Lがデスノートを拾った世界~リメイク~   作:梅酒24

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4日目:一触即発

僕は家を出る前、鏡の前にしばらく立っていた。

 

普段より少しだけ整えた髪。

シンプルだが、きちんとした服装。

 

いかにも――

休日の高校生の外出という姿だ。

 

わざとらしくならない程度の「おしゃれ」。

それが重要だった。

 

玄関の扉を開け、外へ出る。

春の空気が、ほんの少し湿った匂いを含んで僕の頬を撫でた。

 

僕は静かに歩き出す。

 

目的地は、家から数分の場所にあるバス停。

 

――おそらく今日が最初の土曜日。

 

もし僕を疑っている人間がいるなら。

もし警察関係者を調べている組織があるなら。

 

尾行は必ず続いている。

 

僕はそう考えていた。

 

平日は学校と塾。

行動パターンは単純だ。

 

しかし休日は違う。

 

自由行動。

 

だからこそ――

監視する側は必ずついてくる。

 

そして今日は。

 

バスに乗る。

 

バスという乗り物は、実に面白い空間だ。

 

密室に近い。

そして狭い。

 

尾行者は距離を保てない。

 

乗るしかない。

 

つまり。

 

同じ車内に入る。

 

僕はそう計算していた。

 

ただ――

 

一つだけ問題がある。

 

ナミコを巻き込むことだ。

 

危険かもしれない。

 

それでも僕は彼女に声をかけた。

理由は簡単だ。

 

自然だからだ。

 

高校生の休日。

デート。

 

これほど普通の行動はない。

 

バス停が見えてきた。

 

その時だった。

 

「夜神くーん!」

 

元気な声。

 

振り向くと、ナミコが手を振っていた。

 

僕は一瞬だけ驚いた。

 

塾で見る姿とは、まるで違う。

 

ミニスカート。

ロングブーツ。

 

いつもよりずっと華やかな格好だった。

 

「ごめん、遅かった?」

 

僕は自然な笑顔を作って言った。

 

ナミコは首を振る。

 

「ううん!まだ5分前だよ!」

 

「スペースランドなんて中学生以来だから楽しみー」

 

そして、少し照れたように言った。

 

「夜神君と……二人きりだし」

 

僕は軽く笑った。

 

しかしその裏で、頭は別のことを考えている。

 

――尾行者はいるか。

 

その時。

 

少し離れた場所。

 

電柱の影から、二人を見ている男がいた。

 

レイ=ペンバー。

 

彼は静かに観察していた。

 

――平日は学校と予備校。

 

――休日はデート。

 

普通すぎる。

 

あまりにも普通だ。

 

夜神局長の息子。

 

夜神月。

 

真面目な受験生。

 

疑う要素はほとんどない。

 

レイは小さく息を吐いた。

 

――この家族の娘まで調べる必要はないな。

 

――今日一日見れば十分だ。

 

その時。

 

バスが到着した。

 

レイは少し駆け足で乗り込む。

 

僕とナミコは後ろから二番目の席に座った。

 

一番後ろは五人席。

 

空いている。

 

僕はそこを見た。

 

――尾行者なら必ず後ろに座る。

 

そう計算していた。

 

そして。

 

予想通り。

 

レイ=ペンバーは僕たちの後ろに座った。

 

バスの扉が閉まりかけた、その瞬間。

 

「待て!」

 

一人の男が走ってきた。

 

プシューッ。

 

扉がもう一度開く。

 

男が乗り込んできた。

 

人相の悪い顔。

 

目の下には濃いクマ。

 

背はそれほど高くない。

 

髪は――

 

妙に丸く膨らんだ、玉ねぎのような形。

 

男はポケットに手を突っ込んだまま歩いてくる。

 

僕はその顔を見た瞬間、わずかな違和感を覚えた。

 

――どこかで見た。

 

だが。

 

今はそれよりも――

 

後ろの男。

 

尾行者。

 

そちらに意識を集中しようとした。

 

その時だった。

 

男がポケットから何かを取り出す。

 

黒い塊。

 

そして。

 

カチャ。

 

金属音。

 

男はその物体を運転手の頭に押し付けた。

 

運転手が小さく声を漏らす。

 

「えっ……」

 

次の瞬間。

 

男が叫んだ。

 

「このバスは俺が乗っ取った!!」

 

車内の空気が凍った。

 

女性の悲鳴。

 

ざわめき。

 

恐怖。

 

その男の顔を見て、僕は思い出した。

 

――昨夜のニュース。

 

銀行強盗。

 

麻薬常習犯。

 

逃走中。

 

なるほど。

 

都内の事件だったが、この街まで逃げてきたらしい。

 

だが。

 

僕の頭は別のことを考えていた。

 

この事件をどう解決するか。

 

乗客は怯えている。

 

ナミコの肩が震えていた。

 

それは当然だ。

 

拳銃など普通の人間はテレビの中でしか見ない。

 

しかも相手は麻薬中毒。

 

何をするか分からない。

 

僕はナミコの太ももを軽く叩いた。

 

トン、トン。

 

そして紙を渡す。

 

声を出すのは危険だ。

 

紙にはこう書いた。

 

ナミコちゃん大丈夫安心して

犯人の隙をみて僕が

ピストルを持った手を押さえる

こういう時の対処は刑事である

父に教わっている

犯人は小柄で弱弱しい

僕の方が力もある

 

ナミコの目が潤んだ。

 

彼女は思った。

 

――夜神君は本物だ。

 

頭脳明晰。

運動神経抜群。

容姿端麗。

 

そして。

 

こんな状況でも勇敢。

 

好きで良かった。

 

その頃。

 

リュークはバスの中を漂っていた。

 

逆立ちしてみたり、

くるくる回ったり。

 

誰も気づかない。

 

――Lの奴、何がしたいんだ?

 

リュークは乗客を観察する。

 

拳銃の男。

 

夜神月。

 

その後ろの男。

 

レイ=ペンバー。

 

他は――

 

どうでもいい。

 

その時だった。

 

レイが立ち上がる。

 

「危険だ、やめろ」

 

低い声。

 

「その時は私がやる」

 

僕は一瞬だけ振り返った。

 

写真で何度も見た顔。

 

間違いない。

 

尾行者。

 

僕を監視している男。

 

僕は紙に何かを書こうとした。

 

しかし。

 

レイが言う。

 

「大丈夫だ」

 

「走行音がある。小声なら聞こえない」

 

僕は聞いた。

 

「失礼ですが……日本人ではないですよね?」

 

「ああ。日系アメリカ人だ」

 

僕は静かに考えた。

 

――ここが重要。

 

相手の正体を知る。

 

最も確実な方法。

 

身分証。

 

この状況なら出させられる。

 

僕はナミコに目配せした。

 

ナミコが震える声で言う。

 

「共犯じゃない証拠はありますか?」

 

レイが一瞬黙った。

 

僕は続ける。

 

「よくあるケースですよ」

 

「犯人は一人と思わせて後方に共犯者を置く」

 

レイは考え込む。

 

僕はさらに言った。

 

「乗客は七人」

 

「空席が多い」

 

「なのに僕たちの真後ろに座った」

 

「普通は座りません」

 

「つまり――理由がある」

 

僕は静かに言った。

 

「共犯だからだ」

 

レイは沈黙した。

 

そして。

 

カードケースを差し出す。

 

「これが証拠だ」

 

僕はそれを見た。

 

FBI。

 

名前。

 

レイ=ペンバー。

 

――なるほど。

 

LはFBIを使っているのか。

 

貴重な情報だ。

 

僕は小さくうなずいた。

 

「信用します」

 

「銃は?」

 

「持っている」

 

「ではいざという時はお願いします」

 

レイは曖昧に答えた。

 

僕は前を向いた。

 

――レイ=ペンバーは敵ではない。

 

このバスジャックは失敗する。

 

この犯人は素人だ。

 

計画性がない。

 

単独犯。

 

長くは持たない。

 

ならば。

 

警察が動けば終わる。

 

僕はナミコに情報を渡すつもりだった。

 

乗客の位置。

 

犯人の特徴。

 

父に届けば。

 

必ず全員助かる。

 

その時。

 

犯人が叫んだ。

 

「おい運転手!」

 

銃口を押し付ける。

 

「今すぐ警察に連絡しろ!」

 

そして笑った。

 

「そうだなぁ……」

 

「現金一億円用意しろって伝えろ!」

 

バスは、静かに走り続けていた。

月とLどちらに勝って欲しいか

  • L
  • 勝者なし
  • 引き分け
  • 月L以外
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