。
キラに従う。
キラに会いたい。
自分は“目”を持っている。
確認は死神で。
――なるほど。
私は無意識に砂糖の角を指で転がした。
(これは……)
第二のキラは、キラに会うつもりらしい。
しかし、その行為が何を意味するのか。
どうやら理解していない。
普通のキラなら。
自分の存在を脅かす者など――
会った瞬間に殺す。
第二のキラは、どうやらその単純な帰結に思い至っていないらしい。
あるいは。
思い至っていても、信じていない。
(危険ですね)
私はぼんやりと天井を見上げた。
もし私が捕まるとしたら。
それは第二のキラ経由以外にあり得ない。
しかしその第二のキラは、あまりにも軽率だ。
(……駄目だ)
心の奥で、妙な言葉が浮かぶ。
(こいつ……早くなんとかしないと……)
その理由は単純だった。
第二のキラを私より先に、月君が見つけてしまったら。
私は少しだけ体を揺らした。
そしてわざと椅子から転げ落ちた。
「死神の存在を認めろとでも言うのですか」
床に転がりながら、そう言ってみる。
周囲の刑事たちがざわめく。
だが。
背後にいる月君の視線が、少しだけ鋭くなったのを感じた。
(……やはり)
彼は気付いている。
この反応が演技だということに。
もっとも、それも当然だろう。
死神という言葉は、これまでにも何度か耳にしている。
今さら驚く理由はない。
そして何より。
私はこんなことで狼狽する性格ではない。
つまりこの芝居は。
周囲の刑事たちに向けたものだった。
案の定、相沢さんが言った。
「キラと第二のキラは同一人物で、死神なんて言葉でかく乱してるんじゃないか?」
しかし、それは違う。
私は首を横に振る。
もし同一人物なら。
私をテレビに出して殺す。
それが最も合理的だ。
あるいは、すでに二人が結びついているなら。
私のテレビ出演を止めるはずがない。
その程度の矛盾は、すぐに説明がついた。
そして数日後。
第二のキラから日記が送られてきた。
私はそれを机の上に広げた。
月君が言う。
「僕は分かりますよ。30日、東京ドームに巨人戦に行く――それしか書いてない。そこに第二のキラは来るんですよ」
私は静かにページを眺めた。
(青山……ノート……)
(こちらが本命でしょう)
しかし。
このノートが。
人を殺す道具であるなど。
私以外、誰も理解していない。
それが私の最大の優位だった。
(このアドバンテージは……使わせてもらいましょう)
だがその時。
月君がこちらを見ていることに気付いた。
妙な視線だった。
疑問を抱いた人間の目だ。
「Lも30日にキラが来ると思っているのか?」
私は黙って彼を見返した。
月君は続ける。
「もしこの日記を放映すれば、東京ドームの巨人戦は中止になります」
「報道しなければキラに伝わらない」
「第二のキラがそれすら分かっていない可能性もありますけど」
しかし彼は納得していない顔だった。
「それくらい分かるだろう」
月君は言う。
「僕にはLが、キラしか知らないワードを見つけて、それを隠すために余計な発言を避けているように見える」
私は少しだけ目を細めた。
「30日はブラフ。本命は22日、青山、ノート」
「あるいは24日、渋谷、洋品店」
「ノートか洋品店が、キラ同士にしか分からないワードじゃないか?」
(するどい)
私は内心でそう思った。
だが。
そこまで辿り着いたとしても。
ノートに名前を書けば殺せる。
そんな結論に至るはずがない。
そしてデスノートを見分ける能力も、彼にはない。
(ならば否定する必要もない)
「そうですね」
私は淡々と言った。
「その二つにも注目していきましょう」
しかしその瞬間。
私は次の行動をすでに決めていた。
(当日……)
偽キラが現れる。
もし私がその場にいれば。
ノートだけは確保できる。
最悪。
その場にいる人間を殺す必要が出るかもしれない。
だがデスノートの識別は。
私が最も速い。
(22日、青山)
捜査という名目で行く。
そして偽キラを捕まえる。
そう考えた瞬間だった。
背後から、月君の声がした。
「まさか、その二つの町にLが行くなんてことはないよな?」
私は一瞬だけ心臓が跳ねた。
まさに今。
その計画を立てていたからだ。
(……読まれている?)
いや。
違う。
これは偶然だ。
冷静に考えれば。
ここで否定するのが自然だ。
「いいえ、行きます」
そう言い、理由を後付けすればいい。
これまでもそうやって、この捜査本部を動かしてきた。
だが。
月君の頭は、その一歩先を行っていた。
「僕は……Lが渋谷や青山に似合うとは思えない」
捜査本部の空気が少し緩んだ。
「入試の時も一人だけ注意を受けていた」
「そんな人物が渋谷や青山に行けば目立つ」
そして彼は続けた。
「それに僕はLをキラと疑っている」
「だから行かせるわけにはいかない」
(なるほど)
私は内心で感心した。
これは巧妙だ。
客観的理由。
そして個人的理由。
二つを同時に提示することで。
場の空気を自分に引き寄せている。
さらに。
「松井さんと僕の方が青山と渋谷に似合う」
「キラが興味あるのはキラだけなんだし、Lが動く理由がどこにある?」
松田さんが即座に反応した。
「そうっすね!」
「いやー月君と僕の名コンビで第二のキラを捕まえましょう!」
総一郎さんは少し複雑な顔をしていた。
しかし。
他の刑事たちは、どこか納得している様子だった。
結局。
その案は採用された。
私は黙って砂糖を口に放り込んだ。
(夜神月君)
あなたは。
やはり面白い。
そして。
――危険ですね。
***
青く濁った空の下、街のざわめきが遠く、どこか歪んで聞こえる。人々の足音、車の喧騒、すべてが背後のカーテンのように垂れ込め、私の視界を薄く覆う。その中で、第二のキラが動く瞬間を私は待っている。
この日、この時間、この場所――偶然ではなく、運命のように整った局面。月君は自分の目的を果たすために、先回りを選んだらしい。だが、それこそ私にとっての好機。第二のキラが現れる瞬間、その接触を誰よりも確実に、私が握ることができる。
月君は、この戦いを別の舞台で戦っている。彼にとって第二のキラは私へ辿り着くための鍵。もし彼が逃すなら、私を追い詰めることなど不可能になるだろう。だが、だからといって、私は易々とその情報源を渡すつもりはない。
この日、この場所で、第二のキラを先に確保した者が有利となる。勝負の火蓋は、もう切られたも同然だ。私の接触を阻んだ。しかし、彼の策略がどれほど巧妙であろうと、私は動く。単なる観察者ではなく、主導権を握る者として。
この瞬間、世界は静止する。街のざわめきも、遠くで鳴る警笛も、すべてが私の思考の外側で微かに揺れるだけだ。目の前に現れる第二のキラ――その影を逃さぬために、私は息を潜め、心を研ぎ澄ます。
さあ、月君。あなたは何をするのですか? 私は待っている。勝負は、ここで決まるのだから。
Lがデスノートを拾ったらという発想は興味を引くものだったか
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かなりひく
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すこしひく
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あまりひかない
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ひかない