Lがデスノートを拾った世界~リメイク~   作:梅酒24

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21恋目:王子様に出会ったよ

青山の午後は、どこか物語の舞台みたいだった。

 

ガラス張りの店。

整った街路樹。

おしゃれな人たちが、まるで雑誌の中から歩いて出てきたみたいに行き交っている。

 

ミサはその景色を、スターバックスの窓際の席から眺めていた。

 

手にはストロベリーフラペチーノ。

 

赤くて甘い香りがふわっと鼻に抜ける。

 

だけどミサの胸の中には、それよりもずっと甘くて、ずっと刺激的な感情が渦巻いていた。

 

(なんだか……)

 

(探偵ごっこみたい)

 

胸がどきどきする。

 

自分は今、ただのモデルの女の子じゃない。

 

キラ様を探すために動いている――

 

第二のキラ。

 

それだけで、なんだか世界の裏側に入ってしまったような気がした。

 

今日は変装している。

 

黒いおかっぱのウィッグ。

地味な服。

大きめの眼鏡。

 

モデルの仕事柄、コスプレは慣れているし、むしろ好きだった。

 

(これなら絶対ばれないよね)

 

それに、もしキラ事件のことで警察が動いているなら。

 

きっとこの街にもカメラが増える。

 

だからこそ、今のミサは“普通の女の子”でなければならなかった。

 

ミサは窓の外を眺めながら、人の流れを観察する。

 

ブルーノート。

 

今日のイベント。

 

青。

 

ノート。

 

(きっとここにくるよね)

 

私のメッセージ。

 

それを解読した先のゴール。

 

まるで宝探しみたいだった。

 

その時。

 

大学生のサークルらしい集団が、店の前を通った。

 

その中に。

 

一人。

 

目立つ男の子がいた。

 

背が高い。

 

すらっとした体。

 

整った顔。

 

まるでドラマの主人公みたいな雰囲気。

 

ミサは思わずつぶやいた。

 

「やがみ……つきくんかな?」

 

テレビで見たことがある。

 

確か警察関係者の息子。

 

(すごいかっこいい……)

 

胸が少しだけときめく。

 

でも次の瞬間、ミサはくすっと笑った。

 

死神の目で見える。

 

その男の頭の上に浮かぶ――

 

寿命。

 

(あっ)

 

(寿命あるし、キラじゃないね)

 

少し残念だった。

 

ミサはキラ様に会うためにここに来ている。

 

イケメンを見るためじゃない。

 

(まぁいいや)

 

(とりあえずブルーノート)

 

ある程度お客が入ったころを見計らって、ミサは店に入った。

 

入口を入ると、すぐカウンターがある。

 

お酒や軽食を売っている。

 

奥にはイベントスペース。

 

人が少しずつ増えていく。

 

音楽。

 

笑い声。

 

人の熱気。

 

その中で。

 

ミサはまた彼を見つけた。

 

さっきの男の子。

 

(あれ……)

 

(またいる)

 

(すごい……偶然……)

 

胸が少しわくわくした。

 

まるで物語みたい。

 

人混みの中で、ミサは少し頭を押さえた。

 

ウィッグがずれそうだった。

 

暑い。

 

人も多い。

 

ウィッグは地味に蒸れる。

 

(あーやばい……)

 

その時だった。

 

「大丈夫ですか?」

 

低くて落ち着いた声。

 

ミサが顔を上げると。

 

目の前に。

 

さっきのイケメンが立っていた。

 

夜神月。

 

「もしかして具合悪いんですか?」

 

優しい声だった。

 

「ここ、空気悪いですし。一度外に出た方がいいかもしれません」

 

そう言うと。

 

月は自然にミサの手を引いた。

 

人混みを抜けて。

 

ブルーノートの外へ。

 

外の空気は少しひんやりしていた。

 

月は自動販売機で水を買う。

 

それをミサに差し出した。

 

「ナンパとかじゃないですよ」

 

少し笑う。

 

「具合悪そうだったから気になって」

 

「名前聞くとか、連絡先聞くとか、そういうことはしません」

 

「落ち着くまで、ここにいます」

 

ミサは水を受け取りながら、少し驚いていた。

 

(なんだろうこの人)

 

優しい。

 

だけど。

 

ただ優しいだけじゃない。

 

目が。

 

すごく観察している目。

 

まるで。

 

――探偵。

 

ミサはブルーノートの入口をさりげなく見ていた。

 

もしキラ様が来たら。

 

すぐに分かる。

 

死神の目があるから。

 

月はその視線に気付いた。

 

「あれ?」

 

「誰か探してる?」

 

ミサの心臓が一瞬止まりそうになる。

 

「なんか……」

 

「近づいてくる人を見てる感じだったから」

 

ミサは答えなかった。

 

その沈黙を見て。

 

月は少しだけ考える。

 

(ああ……図星かな)

 

(でも)

 

(この子……)

 

見た目は地味。

 

でも。

 

妙なオーラがある。

 

(男の直感ってやつかな)

 

(気になる)

 

(月は少し考えた)

 

(初対面だ)

 

(警戒させる質問はよくない)

 

(まずは打ち解ける必要がある)

 

(なら……)

 

(自分から話す方が自然だ)

 

「あ、ごめん」

 

月は軽く笑った。

 

「野暮なこと聞いたね」

 

「実は僕も人を探してるんだ」

 

ミサは少し驚いた。

 

二人はしゃがみながら話している。

 

その時。

 

ミサの横を見ると。

 

月が膝を抱えるように丸く座っていた。

 

「えっ」

 

ミサは思わず言った。

 

「つき君も人を探してるの?」

 

月が少しだけ固まる。

 

「えっ……?」

 

 

(ツキクンモ?)

 

 

 

ミサは慌てた。

 

「あっ、ごめんなさい!」

 

「お兄さんも人を探してるの?」

 

(しまった……)

 

(心の中でつき君って呼んでたから口に出ちゃった)

 

月は軽く笑った。

 

「そうなんですよ」

 

「ここで待ち合わせなんですけど」

 

「なかなか来なくて」

 

(不思議だ)

 

月は思う。

 

 

(この子……)

 

(何かを持っている)

 

(大事な何か)

 

(これが嗅覚ってやつなのかな)

 

ミサは言った。

 

「私も……」

 

少しだけ言葉を選ぶ。

 

「一応、ここで待ち合わせなんです」

 

月の目が少し細くなる。

 

(一応……)

 

(ひっかかる言い方だ)

 

(何かを隠している)

 

青山の夜は。

 

まだ始まったばかりだった。

 

そして二人はまだ知らない。

 

この偶然の出会いが。

 

キラ事件の運命を、ほんの少しだけ動かし始めていることを。

 

***

 

 

「一応っていうことは会えないかもとかってことですか?実は僕も会えないかも知れない相手で実は顔も連絡先も分からないのですよ」

 

「ええええっ私と一緒だぁー私も連絡先も顔も分からない相手を待っているんですよ」

 

 

「それ僕のことではないですか?」

 

「えっ新手のナンパですか?」

 

「いえ、顔も連絡先も知らないと言ってましたが、名前の事は言ってませんでした……そしてさっきツキクンモと言ってましたが、僕の名前を知っていたのではないですか?僕は月と書いてライトと読むのですが僕のことを知らないのならつきと呼んでも納得できるので」

青山の街角は、まるで物語の迷路のようだった。

 

ウィッグの下の髪が少し汗ばんで、視界に映る人々は全部、秘密を抱えているように見える。

ミサはふと自分の心臓の音に気づく。ドキリ、ドキリ、と、まるで鼓動までが探偵ごっこの演出のようだ。

 

「一応……」

 

その言葉がひっかかった。何かを隠している。そう直感する。

 

(何を隠してるのかな……?)

 

胸の奥が小さくざわついた。探偵ごっこの面白いところは、相手の嘘や秘密を嗅ぎ取る瞬間にある。

誰かを観察して、推理して、わくわくする。ドキドキする。

 

「一応っていうことは会えないかもとか……?」

 

月の声は柔らかい。だが、どこかきらりと光る探究心を帯びていた。

「実は僕も会えないかも知れない相手で、顔も連絡先も分からないんですよ」

 

ミサは思わず笑った。

「えええっ、私と一緒だぁー! 私も連絡先も顔も分からない相手を待っているんですよ」

 

 

「それ僕のことではないですか?」

 

ミサの視線が跳ねた。

「えっ、新手のナンパですか?」

 

月は首をかしげる。

「いえ、名前のことです。さっき『ツキクンモ』と言いましたが、僕の名前は『月』、ライトと読みます。もし僕のことを知らないのなら、つきと呼んでも納得できます」

 

ミサは少し赤くなった。

「えっと違います。あとライト君と読むのですね、すみません」

 

 

「僕の待ち合わせは、実はキラ事件に関する人なんです」

 

「えっ?」

 

 

月は冗談めかして聞く。

「テレビの青山、ノートをキーワードにブルーノートにキラが来るとか思ったんですか? 実はお姉さんがキラとか、そんな感じですか?」

 

ミサは小さく頷き、声を震わせた。

「えっ、えっ……そうです……キラに会えるかなぁと思って来たのですよ」

 

胸の奥がわくわくする。

探偵ごっこの謎が、少しだけ現実になった瞬間。

 

『ミサ、あまり余計なことを話さない方がいいんじゃないか?』

レムの声が頭の中に響く。

 

(そうだね……名前は分かったし、最悪また会いに行けばいい)

(ここでばいばいしても……大丈夫)

 

「ありがとうございます。私はそろそろ帰ります」

 

ミサは静かに言い残すと、青山の街に溶けていった。

金色の髪の一本が、宙でひらりと舞った。

 

その夜、ミサはパソコンの前に座った。

夜神月のことを調べる。

中学2、3年生でテニスの全国大会に出場していたこと。

東京大学をトップで合格していたこと。

 

(すごく優しかったなぁ……)

胸がぎゅっと熱くなる。

手を握られたときの力強さ、引っ張られたときの確かさ、若くてかっこいい姿。

 

(お礼を言いに行きたいな……キラにも会いたいけど……ライト君にもっと会いたいな)

 

ミサは決めた。

月の家に行く。

 

理由はひとつじゃない。

キラを崇拝したのは、あのストーカー事件のとき――心臓麻痺で相手が死んだこと。

そのとき、キラが助けてくれたと思っていた。

 

でもレムの言葉で、救ったのはジェラスという死神だったことを知った。

 

(なるほど……)

盲信する理由は小さくなった。

でも、今目の前にいる、手を握ってくれたイケメン――月――に対する興味は、確かに現実で生まれたものだった。

 

青山の街角に残る、謎めいたわくわくとドキドキ。

ミサの心は、探偵ごっこの延長のように、甘く、熱く、そして少しだけ危険に満ちていた。

「えっと違います。あとライト君と読むのですね、すみません」

 

 

「僕の待ち合わせなのは実はキラ事件に関する人なんですよね」

 

「えっ」

 

 

「テレビの青山 ノートをキーワードにブルーノートにキラが来るとか思ったとか実はお姉さんがキラであるかとかそんな感じですか?」

 

月は冗談っぽく聞いてみた。

 

「えっえっ……そうです……キラに会えるかなぁと思ってきたのですよ」

 

『ミサ、あまり余計なことを話さない方がいいんじゃないか?』

レムは心配していた。会話しているときに余計な口を挟まないで欲しいとは言われていだけどこの男は何か探りを入れているような雰囲気を感じ取っていた。

 

(そうだよね……名前は分かったし最悪また会いに行けばいいしここでばいばいする)

 

「ありがとうございます。私はそろそろ帰ります」

 

そういうと彼女は青山から姿を消した。金色の髪が1本ひらりと宙を舞った。

 

 

ミサはパソコンを利用して夜神月の情報を調べていた。

すると中学2,3年生でテニスの全国大会を行っていることや東京大学を1位合格していることなを知った。

 

「すごく優しかったなぁ……あんな風に強く手も握られ引っ張られたし若くてイケメンだし……お礼をしにいきたいな……キラにも会いたいけどライト君の方が会いたいな」

 

ミサは月の家に行くことを決意した。その理由のひとつにキラを崇拝する理由の一つがストーカーに殺されそうになったときにその相手が心臓麻痺で死亡した。このときミサはキラがしてくれたと思っていた。しかし、レムから死神の殺し方を聞いたときに自分の命を救ってくれたのはジェノスという死神であるということだった。そういう意味でキラに対する盲信は小さくなり、それよりも現実の世界で触れ合い会話をしたイケメンの月に対して興味を持っていた。

 

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