Lがデスノートを拾った世界~リメイク~   作:梅酒24

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22話目:虎視眈々

夜の街は静かに、しかし確実に息を潜めていた。ビルの影が長く伸び、灯りの輪郭がぼやけている。僕はそこで考えていた――もしこの第二のキラ争奪戦で敗北すれば、Lがキラだった場合、僕はその真実に決して辿り着けない。

 

全世界が、その瞬間に終わるのだ。L=キラと仮定すれば、Lからキラである証拠を掘り出すことなど不可能に等しい。しかし、第二のキラならば、違う。どのように殺しを行うのか、制限はあるのか、死神は本当に存在するのか、そしてその正体は――聞きたいことは山のようにあった。

 

情報のアドバンテージの差。第二のキラを確保することは、その差を埋める鍵であり、僕にとってこの戦いの勝敗を左右するものだった。

 

Lも理解している。僕と松田さんが現場に向かうことで、少なくとも当日の阻止はできるだろう。日頃の雰囲気や立ち回りの差で得たポジションだ。しかし、それだけでLを完全に足止めできるとは思っていない。重要な局面、適当な理由をつけて、必ず現場に足を運ぶだろう。だが、それも想定済みだ。当日、Lを完全に飛車角で囲い、王のように動けぬ状態にしてやる。

 

情報は確実に集まっている。第二のキラは10~20代の女性であると推測している。美空ナオミさんとも意見は一致した。感謝しかない彼女の協力で、さくらTVやその周辺の防犯カメラを解析し、カラスの行動まで監視することで候補を絞り込んだ。

 

廃墟となったビルの上に立つ、金髪のツインテールの少女。画質は粗く、顔までは解析できない。だが双眼鏡でさくらTV前を監視していた僕には、彼女の動きがすべて手に取るように見えた。カラスが激しく鳴き叫ぶ――その存在を、僕は仮に死神と呼ぶことにした。おそらく、死神はキラのそばから離れられないのだろう。

 

街の防犯カメラの解析でも、彼女の動きは計画的で迷いがない。駅から真っすぐ現場へ向かう足取り。廃墟ビルで採取した指紋や靴紋、髪の毛――犯罪データベースには存在しない、つまり犯罪経歴はゼロ。二人だけの秘密情報だ。

 

Lよりも先に、この金髪の少女を見つけ出す。全ては、世界の未来のために。

街の闇が、息を潜める。そして僕の心も、静かに鋭く研ぎ澄まされる。

 

 

***

 

 

 

青山の街角は、日差しの熱と人々のざわめきが混ざり合い、何か秘密を抱えたような空気を漂わせていた。僕――月――は、その街角の片隅で、少しばかりの不安と好奇心を胸に抱えていた。

 

彼女の言葉が、僕の脳裏をくすぐる。

 

――「一応」……何か隠している匂いがする。

 

小さな声に潜む曖昧な表現。それが何かを覆い隠しているのは明らかだった。僕はわざと軽く問いかけてみる。

 

「一応っていうことは、会えないかもってことですか? 実は僕も、会えないかもしれない相手で、顔も連絡先も知らないのですよ」

 

彼女の反応は、思いのほか素直だった。

 

「ええええっ、私と一緒だぁー! 私も連絡先も顔も分からない相手を待っているんですよ」

 

――なるほど。顔も連絡先も知らない相手と待ち合わせ、というのは常識的には少々奇妙だ。ネット上のファンならまだしも、実際の人物を知りもしないまま待つ……これはただの偶然ではない気配を漂わせている。

 

彼女の口から飛び出した「ツキクンモ」という言葉が、僕の脳裏に響いた。……つき君も……月君?

 

「それ、僕のことではないですか?」

 

彼女の目が一瞬、微かに揺れた。驚き、警戒、そしてわずかな戸惑い。

 

「えっ、新手のナンパですか?」

 

「いえ、顔も連絡先も知らないと言ってましたが、名前のことは言ってませんでした……それにさっきツキクンモと言っていましたが、僕の名前を知っていたのではないですか? 僕は月、ライトと読みます。もし僕のことを知らないのなら、“つき”と呼んでも納得できます」

 

彼女は瞬間、言葉を失ったようだった。

 

「えっと違います。あとライト君と読むのですね、すみません」

 

――“すみません”……。いや、違う。これは単なる訂正ではなく、わずかに混乱した心の声だ。僕の名前を知らずに呼んだのか、それともどこかで知っていたのか。どちらにせよ、偶然ではない香りがする。

 

思考の糸を絡めながら、僕は軽く話題を変えてみる。

 

「僕の待ち合わせなのは、実はキラ事件に関する人なんですよね」

 

彼女の瞳が一瞬、輝く。小さな興奮と好奇心――それは、探偵ごっこのような胸の高鳴りを伝えていた。

 

「あっ……そうです……キラに会えるかなぁと思ってきたのですよ」

 

その声に、僕の脳内で計算が踊る。キラに会いたいと望むのは理解できる。だが、同時にこの子は、自分の胸の中で探偵ごっこの快感を味わっているに違いない。青山の街、ブルーノートの入口、街のざわめき――すべてが彼女の小さな舞台になっている。

 

 

「ありがとうございます。私はそろそろ帰ります」

 

そう言って、彼女は青山の街角から消えた。金色の髪が一筋、ふわりと宙を舞った。その瞬間、僕はわずかな喪失感と、しかし確かな期待を胸に抱いた。

 

――次に会うときは、もう少し真実を確かめられるかもしれない。

 

街のざわめきは、僕の胸の奥で静かに共鳴していた。

Lがデスノートを拾ったらという発想は興味を引くものだったか

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