杖くんと七歳の魔法使い ~深淵から帰還した少年は、今日もみんなの笑顔を守る~   作:redhot

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杖くんと夢の自動車

岩内町の外れに新設された「ミスリル自動車試作工場」では、連日のように夜通しの作業が続いていた。

そしてついに、その日が来た。

完成したのは、ミスリル製の試作車――「ミスリル・ドリーム」。

ボディはミスリルの薄板で構成され、従来の鋼鉄車と比べて重量は約四分の一。

しかし強度は五十倍以上。

正面衝突試験では、時速百キロでコンクリート壁に激突しても、乗員室はほぼ無傷。

エアバッグすら必要ないほどだった。

燃料燃費は、軽量化と空気抵抗の最適化により、従来車の三倍近くに向上。

内装はドラグライト鉱石で補強され、振動も騒音もほとんどない。

まさに、空想の中でしか語られなかった「夢の自動車」が、現実のものとなった。

試乗した自動車メーカーの社長は、運転席から降りるなり、興奮で声を震わせた。

「信じられない……これが、八歳の少年がもたらした素材で作られた車だなんて」

価格はまだ高級車並み。

ミスリルの供給量が限られているため、一台あたり数千万円。

だが、材料の安定供給が実現すれば、一般家庭にも広まる日が来るだろう。

すでに、量産型の「マカライト・セダン」が開発中だ。

ミスリルほどではないが、マカライト鉱石の軽量・高強度を活かし、従来車の半分以下の重量で、価格は大衆車に近づけている。

自動車産業は、革命の渦中にあった。

新聞は一面で大々的に報じた。

「ミスリル自動車、試作完成! 安全性・燃費が空想を超える

八歳少年トオルくんがもたらした奇跡の素材が、現実を変える」

「次世代マカライト車も開発中――交通事故激減の鍵か」

世界中の自動車メーカーが、岩内に支社を増設。

ミスリルとマカライトの安定供給を求めて、日本政府に次々と要請が殺到した。

トオルは、そんなニュースを食堂でみんなと見ていた。

七歳の少年は、杖くんを抱きしめながら、ぽつりと呟いた。

「僕のミスリルで、車がもっと安全になったんだ……よかった」

煉獄杏寿郎が大声で笑い、

「うむ! トオル、お前の素材が、世界の道を安全にしてるぞ!

これで事故が減れば、どれだけの命が救われるか!」

胡蝶しのぶが優雅に微笑み、

「ふふ……ミスリル・ドリームですって。

トオルくんの優しさが、こんな素敵な形になったんですのね」

胡蝶カナエが穏やかに頷き、

「あらあら、マカライト車ももうすぐ一般向けに。

みんなが安心して乗れる日が、近づいてるわ」

炭治郎が静かに、

「トオルくん……ありがとう。

これで、家族が車で出かけるのも、もっと安全になるよ」

トオルはみんなの笑顔を見て、胸が温かくなった。

「うん……僕、もっと採ってくるよ。

みんなが、もっと幸せになるように」

杖くんが耳元で優しく囁いた。

『トオルちゃん……あなたの優しさが、道を変えてるわ。

事故が減って、笑顔が増える……それが、あなたの夢の続きよ』

基地の外では、秋の風が吹いていた。

ガンダムとザクが丘の上に立ち、犬型ゴーレムたちが山を守り、エルフの戦士たちが訓練を続ける。

ミスリル自動車の試作車は、テストコースを静かに走り始めた。

その軽やかで、安全な走りは、世界を変える第一歩だった。

人類史上最大の魔法使いは、七歳の心で、夢の自動車を、現実の希望に変え続けていた。

霧の港町は、少年の優しさと、鋼の奇跡に包まれながら、輝き続けていた。

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