Lがデスノートを拾った世界~リメイク~   作:梅酒24

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8冊目:三体

机の上にノートを広げたまま、私はしばらく指を止めていた。

 

静かな部屋だった。

しかし静寂というものは、ただ音が無いだけではない。

思考が深く潜るとき、世界そのものが息を潜める。そんな感覚がある。

 

今、私の頭の中にはいくつもの線が走っていた。

それは糸のように細く、しかし確実にどこかへと繋がっている。

 

私はノートを見つめながら、今後の展開をどのルートに進めるべきかを考えていた。

 

背後で、リンゴをかじる音がする。

 

「さっそく、ライトと出会わせた捜査官の名前を書くって訳か?」

 

リュークの声だ。

無遠慮で、どこか楽しげな声。

 

私は顔を上げずに答えた。

 

「いや違いますよ」

 

黄色のマカロンを一つ、口に運ぶ。

甘さが舌に広がる。

 

続けて、隣にあった紫色のマカロンを口に入れた。

 

まだ黄色の甘味が残っているところへ、紫の風味が重なる。

二つの味が口の中で奇妙に混ざり合う。

 

私はその感覚を楽しみながら言った。

 

「彼の名前を書くのは、一週間後です」

 

リュークが首を傾げた気配がした。

 

「?」

 

無理もない。

死神にとって、人間の思考というものはしばしば理解不能だろう。

 

私は指先でノートの端を軽く叩きながら続けた。

 

「会ってすぐに書くよりも」

 

「もっと多くの警察関係者を動かしてからの方がいい」

 

「そして一週間後」

 

「彼の名前を書く時には――」

 

私は一瞬言葉を止めた。

 

「夜神月が、日本に入ったFBI全員の顔写真ファイルを入手してからです」

 

リュークは沈黙した。

 

理解できていない沈黙だった。

 

私は小さく笑った。

 

「まあ、楽しみはその時まで取っておいてください」

 

「いずれ分かります」

 

「まずは、刑務所の犯罪者で実験を続けます」

 

そう言いながら私はノートのページを指でなぞる。

 

そして心の中で思う。

 

――とりあえず横読みすると

 

「えるしっているか」

 

となる文章の続きを書いておきましょう。

 

その続きは。

 

「死神は」

 

「りんごしか食べない」

 

もちろん私は知っている。

 

だが重要なのは、私が知っていることではない。

 

警察がそれに気づくかどうかだ。

 

もしこの程度の仕掛けすら見抜けないのであれば。

 

その時点で。

 

彼らは捜査から切り捨ててもよい。

 

ピピピ。

 

ノートパソコンが音を立てた。

 

画面に、黒ずくめの男のアイコンが現れる。

 

「L」

 

私は一瞥した。

 

連絡が来ることは予測していた。

 

「なんだワタリ」

 

「また遺書のような物を残した犠牲者が出ました」

 

私は小さく息を吐いた。

 

――やっと見つけたのか。

 

予想よりも遥かに遅い。

 

私は言った。

 

「画像を送ってくれ」

 

数秒後、画面に文字が表示された。

 

私はそれを読み上げる。

 

「死神は……」

 

私はわざと少し考えるような声で言った。

 

「死神が存在するとでも言いたいのか?キラ……」

 

ワタリとの通話中だからだ。

 

探偵という職業は、時に芝居が必要になる。

 

その背後で、リュークが大声で笑った。

 

「おいおい、それをお前が言うか」

 

私は横目で彼を見た。

 

なるほど。

 

人間のすっとぼけというものは、死神にとっても滑稽らしい。

 

私は淡々と言った。

 

「ワタリ」

 

「これからも何か書き残す者が出るかもしれない」

 

「刑務所から目を離さないよう警察に伝えてください」

 

「分かりました」

 

通信が切れる。

 

私は少しだけ肩を落とした。

 

――刑務所をきちんと監視していれば

 

もっと早く連絡が来ていたはずだ。

 

警察という組織は、どうしてこうも鈍いのだろう。

 

私はピンク色のマカロンを口に入れた。

 

甘さが広がる。

 

そして思考を切り替える。

 

――さて。

 

問題の本質に戻ろう。

 

私は今、犯罪者を裁いている。

 

だが。

 

私は犯罪者が一人もいない世界を作りたいわけではない。

 

そんな世界は非現実的だ。

 

人間という生き物は、必ず罪を犯す。

 

しかし。

 

このノートを使うと決めた以上。

 

誰かを殺さなければならない。

 

その事実だけは変わらない。

 

では。

 

誰を殺すのか。

 

犯罪者だから殺していいのか?

 

もちろん違う。

 

犯罪者も。

 

一般人も。

 

同じ人間だ。

 

だが。

 

もし世間にアンケートを取ればどうなるか。

 

「犯罪者と、犯罪を犯したことのない人」

 

どちらが死ぬべきか。

 

おそらく。

 

多くの人間は前者を選ぶ。

 

つまりこれは。

 

一般論だ。

 

私はその一般論に乗ることにした。

 

深く考えないために。

 

もちろん。

 

無罪で逮捕された者もいるだろう。

 

運が悪く、このノートで死ぬ人間もいるだろう。

 

しかし。

 

それは。

 

統計の誤差だ。

 

私はさらに考える。

 

もし本当に平等を求めるなら。

 

ダーツを投げて。

 

刺さった人間を殺す方法もある。

 

それはある意味、最も公平だ。

 

私はふと昔の記憶を思い出した。

 

適当に投げたダーツが、体格のいい不良青年の写真に刺さった。

 

確か。

 

どこかのアイドルグループのメンバーのあだ名に似ていた気がする。

 

だから少しだけ記憶に残っている。

 

だが私はその方法を選ばなかった。

 

理由は単純だ。

 

統一感。

 

犯罪者だけを殺す。

 

そうすれば。

 

犯人像が出来上がる。

 

狂った正義感の持ち主。

 

悪を根絶しようとする存在。

 

警察は犯罪者に注目する。

 

一般人は恐れる。

 

犯罪をすれば殺されるかもしれない。

 

それだけで抑止力になる。

 

しかし。

 

ここで問題がある。

 

普通に考えれば。

 

警察は犯罪者を重点的に調べるべきだ。

 

だが日本の警察は違った。

 

私が再三忠告したにもかかわらず。

 

横読みメッセージすら自力で見つけられなかった。

 

私が誘導して、ようやく気づいた。

 

私はノートを閉じた。

 

そして静かに呟いた。

 

「私の実験で重要なのは」

 

「正確な情報です」

 

警察が犯罪者に注目しなければ。

 

実験のデータが歪む。

 

だから私は。

 

警察の視線すらも。

 

設計する。

 

世界は盤上だ。

 

犯罪者は駒。

 

警察も駒。

 

FBIも駒。

 

そして。

 

夜神月も。

 

私は椅子の背にもたれた。

 

そして静かに笑った。

 

「さて」

 

「次の一手は――」

 

***

 

一週間後。

 

その日、私は椅子に深く沈み込みながら、部屋の中央に設けられたモニターの光景を眺めていた。

 

もちろん私はそこにはいない。

だが、そこにいるふりはしている。

 

それが「L」という存在だ。

 

世界最高の名探偵。

姿を見せない推理の怪物。

そして――

 

私は心の中で静かに笑う。

 

同時に、キラでもある。

 

この二重の仮面は、実に愉快だ。

いや、愉快というより、むしろ奇妙な芝居と呼ぶべきだろう。

 

私は舞台の外に立ちながら、舞台の上の役者を演じている。

観客は誰一人、そのことに気づかない。

 

モニターの向こうでは、日本警察の会議室が混乱に包まれていた。

 

夜神総一郎の額から汗が流れ落ちる。

 

「何?FBIが?」

 

部下が慌てた声で言う。

 

「はい!東京で四人、神奈川で二人、千葉・埼玉で一人ずつ!皆、心臓麻痺です!」

 

室内にざわめきが走る。

 

「FBI捜査官が日本で心臓麻痺?」

 

「なんだって?」

 

人間というものは面白い。

一人が混乱すると、それは瞬く間に伝染する。

 

理性など、実に脆いものだ。

 

ワタリは静かにノートパソコンを閉じ始めた。

 

「その捜査官の手帳から、日本警察を調べていた形跡が……」

 

「ど……どういうことだ?」

 

「今すぐFBIに連絡を取れ!」

 

声が飛び交う。

 

混乱。

疑念。

恐怖。

 

私はその光景を見ながら、椅子の上で膝を抱えた。

 

実に素晴らしい。

 

まるで私が仕組んだ劇のようだ。

 

いや。

 

もちろん――

 

私が仕組んだのだが。

 

ワタリは何も言わず部屋を出た。

 

廊下は静かだった。

 

ピピピ。

 

携帯電話が鳴る。

 

「ワタリ。私だ。Lに繋いでくれ」

 

FBI長官の声。

 

私はその声を聞いた瞬間、ほんのわずかに目を細めた。

 

――来ましたね。

 

筋書通りです。

 

ワタリは私に回線を繋ぐ。

 

「L、日本から捜査官が死亡したとの知らせが入った」

 

長官の声には緊張があった。

 

私は耳を澄ませる。

 

呼吸。

 

声の高さ。

 

言葉の速さ。

 

どれもわずかに乱れている。

 

「念の為、日本に入った捜査官十二人全員に連絡を取ったが……誰とも連絡が取れない」

 

私はゆっくりと言った。

 

「キラに全員殺されたとしか思えませんね」

 

――もちろん。

 

私が殺したのですが。

 

だが、その事実は世界のどこにも存在しない。

 

それがデスノートの恐ろしいところだ。

 

私は声の調子を整えた。

 

「長官、落ち着いて聞いて下さい」

 

長官は落ち着こうとしている。

だが、完全ではない。

 

声が少し高い。

 

呼吸が荒い。

 

話す速度が早い。

 

つまり彼は、必死に冷静を装っているだけだ。

 

私は話を短く終わらせるため、核心を突く質問をした。

 

「日本に入った捜査官全員の顔を知っている者は?」

 

「いや……」

 

「そのファイルを持っている者は?」

 

長官が答える。

 

「昨日までは私だけだったのだが……」

 

私はわざと聞き返す。

 

「昨日までは?」

 

もちろん分かっている。

 

だが、推理というものは相手に語らせることが重要だ。

 

長官が言う。

 

「今日、日本に入った仲間を確認したいと言う者がいて、その捜査官にファイルを送った……」

 

私は声を張り上げた。

 

「それです!!」

 

わざとだ。

 

少しオーバーに。

 

舞台の俳優のように。

 

背後でリュークが笑っている。

 

「とんだ茶番だな」

 

私は続ける。

 

「キラはその捜査官に接触し!」

 

「何らかの方法でそのファイルを盗み見た!!」

 

もちろん。私だ。

 

だが私は続ける。

 

「ファイルを送った捜査官は誰ですか?」

 

長官は沈黙した。

 

ほんの少し。

 

だが私はもう答えを知っている。

 

「その捜査官は……」

 

そして。

 

「日本に入った捜査官全員だ」

 

私は静かに言った。

 

***

 

私は椅子の上で膝を抱えたまま、モニターの向こうの世界を眺めていた。

 

人間という生き物は実に興味深い。

特に恐怖と責任という二つの重石が同時に胸へ落ちたとき、その顔は滑稽なほど劇的に変形する。

 

今、画面の向こうでまさにその光景が展開されていた。

 

FBI長官の声が震えている。

 

「アメリカの犯罪者が一番多くキラの犠牲になったのは事実だが……」

 

言葉は慎重に選ばれている。

しかし慎重さの裏側には、露骨な焦りが透けて見えた。

 

「あなたがキラの潜伏場所を日本の関東と断定してからは犠牲者が日本に集中している」

 

私は目を細めた。

 

――なるほど。

 

責任の所在を、少しずつこちらへ寄せてきますか。

 

長官は続ける。

 

「日本で殺されているのは犯罪者だが、我々は何の罪もない捜査官を失った」

 

「この犠牲は大きい」

 

背後でリュークが肩を震わせている。

 

「L、お前の言うとおり一般論と事実並べてきたなぁ」

 

私は小さく肩をすくめた。

 

まさにその通りだ。

人間は責任を逃れるとき、必ず「事実」と「一般論」を並べる。

 

その二つを並べれば、言葉は正しく聞こえるからだ。

 

長官の声がさらに小さくなる。

 

「今回急だったので、私の独断で捜査官を日本に入れたんだ」

 

その瞬間、私はほとんど笑いそうになった。

 

――やっと出ましたね。

 

本題が。

 

「私は国に責任を問われる」

 

「それに私は顔を公表されているんだ……」

 

そして彼は言った。

 

「私も命は欲しい……」

 

リュークが吹き出した。

 

「本当に命が欲しそうだなぁ」

 

長官はもちろん、その声は聞こえない。

 

彼は必死に続ける。

 

「だからFBIは日本から手を引く……」

 

背後でリュークがくつくつ笑う。

 

「よくわかるな」

 

私は静かに呟いた。

 

「人間は」

 

「命が惜しくなると声が少し高くなります」

 

「今まさにそうです」

 

長官はまだ話し続けていた。

 

そこへ別の声が割り込む。

 

若い女性の声だった。

 

「長官、日本の警察庁の夜神局長から電話です。二番です」

 

長官は一瞬黙った。

 

そして。

 

ふっと笑った。

 

その笑いは実に人間的だった。

つまり、卑屈な笑いだ。

 

「ふふっ……さっそく日本の捜査本部から電話だ」

 

私はその声を聞きながら思う。

 

――ああ。

 

これは典型的な逃げ方ですね。

 

長官は続けた。

 

「あなたの指示で我々FBIは動いたと言いますよ」

 

「いいですね……L?」

 

私は沈黙した。

 

――責任逃れ。

 

それ以外の何物でもない。

 

長官は言った。

 

「では……」

 

通信が切れる。

 

私は小さく呟いた。

 

「返答していませんよ」

 

そして肩をすくめた。

 

「まあ」

 

「これで私も出ていかなければなりませんね」

 

モニターの画面が切り替わる。

 

日本警察本部。

 

そこではすでに嵐が吹き荒れていた。

 

夜神総一郎が机を叩いている。

 

「FBIはLの指示で本部関係者を洗っていた?」

 

「本当ですかそれは!!」

 

怒号。

 

ざわめき。

 

別の刑事が吐き捨てるように言う。

 

「Lはやはり信用できないな……」

 

さらに別の男が言った。

 

「それよりキラはFBIも殺したってことだろ」

 

「自分を見つけようとする者は殺すってことだ」

 

「自分に楯突く者は犯罪者でなくとも殺す……」

 

男は唾を飛ばす。

 

「本当の殺人鬼だなキラは……!」

 

別の刑事が顔をしかめる。

 

「ああ……人間のやることじゃない……」

 

私は椅子の上で静かに揺れた。

 

――人間のやることじゃない。

 

それを聞いたリュークが腹を抱えて笑う。

 

「お前のことだぞL」

 

私は平然と答えた。

 

「そうですね」

 

「しかし」

 

「彼らは知りません」

 

連日の残業。

 

眠気。

 

ミス。

 

苛立ち。

 

そのすべてが、今この瞬間、Lという名前へ押し付けられている。

 

私はその光景を見ながら思った。

 

――実に合理的です。

 

人間は怒りを発散する対象が必要だ。

 

しかも。

 

ここにいない相手。

 

反論できない相手。

 

それが理想だ。

 

つまり私は。

 

完璧な標的。

 

そのころ。

 

別の場所で。

 

夜神月は机の引き出しを開けていた。

 

黒いノート。

 

FBI十二人の個人情報。

 

彼はそれを見比べている。

 

***

 

私は画面越しにその姿を想像する。

 

***

 

月は考えている。

 

「日本を調査し殺されたFBIは十二人」

 

「そのうちバスで出会ったレイ・ペンバーは僕を調べていた」

 

彼の思考は冷たい。

 

鋭い。

 

「近いうちに僕を徹底的に調べるだろう」

 

「監視カメラか……盗聴器か」

 

***

 

私は口元を歪めた。

 

――さすがです。

 

 

***

 

月はさらに考える。

 

「キラ=L説はあるが」

 

「まだ根拠はない」

 

「もし監視カメラや盗聴器が設置されたら」

 

「それはキラ自身の首を絞めることになる」

 

そして。

 

彼は確信する。

 

「もしLがキラなら」

 

「間違いなく僕をスケープゴートにする」

 

***

 

私は小さく笑った。

 

――その通りです。

 

***

 

月は続ける。

 

「そうなれば」

 

「直接対決になる」

 

彼は窓の外を見る。

 

そして呟く。

 

「キラ」

 

「お前は今回大きく動いた」

 

「十二人のうち誰かに接触し」

 

「必ず手がかりを残している」

 

彼の瞳が光る。

 

「FBIが増員するにしても」

 

「それはずっと先」

 

「今、Lの動かせるコマはほとんどない」

 

そして。

 

彼は言う。

 

「さあ……」

 

「そろそろ自分の足で動くんだ……」

 

***

 

私は椅子の上で静かに膝を抱えた。

 

――なるほど。

 

実に面白い。

 

***

 

名探偵Lとキラ。

 

二人の怪物が、互いを追っている。

 

だが。

 

その正体は。

 

同じ人間。

 

その奇妙な状況を思うと、私は少し笑ってしまう。

 

そのころ。

 

夜の歩道橋。

 

一人の女が立っていた。

 

ビルの灯りが滲む。

 

車のライトが流れる。

 

その中で彼女は泣いている。

 

風が髪を揺らす。

 

彼女は呟いた。

 

「死んだ……」

 

声が震える。

 

「レイが……」

 

そして。

 

ゆっくりと言った。

 

「いいえ」

 

「キラに殺された……」

 

「全員……」

 

長官は説明する。

 

「急に皆、日本に入った仲間を知りたいと言い出した」

 

「私は、彼らが皆でファイルを共有するつもりだと思った」

 

私は心の中でため息をついた。

 

――なるほど。

 

確認もしなかったのですね。

 

それでFBI長官とは。

 

驚くべき組織だ。

 

長官は続ける。

 

「最初の四人には私が直接ファイルを送り」

 

私は頭の中で補足する。

 

――そして残りは。

 

面倒になって。

 

その四人から回させた。

 

長官は言った。

 

「あとは残りの者へ渡せと指示した」

 

私はしばらく黙った。

 

そして言う。

 

「つまり」

 

「全員がファイルを持っていた」

 

私はゆっくり続ける。

 

「もしキラが」

 

「死の直前の行動を操れるとしたら」

 

「誰かのファイルを見た後」

 

「全員にファイルを持たせることも可能です」

 

長官が沈黙する。

 

私は待った。

 

この言葉を。

 

「L……申し訳ないが」

 

――来ましたね。

 

筋書通り。

 

「FBIは日本での捜査を打ち切る」

 

私は静かに頷いた。

 

長官の声は、少し軽くなっていた。

 

私は思う。

 

――今、この男は安心している。

 

もちろん表向きの理由は並べるだろう。

 

捜査官の安全。

国際問題。

情報不足。

 

だが本当の理由は一つだ。

 

自分が死にたくない。

 

それだけだ。

 

私は小さく呟いた。

 

リュークだけに聞こえる声で。

 

「この長官は」

 

「今、安堵しているでしょうね」

 

「理由は立派な言葉で並べるでしょうが」

 

私は肩をすくめた。

 

「結局は」

 

「自分の命が惜しいだけです」

 

リュークは腹を抱えて笑った。

 

そして私は、再び椅子の上で膝を抱えた。

 

名探偵Lはキラを追う。

 

だがその実態は。

 

キラがキラを追っている。

 

私は口元を少し歪めた。

 

世界中の警察が必死に追っている怪物。

 

その怪物は今――

 

この部屋で、静かにマカロンを食べている。

月とLどちらに勝って欲しいか

  • L
  • 勝者なし
  • 引き分け
  • 月L以外
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